プリコネ短編集(仮 作:サツキ
「主様。これからどうしましょう」
キャルとペコリーヌと別れたコッコロとユウキ。いろいろと想定外な事が起きて、現在は全くのフリー。時間を持て余してる状態だった。
「ふむ。クエストですか。たしかに、最近はカリン様からの出動要請もないため、各々が好きなように過ごしていたこともあり、美食殿はちょっとした財政難。キャル様が記憶を取り戻したさいのお祝いや、今後の活動の事を考えると有意義な時間の使い方。流石です主様」
いつもの主従ムーヴをかましながら、二人は掲示板へと向かっていた。
「あ、いました。美食殿のみなさーん!」
「おや。噂をすればカリン様。どうかされたのでしょうか。どうやら慌てている様子」
「はぁはぁ、すいません。ペコリーヌさんとキャルさんはいらっしゃいますか?」
「いえ、あいにくと今は別行動中でして。どうかされましたか?」
「そうでしたか・・。いえ、実は付近で確認されていた大型のモンスターがいたのですかどうやらこちらに近づいてきているようなのです。ただ、タイミングの悪い事に今、あのモンスターに対処できるギルドで、すぐに動けそうなのは美食殿の皆さんだけでして。どうか、力を貸してくださいませんか」
__行こう。
カリンの説明を聞き、即座に答えるユウキに呆気にとられる二人。しかしコッコロは嬉しそうに笑う。
「ふふ。事情を聴いてすぐに即決できるとはさすが主様。そうですね。困ってる人が見過ごせません。微力ながら私も力をお貸ししますカリン様」
「ありがとうございます! 私は他に動いてくれそうな人を探します」
カリンから場所を聞き、コッコロとユウキはすぐに駆けだした。
*
「ねえペコリーヌ」
「なんですかキャルちゃん」
「記憶をなくす前のあたしってどんな奴だった?」
現在、二人は人気のない広場にいた。周囲の建物に光が遮られ、どこか薄暗い、野良猫のたまり場となっているその場所で、二人は時間をつぶしていた。
「キャルちゃんですか? うーん」
「嫌な奴だったでしょ」
唐突になぜそんな事を言うのか。ペコリーヌにはわからなかったが、キャルは独白を続ける。
「なんとなくわかるのよ。記憶が戻り替えてるのかな。それとも、自分の本性ってやつがむき出しになってるから?
多分めんどくさい性格してたわよね。自分の気持ちも素直に表せれないんじゃないかな。ほんの少しの時間だけどあたし、ペコリーヌの事が好きだし、多分追いかけてきたあの二人の事も好きになれる。でもあたしは意地はって、きっとあんたたちに迷惑ばっかかけてさ」
「きゃ、キャルちゃん」
「ねえペコリーヌ」
キャルはペコリーヌの目を見据える。
「もう一度時戻りの隠れ水ってやつ、飲みにいかない?」
*
それを飲めば今のあたしでいられるんでしょ?
好きな物を好きって言える。ありがとうってはっきり伝えれる。
それに、「あたし」が持っていたしがらみも全部なくなる。
思い出はまた作れるって言うし、あんたたちだって、そっちの方がよくない?
記憶をなくしてた時の記憶は消えないっていうけれど、今のあたしの記憶が残っているからって、「あたし」が今のあたしってわけじゃないもの。
同じ記憶を持っていても、それはあくまで知識であって思い出じゃない。
あたしは、消えたくない。あんたと別れたくない。あの小さい奴と話してみたい。能天気な顔してたあの男とも遊びたい。
ねえペコリーヌ。
あたしとずっと一緒にいてくれるでしょ?
*
唐突な告白だった。いや、もしかしたら普段からキャルが抱えている悩みだったのかもしれない。
時戻りの隠れ水は本性を引っ張り出す水。普段から、素直になれない事に悩んでいたのか、それともまた別の意味があるのか。
「それはだめです」
しかし、ペコリーヌは迷わなかった。
「・・・そうよね。さっさと記憶を戻して、‘あたし‘に戻った方が、あんたは」
「違います。違いますよキャルちゃん」
真っ直ぐにキャルの目を見る。目と目が合う。どこまでもますぐなその瞳に、キャルの方が怯んでしまう。
「このままでいるとキャルちゃんは、後悔すると思うんです」
「それってどういう」
言葉の続きは紡がれることはない。
街の外で爆発音にも似た騒音が鳴る。
「行きましょうキャルちゃん」
「どこに行くのよ」
「ユウキ君たちが待っています」
その目はすでに、町の外に向けられていた。
*
「くっ」
__コッコロ!
「大丈夫でございます主様。これしき、何の問題もありません」
コッコロは目の前の魔物を見据えながら、槍を再び構えなおす。
「GYAOOOOOO!」
咆哮。空気が振動するような感覚。体の芯にまで届くその声は、対象に本能的な恐怖をもたらす。
無論、数々の激戦をこなしてきたコッコロとユウキがそれで怯む事もない。しかし、熊にも似た巨躯で剛腕を振り回す魔物は正に脅威と言うほかない。
「大丈夫、とは言いましたが、このままでは。せめて主様だけでも」
__僕も戦う。
「しかし」
ユウキは剣を構える。自分が足手まといなのは百も承知。それでも、囮ぐらいにでもなれれば、もう少しコッコロの負担を軽減できるかもしれない。ユウキはすでに覚悟を決めていた。
「・・・わかりました。主様、力をお借りします」
それでも、守るのはあくまでも自分の役目。ユウキの前で自らの獲物を構え、目の前の魔物に対峙する。
せめて、援軍が来るまでは。
そう覚悟を決め、その時を待つ。
「GYAAAAAA!」
(来た!)
猛然と突っ込んできて、一撃で命を致死へと追い込むその一撃を今、振り下ろし
「こんのぉおおおおーーーー!」
横から目に追えぬほどの速度で突っ込んできた影に、魔物は吹き飛ばされた。
「ふぅ、間に合いました。無事ですか、二人とも」
「ペコリーヌ様。あと・・・大丈夫でございますかキャル様」
ペコリーヌにおんぶされる形で、おそらくはここまで運ばれてきたのであろうキャルは、なぜかペコリーヌが止まると同時にその場に倒れこみ、こみ上げてくる何かを抑え込むようにうずくまる。
「に・・・人間が出していい速度じゃ、うぷっ」
「しっかりしてくださいまし」
先ほどまでの緊張感はいずこへ。コッコロはすでにグロッキーなキャルの介抱へ向かう。
その様子を見てペコリーヌは安心し、先ほど吹き飛ばした魔物へと向き直し愛剣を構える。
「さあ、ギルド美食殿! 全力で美食を追求しましょう!」
「まさかあれ食う気なの!? うっ・・・!」
「キャル様、キャル様。ゆっくり呼吸をして、調子を整えてください」
__うん、頑張ろう。