スカーレット家。吸血鬼という種族として名を馳せる高貴なその一族。曰く、ツェペシュの末裔と噂されるも、それも頷ける程のカリスマを誇る。その館の当主を若くして任されたレミリア・スカーレット。彼女には妹が居た...
狂気を孕んだ妹が
「...まったく、また壊したのか」
「はい...これでもう両手では足りなくなってしまいましたね」
何度目かの同じ顛末の報告を聞きながら、やれやれとため息を一つ吐く。吸血の為に買い付けておいたというのにストックもあと僅か、か...少食とは言えど、足りなくなりそうだ。
ヤツを閉じ込めてどれ程の時間が経ったろうか...時折、狂気をある程度発散させる為に送り込んでいたのは良かったが、最近はかなりスパンが短い。一週間に一人では聞かないし、なんなら使用人も何人か壊されている。また雇わんとな。
「...まあいい。今日はアイツとの商談だろう?」
「はい、そろそろお時間ですね。今日もお買いになられますか?」
「ん、買い足しておかないと間に合わん...手厚くもてなしてやれ」
「かしこまりました、お嬢様」
さて、減ったら買わねばならん...いや、〝飼わねば〟か?若い女なら尚のこと良いが...
「おもしろいモノ?」
いつものように商談をしていたところ、商人からそう口火を切られた。普段は吸血用と、発散用に少し買う程度だが...突然の話に少しばかり興味も湧くというものだ。
「ええ!この度ですねぇ、なんとも奇妙で珍しいヤツを仕入れましてねぇ!...ただ、少しばかり値が張りますが...いえいえ!スカーレット卿程の方であればお安いでしょうが...」
「くどいな。内容は?」
「あいや失礼...こほん、それがですねぇ...世にも珍しい〝不死の身体を持つ男〟です!」
「...ほう」
どこかで聞いた話だが、最近、見世物として死なない人間を出していた曲芸師の一団が突如として姿を眩ましたそうな...。それにしても男、か...少し残念だが
「お前のところが絡んでいたのか...良くやる」
「はて?なんのことやら...それで、お買い上げなさりますでしょうか?」
「興味はある。一度見せろ、話はそれからだ」
「ええ!無論そのつもりでして、本日連れて来ております!...ここでお見せしても?」
「構わん、好きにしろ」
いつもは商談の後から商品を送りつけてくるのだが...どうやら私に買わせる気満々らしい。準備の良いことで...
「こっちだ、来い...こちらが、本日の目玉商品になります!」
「ほう、若いな。...早く見せろ」
連れて来られたのは意外と若い男だった。青年と言って差し支えない年だろう。商人の手にはサーベルのような刃物が握られている...実演の為だろう。
「それでは、早速お見せしましょう!...フンッ!」
「!...がふっ...」
「ふむ...」
刃物は寸分の狂いなく、青年の心の臓を貫き通った。間もなく、かなりの量血反吐を吐き散らし膝を着く青年。深く刺し込まれたサーベルは、鮮血を撒き散らしながら彼の身体から離れ、そこからは滝のように人が生きている証が流れ出ていた。
「...足りんな」
「はい?」
そう呟き、腰を上げる。商人の間抜けな声が聞こえたが、ヤツに与えるには不十分だ。直々に私が試しに殺してみようか...右手に魔力を込める。
「これくらいはされても、原型を留めてもらわんと困る」
「ス、スカーレット卿?!な、何を?!...ひっ、ヒィッ!?」
ただならぬ量の魔力で形成され、具現したのは真紅の槍。恐らくはこれでも足りんが、消し炭になられては困る。よっ、と
「があっ?!...が、へ......」
「ひとまずは死んだか...ほら、さっさと起き上がらんか」
追撃を受け、どちゃりと音を立て突っ伏した自称不死。殺されても死なないのだろう?どの程度で起き上がるのか分からんが、早い方が良い。げしげしと頭を踏む。
「...手荒い、ねぇ...お嬢さん、よぉ...げほっ」
「ほう...早いもんだ。悪くない」
不死には違いないし、治りも早い。いましがた垂れ流してた血も既に止まっているようだ。...フフッ、これは良い拾いモノをしたな、運が良い。
「買いだ、商人。言い値で買おう、気に入った」
「へ?...は、はいぃ...」
気を動転させた商人にそう言い放ち、床に溜まった血を指でなぞり舐め取る。...ふむ、これで旨ければ完璧だったんだが...まあ、良いか
ここまで読んで頂き感謝です、それではまた。