「...フランはいつからこの部屋に?」
「んー?えっとねぇ...もう100年くらいかなぁ」
どぱん
かしゃん
「お父さんやお母さんは?」
「地下に幽閉される前、襲撃に逢って死んじゃったんだ」
どぱん
かしゃん
「壊すのは楽しいかい?」
「んー...なんか、すっきりする」
どぱん
かしゃん
「そうか...そりゃ良かった」
「私も質問いーい?」
とぱん
かしゃん
「良いよ。何が聞きたい?」
「えっとね、えっとねー!」
どぱん
かしゃん
すぅすぅ、と寝息を立てて眠る少女。遊び疲れて眠ってしまったのか、その寝顔はどこか満足げで可愛らしいものだ。ただ、少しばかり異端とするならば、眠りこける部屋の中が嫌と言うほど血生臭い、という一点に尽きる。
なんというか、内側から弾け飛んで死ぬのは......いや、初めてじゃあないか。無理矢理火薬を飲み込まされたこともあったっけか。
元より紅を基調とした部屋だったが、私が飛び散ったのがより一層紅い色に拍車をかける。私は徐に腰掛けていたベッドから立ち上がり、扉に手を掛ける。...どうやら、内側からは開かないようだ。
「...はぁ」
諦めにも似たため息が口を突く。元居た場所へ戻ろうと踏み出した足は、辺りを紅く染める鮮血を散らし、ばちゃり、と生々しい音を部屋に響かせる。
未だに眠っている少女...もといフランを起こさないよう静かにゆっくりとベッドに腰掛け、今一度その寝顔をまじまじと見る。
「すぅ...すぅ......ん、んぅ...」
少し寝苦しさでも感じたのか、くぐもった声を漏らし寝返りをうつ。背中から生える二つの羽根さえなければ、なんらその辺の少女と大差ない。
...ふと、妹のことを思い出した。背格好が似通っているからかその姿を重ねてしまい、懐かしさを覚える。
「ん...んふふー......すぅ...」
「...懐かしいな」
昔の癖か、フランの頭へと手が伸びる。手入れが行き届いた髪は絡まることもなく、さらりと指が抜ける。人と同じく、体温も感じる。くすぐったかったのかそんな微笑みを漏らすも、フランはまだ夢の中のようだ。
殺されるのは慣れた。痛みも一瞬、治りも早い。私を買った飼い主は総じて死生感がおかしいらしい...と、最近までは考えていた。
「...私、か」
私がおかしくした。刺しても、燃やしても、溺れても、落ちても、捻れても、抉られても...内側から弾けたって死なない。そんなモノが価値観を狂わせた。
些細なことだった。少し前、私を飼っていた人、その人は優しい人だった。家庭では妻とも円満な良い夫であった。何故私を買ったのかも分からない程だった。
そんな人も、私を殺した。内に秘めていた何かが垣間見えた気がした。しばらくして、妻が殺された...夫に殺された。
「早く、死にたいなぁ...」
私が殺させた、私が殺した、死なない故に私が...
ギイィ...
扉の開く音...
「失礼しま...ひっ?!...こ、これは...」
「しー、寝てますから...何か用ですか」
こちらを見るのは道案内してくれたメイドさん。血にまみれた部屋の惨状に短く悲鳴を上げるも、フランが寝ているのもあり人差し指を立ててそれを制する。
「い、いえ...お嬢様から、一日経ったから様子を見に行け、と」
へぇ...もうそんなに経っていたのか。結構長い間フランと話していたらしい...私は立ち上がる。
「出ても良いのかい?」
「は、はい...案内します」
そうして、私は血で濡れた地下室を後にした...
ん、もう三桁切ったのか
不気味さを文字で描きたい。それでは、また