「ふあぁ...ふぅ」
二つの足音が響く廊下。会話もないそんな時間に欠伸を一つ漏らしてしまう。...それにしても、この人には昨日悪いことをしてしまったなぁ。完全に巻き添えだったし
「...昨日、すみませんね。あそこまで機嫌を損ねるなんて思わなくてね」
「......いえ、お気になさらず」
再びの沈黙。ひとまずは許してもらえたらしいけれど...それにしても、だ。あの動揺、何も隠せてはいない。フランの中には何かがいる...質問の答えはもらえていないが、あの行動がもはや答えだろう
「...あの」
「?...はい、どうかしましたか?」
そんな考えを巡らせていると、珍しくメイドさん側からの問いかけ。どうかしたのだろうか
「貴方は、妹様が怖くは無いのですか...?」
「えぇ、全く」
「!...それは、貴方が死なない、からですか?」
「人は、いつかは死にますよ。早いか遅いか、丈夫か否か、それだけの違いです」
怖い、か。死ぬことに恐怖を抱いていたのはいつまでだったろうか。痛みを感じ、視界が暗転し、目が覚める...その繰り返しに、いつしか怖いなんて感情は消えてしまったようだ
「あの子と話して、あの子に殺されて...ちょっとだけ分かりました」
「......」
「あの子は優しい。まぁ、少しばかりお転婆ですけど...」
「そう、ですか...」
なら、何がフランをそうさせるのか。私ももう残り少ない...どうせなら、何か...何かをしてあげたい
「私からも質問、良いですか?」
「...はい、なんでしょうか」
「いつから、フランはああなったんですか?」
私が支えるようになる前の話だそうです...まだ、お嬢様も妹様もお生まれになったばかりの頃、まだお二人のご両親がいらっしゃった頃...ある日、この館は襲撃を受けました。ヴァンパイアハンターの一団です。数は...100は下らなかった、と
ご両親はお二人を...今の地下室にあたる部屋へと隠れさせ、使用人と共に戦われました。お二人はその部屋でしばらく過ごし...そして外へとお出になられました
館の中は凄惨な状態でした...そのまま、お二人は玄関の大広間へと、ご両親の無事を祈りながら向かわれたそうです。道中には使用人と、おそらくハンターであろう人間の死体がいくつも転がっていたそうです
大広間にお二人が着いたとき、そこには...十字架に張り付けにされ、胸に杭を打たれるご両親の姿があったそうです。それを見た妹様の様子がおかしくなり、そして...
「大広間に残っていたハンターたちを全て殺し尽くした...と」
「...はい。ご両親は既に衰弱しており、間もなくして亡くなったと聞いております」
少し、似ていると思った。吸血鬼である、貴族であるという立場に大事な人を殺された...そのことが
「それ以来、新たに当主になられたお嬢様が、妹様を地下室へと幽閉したそうです」
「...ありがとう、色々と聞いてしまって悪かったよ」
「...少し、勝手かもしれませんが、よろしいですか?」
「...えぇ」
「どうか妹様を、救ってあげてもらえませんか...お願いします」
いつの間にか着いていた地下室の扉の前でそう、頼まれる。ぎいぃ、と開く重厚な扉...中へと足を踏み出し、答える
「救って貰うのはこっちですよ」
重い扉は閉じる
あと40と少し
ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また