がちゃり
ノブを回す音だけが嫌に鮮明に聞こえる。ここは奴に使わせていた客室...だが
「...いない、か...チッ」
既ににソイツの姿は無かった。おそらくだが、もう地下の方へ行っているんだろう...間が悪い
「...ん?」
目当てのモノが無い事実に不機嫌さを露にしながら部屋を後にしようとしたとき、机の上の何かに気が付く
それどころでは無い...そう、その筈だが目が離せなかった。よろよろと壁に肩を預けながら、その机へと歩いていく
「...手紙、か?」
そこにあったのは一つの封筒。宛名は無い...血がまだ足りんと言うのに...興味には勝てない、か。まだまだお子様だな
乱雑に封を破り中の手紙に目を通す
『拝啓、館の誰かへ』
『目を通しているのは、恐らくメイドさんでしょうか...ひとまず簡潔に、要点だけを伝えたいと思います。私は────────』
弾け飛んだ手を抑えながら、閉じられた扉を茫然と見ていた...見ていることしかできなかった
明確な殺意を帯びた襲撃者と一緒に外へ出ていったおにーさんの背中を...ただ、茫然と...
「おにー...さん......」
独りになった部屋の中、そんな言葉が悲哀を帯び、静かに響く。自分の口から出た文言は酷く震え、掠れ...そして戸惑いに彩られていた
無意識の内にベッドから立ち上がり、血で紅く染め上げられた床を踏み、ぱちゃりと音を立てながらその扉へと近づいていく。目と鼻の先にある扉までの道のりは、何故かとても長く、寂しく感じられた
扉に耳を当てると、ぼんやりと外からの音が聞こえる。乱雑にモノが床や壁を叩くような音に、穏和な雰囲気は感じられない
「た、助け..ないと...あ......」
扉は開かない。ノブは回らない。非力、とは言えない私でも、開けることができない...がちゃがちゃと、焦りと困惑を孕んだ音と、速くなる私自身の動悸が鼓膜を震わせる
早く出ないと、おにーさんが!...でも、私の力じゃ、どうしようも...
『壊せば良いじゃん』
「あ...」
『私の、私たちのチカラでぶっ壊しちゃえば「いや...」...なんで?』
「こんなの...使いたくなんて、ない...」
『助けたいんじゃないのー?』
「助けたい!...でも......でも、『もう使ったでしょ』...え」
『ほら...まだ治ってないや』
「あ...右、手...」
『助ける為に...使ったでしょ。一回も二回も、変わんないって』
「誰かの為に...壊す......」
私は扉に、開かれた左手をかざす
『まぁ...』
『壊せれば何でも良いんだけどねー』
ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また