宇宙戦艦ヤマト2199から始まるリメイクシリーズの最新作である2205新たなる旅立ちの製作が発表されました。本小説は、未だ公式から発表されない2205新たなる旅立ちのストーリーを勝手に予測した二次創作です。

あの、ガトランティス戦役から3年。
新たな敵ディンギルの出現と、イスカンダルに迫る危機。
かつての仇敵から、今は友となったデスラーからの救援要請を受けて、宇宙戦艦ヤマトは3度目の旅に立つ!

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宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち【想像篇】

オープニングテーマ:ヤマト‼︎新たなる旅立ち

 

●地球

あのガトランティス戦役から3年ー。

ヤマトは再び波動砲を封印し、地球連邦防衛軍士官学校の練習艦となっていた。

古代、島、山崎ら生還したメインクルーは、士官学校の教官となり、若い士官候補生たちの育成にあたっていた。

士官候補生の一人土門竜介は、ガミラス戦役で両親を亡くし天涯孤独の身となったことから、自分と同じ境遇の子どもをこれ以上増やさない為にと、防衛軍の士官を志していた。しかしその思考には、攻撃は最大の防御であり敵性種族は殲滅してでも地球を防衛すべしという危険な傾向があった。特にガミラス人への反感が根強くあり、担当指導教官の古代は、そんな土門のことを案じ、卒業時に予定されているヤマトでの記念訓練航海では、戦術科を希望する土門を、敢えて主計科に配属する。腐る土門は、尊敬する古代に初めて反発を覚えるのだった。

卒業記念訓練航海の日が来た。土門のほか、機関科の徳川太助(故徳川彦左衛門の遺児)、航海科の桜井洋一といった卒業生たちがヤマトに乗艦した。

迎えるヤマトクルーは、古代進艦長、島大介副長兼航海長、南部戦術長、新見技術長、山崎機関長、相原通信長、平田主計長、星名保安長、太田気象長、北野砲雷長、佐渡船医、西条船務長、桐生情報長等々歴戦の勇士たちが顔を揃えた。艦のAIは、AU-09アナライザーのメモリーを一部引き継いだ新型のAU-10が装備されている。

真田は、防衛軍司令部専任参謀として地球に残った。

 

森雪は…どこにも姿がない。古代も島も真田も、だれも何も語らない。何故か?

 

訓練航海に出発するヤマト。航海科配属の桜井は、島からいきなり発進時の操艦担当を振られ、パニックになる。

月軌道に達すると、月面基地から航空隊が合流してきた。山本隊長、篠原副隊長に率いられたコスモタイガー隊には、やはり卒業生の揚葉夏希がいた。天才的操縦技術の持ち主だが、自惚れも強く、この時もスタンドプレーをして後で山本に叱責される。

 

●ガミラス

ガトランティス戦役後、ガミラス星の星としての寿命が尽きかけてきている兆候が、様々な異常現象として頻発するようになり、そのことを公表した政府は、国民投票を経て再びアベルト・デスラーを大総統として国家元首に戴き、ガミラス星脱出を計画した。

脱出先は、天の川銀河外縁のガルマン太陽系第四惑星ラジェンドラ。ラジェンドラはガミラスの開拓星の一つだったが、惑星環境がガミラスによく似ているのと、にも関わらず知的生命体が全くいないことから、移住先として理想的と言えた。

ユリーシャ・イスカンダルもデスラーに協力してイスカンダルとの大統合を推進し、ガミラスの民意を脱出に向けていった。デスラーは、イスカンダル星に居るスターシャにも一緒に脱出するよう呼びかけたが、スターシャは最後のイスカンダル女王として、星を離れる訳にいかないと、脱出を拒むのだった。

ヒス副大統領率いるガミラス第一次移民船団はガミラス星を進発し、バラン星のゲートを通過して天の川銀河外縁に到達していた。フラーケンの次元潜航艦隊が護衛に随行している。

そんな折に、突如謎の人工物がイスカンダル星の至近にワープアウトしてくる。それは、ディンギル星の尖兵たる自律型浮遊要塞ゴルバだった。ゴルバからの砲撃と上陸部隊による攻撃で、イスカンダル星は瞬く間に焦土と化した。

デスラーは、ディッツ提督麾下のガミラス連合艦隊から、バーガー艦隊を率いて自らイスカンダルのスターシャ救援に赴くが、その隙にゴルバから発した敵のザール艦隊にディッツの本艦隊が急襲され、第二次移民船団の約半数と護衛のガイデル艦隊を送り出すと、敵ハイパー放射ミサイルの攻撃により壊滅してしまう。

デスラーは、自艦隊もゴルバからの攻撃にダメージを受け、更には本星の連合艦隊も壊滅的打撃を受けたことを知り、地球に対して救援を求める通信を送った。

 

●ヤマト

ヤマトは、訓練航海の目的地であるバラン星宙域に到達し、バラン星の名残であるアステロイド帯を使った実戦訓練を行っていた。

桜井、揚羽、太助といった士官候補生らが、訓練中に実力を発揮しているのを横目に、主計課配属の土門は腐り切っていた。訓練後の食事の配膳に気の乗らない土門は凡ミスを犯し、平田主計長に注意される。落ち込む土門を見かねて、平田は上級士官専用のトレーニングルームに土門を誘う。そこには、一人黙々と射撃訓練を行う古代艦長の姿があった。古代の訓練を見守りながら、平田は土門に語りかける。

「古代と俺は士官学校の同期だが、俺の方が1つ年上でね。在学中に病気で長期に休んだため1年遅れになってあいつと同期になったんだ。その時の病気で死にかけた経験は、文字通り俺の人生観を変えた。元々俺が士官を目指したのは地球を守りたいという気持ちからで、今でもそれは変わっていない。でもその為に自分が何をすべきかということについての考え方が変わった。俺も最初は古代と同じ戦術科を志していた。地球を守るためにはガミラスのような外敵を武力で撃退することが肝要だと思っていたからだ。無論それも必要だ。だが、それだけでは地球を守ることは出来ない。戦いとはどんな立派な理由があろうとも暴力と破壊だから、それにより正義を為すためには、生き残って新しいものを作り出していかなくてはならないんだ。戦いの中で生き残るとか何かを作り出すなんて、矛盾してるようだが、でも実はいちばん大切なことだと今の俺は思ってる。補給とか烹炊を担当する主計科というのは、まさにそれをする為の部署だ。だから俺はこの仕事に誇りをもっている」

トレーニングを終えた古代に冷えたレモネードを差し出す平田。そこに通い合う二人の友情と、主計課の職務を誇りを以って遂行する平田の姿に土門は感銘を受ける。

 

そんなとき、地球本部の東堂長官より通信が入る。デスラーからの救援要請を受けてヤマトのイスカンダル派遣を命ずる東堂長官。目下バラン宙域に位置するヤマトしか、間に合う艦はないとのこと。

訓練生を抱えている現状と封印されている波動砲にイスカンダル行きを逡巡する古代。真田による後押しと、桜井、揚羽ら訓練生の決意表明により、古代はイスカンダル救援を決める。

 

●ディンギル

アンドロメダ銀河の暗黒星団にあるアンファ恒星系第二惑星ディンギルは、滅亡の危機に瀕していた。突如接近して来た回遊水惑星アクエリアスにより、惑星全土が水没したためであった。ディンギル星は、高度に発達した科学文明を持っているが、その科学技術を以ってしてもアクエリアスの接近とそこから発せられる大量の水柱による惑星規模の洪水を防ぎ得なかった。

ディンギル王家に伝わる秘伝書によると、水惑星アクエリアスは、古代アケーリアス文明の遺跡の一つ「恵みの箱舟」であり、「滅びの箱舟」白色彗星ガトランティスの消滅を引き金に、回遊を始めるという。その役割は、破壊の後の再建の礎となる水をもたらすことであった。ガトランティスが破壊し尽くした文明の焦土となった惑星の地表を、アクエリアスのもたらす大量の水で満たし浄化する。然るのちに「播種の箱舟」シャンブロウが新たな生命を発芽させる。このプロセスこそが、古代アケーリアス文明が全宇宙に広がっていったスクラップ&ビルドのプロセスであった。そしてその古代アケーリアス文明の直系がディンギル星の民であったが、ガトランティスの離反により、そのプロセスのコントロールは失われてしまっていた。ウルクの中枢である神殿デザリアムにコントロールシステムが残っているが、それを稼動させるためのコアが失われているのだ。そのコアこそ、イスカンダルのエネルギー中枢を司る波動ジェネレーターのキーデバイスであるオリジナル波動コアであった。

ディンギルの支配者であるグレートエンペラー・スカルダートは、それでもアクエリアスをコントロールするべく、神殿デザリアムを司る大神官ルガールに命じて、コアなしに波動ジェネレーターを作動させるが、制御出来ないエネルギービームが暴走し、ディンギル本星の地殻を破壊してしまう。それによりディンギル本星はアクエリアスによる洪水が引いても人の住めない星となってしまった。スカルダートは己れの引き起こした惨事を隠蔽するために、ルガールを殺害した上、惨事の責任を全てなすりつけた。こうしてスカルダートは、ルガールと逃げ遅れた民の半数を犠牲にし、残る半数と共に箱舟ウルクで脱出した。

オリジナル波動コアは、ヤマトの波動エンジンに使われている波動コアの原型であるが、そのまま複製は出来ない。ヤマトで使われている波動コアは謂わば簡易版であって、オリジナルに比べると制御出来るジェネレーターの規模が限られるし、セキュリティにもやや脆弱性がある(ヤマトの波動エンジンが反波動光子による干渉を受けたのもそのためだ)。デザリアムの動力システムに使われていたオリジナル波動コアは、ガトランティスに奪われ、そのガトランティスが滅びの方舟である白色彗星と共に失われた今となっては、イスカンダルのものが唯一であった。オリジナル波動コアをデザリアムの動力システムに接続すれば、水惑星アクエリアスを自在にコントロールすることが出来るようになり、今度はそのアクエリアスを用いて他の星を征服することも可能になる。そうして、ディンギルの民が移住するための新天地を得るのだ。

スカルダートは、オリジナル波動コアを求めてメルダーズ将軍のゴルバを大マゼラン銀河のサレザー太陽系に向かわせたのであった。

メルダーズ配下の要塞ゴルバ駐留艦隊司令ザール提督は、大神官ルガールの子であったが、彼は父がスカルダートによって汚名を着せられ謀殺されたことはむろん知らされていなかった。むしろディンギル星を死の星にした罪人の子として、今回の任務を成功させ、多少なりとも汚名返上を図りたいと思っていた。

 

●自律型浮遊要塞ゴルバ

ゴルバは、メルダーズ将軍率いるディンギル星軍の尖兵を務める自律型浮遊要塞である。その名の通り要塞として、内部に戦艦、駆逐艦、巡洋艦から成る艦隊を納めているほか、自律型として、戦場を自由に移動でき、機動性の高い艦隊運用が可能である。また要塞としての防御力に優れ、ガミラスや地球艦隊の主砲は、エネルギー弾も実体弾も通用しない。要塞自体の火力としては、大口径の主砲を持ち、その威力は一個艦隊を瞬時に殲滅することが出来る。ただし火線の自由度は低く、要塞自体の向きに限定されるので、攻撃用としての使い勝手は良くない。あくまでも防御用である。

メルダーズ将軍は、ゴルバからデーダー大佐率いる海兵隊をイスカンダルのダイヤモンド大陸に上陸させ、女王スターシャの居城であるクリスタルパレスを攻略した。パレスの防衛に当たるヒューマノイド兵を蹴散らし、スターシャに対してオリジナル波動コアを渡すよう通告したところに、バーガー司令麾下のザルツ人部隊が駆けつけ、3年前からイスカンダルでスターシャの護衛に就いていたメルダ・ディッツと共にデーダーらのディンギル海兵隊を退ける。怒ったメルダーズは、ゴルバの副砲を地上目掛けて直接掃射し、ザルツ人部隊を虐殺していった。メルダも銃撃を受けて重傷を負う。

デスラーは、地球からの救援としてヤマトがイスカンダルに向かったことを知らされ、ヤマトが到着するまでの時間を稼ぐべく、バーガー司令に命じて残存艦艇を集結させ、ゴルバに総攻撃をかける。だが、ゴルバの防御は厚く、一隻また一隻と艦艇が打ち減らされていく。バーガーの指揮するデスラーの乗艦が最後の一隻になり、あわや撃沈寸前となったとき、ヤマトがワープアウトする。

 

●イスカンダル

スターシャ・イスカンダルは、悲嘆に暮れていた。かつての過ちから武力を捨て争いから離れて、自らの星の文明が衰退し民が滅ぶ運命すら受け入れたはずなのに、今自分が直面している事態は、一体如何なる地獄なのか。イスカンダルはとうに星としての寿命が尽き、イスカンダルの民もスターシャとユリーシャの王家最後の姉妹が残されているだけだった….もう1人を除いて。

イスカンダルは墓標の星なのだ。惑星表面の豊かな自然は、実は1千年前にガトランティスからの攻撃によってイスカンダル全土が焦土と化し、かろうじて生き延びた王家の一族がコスモリバースによって回復させたものである。残された王家の人間は墓守としてのみ存続しているのだ。イスカンダルの民が滅びの運命を受け入れたのは、波動エネルギーを武力に用いて宇宙全体に覇権を唱えたことへのしっぺ返しのようにガトランティスの攻撃による惑星全土の焦土化という現実に直面し、武力放棄による不戦の決意と平和を希求するための援助活動に徹し、結果としてイスカンダル星としての文明が衰退し、民が滅亡に向かっても止む無しとしたことであった。それが覇権国家として多くの星々を隷属させていたことへの贖罪でもあると。

(その私たちが、今また戦乱の源になろうとしている…)

思えば8年前に、ガミラスの攻撃によって滅亡に瀕した地球人に救済の手を差し伸べ、波動エンジンの設計図とキーデバイスの波動コアを与えると、地球人はそのテクノロジーを用いて波動砲と呼ばれる波動エネルギーを兵器に転用したものを作り出してしまった。それを知ったときスターシャは、王家の末裔として自分は恐ろしい過ちを犯してしまったのではないかという疑念に捕らわれたものだった。その後、ユリーシャからの報告と、ガミラスのヒス副総統(当時)の証言、そして何よりヤマト艦長・沖田なる人物による不犯の誓約とによって、地球人類への救済を改めて決意し、コスモリバース装置を供出したのであったが、その後地球人は、沖田による誓約を破り、コスモリバースの負の遺産である時間断層を悪用して波動砲艦隊なぞという更なる罪悪を産み出し、ガトランティスとの殲滅戦に突入してしまった。スターシャは、今度こそ地球人を信用に値しない種族と判断せざるを得なかった。

(しかし、古代守が…)

スターシャが、ガミラスの捕虜となりその輸送船の難破によって負傷した地球人の青年を助けたのは全くの偶然であった。その青年、古代守の故郷地球に対する深い思いと、その救済を願って自らの身を顧みることなく僚友を助けるために自己犠牲をも厭わなかった気高い精神は、スターシャの心を激しく揺さぶった。古代守の一途な思いに触れるたびに、スターシャは逃れようもなくその青年に惹かれていく自分に気づいた。王家の末裔として自らを律し、誰にも心の奥底をさらけ出したことのなかったスターシャは、初めて自分が抱いた感情に激しく戸惑った。それはあるいは所謂ナイチンゲール症候群から発した恋心だったのかもしれない。しかしこの墓標の星に独りぼっち(妹たちはいたが、女王としての重い責務を背負っているのは彼女だけであった)の、その孤独な精神に入り込んでくる古代守の姿にスターシャは抗い切れなかった。遠く離れた地球と残してきた恋人の薫を想い、ひとり涙を堪える守に、スターシャは自分の気持ちを伝えずにはいられなかった。そんなスターシャを守は受け入れ、二人は結ばれた。しかし遭難時に負った深い怪我は守の身体を蝕み、ついには命が尽きてしまう。そして…

 

スターシャは決意した。ディンギル人がオリジナル波動コアを欲するならば渡そうと。ただし、そのための条件を付ける。

オリジナル波動コアを接続してアクエリアスをコントロールし水没させる先は、天の川銀河オリオン腕太陽系第三惑星地球に限定すること。それがイスカンダルの信頼を裏切った地球人に対する罰だ。

しかし、地球人にも最後のチャンスを与えよう。そう、最後の希望を「彼女たち」に託して…。

 

●ヤマト対ゴルバ

古代艦長は、ゴルバに対してヤマトの通常兵器による攻撃が全く通用しないことを知り、愕然とした。残された手段は、波動砲しかない。しかし、今度こそ古代は、沖田の残した誓約を守りたかった。ましてや、目の前にはイスカンダルのスターシャが居る。沖田の誓約した当の相手の前で、二度と波動砲なぞ使えるものでは無かった。

「何故、波動砲を使わないのですか?」

古代の思いを知らない若い土門たち訓練生が迫る。

「古代、波動砲を使え!」

波動砲と同じ原理の兵器であるデスラー砲を装備していた坐乗艦デウスーラを今は失っているデスラーが促す。

「嫌だ!俺はもう二度と波動砲は使わない!!」

攻撃手段の無いヤマトの隙を突いて、ゴルバが砲撃して来る。波動防壁の防御力が次第に削がれていく。南部戦術長は、密かに独断で北野砲雷長に命じ、主砲に波動カートリッジ弾を装填させた。

遂に波動防壁が破られ、砲撃がヤマトを直撃した。被害を受けるクルー。被弾した通路に居た平田主計長が土門を庇い、閉まる隔壁の外へ消えて行った、最期の言葉を残して。

「いいか土門、憎しみはいつかお前自身を殺す。そのことだけは忘れるな」

泣き叫ぶ土門。

そんなヤマトの窮状を見かねて、コスモタイガー隊の篠原が、ゴルバに特攻をかけた。

「3年前、横からキーマンってヤツにアンタの心持ってかれて、オレ結構凹んでたんだよね。キーマンが死んでも、アンタの心掴めなかったオレの出来る精一杯がこれ。おっと、絶望して身投げするワケじゃないぜ。死中に活路を見出す。沖田戦法のオレなりの実践てやつ。死ぬなよ、あきら」

「篠原!!」

山本隊長の叫びに、微笑みながら敬礼した篠原の機体がゴルバの砲塔の1つに激突し、小さな穴が穿たれた。

すかさず、そこを目掛けて波動カートリッジ弾を撃ち込む南部。大きな爆発が起こり、ゴルバ全体に誘爆が広がって行く。メルダーズ将軍諸共四散するゴルバ。

色めき立つ古代。

「南部、お前勝手なことを!」

「艦長!篠原の死を無駄にしろと言うのですか?」

「言い争ってる場合じゃないぞ。あれを見ろ」

島の言葉にメインパネルをみる一同の前に、息吐く暇もなく現れる敵ザール艦隊。

ハイパー放射ミサイルがヤマトとデスラーを襲う。初弾は何とか迎撃し、回避することが出来た。しかし次の攻撃を躱すことは困難な事態に、ヤマトの前へ出て盾になるデスラーの乗艦。

「何をするんだ、デスラー!」

「古代、スターシャを頼む」

「しかし、デスラー。貴方はどうなるのだ」

「私は、こよなくスターシャを愛しているのだ。それに気付かせてくれたのはお前たち地球人だ、古代」

デスラーの戦闘空母に向けて、ザール艦隊の砲門が開かれようとした、そのときー

「やめて!」

スターシャの叫びが割って入った。

「オリジナル波動コアを渡します。ただし、今から地球とガミラスの艦への攻撃は一切無用です。ディンギルの方はクリスタルパレスにいらしてください」

攻撃を停止するザール艦隊。ザール司令自ら数名の随行員と共にクリスタルパレスに降り立った。スターシャは、ザール司令と対面し、オリジナル波動コアを渡すに当たっての条件を伝えた。ザールは、グレートエンペラーがその条件をのむかどうかは分からないが、自分がそれを伝えることは約束した。スターシャは、それでよしとした。オリジナル波動コアを収容すると、約束通りザール艦隊はそのまま攻撃せずに撤収した。

クリスタルパレスに駆け付ける古代らとデスラー。しかし彼らの前に現われたのは、スターシャではなく何と森雪だった。

「雪⁈何故ここに?」

衝撃を受ける古代。

 

●森雪

ガトランティス戦役の渦中、頭部を負傷した雪は、過去の記憶を取り戻した。しかしそれと引き換えに、記憶喪失になって以降の直近5年間の記憶を無くしてしまう…古代進の存在を含めて。その後テレサの導きにより、縁の世界樹の下で、全ての記憶を取り戻し、古代と共に元の世界に帰還するが、そのときの雪は、もう古代と婚約した時点の雪とは、全く同じ存在という訳ではなかった。何故なら、記憶喪失前の雪には、ある重大な秘密があり、それは愛する古代にも決して打ち明けることが出来ないことだったからである。

その秘密とは、雪が、波動エンジンの設計データを携えて地球を訪れていたユリーシャ・イスカンダルと共に巻き込まれた交通事故にあった。正確には、巻き込まれたのではなく、雪の操縦ミスが引き起こした事故であり、それによって人事不省に陥ったユリーシャの存在と共に、地球連邦政府によって秘匿され、記録も改竄されたのであった。ガミラスの攻撃により滅亡の淵に追いやられていた地球に対して差し伸べられたイスカンダルからの救いの手。その特使であるユリーシャを過失とは言え人事不省に陥らせてしまったことは、地球連邦政府にとって、あってはならないことだった。その為、ユリーシャは事故後直ぐにイスカンダルへ帰還したとされたが、それは情報操作で、実際にはヤマトの自動航法装置と偽った生命維持カプセルに収容された。ヤマトのイスカンダルへの航海の途上で蘇生すればいいが、その保証はなく、さりとてスターシャに真実を告げる勇気を持たなかった地球連邦政府は、ユリーシャが蘇生しなかったときには、その身代わりを務めさせるべく、事故を起こした雪に因果を含めて、雪の顔をユリーシャそっくりに整形した。元々ふたりは偶然にもよく似ていたので、整形箇所はごく一部で済んだ。更に都合のいいことに、雪には係累が無く、後見人は土方宙将であったので、経歴の抹消や記録の改竄は、ほとんど問題なく行われた。自らが引き起こした事故でユリーシャを傷つけたことに、深い自責の念を抱いていた雪は、こうした非人道的とも言える政府の措置を甘んじて受け入れると共に、自ら申し出て、これまでの自分の記憶を消し、ユリーシャの代役を務める為の新しい人格になることを選んだ。この一連の措置は、当然最高機密であり、雪はそうした重大な秘密を抱えたまま生きることの辛さに耐えかねて、記憶自体封印することを選んだのかもしれなかった。

しかし今や、その重大な秘密の記憶をも取り戻してしまった雪は、その重さに煩悶した。愛する古代にも打ち明けられず、親代わりだった土方ももう居ない。こんな自分のままで、古代の妻になる訳には行かない。雪は、ある日古代に一方的に婚約の解消を告げ、別れの言葉を残して、忽然と姿を消した。

そんな雪の身を寄せた先が、イスカンダルのスターシャの許であった。雪はまずユリーシャと連絡をとり、全てを打ち明けて、謝罪した。そして、せめてもの罪滅ぼしに、イスカンダルに行ってスターシャに謝罪し出来れば側で仕えたいと申し出た。ユリーシャは、雪とスターシャの間を取り持ってくれ、動けない自分の代わりにメルダを雪の迎えに行かせた。メルダは父親のディッツ提督に頼んで、フラーケンの次元潜航艦で雪を迎えに行く。雪はその艦内で今やザルツ人ヤーブ・スケルジとなった藪と再会し、驚く。

イスカンダルに着いた雪は、まずスターシャに謝罪した。スターシャは、雪の告白に驚いたが、結果としてユリーシャは蘇生し、イスカンダルに帰還することが出来たので、雪の謝罪を受け入れた。そして行き場の無い雪に、イスカンダルに滞在することを許した。雪とスターシャは打ち解け、本当の姉妹のような親しさを育んでいった。

 

そして、ディンギルが襲来した。

 

「雪⁈何故ここに?」

3年前、ガトランティスとの死闘から2人で生還し、その過程で古代のことを思い出した雪と、今度こそ結ばれると信じていたのに、突然告げられた別れ。その理由も言わず、行き先も明かさぬまま姿を消してしまった恋人が、あろうことかイスカンダルで姿を現した。あまりの衝撃にしばし呆然自失する古代であった。言葉を失いただ立ち竦む古代に、雪は言った。

「スターシャ・イスカンダルの意思を伝えます。ガミラス、地球どちらの艦も至急イスカンダルから離れてください。オリジナル波動コアを失ったクリスタルパレスの波動ジェネレーターは機能を全て停止し、それにより制御されていたダイヤモンド大陸の地殻は変動が起きて、間も無く海に沈むでしょう」

「では、ヤマトに避難を」

「スターシャは、この星を離れることは出来ないわ」

「しかし」

「古代君。私をヤマトで地球に連れて行って。今さらお願いできる筋ではないけれど。ただ私にはどうしても地球に行かなければならない理由があるの」

「私が直接スターシャと話そう」

詰め寄るデスラーに対して、静かにしかしきっぱりと首を振る雪。

「いいえ、デスラー大統領。あなたにはスターシャからの伝言があります。『アベルト、ユリーシャをお願い』とのことです」

雪の言葉に、二の句を継げない古代とデスラー。

デスラーは、負傷したメルダを連れてバーガー艦隊旗艦に戻り、ガミラス星への帰路に就いた。

古代は、人が入れる程の大きさのカプセルを携えた雪と共に、ヤマトに戻った。カプセルの中身を尋ねたが、雪は何も答えなかった。

デスラーの艦とヤマトがイスカンダルを離れると、間も無く雪の言った通りにダイヤモンド大陸に地殻変動が起こり、クリスタルパレス諸共海に沈んでいった。

沈みゆく宮殿の中でスターシャは、雪の乗ったヤマトを見上げて呟いた。

「雪、あの子をお願い。最後の希望を」

 

●超巨大都市要塞ウルク

ウルクは、地球で言うと日本の淡路島ほどの大きさのある超巨大な都市要塞である。その中枢は神殿でもあるデザリアムである。グレートエンペラー・スカルダートは、その神殿の玉座にあった。

「大義であった、ザール司令」

スカルダートの前にひざまづくザール。

「オリジナル波動コアを得たこのデザリアムは、今や水惑星アクエリアスをコントロールする力を取り戻した。惜しむらくは、我らが母星ディンギルの水没する前にそれが叶えば良かったが。まあ、良い。これからいくらでもアクエリアスの力を使って新たな母星を得ることが出来る」

「そのことにつき、イスカンダルのスターシャ女王から陛下への言伝てをお預かりして参りました」

「ほう、申せ」

ザールは、スターシャから告げられた条件の内容をそのまま伝えた。

「地球か。面白い、我らが新たな母星の候補に入れてやっても良い。だが、それを唯一とするものではないぞ」

「陛下、恐れながら申し上げますが、スターシャ女王の遺言でもありますれば、お聞き届け下さいますよう」

「差し出がましいぞ、ザール。身の程を弁えよ。卿の今回の功績に免じて、今のは聞かなかったことにしてやる。下がれ」

ウルクは、アクエリアスと共に、天の川銀河に向けてワープを開始した。大型波動コアを得たデザリアムの制御システムは、今や全ての機能を取り戻し、その中には古代アケーリアス文明の残した銀河間を繋ぐ亜空間ジャンプゲートの位置座標やコントロールシステムも含まれており、通常であればワープを重ねても数年かかる天の川銀河までの距離を数カ月で行くことが可能になった。

 

●エピローグ

デスラーの要請により、イスカンダルとスターシャの救援に赴いた筈が、どちらも救い得ず、あまつさえ新たな脅威となりそうなディンギルの出現を目の当たりにして、衝撃を受けた古代らヤマトクルーたち。

更には思い掛けない森雪との再会もあり、古代の心は千々に乱れた。

雪の携行してきたカプセルの中には何が隠されているのか?

新たな敵ディンギルの動向はいかに?

また、地球とガミラスの運命は?

 

to be continued…

 

 

 



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