外伝マギアレコード RTA ワルプルギス討伐チャート情報提供者ルート   作:最近ハマってしまった人

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めちゃくちゃ長い茹で卵を作ったので初投稿です











Part28 あの日起きたガバの名前を

 

 

 

 

 

 

 

 

神浜でうわさを調べていくRTAはーじまーるよー

 

 

前回はマギウスの翼がガバって情報ポロポロ回でしたね。モブ魔法少女にすら抜かれてしまう天音姉妹ェ……。

あとかりんちゃんが物凄い強くなってました。これその内かりんちゃんさん様とお呼びする日が来るな?

 

 

 

「それで電波少女っていうのが中央区で流行ってるらしいんですよ。ほらあの電波塔のとこ。」

 

今回はその続きからです。

いろはちゃんの引っ越しはもう済んでいると聞いているので、これからは第5章『ひとりぼっちの最果て』の攻略していきます。

ちなみにさっきから喋っているのは遊佐葉月です。

 

「聞いたのは電波少女がひとりぼっちの最果てにいるんじゃないかって話ですね。そういえば詩織さんはコレ好きですか?そっか〜。」

 

第5章も前回の第4章と同様に、これまたランダム要素が増えていきます。

主なリセポイントはやはり、他の走者も頭を悩ませる通り、みかづき荘と原作主人公達の邂逅です。

見滝原勢も割とガバな事が多いですからね。この情報提供者チャート本走でも、さやかちゃんがギター趣味になったりしてますし。

 

特に特筆すべきなのはほむほむのループ回数でしょう。

その場合、本走のラスボスであるワルプルギスの夜が回数に応じて、比例するように強化されていきます。

 

「あとマギウスの翼とかがどうたらこうたら…はよく聞きます。でもあそこ秘密組織?なのに情報漏洩がすごいって噂ですよ。」

 

ただ、鹿目まどかと暁美ほむらと交友関係ではないので、(現在詩織ちゃんは出せる手が)ないです。

一応ラジコン義手くんに命令を出して、原作勢の来訪と動向を常に確認できるようにしています。

しかしコレは神浜限定で出せる命令です。詩織ちゃんの使い魔の行動範囲が市内のみなんですよね。それでも十分広いですけど。

 

「本当は詩織さんも誘いたいんですが…お忙しそうだからまた今度にしますね。」

 

お、そろそろ葉月とのお買い物が終了するようですね。家に遊びに行くのはこのはさんの視線が解決してからにします。

実は自宅の食料を買いに来てたら丁度買い物中の葉月とスーパーでバッタリ出逢いまして…ついでに羊羹を買ってもらったりしましたよ。

 

それでそのまま一緒に行動していたんですが、中央区の『電波少女』の噂とネットの『ひとりぼっちの最果て』が関係あるんじゃないかって話をしていました。

 

 

なんかやけに情報詳しくなぁい?

いや教えてくれるのは走者として大変ありがたいんですけどね。

 

 

そういやこの葉月の様子を見て、まさかアザレア組がマギウスの翼に加入してるんじゃないか…と初見の視聴者兄貴姉貴は思うかもしれません。

しかしそれは信頼度をある程度稼いだ状態での葉月との会話で判断することができます。ご安心ください。

ヘイ!葉月さん?マギウスの翼がどーたらこーたらだけど、アザレア組は今後どうするおつもりで?

 

「ん〜、このはとあやめの事もあるし…アタシはこの件に首を突っ込むのはやめときます。知り合いにも家族は大事にしろって言われてますから。」

 

とまあ、こんな感じに言われます。

葉月がちゃんとアザレア組の窓口として機能している場合、彼女達が第1部に自主的に関わることは滅多にありません。

一応ウワサとかいうヤツ倒すの手伝ってほしいと頼めば、一時的に力を貸してくれるっちゃくれます。

ただあくまでも一時的な協力者のため、ストーリーに進んで参加するような行動はしないと言っても過言ではないです。

葉月はちゃんと情報を吟味してから行動方針を決定してくれるので、走者的にはホント助かる助かる。

 

 

 

しかしアザレア組の信頼度が低かったり、このはの方が先にマギウスの翼を知ったりした場合、イベント終了後にも関わらず、実質BADENDに入る事が多々あります(4敗)

世にも珍しいフェリシアの「あやめーーーーーっ!」からの『あち死』が発生した事だってあります。

その他にもこのはと葉月の意見の対立によるアザレア家庭崩壊があったりしました。

特にこのはさんは2人を巻き込んでしまったという罪悪感が凄いからね仕方ないね。

 

「……でも、何かあればいつでも言ってくださいね。詩織さんが困ってたら何でも聞きますから!」

 

ん?今何でもって………。

というのは置いておき、何故かは分かりませんが、たった今走者の背中に冷や汗が走りました。

なんというか、試走の時と違うというか…葉月さんの態度に違和感を感じるような……。

ともかく今回のアザレア組はマギウスの翼にあまり関わらない方針を取るようです。うん、いつも通りだな!

 

 

それじゃあ買い物が終わったので、みかづき荘に預けてた帆奈ちゃんを回収してから帰る事にしましょう。

もちろん別れ際で葉月に飴ちゃんをあげるのを忘れないようにします。マギウスの翼に気をつけて帰れよ!

 

 

 

 

まだ話していませんでしたが、聞き込みなどによって他人から得られる情報は、周回ごとに設定されるものが違う程に種類が豊富です。

うわさファイルを見ても『郵便鴉の噂』やら『商人の噂』やら…前者は何故か説明文が未確認じゃなくて???だったり、後者は紛れもなく詩織ちゃんのことだったり、そういう後々ガバりそうなのも入ってたりします。

プレイヤーキャラが噂の対象になっていると、色々なイベントのフラグが立ち始めます。噂の規模が大きければ、その分イベントの発生率は高いです。

今となってはもう懐かしいですが、凛々しい組長が初対面で勧誘してきたのも噂の影響によるものです。ステータスの強さとかもありますけど。

 

しかし第1部および修羅の国神浜において、噂が引き起こすイベントは良いことばかりではありません。

全部マギウスってヤツが悪いんだよ。主に噂関連では柊ねむっていうウワサ製造ガールがね……。

お察しの視聴者兄貴姉貴もいらっしゃると思いますが、噂がそれなりの規模に達すると稀にそれを元にしたウワサが生まれます。

実はソシャゲ版に追加して、オリジナルのウワサも増やされており、更にその中でもデータ固定とランダム生成が存在しています。

 

 

つまり自分の噂は広まりすぎたら、今度はその噂を元にしたウワサが誕生します。他のウワサと混ざったタイプとかも出現しますね。

そしておそらくこのゲームの仕様っぽいんですが、噂の元となった人物とウワサは遭遇しやすいです。

例えばキリサキさんとスズネ=サンです。

プレイヤーが先にキリサキさんを倒したりしなければ、大抵の鈴音はキリサキさんと出会います。

だから詩織ちゃんも気をつけないといけません。かなり商人の噂が神浜中の魔法少女達に広まってますからね。

 

余談ですが鈴音だけキリサキさんに取り込まれた場合、プレイヤーは助けに行かず放っておいても大丈夫です。

なんかあっちの方のラスボスが勝手に迎えに来て、ホオズキ市に回収していってくれるんですよ。

ぶっちゃけまあ契約の動機とか内容が内容なんで………多分あれで終わったら彼女的に物足りないんでしょう。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで着きました。

それじゃあ早速ピンポン鳴らしてドアを開けてもらいましょう。

 

「あ?なんだ詩織じゃん。帆奈ー!詩織が来たぞー!」

「いやそんなに大声で呼ばなくても分かるって。」

 

おっす(気さくな挨拶)

みかづき荘は住人が2人増えて前より大分賑やかになりましたね。これからもう1人透明座敷わらしが増えはしますが。

そしてなんだかんだで気がついたら、詩織ちゃんも鶴乃ちゃんに次いでみかづき荘常連ですよ。しかも一時期は普通に泊まったりしてます。

でもやっぱ…賑やかさが違うんやなって。

 

「そういえばさっき銀髪のヤツ見なかった?フェリシアと同じくらいの年で、頭に黒髪混じってるヤツ。」

 

いえ、見てませんね……というかそんな感じの人、ネームドキャラに存在してましたっけ?ただのモブでしょうか。

けど本当にみかづき荘来るとき、一度も見かけてないですよ。多分その子とは絶妙な入れ違いになったのだと思われます。

名前とかって…分からないですか?

 

「……名前、名前…。」

「さっきのヤツは『マヒロ』だぞ!もしかして帆奈は記憶力が悪いのか?」

「流石に私でもフェリシアに煽られるのは心外なんだけど?」

 

へぇ〜『マヒロ』なんですねぇ…その子。

あれ?前に帆奈ちゃん探してたりしませんでしたっけ?なんかウォールナッツに食べに行った時に聞いたような聞いてないような……。

確かまなかちゃんに聞いても分からなかった名前ですよね。結局見つかって解決したのでしょうか?

 

「……ってか、そうだ。アイツも同じ名前じゃん。そんなに気づかな………いや待って、アイツ魔法掛けてった!」

 

えぇ……。

そのマヒロちゃんとやらは元シナリオボスの帆奈ちゃん相手に、名前の同一性を気づかせないようにできる魔法を持ってたって事ですよね?

それってぇ……結構不味くなぁい?

 

あーほら見てくださいよ帆奈ちゃんの様子を。完全に手玉に取られてご機嫌斜めジェットコースターです。

そら(自分と同じような魔法で強制的に忘れてたなら)そう(気づかなかった事も含めて腹が立ってくる)よ。

結構帆奈ちゃんは負けず嫌いなところとかありますしね。

 

で、そのマヒロちゃん?はどんな人物だったんですか?話し振りから推測するにさっきまでみかづき荘に来てたみたいですが。

 

「どう…って言われても、優しい子だと思います。迷ったときに道案内だってしてくれました。」

 

はぇ〜そんな子がいたんすねぇ〜。

特に害を及ぼした訳じゃないなら、RTA的な優先度は低いですね。もしかしたら魔法も照れ隠しの一つだったのかもしれません。

不信感は積もりに積もってますが、まあこれ以上の有益な情報は無さそうです。

 

「弓有さんは何かウワサについて進展はあったかしら?」

 

そこまで多くはないですがありますねぇ!ありますあります。

中央区の電波塔の所で流行ってるやつあるらしいっすよ?走者視点で言えるのはそれだけですけどね。

というのも原作主人公と出会ってくれないとフラグの関係上、今後の展開が複雑で厄介なことになってしまいます。

だからフラグを建ててから出直してね♡

 

 

 

「そう……弓有さんは、『鴉弓真広』という人について何か知って…!」

「バッカ詩織にそれ言ったら…!」

 

うん?なんかまたガバですか。

鴉弓真広ォ?知らない子ですね。いやマジで知らない子ですね……さっきから言ってた『マヒロ』って人の正式なフルネームかなにか?

前から思ってたんですけど、この本走で知らない人出てくるの多すぎィ!『有鷺詩織』然り『鴉弓真広』然り、こんなんでRTAが務まる訳ないだろ!いい加減にしろ!

 

「……探していた子がいたから聞いてみただけなのだけれど…?」

「そうだった、コイツは知らないんだった!ああもう!ホントにサイアク……。」

 

そして帆奈ちゃんの反応を見るに、どうやら詩織ちゃんに知られたくなかったようです。

順当に考えて過去ガバ関連でしょう、謎が謎を呼びすぎて何が何だか分からなくなってきました。

せめて走者に経歴ガバの詳細を説明してくれませんか?それだけでいくらでもオリチャーによる対策のしようがあるんですけどね?

 

 

 

うーん、色々と考えすぎてめまいがしてきましたよ。詩織ちゃんが。

あーあ、処理しきれなくなって頭を抱えてしまいました。経歴を把握していない走者のせいです。あーあ。

そもそも大体のプレイキャラに起きうる経歴ガバなんて、最初の信憑性がなさ過ぎて事前に防げる可能性がほぼゼロなんだよなぁ……。

 

「ししょー!来たよー!…ってわぁ!詩織!?大丈夫?」

 

大丈夫かどうかで言えば大丈夫じゃないですけど、まあ多分大丈夫なんじゃないっすかね?(すっとぼけ)

まるで正気度チェックに失敗して一時的発狂を引いてしまった人みたいになってますよ。

これ口寄せ神社の時よりも詩織ちゃんの地雷をぶち抜いてません?気づいてはいけない事に気付いてしまった系かな?

ていうか本当に有鷺詩織も鴉弓真広も一体誰なんだ……。

 

 

とりあえず詩織ちゃんが体調不良を起こしたみたいなんで、このままみかづき荘にお邪魔してましょうか。買ったやつは…大した量じゃないので冷蔵庫に失礼させてもらいます。

そういうわけで今回はここまでです。

ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は別にいつもと変わらない朝だった。

午前中は詩織と同じところでのバイトだったし、昼は家に帰って詩織とご飯を食べた。レンジで温めた普通のコンビニ弁当。

 

珍しくアイツもご飯を一緒に食べていたけれど、冷蔵庫の中身を見てその理由はすぐに分かった。

何で全部すっからかんになるまで次を買いにいかないのか、あたしにはさっぱり一切分からない。

あらかじめ買っておいた方がいざという時に困らないのに、詩織の習慣になってしまっているのかもしれない。

 

 

 

ともかくとして、その買い出しにあたしも付いていくのかと思ったら、七海やちよのみかづき荘に預けられる事になった。

出かける前にあたしに食べたいものがないか聞いてきたから、アイツの性格からして絶対に買ってくると思う。

そんなこと言っても現在進行形でこのみかづき荘にお邪魔しているのは変わらない。

コイツらのウワサの調査に巻き込まれているのは少し不機嫌になる。有り体に言ってしまえばやる事がなくて退屈だったからだ。

 

「アンタらいつもこんな事してんの?」

「ウワサっていうのは人に害を及ぼす危険性があるの。前に志伸さんから聞いたけど、弓有さんだって襲われたことあるそうじゃない?だからよ。」

「ふーん。」

 

みかん味の飴を一口頬張る。オレンジとみかんは一見似てるけど、みかんはオレンジに比べて味が薄い…と思う。

 

コイツらが探っているウワサっていうのは、前にあたしらが調べた『キリサキさん』とかと同じ部類だって。

話を聞くに何個か種類があるっぽい。この前押し込まれた時に話してたのもウワサ関係のやつだったらしい。

いくらあたしが監視中で変身禁止だとはいえ、そんくらいなら詩織も別に話したって良くない?

まあいっか、どうせアイツの話し方だと全部知るのに時間かかりそうだし。

 

 

 

 

結局コイツらの収穫はなかった。あったとしてもほぼゼロに等しい。

詩織みたいにカラスでも使ったり、あたしみたいに魔法でも使ったりすれば、こんなのチャチャっと終わんのにねぇ?

 

そんで昔自分で噂を流してたあたしが言うのもなんだけど、このウワサってヤツが何のためにあるのかいまいち理解してない。

あたしの時は昏倒事件の黒幕を当ててもらうため。

でもこっちはどうなんだろ。意味があるかどうかはまあ、興味ないし関係ないから別にいいか。

 

 

 

 

 

 

…………前から弓有詩織だとか御園かりんだとかによく特撮や漫画を勧められていたが、とうとうこの日その3人目が現れた。

 

「帆奈も読むと良いぞ!デカゴンボール!」

 

いつのまにかみかづき荘に住み着いていた、傭兵とやらをやっているらしい深月フェリシア。どうやら今度の作品はデカゴンボールという少年漫画?らしい。

いや別に家の暇つぶし娯楽が少なかったし、本を読むか読まないかだったらとりあえず一巻くらいは試しに読んでみるけどさ。

 

そりゃあ勧めてきた人が人だから、こうした低年齢の子供向けが多いけれど、あたしとしてはもう少しダークな感じのを見たい。

 

 

その点で言えば詩織の持ってたヤツの中にあった、深夜帯の放送だった特撮が面白かったと思う。

まさか眞黒(マグロ)の体が腐敗していって、その正体がオリジナルから作られたクローンだったなんてねぇ?その上スシライザー佐紋(サーモン)とスシライザー眞黒(マグロ)が敵対関係になるとは思わなかった。

 

日曜日の朝に放送しなくて正解なんじゃない?あれは絶対に深夜枠でしょ。

 

 

 

 

 

 

と、話が逸れた。

簡単に言うとみかづき荘で勧められた漫画をあたしは読んでいたわけだ。

 

 

そんな時に玄関先のチャイムを鳴らす音。

 

 

環いろはが訪問客の対応に出た…けど、少しもしないうちにソッチの方から聞こえる驚きの声が耳に届いた。

どうやら来客は荷物の配達員で、その配達員と環いろはが知り合いだったらしい。

そう言うことは偶によくある?って言うし、実際その銀髪の本人も気にするような事じゃないと言っていた。

 

「気にしなくて大丈夫ですよ!それじゃ!仕事中なので失礼します。」

 

なんとなく引っかかったのは配達員の言葉。

ソイツがみかづき荘から出ていって、そのすぐ後に詩織が買い物から帰ってきた。そこまで多くない荷物はコンビニ帰りとなんら変わりない。

そこであたしは詩織に聞いてみる事にしたんだ。さっきのヤツを見なかったか、知ってはいないかって。

 

「……名前、は…?」

 

その質問に答えようとして、喉の奥まで出かかっていた言葉は唐突に霧散した。

気持ちの悪い違和感が靄のように、絶えず頭の中で漂っている。さっきからずっとこのままだった。

 

 

 

 

そして詩織がした二つ目の質問で、ようやく違和感の正体に気づく。

マヒロとかいう配達員は会話中、何でもない返答に見せかけてさり気なくあたしに魔法を掛けていった。

他人に命令を下すように対象の意識を操作できる…言わば『暗示』と似た系統にあると思しき固有魔法。

 

 

そんなのに猫騙しされたのが無性に腹立たしい。

けど、同時におそらくアッチの目論見も外れた。

 

同系統にある魔法は互いに反発しあい、うまく本来の効果が発揮できないと聞いたことがある。

だから『暗示』によって阻害されて気持ちの悪い違和感だけがあたしに残ったんだ。

つまりは人に指摘されてすぐにバレてしまう程度の魔法なら、あたしの『暗示』の敵なんて務まらない。

 

「………ダメ、だよ。」

 

そこに変身禁止、現在進行形で絶賛監視中というハンデがなければの話だけど。

何もできないのはやっぱりむかつく。せめて一発仕返ししたい。

 

 

腹いせに詩織が買ってきたチョコ菓子を一つ取って、やけ気味に口の中に放り込む。この前食べたチョコよりもはるかに甘い。

腹立たしいアイツを忘れるには物足りないが、それでも斜めになっていた機嫌は多少良くなってきた。

 

 

 

 

 

だけどまあそんな程度の話で終わるならまだよかった。

 

 

端的に説明するなら、七海やちよが『鴉弓真広』についての話題を弓有詩織に話した。

正確には問いかけだったけど、名前を出るとは思ってなくてあたしも油断していた。

もちろん七海やちよは2人の関係を知らないんだろうし、そもそも行方不明事件の発生自体が数年前だし、コレは油断してても悪くないでしょ。

 

 

 

『出来れば弓有には話さないでやってほしい。いくら年月が経ったとて飲み込めない事もあるのだから。』

 

それがいつだったか鴉弓真広について聞いた時、最後に話していた和泉十七夜の頼み。

 

 

 

あたしだって何も知らないヤツに瀬奈の話を言われたくない。夢は所詮夢でしかないんだから、今頃夢想しても仕方ないじゃん。

まあ知らなかったのは当然の事だと思う。話そうとしてた七海やちよを止めて、とりあえず事情を少しだけ説明した。

驚いた顔をしながらも流石と言ったところか、少しの情報でも名前を出すべきではないと理解したようだ。

 

 

 

 

さて肝心の詩織はと言うと、頭に手をやり下を向いて考え込んでいる。

いや……何か喋ってる。

よほど近くじゃないと声が分からない上に、1番近いあたしでもようやく聞き取れるくらいの独り言だった。

 

「だって、あの時…でも、何で…誰が、どこに……庇って、なのに…知らない、知らないよ……消え、てしまった…?………」

「ねぇ、聞いてんの?まだちょっとここにいる?」

「……うん。」

 

見た感じの具合は悪そうだった。いかにも顔面蒼白、ちょっと誇張しすぎたかもしれないけど、まあ総括するに気分は良くなさそう。

詩織の様子を見てる間にあのやかましい由比鶴乃もやってきていた。あっちから見ても体調が悪そうに見えるらしい。

 

 

それでも時間が経つにつれ、あたしには意味の分からない独り言を発していた詩織も、だんだんといつもの調子に戻っていった。

さっきまでの体調不良をめまいって事で貫き通そうとしてるけど、あたしから見てもそれは大分無理があるように感じる。

 

結局のところ夕食は厚意に甘えてみかづき荘で済ませたが、詩織の体調不良とかに関しては何も分からないままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、一言。

途中耳にした一言だけが何故だか無性に気になった。

 

 

 

 

「………いつまで……」

 

 

 

 

言葉の意味は今も分かっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










肉じゃがが美味しいので失踪します






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