外伝マギアレコード RTA ワルプルギス討伐チャート情報提供者ルート   作:最近ハマってしまった人

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お好み焼き食べたので初投稿です









Part31 気になる聖夜の見所さん!?

 

 

 

 

 

 

 

12月に入ってだんだんとクリスマスが近づいてきた。

 

といってもその日まであと数日とちょっとしか残されてなくて、水徳商店街もクリスマスに浮かれてイルミネーションがそこかしこに飾り付けられている。

かくいうこの相談所も例外ではなく、この前、楽しげな先生と一緒にクリスマスの飾り付けを行なった。

 

 

そして恋人同士で過ごしたいという人が多いから、ここが相談所というのもあって、悩める乙女の恋の相談が最近は特に多い。

先生は恋愛の話が好きだからか、そういう話にはすごく乗り気だ。ボクも一応好きだけど、ここまで来ると流石に胃もたれしそうなくらい。

ただでさえ重症の恋煩い患者が身近に存在するんだし……遠慮してもバチは当たらないと思う。

 

 

 

もはやここの常連客と化しているボク達のリーダー、常盤ななかはやっぱり言うまでもなく。

今日も今日とて、相談をしに来ていた。

 

 

 

見るからに気分が落ち込んでいるななかは…あー、多分だけど件の相手を誘って断られてしまったんじゃないかな?

 

「この前の作戦はどうだった…!?しおりんの反応は!?」

「いえ、その…アルバイトが忙しいと……。」

「あちゃー、タイミングが悪かったかぁ。」

 

案の定、予想通り的中しちゃったよ。

イベント時はバイト先のシフトが詰め込みになるから、誰かと一緒に過ごせるような時間がほとんど無いらしい。

でも詩織さんに断られたという事よりも、とても申し訳なさそうな表情をさせてしまった事の方が、ななか的には心に来たそうだ。

 

「とりあえず、もうすぐピザ届くから食べてかない?」

「失礼ながら…お言葉に甘えて……。」

 

うん…流石にバイトとか仕方がないとはいえ、こんなにしょぼくれているのを見ると、なんだかボクまで悲しくなってきた。

でもこの問題は解決策と呼べるような策が有るわけじゃないから、ボクら相談所としても何か出来る事は無いなぁ……。

 

 

 

「……またななかが来たのカ…。」

 

 

「あ、美雨。今日は相談所に何か用事?」

「大した事じゃないヨ、少し意見を聞きに来ただけネ。」

 

そんな中、相談所に美雨が訪れた。

この時期に来るなんてまさか恋の相談とか?って思ったボクの考えは、詳しい用件を聞く前にすぐさま否定される。

美雨の呆れたため息と共に、目の前に出されたのはいくつかの空き物件のページを印刷した紙とか。

それを相談所であるここに持ってきたって事は……え、美雨もしかして引っ越すの!?

 

と少し大げさに勘違いしたけれど、どうやらそういう訳じゃないみたいだ。

前に美雨が電話していた相手、いろはちゃんのために宝崎市に派遣した人が神浜に引っ越して来るからだそう。

事件以降の経過観察も十分だろうし、いろはちゃんも神浜市に移住して、もうあっちに滞在する理由が無いって話してた。

 

 

それで今、引っ越し先について意見を貰おうと思って来たそうなんだ。

大した用じゃないってのは本当にそうらしくて、あくまで住居の印象とかを聞きに来ただけって言ってた。

 

「先に美雨の話を済ませちゃおうか。あっちは先生がなんとかしてくれるかもだし。」

「そういえばななかは……まあ予想は付いてるヨ。」

「多分だけど当たってるかな…詩織さんがバイトで忙しくてクリスマス行けないらしくて……。」

 

話題のななかは完全に意気消沈している。

あの様子だとしばらくの間は動きそうにないだろう。

 

 

でも誘い自体は失敗してても、詩織さんを普通に誘えるくらいにまで成長したのは、初期と比べればかなり良い進捗だ。

ななかにとっても『常盤ななかの恋を見守る会』にとっても、この事は新たなる第一歩に違いない。多分。

最初こそはダメダメだったけど、やっと恋愛面においていつものななかが出せるようになってきたのかもしれない。

 

 

「…すみ、ません…ピザの、宅配……。」

「…………!」

「あ、詩織さんだ。宅配のバイトですか?」

「…うん…えと、大丈夫……?」

 

 

 

 

ごめんななか、そういう気がするだけだったかも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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聖夜のひと時を過ごしていくRTAはーじまーるよー

 

 

前回は電波塔で神浜のヤベーやつに必死に抗いました。

そしてみかづき荘に座敷わらしが住み着きました。これは縁起が良くなること間違いなしです。

 

 

 

今回はその続きからやっていきます。

ところで視聴者兄貴姉貴!ゲーム内時間12月ですよ12月!12月だけの期間限定イベントといえば何か分かりますよねぇ!

 

 

ええ、皆さんお察しのクリスマスです!

 

 

ゲームのバージョンによりけりなのですが、大抵のプレイヤーは第5章〜第6章の間にとにかく多くのイベントが入ります。

ただし何らかの原因によって本編の開始を早めたプレイヤーは例外です。主に更紗帆奈関連の事件がね……。

 

まあソシャゲ版でもそうですが、理由を説明すると、チームみかづき荘(完全版)が揃っていて、やちよさんの「環さん」呼び(6章から「いろは」呼びに変化がまだ)だからです。

そのため、8月の『みかづき荘のSummerVacation』から、2月の『アラカルトバレンタイン』までの半年間はメインストーリーが進みません。

 

でも不思議な力によって皆の学年は上がりませんし、詩織ちゃんを含むギリギリ未成年の人達も成人しません。なんでやろなぁ……(すっとぼけ)

さなちゃんがみかづき荘に慣れるのと、チームみかづき荘の絆が深くなるには仕方ない期間の長さ。ソシャゲだし多少はね?

 

 

このゲーム(架空)でその間にプレイヤーが退屈しないよう、期間限定イベントがモリモリだが、これはRTAなので却下だ。

 

 

走者は引き当てませんでしたが、かりんちゃんのマジカルハロウィンシアターのように、一部の期間限定イベントは確率で発生します。

なぜ発生が確定ではなく乱数なのかは、おそらくイベントのマルチエンディングの都合上ですね。難易度ハードで下手したら神浜崩壊を迎えてしまいます。

 

といってもシアターは開催されてたそうです。まあハロウィンの日にバイトが入ってて参加できませんでしたけど。

ミナギーランドで中の人スタッフしてたからね、仕方ないね。

ちなみに着ぐるみなのでやり過ごせましたけど、普通の格好でバイトしてたら信頼度イベに捕まります。

 

 

 

それで今回のクリスマスイベントですが、二つあるうちの一つが発生いたします。

具体的に言えば、†ホーリーマミ†かクリスマスデスカリブーのどっちかが出るイベントです。

光る、鳴る、やって来る!選べる二択!DXホーリーマミ、DXホーリーアリナ!さあ、君はどっちを選ぶ?

ちなみにどっちに当たってもクリスマス期間限定で敵対しません。これに関しては普段ヤベェアリナも同様に良い子になります。

神浜のヤベーやつのオモチャにならなくて済むよ!やったね、詩織ちゃん!

 

 

そして実はこのクリスマスイベント、どちらが発生するか事前に判断する方法がございまして……。

 

「おっ、詩織じゃん!」

「あ…詩織さん、こんにちは。」

「それ美味そーだな!一ついくらなんだ?」

「えっと、ご飯の前だから控えた方が……。」

 

それはたった今やってきたフェリシアとさなちゃんです。正確にはクリスマスムードにあてられたフェリシアです。

イベント分岐の条件はたった一つ、たった一つのシンプルな答えなんですよ。

 

ズバリ、フェリシアがクリスマスを楽しむか楽しまないかです。

 

彼女が楽しむならホリナルート、楽しまないなら†ホーリーマミ†ルートです。

ぶっちゃけRTA的にはホリナの方が良いんですが、ソッチが発生しても会えるかどうか分からないので、(どっちも大差は)ないです。

 

「なー詩織、クリスマスって何が楽しいんだ?」

 

今回はどうやら……神浜聖女さんの方みたいですね。

まあ詩織ちゃんはバイト戦士ですから、クリスマスの予定は全部アルバイトに突っ込むんですけども。

 

「じゃあなー!」

「さようなら…!」

 

はーいサヨナラ!神浜のヤベーやつに会わないように気をつけて帰るんだぞ!

 

 

そういえばこの前、ななかさんにクリスマスどうですか?と誘われましたが、クリスマスにバイト入ってたので泣く泣く断ったんですよね。

生憎クリスマスというか12月はピザとかチキンとかケーキとかの配達でいっぱいいっぱいでして……。

せっかくなら相談事を打ち明けてくれない組長と一緒にクリスマス過ごしても良かったですね。好感度まだ足りてなさそうですし。

 

それではいつも通りなんか有るまで倍速しましょう。

 

 

 

 

ちわーす、神浜ピザ宅配サービスでーす。

ここが水徳商店街、エミリー先生の相談所で間違いありませんか?

 

「合ってるよ〜!まさか知り合いのしおりんが来るって、これめっちゃ奇跡じゃない!?」

 

ええ、本当にそうですよ。

という訳でピザ配達の途中ではありますが、たまたま相談所を訪れる事になりました。はぇ〜すっごい偶然。

まだバイトは続いているので直ぐに業務へ戻りますけど、ざっと相談所を見渡してみましょうか。

 

何故か固まったままの組長に、エミリー先生の助手のあきらさんに、色々と紙を手に持っている美雨さん。

 

うん、いつもと変わらないな!

というか前からずっと思ってましたけど、ななか組がここに来ること割と多くないですか?走者の気のせいですかね?

まあ気にしてもしょうがないですね。今回の記録では相談所を集まる場所にしているだけかも知れません。

 

じゃあ詩織ちゃんはバイトの続きに行くのでサヨナラ!

 

 

 

 

 

いやはや倍速してたら、あっという間にクリスマスですよ!

めちゃくちゃシフト入れてたので、今月だけでも給料がガッポガッポです。これから大量の出費があっても平気ですねクォレハ……。

 

 

さて次のバイトに行きますか…ってうん?誰かから電話っすね、いやこれバイトの店長だー!?

……もしもし?何ですか?え?今日のバイトのシフト無くなったんですか?自由にクリスマス満喫しなさい?

なんだよ…意外とアットホームじゃねぇか……。

 

いやでもそれは急過ぎて困りますね…今日の夜勤はそこだけでバイトやる予定でしたから、いかんせんクリスマスに空白が出来てしまいましたよ。

なんかする事ありますかねぇ……?誰か他の人の予定とかまだ空いてるでしょうか?

 

 

 

「突然失礼。」

 

 

 

誰だお前は!?

 

…って神浜聖女の†ホーリーマミ†さん!†ホーリーマミ†さんじゃないですか!?何故ここに?まさか自力で脱出を……?

いや本当に何故ここにいるんですかねぇ……?詩織ちゃんはバイトのシフトが急に無くなったくらいなので、イベントの助ける人の勘定には入らないと思うんですけど(名推理)

 

「あなたにもクリスマスの奇跡を!」

 

えっ!ちょ、ちょっと†ホーリーマミ†さん!?いくら詩織ちゃんが不健康な生活を送ってて軽いとはいえ、流石に19歳を小脇に抱えて運ぶなんて……。

あっあっあっあっあっ!待て待て!一体どこ行くねーん!おーい!

 

 

 

ここ何処だよ……。

一体どこに連れてきて…ってもう既に居なくなってますね、どうやったらあんなに早く姿を消せるんでしょうか。

もう辺りは夜なんですが詩織ちゃんが別のバイト終わった後で良かったですよ。寒すぎてしんどくなっちゃう可能性がありました。

 

それにしてもあの神浜聖女さんは何だったんでしょうか?選択肢は出ていませんでしたから、詩織ちゃんの願いを叶えてたという事ではありませんよね。

誰かの奇跡に詩織ちゃんが関係していたとか…いやでもここに連れてこられて別に何かしろって言われてはいませんし。

そもそもそんな事を願うくらいの好感度の子居ませんからね、詩織ちゃん。RTAの宿命でかなり信頼度パラメータはぼちぼちなんですよ。

 

まあそこら辺を適当にぶらぶら歩いておきますか。する事無さ過ぎて正直暇やねんな……。

 

 

「おや?お久しぶりですね、詩織さん。今日はバイトでお忙しかったのでは…?」

 

おっと組長じゃあないですか!丁度いい所に来ましたね。

どうです?今から一緒にクリスマスの夜を過ごしません?実はバイト先のシフトが急に変更してしまいまして……。

あら、ななかさんもクリスマスぼっち仲間なんですか?気が合いますね。

……もしや組長はこの前詩織ちゃんが断ってしまったからクリぼっちに…?まさか、まさかね。

 

あ、という事はここで組長の好感度不足を解消できるかも知れませんね。やったぜ。お前天才かよォ!

神浜聖女さんはサンタかなにかだった…?

ななかさんって本当に最初からずっとお悩みを明かしてくれないんですよね…相談所の常連客になってるっていうのは知ってるんですけど。

というか今思いましたが、いろはちゃんも組長も葉月さんもマミさんも一応全員同い年なんですね…中学3年生とは……?

 

 

とりあえずここで、組長の信頼度と好感度を上げて聞き出せば良いんですよ。そうすれば走者の憂いもきっとなくなる事でしょう。

じゃあ早速、稼ぎの旅へいざ行かん!

 

 

 

詩織ちゃんはこれから組長とクリスマスを過ごすので、今回のパートはここまでにしておきます。

ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスマス。

それは人々が憩う特別なイベントの日。

 

 

街中ではツリーやイルミネーションが見渡す限り、辺り一面に煌びやかに飾り付けられている事だろう。

いつもよりも眩しく輝く風景を堪能しつつ、通りを行く人々は誰もが幸せそうな表情を浮かべている。

 

もう既に太陽は沈み、空は暗さを増して、月は神浜の街並みを静かに照らす。

そう…人々にとってクリスマスの夜というのは、まだまだこれからなのである。

 

 

 

そんな神浜のとある通りを1人の少女が歩いていた。

彼女、常盤ななかは最近になってようやく恋患いに耐性がついてきた、いわゆる一端の悩める乙女というやつだ。

決して内に秘める情熱が冷めたという訳では無い。

むしろ今もなお病は進行中だが、回りに回った恋慕はかなり遠回りな一周を回って、ようやく彼女を冷静にさせる事に成功したのだ。

 

 

しかし耐性が付いてきていても、聖夜を一人で過ごすのは寂しいだろう。

普段の魔法少女活動を行う常盤ななかは、誰から見ても冷静沈着な策略家という印象を受けると思われる。

 

よくよく考えてみてほしい。

いくら魔法少女になる際の願いで復讐を望んだり、行いがヤの付く自由稼業風に見えたりしたとしても、彼女が中学3年生の15歳なのは確固たる事実。

常盤ななかはまだ年端も行かぬいたいけな少女なのだ。恋愛面に対する免疫の無さも、つまりはそういう事である。

 

 

彼女が今、通りを歩いているのに特にこれと言える理由は無い。

このまま家で大人しく過ごすよりはただ、何となく無性に外を出歩きたかった…といった気持ちが勝っただけだ。

何だかんだでこんな聖夜をしっかりと歩く機会はなかなか無いように思える。

もちろん自分の年齢も考慮しての事でもあるのだが、魔法少女の活動としても夜中に神浜をしっかりと見て回るのは無いだろう。

普通だったらあまり考えられない行動であった。

 

 

 

 

だが唐突にやってきた1人の乱入者によって、彼女の静寂は打ち破られることになる。

 

 

 

 

「突然失礼。」

 

「…!、あなたは!?」

 

 

 

 

一般の人が着るには全体的にとても派手で、魔法少女が着るにはやたら珍妙な白い服装の少女。

 

 

いや、常盤ななかは彼女の事を知っていた。

以前志伸あきらも含めてお茶会を共にした、見滝原から来たといういつぞやの魔法少女、巴マミその人だ。

けれども果たしてあの巴マミがここまではっちゃけるものなのだろうか?

しかもこんなクリスマスの夜を見滝原ではなく、神浜の土地で過ごすのはいささか疑問に思うところである。

 

「あなた、巴マミさんでは?」

「いえ、私は困っている人々に救いの手を差し伸ばすしがない聖女。あなたも奇跡を祈りましょう!」

 

聞いてみたところどうやら違うと答えられてしまったので、もしかしたら巴マミに瓜二つの容姿を持った方なのかも知れない。

 

しかし、そこまで色々と考えていながら、常盤ななかが出した答えは多少なりともズレたものだった。

 

これは俗に言う『コスプレ』なるものをしているのだと、彼女はそのやや偏った知識から結論付けた。

たしかコスプレイヤーという人物はなりきるために変装をして、役を演じきるのだと僅かながら耳にしたことがある。

現状から考えてみるに、巴マミはクリスマスの聖女という役を演じているのだろう。

なればこそ、水を差すような無粋な真似をするわけにはいかない。

 

 

ある意味当たらずとも遠からずといった解釈ではあるのだが、ともかくとして常盤ななかはそのように考えたのである。

 

「えぇ、実は一つ悩みがありまして…その……意中の方が良きクリスマスを過ごせるかどうかが気がかりなのです。」

「それならばその方の事を想い、聖夜に祈りを込めて!」

 

たとえ巴マミのノリに乗っかったものだったとしても、たった今言った悩みと願った祈りは本当のこと。

多少自分の欲は出てしまっていたが、良い夜を過ごしてほしいという気持ちは嘘偽りのない常盤ななかの想いだ。

 

 

 

 

言われた通りにその事を祈って僅かな間。

ふと目を開けてみると、いつの間にか巴マミが何処かへと消え去っていた。

 

ほんの数秒の出来事は疲れから来る幻覚だった可能性が浮上したが、コスプレとは魔法すらも使って本気で取り組むものなのだという、ややズレている学びを得られたに違いない。

 

 

しかしながら、クリスマスの不思議体験はまだ続いていた。

 

 

 

「…ななか、ちゃん……1人…?」

 

 

 

件の意中の相手、恋患いの原因、本来ならバイトをしていたはずの弓有詩織は、急なシフト変更によって暇を持て余していた。

 

そのためたまたま街に出て、何かないかと散策をしていた訳である。常盤ななかを見つけたのもその一環であった。

こちらからすれば突如として目の前に現れた弓有詩織に、いつもの常盤ななかなら即座に固まって動かなくなるだろう。

 

 

けれども彼女はもう、以前のように止まってしまう少女では無い。

心拍数は上がりに上がっているだろうが、なんとか平静を保ちつつ、かろうじて思考を停止させないように成長できたのだから。

 

「…断っちゃった、けど…もし、良かったら……今から、どう?…かな…?」

「……!そんな、喜ばしい限りです。」

「…良かった…誰かに、誘われるの……久しぶりで、嬉し、かった…から……。」

 

これがクリスマスの聖女の力なのか…!と、あらぬ方向に迷走しそうになる現実逃避気味な脳内を引っ張り、こちら側へと無理矢理にでも戻す。

先ほどまで憂いを帯びた気持ちは何処へやら、これぞまさしく聖夜に似つかわしいような幸福感なのである。

 

 

 

商店街の通りを連れ立って歩く2人は、だいぶ前に水名区で茶会をしてから随分と経つ。

 

当時同じくらいだった身長は、育ち盛りの中学生というのもあってか、いつのまにか常盤ななかの方が追い抜かしていった。

今までは脳の処理が追いつかなかったため、このようにまじまじと見つめられる余裕は無かったのだが、改めて弓有詩織の事を直視してみる。

あの時とは違って自分の目線より下にいる彼女は、その不健康さに磨きが掛かっているような気がしないでもない。

 

「…サンタ、クロース…知ってる……?」

「ええ、存じております。クリスマスに子供達へとプレゼントを配るという方ですよね。」

「……サンタ…来たこと、なくて…良い子に、してれば、来る…らしい、けど………。」

「それはサンタクロースが間違っているのでしょう。むしろ詩織さんはもう少し欲を張っても良いと思いますが?」

 

率直に出た常盤ななかの意見に、弓有詩織は小さく首を横に振る。

謙虚さは大事だと昔から揶揄されるが、彼女の自己肯定感の無さには多くの魔法少女が呆れるところだった。

 

「…でも、きっと…まだ…足りてない、から。」

「そうですか…無理、しないでくださいね?」

「……うん…。」

 

並んで歩きながら他愛ない世間話をする。何気ない動作の暖かさを改めて実感していた。

商店街の通りは終わり、道路に面する通りでは彩られた家々や店が建ち並ぶ。静かではあるが、人々の笑い声がそこら中から聞こえる。

 

 

 

 

けれども、ここは神浜。

そんな平和な風景をぶち壊しにかかるのは、もはや日常茶飯事と言っても過言ではない治安の悪さだった。

 

「だれか!たすけて…!」

 

聖夜と言えども、いやクリスマスだからか、夜に出歩く家族からはぐれた子供を誘拐する犯罪が起きていた。現在進行形で。

ただ犯人にとって運が悪かったのは、たった今犯行現場を目撃してしまった人物が弓有詩織だという点である。

 

「…電話、してて……すぐ終わる…。」

「一体何をする気ですか?」

「……………。」

 

その光景を見た弓有詩織は突然、いつも持っているショルダーバッグの中に手を突っ込み、その中から一本のペンを取り出す。

何の変哲のない一般販売の日用品。書きやすいからと日々愛用しているただの普通のボールペンだ。

 

「おい!ガキを入れろ!車を出せ!」

 

例の誘拐犯がグループ犯行のようであり、無理矢理車に子供を入れて連れ去ろうとする。

主犯格と思しき人物の呼びかけでエンジンを始動した車は、動き始めてすぐに衝撃によって徐行し最終的に止まることになる。

 

 

「………!」

 

 

たった今、投げた弓有詩織のボールペンによって。

 

まあ当然と言えば当然なのだが、魔法少女になった者は並みの一般人よりも身体能力が強化される。

加えてそこに彼女の固有魔法も足されたら、ただの筆記用具も一本の矢に等しくなるものなのだ。多分きっとおそらく、推測に過ぎないけれども。

タイヤを撃ち抜かれクラッシュした車に、すぐさま警察が駆けつける。事態は確実に収束へ向かっていた。

 

「……現場から逃げてきてしまいましたが…お見事です。よく当てましたね、詩織さん。」

「…いつもの、で…慣れてる…から……。」

「そして…すみません。せっかくのクリスマスで、こんな事に遭ってしまって……。」

「……違う…救えて、よかった…良い事を、した……だから、良いクリスマス、良い聖夜。」

 

そう言って弓有詩織は安心させるような笑みを浮かべる。そこには少しだけ自嘲気味な呆れた困り笑いも含まれてはいた。

 

 

 

 

 

そんなこんなで今年の聖夜は終わりを告げた。

 

常盤ななかにとっては以降も思い出す事になる、印象的なクリスマスの思い出となるだろう。

先に言っておくが、デートではない。

デートと仮定してしまった場合、誰かの頭がショートして動かなくなってしまうため、それを考慮してこのように表現しておく。

 

2人とも急に決まった予定だったため、終始グダグダと散歩しているだけではあったが、これも一種の聖夜の楽しみなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……メリークリスマス、良い夜を。マイヒーロー。」

 

 

 

 

 

 

今も   は彼女を見守っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











アップルパイが美味しいので失踪します






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