外伝マギアレコード RTA ワルプルギス討伐チャート情報提供者ルート   作:最近ハマってしまった人

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寒過ぎるので初投稿です










第二話 真向かいの空、未だ広く (後)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内側が黒く染まった銀髪を揺らして、前方の彼女は後ろを振り返らずに前へ前へと足を進めていた。

ひたすらに文字が横に流れていく空間は以前にも見たことがある。キリサキさんのウワサの件でもあった、ウワサ特有の結界なのでしょう。

 

 

やがてたどり着いた先にあったのは足元に散らばる紙の山、壮大に建ち並ぶレターボックスの書庫。

そしておそらく結界の中央と思われる開けた空間で、歩き続けた私たちはようやく足を止めた。

 

理由は言うまでもなく中央にいたその人物。

地面に座り込んだまま万年筆を手に持って文字を書き続けるその人物は、わずかに響いた一人分の足音に気がつき顔を上げた。

ただ表情を浮かべないまま、何も言わないでこちらを見上げただけ。そんな彼女の様子を見て隣にいた有鷺さんは話し出す。

 

「じゃあ打ち合わせ通りにやろうか。」

「では…有鷺さんはウワサの足止めをお願いできますか?」

「任せて。その代わり…あの子の方は貴女に託すからね、ななか。」

 

有鷺さんから頼まれた言葉に頷いて、また中央に向かって一歩を踏み出す。しばらく、両者は無言のまま。

彼女が言っていたようにこちらを見る目に映っていたのは、着物のような衣装を身にまとって刀の鞘を携えた魔法少女。私1人のみが視界に存在していた。

 

「もしそこの方。急に声を掛ける無礼、どうぞお許しください。」

「……………。」

「改めましてお初にお目にかかります。私、常盤ななかと申します。」

 

ここは敵の領地。いつ来るのかわからない攻撃に備え、辺りに気を配って警戒するのを忘れないようにして挑む。

いつものように平然と、しかし頭の中では様々な案を練り上げながら、彼女へと自らの名を告げた。

 

 

遠巻きから名乗った声に対し、中央にいる彼女は特に反応を返さず手元の紙をそのまま書き進める。

結界に入る前から分かりきったことではありましたが……。

 

「……つれませんね、詩織さん。いえ今は真広さんと呼ぶべきでしたか。」

 

その言葉を聞いて真広さんはまた少しこちらの方を見上げると、左手を上げて周りの使い魔達に指示を出す。

周囲を取り囲むように現れた鳥の形の使い魔は、いつもの鴉の使い魔ではなくウワサが出した手下らしい。

 

直接手を下さずとも対処できるというのか、それとも最初から眼中にないのか。どちらにしろ彼女は私たちをここで始末するつもりなのでしょう。

 

「私、あなたに手合わせ願い、はるばるここまでやって来たんです。」

 

一度目を伏せ深呼吸をして、辺りを囲むウワサの手下を横目で見やったあと、視線を元に戻して私は彼女の事を見据える。

 

 

 

そして手に構えた刀の鯉口を切って、周辺に風が吹きすさぶなか、平常心を保って戦闘態勢を取った。

 

 

 

 

なんだか初めて出会った時を思い出しますね?あの時も私は噂を聞きつけてあなたに声を掛け、そして手合わせをして頂きました。

残念ながらあと一歩のところで力及ばず、一瞬の隙を突かれ崩されてしまい、結果として負けてしまいましたが………。

 

 

 

今回ばかりは、負けるわけにはいきません。

 

 

 

「ですから、ええ、是非とももう一度。了承はして頂けたみたいですので……」

 

一拍おいて有鷺さんに目配せをすると、心配はいらないという自信満々の様子で、彼女は大きく頷く。

それを確認してから刀の柄に握り、足を一歩。

 

 

 

 

 

 

 

「いざ尋常に!」

 

戦いの火蓋を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

一気に真広さんとの距離を詰めて最初の一太刀を鞘を持った手元から放つ。

 

こんなもので彼女が倒れるとは微塵も思っていませんでしたが、それでも当てる気で行ったはずです。

しかしこちらを見ないままで、こういとも容易く避けられてしまうと少しばかり悲しくなってしまいますね。

 

 

向こうでは変身した有鷺さんが、ウワサの手下や使い魔達を引きつけて暴れまわってくれています。

私が気兼ねなく真広さんの相手を出来るようにと、彼女が作戦の段階で申し出てくださったことでした。

ならば私も有鷺さんの思いに応えるべきでしょう。

 

「…!なんで…なんで!邪魔をする!私にはやらなければいけないことがあるんだ!」

 

そう言って真広さんは数多の槍を浮かべ、その全てを私に向かって降らせる。

まさしく雨と形容するのが正しい物量は、しかしその攻撃も前回と似通った行動とパターンだった。

いつもより流暢に喋っている彼女の様子を見て、出来ればこういう時ではない場面でゆっくりと聞きたかったものですが……そうも言ってられません。

 

避けられる短槍は出来る限り避け、当たりそうな危ない槍は刀を振るって叩き落とす。

 

以前と違う点は予想以上に手ごたえが軽く異なっていることだった。糸が切れたようにすぐに地へと落ちる感覚。

おそらくは有鷺さんが説明された固有魔法……『共有』の力。

有鷺さんの願いを忠実に叶えた結果として、二人の間でしか本来の効果を発揮できないと言っておりました。

 

しかし微弱ながら他のもう一人にも、その固有魔法を使用できると聞いています。

それによって付与された同じ『使役』の力によって、短槍にかけられた魔法程度であれば打ち払えるようにしたのだと思われます。

まったくもって感謝しかありませんね…有鷺さんのためにも、と改めて刀を強く握りなおす。

 

「ここで立ち止まるわけにはいきませんわ。大人しく…ッ!やられては頂けませんか……!」

 

鞘の反対に収まっていた小刀の柄を掴み、それを抜く動作と一緒に思い切り鞘を投げ飛ばす。

回転しながらも真っ直ぐに飛んでいった鞘は、槍の合間をすり抜けて真広さんの眼前まで迫った。

 

 

「ああもう!あれもこれも全部邪魔だ!止まれ!動くな!それ以上前に進むな!」

 

 

ガチリと固まる両手足、動かそうとする意思とは正反対に止まる身体。

私の動きを制したのは何処からともなく縛りつけられていた糸。

光の反射によってようやく視認できる細さのそれは、しかし何重にも絡みついて力を封じていた。

これこそが真広さんの隠し通してきた『使役』の固有魔法なのでしょう。

 

 

「……いいや、止まらない。私たちは動く、前へと進み続ける!」

 

 

けれども次に来たのは槍ではない。

結界内に有鷺さんの声が響く。『使役』が込められた真広さんとは、似て僅かに非なる魔力が迸る。

動きを禁じる声と相反する言葉は、腕を塞ぎ足を地に縛り付けていた銀糸を解し、光の粒子へと変えて宙に返した。

 

 

身動きが、取れる。

 

「必ずや一太刀、恩義に報いましょう。」

 

糸を振り払って一転、身を翻し刀に宿した魔力を放って周囲の槍を一掃する。

 

 

攻撃をかき消された真広さんはいつもの眠そうな目を見開いて、意思とは裏腹に動き出した私に驚いたのだろう。

今まで頼り切っていた『使役』の攻撃が使えないとなれば、彼女は次にどうするのでしょうか?

この戦いが再戦という時点で、私は答えを既に知っているようなものです。

 

 

 

そのまま一気に彼女の元へと駆け出した。

 

動作を止めずに勢いを乗せ、下から斜めに向け刀を切り上げて一振り目。鉄同士が擦れる音と共に上に弾かれる。

真広さんの持つ短槍に軌道を逸らされた後、刀を返して腕ごと力を入れて二振り目。斜め下にしゃがみ避けた彼女の軸足がズレた。

動作の続きから一回転して槍を小刀で弾き、身体を屈めて懐に入れる三振り目。咄嗟に出された短槍に攻撃の中断を余儀なくされる。

槍の突きを利用して足場にし、背後に回って振り向きざまにお見舞いする四振り目。宙に浮く槍が地に落ちる代わりに衝撃を逸らされた。

 

僅かに身体能力の差で私の方が優位に立っている。だが一向に勝敗は決まらない。

思考を巡らせ続ける向こうもそれを察知していたのだろう。不意に彼女は今までの攻防のパターンを変えて、おもむろに右手を前へと突き出した。

 

 

思い返してもここで何かを出してくるのは明白だ。

長時間に渡る戦いで次第に体力を消耗していった私は、ふと気がついた時には掌から突き出てくる彼女の槍が眼前まで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

「…同じ手に、引っかかるとでも!」

 

 

 

 

 

そこで決着は付かせなかった。

 

構えていた二刀流をすかさず手放し、突き出された左腕を両手でしっかりと掴んで、足払いとともに彼女に背を向けて肩に乗せ投げる。

不健康そうな生活を送っている彼女の身体は想定以上に軽く浮き、私の一本背負い擬きでですら地に留まることが出来なかった。

 

「……い゙った…っ!」

「おっと、すみません。力を入れすぎたやも……ですが安心してください。」

 

浮かぶ槍に邪魔をされ無理矢理距離を取らされると、彼女は打ち付けられた振動によろけながら立ち上がる。

刀を再生成して始めの居合の形を取った。

足を前に踏み出して、大きく一歩を詰める。

 

 

ここが勝負どころだと思考も直感も、告げていた。

 

 

「この一閃で落とします……」

 

 

空を飛ぶ鳥をも地に落とすかのような閃光で。今日という日までの想いを込めたこの一太刀で。

仕舞いとしましょうか、詩織さん。

 

 

 

「散りなさい!白椿!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

澄み渡る青が灰色の天蓋を染め上げる。

別に特別だと言われる所ではなかったが、そのとある名もなき廃墟の屋上こそが2人にとっての思い出の場所だった。

 

あの日、郵便鴉と噂されるようになった黒い紙飛行機を風に乗せて飛ばした。

あの日、世界で一番だと思える自慢の親友に初めて出会った。

あの日、夜空に輝く星の下で互いに指切りして約束をした。

 

描いても書いても紙が足りなくなるほどに、彼女達の思い出はまるで溢れんばかりの幸せで輝く宝箱のようだった。

 

 

「ねぇ真広、憎くなるほどの快晴だよ。貴女が褒めてくれた私の瞳と一緒の青空、一番好きだって言ってくれた色と同じくらい。」

「……………。」

「空、見なくていいの?そんなに俯いてちゃ宝石みたいに綺麗な満月の目が隠れたままになっちゃうよ。」

 

 

黒髪の少女が晴れ渡る空を見上げながら、隣でうずくまったまま動かない銀髪の少女に語りかける。

 

 

「あのさ…実は私、まだ真広のこと許してないんだ。」

「………っ…………。」

 

 

目を伏せて告げた黒髪の少女の言葉に、銀髪の少女の小さな肩が震えた。

隠し事がバレて図星を突かれたかのような、いけない事を咎められた子供のような、見た目相応の様子で静かに。

彼女は腕の中にうずめていた顔を上げて、泣きそうな目で地面を見つめ、一言ポツリと疑問を投げかけた。

 

 

「……じゃあ…どうすれば、よかった……のかな………?」

 

 

その言葉に黒髪の少女は青い目をわずかに見開いたあと、心底愛おしそうな表情を浮かべて目を閉じる。

自然と思い出されるのは今までにやってきた文字上に存在するヒーロー活動のことだった。

今ではすっかりお気に入りになってしまっていた、こだわりの少し高級そうな便箋に、色とりどりに輝く丸い飴玉をつけて。

彼女達が書いた手紙は困っているどこかの子供の元へと届く。他の人に打ち明けられないような悩みを持つ子を救うために。

 

 

「……何をすべきとか、そういうの無かったと思うんだ。」

「………え…。」

「本当に助けを求めるべきだったのは、私たちだったのかなって。」

 

 

弾かれたように手すりを離れると、黒髪の少女はしゃがんでいた銀髪の少女を立たせて、誰もいない屋上で立たせて向き合う。

 

 

「私さ、今でもあの時真広に出会えて良かったって思うよ。母親も父親も最初から欠陥品の私は必要なかった。学校でだって忌み嫌われてた。」

「…………。」

「でもそんな時に真広と出会ったんだ…私がどれだけ救われたか、きっと言葉にしたって伝えられないほどだよ。」

「……本当に…?」

「本当だよ真広。そんなに信じられない?もしかして、私が誰だか忘れてしまったかな?」

 

 

そうして涙が残る少女の目元を拭って、彼女を安心させるように微笑んだ。

 

 

「………詩織ちゃん。私の、一番の親友。」

 

 

眩しく照りつける日射しを見るように目を細めて、思わず涙が溢れてしまいそうになるのをぐっと堪える。

 

 

「願いが、誰かの思いを……捻じ曲げて、いないかって、ずっと…ずっと不安だった。……支えて、くれるように…強制させて、いるんじゃないかって。」

「…うん。」

 

 

言葉を絞り出すように話す銀髪の少女に、黒髪の少女は相槌を打つ。

 

 

「…………でも、そっか…そっかぁ……私は…愛されていたんだね。」

「ふふっ、大体真広は自分に自信がなさすぎなんだよ。この私が一体いつ、親友のことを嫌いだなんて言ったの?」

「……そうだね、そうだった…気づいてみれば…こんなに、単純だったんだね。」

 

 

ぼやけてブレた視界をやっとの事で戻した頃にはもう、そこに居たのは弓有詩織という少女とマヒロという少女。

有鷺詩織と鴉弓真広とは、ここでお別れだった。

 

 

「……あのね、詩織ちゃん。」

「なぁに?真広。」

「声が聞こえるんだ。私の事を、求めてくれる人の声が。」

「……うん。」

「私は助けなきゃ……いや、助けに行きたいんだ。義務感とか、そういうのなんて一切無しに、自分の意思で助けたいと思うんだ。」

 

 

不意に花びらが眼に映る。

植物も何もない、ただ鉄とコンクリートの残骸が残る廃墟の屋上で、淡く白い花びらがひらひらと舞っていた。

手のひらでそっと包み込んで胸の前に抱えると、何故だか不思議と心が温かくなるような気がした。

 

 

「……どうやらお迎えが来たみたいだよ。」

 

 

マヒロの姿が薄らいで、言葉とともに消えたのと同時に、錆びついた屋上の扉が開かれる。

 

ブワッと春を感じる陽気な風が身体をすり抜けて、白い椿の花を引き連れて大空へと駆けていく。

やや古びていて音を鳴らす扉の前に立っていたのは、同じ魔法少女である常盤ななかだった。

 

 

「見つけましたよ、今日こそはちゃんと伝えますから。」

「………!ななか、ちゃん……。」

 

 

一息吸って、言葉を吐く。

 

 

 

「好きです、詩織さん。

 昔の事がどうなどは関係なく、私は今のあなたを、弓有詩織という方を慕っております。」

 

 

 

真っ直ぐに見つめてくるその目が何故だか眩しく感じて、思わず目を背けたくなるくらいには照れ臭かった。

シンプルに好意を伝えられたことが無かったため、弓有詩織には何をどうしてどのように答えればいいのか分からなくて彼女の顔を見上げた。

 

 

「……まだ、結論は…出せない……でも、本当に……いいの…?」

「おや心外ですね、一世一代の大告白ですわ。先に言っておきますが、もし断られたとしても諦めませんよ。」

「…え……。」

「なにせ私、こう見えて随分と欲張りな女ですので。」

 

 

そう言って彼女は口元に手を添えて心底嬉しそうにはにかむ。

彼女の差し出された手を両手で握って、弓有詩織もまた、安心した様子で嬉しそうに頬が緩んだ。

 

 

 

青空に花びらを舞わせる暖かな春風を感じながら、静かに目を閉じて、二人の少女は屋上から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い眠りから目を覚ましたかのように思えた。

意識はこんなにもハッキリして、それでいて今までにない程に心には勇気がみなぎっていた。

 

 

おもむろに掴んだそれは不思議と手に馴染む。

目を覚ました弓有詩織が左手に持っていたのは、機械的な装飾が各所に施された無骨な黒い槍。

彼女にとっては初めて触ったモノであり、真広にとっては6年ぶりに触れたモノは、考えずともその使い方を知っていた。

 

「戻ってきましたか…詩織さん。」

「うん……ごめん、迷惑…かけたね。……それと…ありがとう。」

「あなたが無事でなによりです。それよりもまだ喜ぶには早いようですね……。」

 

常盤ななかにつられて上に目を向ける。

引き離された鳥型のウワサ本体が結界内の上空を飛び回り、一部となっていた弓有詩織を戻そうとしきりに威嚇していた。

 

 

ここから帰らなければ奪還作戦が成功したとは言えない。それにななかにとっては学校を抜け出してまで行ったことだった。

時間がかかりすぎて元の神浜に戻らないと、自分の勝手な行動に気づかれてしまうだろう。

対して弓有詩織はこの状況が続けば、かつての自分たちの二の舞いになると考えていた。

 

 

 

だがそんな事をさせるわけにはいかない。

 

 

 

「私は……やるよ…!」

 

 

一たび槍に魔力を込めれば、たちまち姿を変えて機械仕掛けの弓に変形する。

弓手に構えて両端を繋ぐ弦に、右手に持った矢を番えた。上空のウワサに狙いを定めて弓を引き絞る。

 

 

ウワサは自分の眼にも見えるし、何よりこの矢の届く所にいるのだから、何があっても射損じることはない。それは自分の腕に対する絶対的な自信だった。

 

 

「………この…一矢は、外さない。」

 

 

羽ばたきによって舞い上がった便箋の嵐の中にウワサが隠れる。

両者の間に沈黙が流れて、周囲の風景が遅く感じた。

やがて見えないウワサは静寂を突き破り、弓有詩織はその鳴き声目掛けて矢を放った。

 

 

 

一条の光が宙を貫く。

願いによって繋いだ縁とは、銀糸であり弦である。

前へと突き進む想いとは、短槍であり矢である。

 

支えてくれる存在とは、すなわち弓である。

 

 

 

故に弓矢を成す3つが揃った今、弓有詩織が矢を外すなどということは………

 

 

「____________!___」

 

 

……到底有り得ないのだった。

 

 

 

心臓にあたる核の部分を寸分違わずに射抜かれたウワサは、声にもならぬ叫びをあげて息絶える。

あ、と声も上げる隙など微塵もなかった。そこからほどなくして主を失った結界は崩壊を始める。

透けた内部からは神浜の街を写す外部が薄く見えて、ななかの先導に従って来た道を急いで引き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わっ、と……!」

「……ん?え、えぇ!?ななか!?詩織さん!?」

 

唐突にした物音と誰かの声に志伸あきらは顔を上げ、そこに現れた人物に驚きが隠せなかった。

ウワサに融合されていたはずの弓有詩織と朝から見かけなかった常盤ななかが、何処からともなく忽然とその姿を現したのだから。

 

急いであきらは驚きから平静を取り戻すも、衝撃的な出来事過ぎて思ったように言葉が出てこない。

無茶をしないでほしいとか何で言ってくれなかったのかとか、問い詰めたいことは色々あったが、ボロボロで帰ってきた姿を見たら少しのため息しか口から出なかった。

 

「とりあえず……おかえり、二人とも!」

「はい、ただ今戻りました。」

「ただいま…!」

 

 

 

 

調整の仕事の休憩時間に戻ってきた八雲みたまが、お茶会を始めていた3人に驚くのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴉と鷺が語ったは二人の少女の昔話。

今なお進む魔法少女達の記憶より、ずっと前にあった少しの前日譚。

彼女は運命を掬い巣食われ、そして自分を支えてくれる存在に救われた。

彼女は一人では結末を変える事が出来なかった。けれども、いつか来る幸せな日々を望む想いはついに届いたのだ。

 

 

二重になった引き出しの底には思い出の手紙が形を失ったりしないよう、丁重に整えられて仕舞われていた。

 

 

 

 

 

 


 

 

□弓有詩織(鴉弓真広)

この度、第2話『真向かいの空、未だ広く』を発生させた人。

人格が融合したり解離したりと色々散々な事があったが、無事に親友と思いの丈が通じ合ったので、心身ともに二人で一つの弓有詩織になる。

元の真っ黒鎧の衣装に白と和風要素が加わり、普段の姿はいい意味で初期の頃に進化した。武器が大の可変槍と小の短槍で二槍流になったので、組長との共通点が増えた。

 

□マヒロ(有鷺詩織)

経歴ガバ及びややこしさの元凶。13歳時の鴉弓真広の姿を借りて行動していた。

ちなみに13歳と限定されているのは、有鷺ちゃんが14歳から先の真広ちゃんを見たことがないからである。

実は2人の想いのすれ違いを解決するだけで、魔法少女ストーリーはクリアできたりする。中身そのままバージョンの没ルートが存在した。

 

□常盤ななか

今回のMVP。走者の勘違いによって現時点での好感度第1位。

恋愛耐性クソザコから恋愛メンタルつよつよに進化した。ついでに強さがグーンと上がった。

初回の手合わせではマジカルアームパイルバンカーの不意打ちで負けたので、今回は一本背負い投げもどきでカウンターを返す。

 

□弓有詩織(真広ちゃん)戦

有鷺ちゃんがデバフを全て打ち消して、サポートで周りの雑魚を引き受けてくれる。

弓有詩織は初見殺しがあるから強く見えるが、今回はそのことごとくが潰されたのでお前は泣いて良い。

ウワサ戦よりもこっちの方がメイン。

 

□元ネタの一つ

『弓有真広』がアナグラム。

多分某STGの曲で知っている人が多いと思われる。太平記巻十二に載っているので皆見ろホイ!

怪鳥退治のお約束と言えば弓の名手に射らせる事でしょ。

 

□『博愛』

「自分がされて嫌なことはしない」の反対。

テレビのヒーローと街行く親子の見よう見まね。

愛情が分からなくて不器用なだけな話。

 

 

 

 

 

リアルクリスマスが近づいて来るので失踪します

 

 

 

 

 

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