鉄血のオルフェンズ リベリオン   作:よなみん/こなみん

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厄祭戦時の機体、ガンダムフレームを使い、敵を撃退したゼロ達。

ギャラルホルン、海賊といる中で新たな勢力としてマークされてしまう。
しかし、嫉妬、怨念と言うものはしぶとく、復讐とは終わらないものだった。


誇りと覚悟

―――木星 ジュピトリア・コロニー 宇宙港 ―――

 

 

「補給、感謝します」

「いえいえ。仕事ですので」

 

目の前にはギャラルホルンのハーフビーク級戦艦が停泊し、物資の補給を行っていた。支払いに出てきたのは執事とも呼べる礼儀正しい青年、ウィグラム・バリオンが出てきた。

契約書にサインを交わし支払いを終える。終えたあとはお互いに握手を交わす。

 

「にしても意外と格安なのですね。もう少し高いものだと思っていましたが」

「正当な金額、そして物資の格安提供、信頼の確保が俺たちのモットーですので。作業終わったら直ぐに出るんですか?」

「ええ。木星、火星圏の哨戒に出ないといけないので」

 

そう言うと、一人の社員から物資の運み込みが終わったと報告が入る。「では」とウィグラムは一言だけ発するとそのまま戦艦の中へ帰って行ってしまう。

ゼロはそのままコロニー入り口側へと帰っていく。

 

ゲートを空けるとそこにはルカが居た。まるで終わるのを待っているかのように腕を組んで静かに待っていた。

 

「・・・ふう」

「お疲れ様。どうだ?」

「はい。これでどうよ」

 

金額の納品書をルカに投げつける。ルカは棒飴を舐めたまま品定めするように納品書を睨みつける。やがて全て見終わるとゼロへと納品書を投げ返す。

 

「まあまあかな」彼の口からはその言葉だけでそれ以上の言葉は出なかった。俺たちはエレベーターを下り、コロニーの中へと帰っていた。降りた先にはメイドたちが車を準備して待っていた。

 

「お帰りなさいませ」

「うん。家まで頼もうかな」

「安全運転で行きますね(クスッ」

「あぁ」

 

俺たちを乗せた車は俺たちの屋敷に向けて出発する。その間の会話は、彼らの夕食の話で盛り上がった。

 

 

―――木星圏 デブリ帯―――

 

 

「くっそが!この使い損ないが!コロニーの中の奴らが死んだから帰ってきたってか!?あぁん!?」

 

デブリ帯に存在する一つの戦艦、強襲戦艦「ハリガネ」、そのブリッジにて一人の男が青年たちを足蹴りにしていた。

その背中はゼロたちと同じ、普通の人間のものではなく改造された証・・・阿頼耶識の手術の後が残っていた。

 

「ぐっ・・・あっ」

「ちっ!使えねぇな!使えると思ってかいならしてたがこのザマか!お前らも!コイツと一緒だが!今回はコイツだけで許してやる!」

 

蹴られている青年の身体は既にボロボロだった。傷は処置を受けていないからかより目立ち、蹴られた部分は赤く、膨れ上がっていた。

残りの連中は男を睨んでいた。しかし、見えない戒めが、彼らの心を恐怖で支配していたのだ。抵抗ができない。

 

「ちっ!役立たず共が!さっさと船を出せ!」

「でもギャラルホルンの船が・・・」

「あいつらはコロニーからは離れる!その隙にお前らが見たい二つ目の機体を押収しに行くんだよ!」

 

男を睨みながら青年たちは何も出来ない。無力感を感じながら船をコロニーへと向け発進する。

男の野心はもう地位が欲しいとかではない。ただほうこくにあったモビルスーツのことで怒りを感じていた。

 

あの二つ目の機体。あれが無ければコロニーの人間を人質にとって物資を得れたものを、良いところで邪魔が入り計画は破綻する。

 

(あの二つ目の・・・鉄華団ってやつにもいるって聞いたな。ジャスレイの野郎、いい情報寄越すじゃねえか)

 

手元には流れてきた情報のタブレットがある。厄祭戦時の古い異物、ガンダム・フレーム。二基のエイハブ・リアクターによる高出力、さらにシリンダー式による整備性と機械的反応速度の両立、しかし、その技術は厄祭戦時にはロールアウトは困難であり、72機しか作られなかった。

 

そのガンダム・フレームが完全な状態で組織ではないところで残っている。これは金を出してでも欲しいこれ以上にない遺産だった。

 

「見てろよ・・・!直ぐに後悔させてやるからな、ギャラルホルンの連中・・・」

 

 

―――ジュピトリア・コロニー 地下格納庫―――

 

 

「整備は大丈夫か?」

「あぁ。スラスターのガスの補給も間もなく終わるし弾薬、武器補充も問題ない」

「問題は・・・」

 

ゼロは改めてベリアルの装甲部分を見る。ナギアが丁寧に操縦するとはいえ、やはり多少の損害は免れない。しかもガンダム・フレームの装甲は特殊で既存のギャラルホルンの機体装甲は適合しなかった。

 

スラスターや弾薬は既存のもので代用できるがやはり装甲面だけはどうにも出来なかった。

 

「ここまで来ちゃうとねぇ。俺たちの会社だけじゃきついのよ」

「やっぱりギャラルホルンに頼むしか?」

 

ギャラルホルンなら、過去の厄祭戦のデータも残っているはずだ。それにモビルスーツの生産が出来るのは現時点ではギャラルホルンだけ。少なくともデータを共有してモビルスーツの装甲を作ることはできるはずだ。

 

「・・・最悪な」

 

しかし、ギャラルホルンに協力するのは理想ではない。それは奴らに尻尾を振るも当然だからだ。そんなのは親父が許してくれないだろう。

 

「そう言えば。ルカはこいつに乗った時どうだった?」

「んー?ちょっと怖かったかな」

「怖い・・・?」

「あぁ。阿頼耶識があるだけで俺たちはヒューマンデブリ呼ばわりされるわけだろ?だからさ。ガンダムに乗って・・・みんなからどう呼ばれるか不安だったんだ」

 

あの戦いの後、街の人達からガンダムは英雄視されていた。だが、俺たちの正体を明かした訳では無い。もし、ヒューマンデブリがって言うようもんなら英雄から逆戻りだ。

 

メイドたちにも徹底的に言い渡し、俺たちは正体を隠している。普通の人間が多いこのご時世、俺たちが受け入れられるなんて思っていないからだ。

 

「まぁ、そうだな」

「・・・でも満足もした、自分の中でな」

「・・・そうか」

 

 

―――ジュピトリア・コロニー 商業区―――

 

 

「買い物に付き合わせて悪ぃな」

「気にすんな。ラピスはどうだ?」

「問題ありません。それよりも坊ちゃんが倒れないか心配です」

「倒れません〜残念ですぅ〜」

 

時は過ぎてゼロたちは夕食の買い出しに出ていた。ナギアはフリーな格好で、ラピスはいつものメイド服に身を包んで俺たちの隣を歩いていた。

ナギアの手には大量の荷物がぶら下がっていた。

 

ルカはガンダムの調整のため地下格納庫に残った。そんなルカの為にも俺たちが夕食を率先して作るために買い物に来ていた。冷蔵庫の中身が足りなかったからな。

 

「・・・二人で居れるのが嬉しいからってはしゃぐな」

「「はしゃいでねぇ(ません)!!」」

 

息のあった回答のあと再び犬が威嚇するように睨み合う二人。そういう所が似てるんだよ。だから夕食前にルカに「お似合いの二人だな」って弄られるんだお願い。自覚してくれ。

 

そこからしばらく。ナギアとラピスの二人は別のお店で買い物に、俺は日用品の買い足しに来ていた。洗剤からシャンプー、あとはナプキンとかの簡単な物だ。

洗剤、シャンプーは使う人間が通常より多いので少し多めに買い足しておく。メイド用に香り付きと俺たちように一応無しで分けておく。一緒にすると怒るやつもいるしな。

 

そのまま買い物を続けているとここら辺では見ない人影が見える。分厚そうなコートに身を包み、マントのような物、そしてそれを止める勲章・・・間違いない。ギャラルホルンの兵士だが・・・。

 

(・・・迷子なのか?)

 

キョロキョロしている所を見た感じ、迷子にしか見えない。初めて来た人と言う印象もありそうだが、勲章持ちなら護衛か何かが付いているはず。にも関わらずこの挙動不審の動きは・・・。

 

(確定で迷子。あるいは誰かから逃げ切ってきた感じかな?)

 

しかし、まぁこのコロニーで殺されるのだけは勘弁して欲しい。俺は荷物を持ち上げ、そのギャラルホルン兵士の所まで行くことにする。

 

「大丈夫ですか?」

「へっ!?えっと・・・」

「誰かから逃げてきたあと。迷子・・・ですか?」

「ど、どうして分かるのですか!?」

 

恥ずかしいのか赤面をして返してくる彼女。まぁ一人でここら辺をキョロキョロと挙動不審の動きしてたら大体行動は限られてくるからなぁ。そういう人間を何度か見てきたからだろうか。

 

しかしまぁ、身長は同じくらい、年齢は・・・向こうの方が上だろうか。しかも士官ときたものだ。そんな人がよく街中を一人で歩こうなんて考えるな。

 

「おひとりで?」

「ええ。出発前に少しこの街を見ておこうと思いまして。あなたは?」

「ちょうど通りかかっただけですよ」

 

しばらく立ち止まったまま無言になる。周りの人達は歩いていてこのままでは通行の邪魔になる。この人の仲間らしき人も見当たらないし・・・。

周りを見渡すが座れそうな場所はない。近くにカフェがあるのでそれが幸いか。

 

気がついたらゼロは彼女の手を引っ張っていた。彼女は慌てるものの、ゼロは無視して急いでお店に入る。

 

「いらっしゃい坊主、彼女かい?」

「適当に紅茶ください」

「分かったよ。二人分ね」

 

席に座る。しばらくして二人の前には温かい湯気を立てた紅茶がやってくる。彼女は砂糖をスプーンで掬って入れ、ゼロはそのままの味を楽しむ。

温かい。もう一度口に含む。温かい・・・。

 

ゼロの目の前の彼女も紅茶の味を楽しんでいる。お菓子を食べながらだが、ゆっくりしているようだ。

 

「・・・お付きの人は居ないんですか?」

「さっきも言ったでしょう?私は出発前にここを楽しみたかったのよ」

「本音を聞きたいんですよ俺は。建前なんてどうだっていいんです」

 

そこからさらに間を置く。不味かったかと心で思ったが出た言葉を取り消すつもりはなかった。彼女のティーカップが机に置かれる。

 

「帰ったら婚約があるのよ。本当なら断りたい婚約・・・がね」

「断りたい?」

「セブンスターズ・・・聞いたことはあるかしら?」

 

セブンスターズ。ギャラルホルンと言う組織の最高峰にして最高決定機関でもある。北欧神話由来の家紋を持つ7家の当主による世襲で管理するもの。

ファリド家、ボードウィン家、エリオン家、クジャン家、バクラザン家、ファルク家、イシュー家で構成されると聞いていたが・・・。

 

何故その話が出てくるのか。答えは彼女が最初に発していた言葉が結びついた。

 

「婚約・・・か」

「ええ。そのセブンスターズの一席、ファルク家の跡継ぎと婚約することになったのです」

「・・・なぜそれを俺に?」

「ここなら愚痴を聞かれないで済むでしょ?それにあなたは他と違うもの」

「まぁ」

 

確かに木星圏ならギャラルホルンの支配はある程度行き届いていないから監視という心配はないしそもそもこのコロニーはギャラルホルン管理ではない。

 

俺が他とは違うという単語は無視しておこう。俺は普通の人間なのだ。そう。どこにでもいる、普通の。

 

「ん?ちょっとごめんね」

「ええ」

 

彼女は胸の内側ポケットから携帯端末を取り出す、外出中も連絡が取れるように持つものだ。プライバシー問題なので会話の声が聞こえないようにしたいが、生憎、音楽機器なんてものは持ち合わせていない。

 

漏れてくる音声に耳を傾けず。俺は紅茶と追加で頼んだケーキを口に運ぶ。甘さが口に染み渡り、ついついまた口に運んでしまう。甘いものの誘惑ってやつか。

 

その時、お店の前に車が急停止する、降りてきたのはギャラルホルンの兵士、一人は補給の時に見た士官、ウィグラム・バリオンだ。同時に対面が怯えるような仕草を見せる。なるほど。追いかけられていたのはこいつらにだったのか。状況を把握した俺は庇おうとしたがその後の言葉に身体が止まる。

 

「お嬢様!海賊です!奴ら・・・民間の補給船を盾に!」

 

 

 

―――コロニー 地下格納庫 整備ハンガー―――

 

 

「状況は!?」

「こ↑れ↓」

 

カフェでギャラルホルン士官たちと別れ、俺は地下格納庫に帰還した。既にメイドたち、ルカとナギアが着替えて待っていた。ガンダムは既に起動段階に入っている。いつでも出撃が可能だ。

 

俺たちが見ているメインモニター。そこにはコロニー周辺を運航していた補給船を海賊側のモビルスーツが抑えている映像が流れていた。ギャラルホルンのハーフビーク級戦艦がその対応をしようとしている。

 

「ただで引き渡すと思うか?」

「無理でしょうね。相手は海賊・・・何かしら要求してくるはずです」

「オマケに相手は宇宙好きの海賊だ。コロニー中で戦うとは訳が違う。慣性制御、機動プログラムの修正が必要になる」

 

エリゴス固定のハンガーを見ると、宇宙戦に備えた調整が行われているのが見える。ルカの作った、収集したデータを中心に、機体武装とオプションが変更されていく。背中にはブースター、脚部にはスラスターが身長されていた。それはエリゴスだけでなく、ベリアル、ナベリウスにも施されている処置だった。

 

以前、海賊側、ギャラルホルン側共に動きがない。ギャラルホルンはモビルスーツ隊を展開させているが海賊側は人質を話す気はないようだ。

 

「・・・あくまで人質を使いたいわけね」

「冗談じゃないってことだろ?向こうも本気なのさ」

 

その時、海賊側からオープンチャンネルで会話が流れ始めようとする。男の低い声が「あー、あー」と言っているのが聞こえる。ギャラルホルンの各機体が銃口を向ける。

 

海賊側の機体は恐らくグレイズの改修機、腕に付いたマーク着きの盾と頭部も若干違う、そして前の機体たちとは違うカラーリング・・・。間違いない。隊長機なのだろう。

 

「初めましてかな。ギャラルホルンの諸君、海賊のリーダーってのをやってる。早速だが・・・決闘を申し訳込もうと思っているよ。ただじゃない。この前の・・・俺の子分たちとやりあった二ツ目の機体を出してもらおう」

 

グレイズ・メナス、海賊の改造機に乗っている海賊が声を荒らげて言う。ゼロたちには何を言っているのが理解出来る。あいつはこの前コロニーに侵入してきた海賊機体のリーダーのようだ。そしてゼロたちに恨みがあるのか、個人的な恨みなのか、一騎打ちを挑んできたのだ。

 

ナギアはやる気満々の様子でガンダムに搭乗しようとするが問題はギャラルホルンの動きだ。このままモビルスーツ隊を展開させ、海賊の怒りを買うようなら人質たちは無事ではないだろう。

 

・・・俺たちが出るのが得策。そう考えたゼロはガンダムに乗ろうとするがルカに止められる。まずはギャラルホルンがどう動くかが問題だ。

 

「・・・嫌だと言えば?」

「人質おろか、コロニーに対して発砲する」

 

これ以上にない返答だった。ギャラルホルン側にはこれで断わる選択肢は無くなった。あとはゼロたちが出るだけだ。

 

「ナギア、ルカ、俺が行く。いいな?」

 

ゼロはガンダムが固定されてるハンガーまで行こうとしたがその肩を手が掴む。振り向けばナギアが強い力で押さえつけていた。

 

「状況考えろ!ギャラルホルンだっているんだぞ!?」

「コロニーの人達はどうするんだ!」

「そんなのはギャラルホルンの仕事だろ!?俺たちが何もそこまでやる必要は無い!」

「それでも・・・俺たちが黙ってる訳にはいかない」

 

その後、ガンダムの起動に入る。背中には阿頼耶識が繋がり、ガンダムの情報が流れ込んでくる。何度やってもこの感覚には慣れない。

ガンダムの目に光が宿り、モニターにも景色が映る。無事に起動完了したようだ。

 

「ここは俺たちのコロニーだ、好き勝手させるかよ」

「ゲートは8番を解放。各員は機密エリアに移動を」

「頼んだ、ゼロ」

 

 

―――コロニー周辺 宙域―――

 

 

「来たか・・・」

 

グレイズ・メナスが待ち構えていたかのように武器を構える。ライフルに腕には盾が、そして背中にはマウントされている更なる武器があったが確認する暇はない。

エリゴスは宇宙用に換装が終了していた。背中にはブースターが増設、各部にも宇宙戦闘用にスラスターが着脱可能なアーマーとして増設されていた。

 

武器は特に変化なし、専用のライフルが追加されているぐらいだった。他にはこれと言ったものはない。

ソードメイスは背中に収納してある。なにかあればサブマニュピレーターが取り出してくれる仕組みだ。

 

「では名乗ろう!俺はここの海賊、シーホースを率いる男!ロイ・クルセイド・・・つ!?」

 

男が名乗り終わる頃、専用グレイズの目の前までエリゴスは接近していた。無慈悲にも振り下ろすその手にはライフルではなくメイスが握られていた。

 

しかし、グレイズもバトルアックスを取り出し武器同士がぶつかり合う。火花が散り、鍔迫り合いになる。

しかし、グレイズが逆にスラスターを吹かせ、エリゴスの下へ潜り込むように急降下、下からライフルを連射する。

 

エリゴスはすざましい反応でライフルの弾丸を躱す。シールドからライフルを取り出し、逆に撃ち返してやるが弾丸の軌道は予想していたそれを大きくズレる。

 

「チッ。やっぱ設定しないとダメなのか・・・マニュアル制御の面倒な所だ。右に修正、左修正誤差を・・・!」

 

調整最中も間髪入れず、グレイズが詰めながらライフルを連射してくる。バトルアックスとメイスで撃ち合うのも良いが、ライフルの手痛い反撃を喰らうかもしれない。こちらも撃てると言えば撃てるがこのライフルは近接よりの性能をしていない。それに大きさもある。接近するのは無理だ。

 

スラスターを吹かせながら阿頼耶識特有の回避を続ける。向こうは慣れていないのかライフルの照準が合っていない。

 

「くっ!その意味不明な動き!貴様!あの餓鬼共と同じ(阿頼耶識)か!」

「何・・・?」

「貴様もネズミかって聞いてるんだ!そうあいつらと同じで使えなくて!無能なネズミがぁぁぁ!」

「・・・お前のとこにもいるのか」

「あぁ!使えないネズミがな!金で買った割には何も出来ない!駒としてしか使えん無能がな!」

 

その時、ゼロの中で何かが吹っ切れた。突然スラスターを逆に吹かせ、メイスを持ってグレイズへと突撃していく。 グレイズがライフルで迎撃してくるが、エリゴス付属のシールドで防ぎながら接近戦が出来る距離まで詰め込む。

 

接近してまずグレイズのアックスとメイスがぶつかる。その後、グレイズのライフルがこちらに向けられるが反応、エリゴスはライフルから放たれた弾丸を躱し、下からメイスを頭に叩き込む。

頭部装甲が外れ、モノアイが剥き出しになる。

 

「なっ!?バケモノがぁ!」

「・・・ネズミだと?俺たちが?()()()()()()!?」

()()()()を受けたんだろ!?だったら一緒だろあが!ネズミだ!お前も!」

「巫山戯るなよ!!俺たちは()()()()()()()()()を受けた訳じゃない!俺たちの為に受けたんだ!」

 

暗かった日。手が差し出される。

 

―――その目、お前、俺のところに来ないか―――

 

思い出した。俺の変わった日。俺たちが出会った日を

 

―――どうして?―――

―――簡単さ―――

 

 

「お前も家族だから」

 

 

ゼロの両眼から血が出る。背中に阿頼耶識の熱が入る。ガンダムの力が解放されていくのが彼には感じられた。

 

 

あの日。人間のゴミだった(ヒューマンデブリ)だった俺たちを救ってくれた、あの日から、俺たちの運命が変わった。

俺たちのようなデブリでも。必要としてくれる人がいる。受け入れてくれる人がいる。大切な家族がいる。

 

「負けない・・・!人の存在を否定するお前を!殺す・・・殺してやるッ!」

 

メイスを容赦なく機体に叩き込む。叩き込んだ左腕のフレームは変形し、再起不能になる。右腕に装備されたアックスが振り下ろされようとするがエリゴスの右腕がその腕を掴む。

 

「ひっ!?」

「・・・お前は死ね!ここで!俺たちの仲間に詫びてなァッ!」

 

エリゴスの膝蹴りがグレイズのコックピットに叩き込まれる。メイスほどの殺傷力はないため、フレームの変形は多少で済んだものの、勢いによるコックピット内の衝突は免れない。ロイはモニターに頭を強打する。

 

まだ終わらない。今度はエリゴスのメイスがコックピットのフレームに直撃する。フレームが僅かに凹み、機体は勢いよく放り出される。

 

「貴様ァ!人間様に向ってェ!」

「お前は人間なんかじゃない!いや!お前を人間と認めてたまるかぁ!」

 

逆にスラスターを吹かせ、突進してきたグレイズはそのままアックスを振り下ろすがエリゴスは盾で受け止めソードメイスで左脇腹の部分を強打する。

 

グレイズ・メナスはボロボロだった。先程から繰り出される打撃によって各フレームは変形しており、左腕は度重なる衝撃で折れかけていた。

 

「負けねぇ・・・ゴミなんかに・・・ネズミなんかに!」

 

無慈悲にも動きが遅くなったグレイズの頭にメイスが叩き込まれる。そのままグレイズの頭部は凹んでしまう。

手にも垂れていたアックスが手から離れる。どうやら継戦能力は削がれたようだ。

 

「クソが!無能なガキ共め!宇宙のゴミが!貴様らなんかに人間様が負けてたまるかよ!」

「・・・」

「どうせそれが無ければ何も出来ない雑魚のクセに!なんとか言えよ!ゴミが!クソ!クソが!」

 

心には何も無い。人としての誇りも、毅然とした態度も、冷静さも今この男にあるのはただの醜さだけだった。ゼロは操縦桿を握る手に自然と力が入る。そのままエリゴスのシールドをコックピットがある場所まで押し付け、シールドに付いているクローでしっかり捉える。

 

男が喚いているのが聞こえる。そんなに死ぬのが嫌か。そんなに死ぬのが怖いか。俺たちの仲間はこうやって死んでいったんだぞ、お前たちとは違って・・・誇り高く・・・だから。

 

「死ね」

 

エリゴスのシールド裏から繰り出されるバンカーはグレイズの装甲を貫き、コックピットごと串刺しにする。シールドからバンカー部分だけを取り外し、グレイズの機体は宇宙へと放り出される。

 

「終わった・・・」

 

緊張が解けたようにゼロはコックピット内で一人、安堵の表情をしていた。出血は続いているものの、目の色は元に戻っている。

捨てられた子供たちの戦い・・・それは世界を巻き込んでいることを彼らは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ガンダム・ベリアル

バルバトスルプスの元になった機体、大型のバスターソードを担ぎ、腕には滑空砲が搭載されている近接格闘型のガンダム・フレーム。対モビルアーマー戦を重視しているのか武装は大型のものが多い。

武装は大型バスターソード、腕部200mm砲のみとなっている。
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