鉄血のオルフェンズ リベリオン   作:よなみん/こなみん

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戦いを終えた後

勝者に求められるもの、それは力なのだと少年たちは理解する


正義という名の非道(前編)

「この前戦った奴の船が?」

 

戦いが終わってジュピトリア・コロニー、レヴナント邸。ゼロはルカからの報告を受けていた。

あの戦いのあと、ギャラルホルンの戦艦はコロニーの港へ停泊、その後、ルカに話を持ちかけてきたらしい。

 

内容としては俺たちの仲間に入れて欲しい、との事だった。どうやら戦闘中の通信は筒抜けで、ギャラルホルンの戦艦にも、連中にも伝わってたらしく反逆を起こして船を占拠したはいいものの、どうしたらいいか検討もつかないようでこちらに話をしてきたようだ。

 

こちらとしては問題ない。というかこれで受け入れなかったら戦闘中の発言は嘘になる。

 

それよりも問題なのは話の方だ。俺は今、親父に連絡を取るため通信機を使用している。これで連絡が来てくれれば・・・。

 

「よう。どうした」

「親父。話があるんだ。この前・・・木星で戦闘があってな」

「大体の状況は聞いてる。仲間にして欲しい連中が来たんだって?」

 

やはりバレてたか。まぁそう簡単に親父が認めてくれるわけがないよな。親父の会社は親父が認めた連中以外は入れない主義があるから「いいぞ」・・・はい?

 

俺たちは一瞬耳を疑った。親父が言ったのか?ルカに視線を向けるが「俺は言ってない」と返され、メイも違うと言わんばかりに首をふる。

 

「じゃあ・・・?」

「別にいいぞ。その代わり・・・ちゃんと面倒は見ろよ?」

 

その言葉を最後に通信は切れる。俺たちは不思議と心から安心していたのか。しばらく唖然となってしまう。

なにはともあれ。親父の許可は取れた・・・あとは。

 

「あいつらの問題だな」

 

 

―――――――――

 

「はいはい。こっちナギア」

「調子はどうだよ」

 

携帯端末による通話。電話の相手はゼロだった。ナギアの目の前には現在整備中の「ハリガネ」が存在していた。モビルスーツの整備も同時に行われていた。

 

整備をしているのは会社の人間・・・もいるがそれ以上に「ハリガネ」に搭乗していた俺たちと変わらない歳の子供たちが多かった。少し年齢が上なのもいるがそれでも子供と言う歳には変わらないのだろう。

 

「問題ないさ。アイツらもソワソワしながらやってるよ」

「そのアイツらの件だが。俺たちで引き取ることになる」

「聞いたかお前ら!引き取るってよ!」

 

ナギアの声は予想より響いて、「ハリガネ」を整備している少年たちに届いた。仲間を見渡すもの、驚くもの、涙ぐむものと多くいる。

 

「ホントですか!?」

「あぁ。嘘はねぇ!お前たちは今日から仲間だ!」

 

そう言うと周りは喜びの声、安堵の声に包まれる。通話でゼロが「やれやれ」と言っているのが想像できるが今はこの喜びをコイツらを分かちあうのが先だ。少しでもコイツらを安心させてやりたい。そういう思いがナギアにもあった。

 

そのちょっと後、「あの〜」と突然横から声がする。そこには「ハリガネ」に乗っていたであろう少年たちのリーダー格、俺たちより少し年上だろうか。その人が立っていた。

背中には特徴的な阿頼耶識の跡が見える。

 

「・・・さっきの話は本当なのか」

「嘘じゃないさ。さっきの戦闘も見ただろ?」

「しかし」

「信用出来ないのはわかる。でも俺達もお前たちと一緒。ヒューマンデブリなんだ。だから少しは信用してくれや。な?」

 

そう答えると安堵したような表情を見せる「ハリガネ」の搭乗員たち。全く・・・面倒が増えるって少しは考えて欲しいが・・・こういうのも悪くないな。親父の気持ちがわかるぜ。

 

「そう言えば挨拶してなかったな。俺はナギア。ナギア・ルクスリアだ」

「ザック・レガリス。これから世話になるな」

 

 

二人は固い握手を交わし、今も修理されている「ハリガネ」の作業に戻るのであった。

 

 

―――火星圏 宙域―――

 

 

「お嬢様。前方に戦艦三隻、あれは・・・ファルク家の紋章があります」

「・・・あの男が来たのね」

 

火星周辺の宙域の偵察に当たっていたローズたちの前に三隻のギャラルホルンの戦艦が現れる。全てにニーズヘッグの紋様が施されており、一目で誰のか分かってしまうのがローズには嫌だった。

 

ファルク家の息子。イリアス・ファルク。彼は正義こそあるものの、その正義はローズが知っている。どの正義とも違うものだった。

 

言えばクジャン家の当主、イオク・クジャンに性格が近いかもしれない。いや、それだったらまだいい。彼は正義感あるし部下を絶対に見捨てないギャラルホルン正義の塊でもある方なのだ。このイリアス・ファルクは違う。

 

かつて、マクギリス・ファリド特務三佐にお会いした時にギャラルホルンの正義についてお話してもらったことがある。が、イリアス・ファルクはその正義からはかけ離れた人間だ。局の情報さえも力ずくで自分の益になるように変えてしまうのがあの男のやり方である。

 

「久しぶりだなローズ」

「・・・」

「ふっ。嬉しいのか。全く・・・困った子だね」

 

不気味な笑顔。しかし、その目辺りには仮面が着いていて表情は全くと言っていいほど分からない。

イリアス・ファルク。謎の仮面を付けるギャラルホルンの腐った男。

 

「さて。このまま木星圏まで行こう」

「木星圏の調査は終わりました。報告書もデータ送信した通りですが」

「そう思うか?何やら木星圏での海賊の動きが活発みたいじゃないか、ローズ」

 

心当たりはある。この前に戦っていた海賊団のことだろう。しかし、その海賊団のリーダー格は一騎打ちで死亡、実質海賊組織は半崩壊していることになる。その後の動きは不明である。

 

「海賊はあらかた無力化しましたが。何か」

「それがそうでもないのだよ。何やら厄祭戦の機体・・・ガンダムが姿を表したそうじゃないか」

 

確かにファルクの言う通りである。コロニー内の鎮圧にも、海賊との一騎打ちにもガンダムは出でいた。しかし、それは私からすれば正義の行いであり、別に気にすることでもないのでその件を放置し、ここまで来ているのだ。

 

「ガンダムには何も異常はないですが」

「考えてみろローズ。ガンダムは元々ギャラルホルンの象徴なのだよ。それが一般人、ましてや海賊の手に渡ってみろ。それこそギャラルホルンの恥ではないか!」

「・・・報告書は読んだので?」

「読んでの発言だ!全艦急速発進!目標は木星圏だ!」

 

「了解!」と返事が帰ってきたあと、全艦の進路が木星圏に変更される。ローズはため息を付き、ウィグラムは次いで紅茶を淹れていた。

 

ファルクの言うこともわかるが、報告書を読んでいれば多少は信用に足るはず、通信内容も載っているし、なんならコロニーを救ったことも包み隠さず書いてある。なのに。あの男はそれを自分の手柄にしようとしている。ファリド特務三佐より傲慢な人間だ。

 

イシュー様も、ボードウィン特務三佐もこんな人間では無い。この男がこういう性格なのだ。ファリド特務三佐が言うように、この男がギャラルホルンの腐敗なら、ここで排除してもいいが。それも出来ないのが現状である。

 

「・・・悔しいわね」

「彼らと、戦うことになりそうですね」

「そうね。出来れば避けたいのだけど・・・」

 

 

――― 木星圏 宙域―――

 

 

「センサー反応無し!今のところ大丈夫ですよ」

「ふう。これなら歳星に無事に着けそうだな」

 

俺たちはジュピトリア・コロニーでの補給、修理を終え既に宙域まで出ていた。艦の指揮を取っているのはゼロではなく、ナギアだった。その後ろにはラピスが控えている。

 

搭乗員は旧「ハリガネ」のメンバー、そしてメイド隊からマリーナ、ラピス、メイの三人が搭乗していた。

 

ルカはハンガーで各モビルスーツの整備をしている。アイツのおかげで全員に指示が行き渡り作業の効率が上がっていた。が、それ故に問題が出で来る。

 

「ガンダムの装甲がない?」

「あぁ。どうやらコイツらとは別みたいでな」

「・・・歳星のおっちゃんに聞けばいいじゃん」

 

そんな話があって、ダメもとで聞いてみたところ「いいぞ、ウチの整備で良ければな」との事だったので急いで進路を変更。俺たちは歳星まで移動することにした。

通っている道は外回り、ギャラルホルンの航海ルートとちょうど被らない裏のルートである。デブリ帯ではあるものの、バレないというのは意外と役に立つ。

 

俺たちの仲間とは言っても元は海賊。その懸念をギャラルホルンが離さない限り俺たちは追われるのだろう。だから早めに歳星に着いて商会の所有物だと思わせればテイワズの盾が出来ると考えていた。

 

「さて・・・あとはギャラルホルンが来ないのを祈るだけだ」

「大丈夫ですよ。ここは航路から外れてますし・・・」

「バカヤロ。あいつらは人間じゃねぇ。俺たちの仲間を平気で殺そうとするヤツらだぞ」

 

阿頼耶識手術を施した人間は人間では無い。その理念を生み出したのはギャラルホルンである。そのため、火星圏の仲間はギャラルホルンに襲われた。そう聞いている。

 

デブリ帯を突っ切り、歳星へ向かうための航路に乗ろうとする。ここを過ぎれば、あとはギャラルホルンの戦艦を通り過ぎているから安全に進める。

 

しかし、現実とは非常なものだった。

 

「・・・っ!エイハブウェーブ増大!これは・・・ギャラルホルンの戦艦だ!」

「来たか!総員戦闘配置!」

「・・・バレたのか」

 

ゼロは表情には出さないが内心で焦る。自信がバレないと思っていたルートがギャラルホルンの偵察部隊にバレている。

 

何故だ?思考を巡らせるが答えは出てこない。ギャラルホルンに勘のいいやつがいるとしか言いようがないのだ。このルートを知っている人間は確かにギャラルホルンにもいるものの、ギャラルホルンの木星前線基地から時間的にすぐ来れる場所では無い。つまり、誰かがここに部隊を配置させたとしか考えられないのだ。

 

「ゼロ!予想より早く崩れたぞ!どうする!」

「モビルスーツを出す!少しでも歳星に近い位置まで移動するんだ!ナギア!」

 

既にガンダムの中にいるナギアへと回線を繋ぐ、緑のパイロットスーツに身を通したナギアが宇宙装備のベリアルに乗っていた。既にカタパルトにガンダムが固定され、発進準備が整う。

 

「あいよ!要は時間をかせげばいいんだろ!?」

「頼む!」

「ナギア・ルクスリア!ガンダム・ベリアル!出るぞ!」

 

ベリアルが先行。その後、何機かモビルスーツが出る。

ゼロもガンダムに乗るためにブリッジを後にしようとするがルカに止められる。

 

「頼んだ」

 

それを最後に、俺はガンダムに乗るためにハンガーへと向かった。

 

 

――――――――――――

 

 

「・・・貴方も出るのですか」

「当然だ。今のギャラルホルンの在り方を示さねばならんからな」

 

ローズが専用のシュヴァルべ・グレイズが出る頃、もう片方の戦艦からもイリアス・ファルクの専用のシュヴァルべ・グレイズが出るようだ。

 

ローズはあまりいい気はしなかった。それもそのはず。ちょっと前まで街を救っていたはずの、それもガンダムと戦うのだから。これでは恩を返すどころか仇で返すことになる。

 

ローズはそれが気に入らなかった。わかっていながら情報を塗り替え、あまつさえそのガンダムの力を手に入れようとするこの男の欲深さが。

 

「・・・ローズ・フィスアリア。シュヴァルべ出ますよ」

「イリアス・ファルク。シュヴァルべ・グレイズ、出るぞ」

 

 

二機の青のグレイズが戦場に出る。イリアスはその中でもその顔からニヤけ顔を消すことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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