王立ビブリア学園の完璧超人   作:滅悪狩人

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次席検閲官(セキュリティセカンド)と完璧超人

『春日アラタさん、春日アラタさん…大至急学園長室までお越しください』

リーゼロッテ・シャルロックとの激闘から数日後いつも通りの日常を迎えていた日の昼頃に、呼び出しの放送が学園内に響き渡る。

 

「…ったく……せっかくゆっくりと昼飯を食ってたのによぉー」

 

「まあ大至急とか言ってるしなんかくれるのかもしんねーぜ?」

その学園内を放送で呼び出された春日アラタと魔道書アスティルの写本ことソラが学園長室に向けて急ぎ足で歩いていた。

 

「くれるって…そんなもんで大至急なわけが━━」

 

「マスター前!!前だ!!」

 

「ん?」

アラタがソラになにか言おうと振り返った時、運悪く曲がり角から人影が見えてソラが教えるも

 

「きゃっ…!?」

 

「どわぁっ!?」

アラタとその人影はぶつかり共に転んでしまった。

 

「いたた……ん?……これ…は…」

転んだ拍子に頭を強打したアラタが額を撫でながら顔を上げると、そこには逆三角形の白いなにかが目に入った。

 

「…あ……あっ…」

アラタの前には、ぶつかった拍子にしりもちをつき足を開いた姿のミラがいた。

 

「今日は……ウサギさんじゃないんですね」

 

「いやあぁぁぁ!!!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!??」

至近距離でミラの〝パンツ〟を見たアラタは水晶玉で殴られ血しぶきが舞った。

 

 

 

 

 

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「ははは!!アラタ君ってば相変わらずラッキースケベに事欠かないねぇ」

先程起こった事故のことを聞いて笑っている学園長の前には、アラタとソラ、リリスそして検閲官であるミラ、アキオ、カタクリの計六人の姿があり、アラタの顔は腫れて隣にいるミラは血まみれの水晶玉を拭いていた。

 

「……自分から見てるわけじゃないんだけどなぁ…」

 

「でも嬉しいんだろ?」

 

「当然だっ」

 

「「……………」」

 

「すいませんでした……」

アラタがわざとじゃないと言いつつもソラの問いに正直に答えた直後、ミラの水晶玉とカタクリの覇気を纏った黒い拳という無言の圧力に対して即行で謝った。

 

「それで学園長━━私がどうしてこんな不浄極まる男と一緒に呼ばれないといけないのですか?」

 

「ああ……それなんだけどね…」

 

「…っ!?……正気なのか…!?」

学園長が用件を言おうとする前に、カタクリは一瞬瞳を赤く光らせると驚いた表情で呟いた。

 

「実はアラタ君に一時的に検閲官の次席(セカンド)に入ってもらおうかと思ってね」

 

「なっ…!?」

 

「へぇ……面白そうだな、それ」

そして、学園長の用件を聞いたミラはカタクリと同じく驚き、アキオは楽しくなりそうかと思ったのか笑っていた。

 

「そんなっ……こんないい加減でスケベでヘンタイで不浄な魔王候補をですか!?」

 

「実績だけで言えば、かなり上位の事件をきちんと解決している形になっているからね」

そう言いながら、学園長がリリスに視線を向けるとリリスは端末を操作してこれまでのアラタの実績を説明し始めた。

 

「アリンさんの引き起こした〝憤怒(イラ)〟の崩壊現象から始まり、ユイさんの〝強欲(アワリティア)〟の崩壊現象、そしてリーゼさんの〝怠惰(アケディア)〟の崩壊現象とアラタがかなりの崩壊現象を止めたというのは確かな事実ですから━━━」

 

「しかしリリス先生っ!!」

 

「あぁ、いえ……私も反対なんですよ!?」

リリスもアラタの次席(セカンド)入りに賛成なのかとミラが慌てて声を上げるが、リリスも本心では反対だったらしい。

 

「検閲官ってぶっちゃけ何をすんだ?」

リリスとミラがそんな会話をしている横で、アラタはアキオに検閲官の仕事について聞いてきた。

 

「そりゃお前、悪い魔道士をボコボコにやっつける!!…っていう魔道士ならではの仕事だよ」

 

「おぉ…ヒーローっぽいな」

 

「実際にマスターは魔道士を全裸にして無効化できるし結構使い勝手もいいだろうしな」

 

「男の魔道士相手だと嬉しくないな、ハハハッ」

 

「…………」

アラタとアキオ、ソラの三人が会話している隣で、やはりミラは納得がいかないのかジト目でアラタを睨んでいた。

 

「まぁまぁ……ミラちゃんとカタクリ君もいるし、お目付け役としてリリスちゃんもつけることにしたし……それに━━」

そこまで言うと、学園長は真剣な表情になって続きを話し始めた。

 

「今回行ってもらう場所はミラちゃんとアキオちゃん、カタクリ君の三人だけじゃちょっと心配なんだ」

 

「……心配ですか?カタクリが居てもですか?」

 

「そう……そこはかつて僕レベルの魔道士〝大魔公(パラディン)〟や君たちレベルの魔道士たちがいたハズでね…ちょっとやそっとじゃビクともしない……そんな場所だったんだ」

 

「それは……まさか━━━」

そこまで聞いてミラの脳裏に最悪の予感がよぎり

 

「そのまさかだよ……君たちに行ってもらうのは先日、完全消滅が確認された〔三大魔道学園〕のひとつ━━━〝王立リベル魔道学園〟だよ」

学園長から語られた言葉は無慈悲にもミラの予感に的中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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その日の夜、ミラはアキオとカタクリを引き連れてアラタの部屋に来ていた。

入室した際、寝転ぶアラタにソラが馬乗りになっている場面に遭遇して、そういう方面に疎いミラが赤面するという一悶着があった。

 

そして現在ミラとアキオはベッドに腰掛けて、アラタはその対面で背もたれを前にした椅子に座っていた。

ソラはアラタの隣に、カタクリはミラとアキオの隣でそれぞれ腕組みをして立っていた。

ちなみに、ミラとアキオとアラタの三人は就寝時間が近いこともあって寝間着姿だが、ソラとカタクリはいつもと変わらない服装をしていた。

 

「……んで?こんな時間にってことは検閲任務について教えに来てくれた……とかか?」

 

「はい…その通りです」

アラタの無難な質問にミラはあっさりと答えたが

 

「そんで一人で男の部屋なんて行けないから無理矢理付き合わされたのが私とカタクリだ」

 

「ちょっ!?…あ、アキオ!!」

 

「その割には、よく大将はカタクリの部屋にいるけどな」

 

「いっ、今はその事は関係ありません!!」

アキオの横槍を受けたミラは顔を真っ赤にしていた。

 

「それに最近大将はパンツも子供っぽいのじゃなくなってきたし」

 

「あぁ!!見た見た!!」

 

「忘れなさいっ!!!!」

 

「オウフっ!!??」

さらには下着事情の話もされてアラタの言葉を聞いたミラは、手にしていた水晶玉をアラタの顔面に全力投球した。

 

「いつつ……っていうかだな…三大魔道学園とかリベル学園だっけ?それってなんなんだよ」

水晶玉を受けた鼻を擦りながらアラタは、昼に学園長が言っていたことについて聞いてみた。

 

「まぁ簡単に言うと、この学園と同じレベルのすげー魔道学園ってことだよ」

 

「ほほう」

 

「……その学園がリーゼさんの襲撃事件を解決した同時刻に…消滅したと知らせがありました」

 

「…消滅?」

ミラから消滅と聞いたアラタであったがいまいちピンと来ないのか呆然としていたが

 

「それなら私も感じていたぜ、ずっと西の方でデッカイ魔力が弾けて一気に大量の存在が消え去ったよ」

 

「俺もだ……大勢の人の声や命が消えていくのを感じていた」

 

「丁度……マスター、お前さんが(ひじり)と別れた時と同じような状態さ」

 

「━━━っ!!」

 

「魔道学園……ならびに近隣の街の数万人以上に被害が出た━━そう予想されています」

 

「それだけの人が……消滅…」

ソラとカタクリ、ミラの話を聞いて、崩壊現象の恐ろしさがわかったのかアラタは息を呑んだ。

 

「それが崩壊現象ってことさ、お前さんはお気楽に消してたが実際はそれくらいヤバイってことだ」

 

「翌早朝私たちはその学園の跡地に向かうことになります……崩壊現象の原因を調査し、もし原因となる人物がいればそれを排除するために…です」

 

「……だが犯人がいつまでもそこに居続けるようなバカでなければ、調べて帰るだけということになる」

 

「まぁバトルってのは、ほいほいやりたくないわな」

ミラ達三人の説明を聞いたアラタは、もうバトルはこりごりだと言わんばかりに嫌そうな表情をしていた。

その隣で話を聞いていたソラは気になったことを質問してきた。

 

「移動はどうするんだ?飛行機とか疲れるし長いから私はイヤだぜ?」

 

「それなら問題ありません、魔道学園には世界中を繋ぐ転移魔法のネットワーク……簡単に言うと〝魔道ワープ装置〟ですね」

 

「まっ…魔道ワープだとっ!?」

ワープと聞いて男心を刺激されたアラタはガタッと椅子を揺らす勢いで立ち上がった。

 

「全国の主要都市…並びに魔道学園のある街を繋ぐ超次元的な転移を可能とする道がありまして━━」

 

「つまりはワープなんだな!?」

 

「…もうそれでいいです」

 

「こいつはバカか?」

ミラが詳しく説明するもひとくくりにワープと脳内変換するアラタに呆れ説明を放棄して、カタクリはアラタを冷めた視線で(あわ)れむように見ていた。

そんなこんなで検閲任務のことや移動手段についての説明が終わった。

 

「……そんじゃ後の準備はアレ…だろ?」

 

「うん?」

すると、ソラはそう言ってニヤニヤとした表情を浮かべた。

 

「パジャマ姿の女が男の部屋に来た……それはつまりもう夜這いだろ?」

 

「なっ…!?」

 

「…ほう」

突然のソラの言葉に、ミラは顔を真っ赤にしてアラタはニヤリと笑みを浮かべていた。

 

「さっきからその水晶のねーちゃんはチラチラと胸元を見せてはマスターを誘惑していたからな」

 

「マジで!?」

 

「そんなことしてませんっ!!!!」

 

「………おい」

そんな問答をしていると横からカタクリが睨みをきかせて現れ、ソラに向けて威圧感を出しながら拳に覇気を纏わしていた。

 

「……これ以上ふざけたことを抜かすなら、魔道書だろうが女だろうが容赦しねぇぞ」

 

「へぇ~」

しかしカタクリから殺気に近い威圧を受けてもソラは一切恐怖しておらず、むしろカタクリの覇気を纏わせた拳を見て感心したような態度をとっていた。

 

「にーちゃんのその力は武装色の覇気っていうんだったな」

 

「……それがどうした」

 

「こんな感じだったか?」

そう言ってソラは、右腕を上げて力を込めた瞬間

 

「っ!?」

 

「なっ…!?」

 

「おいおいマジか…!?」

ソラの右腕がカタクリと同じように黒色に染まっていたのだ。

それを見たミラ達三人は驚いた。

 

「なぜあなたが覇気を!!」

 

「まあ落ち着けよ、私は異世界の知識を持つ魔道書だぜ?この技のことも知ってたさ、それにこの覇気ってのは感覚的にはそこのねーちゃんの〝真言術(マントラ・エンチャント)〟に近いものなんだよ」

 

「私の……?」

ミラが軽く取り乱してソラに詰め寄るが、ソラがミラをなだめるとなぜ使えたのかの説明を始めた。

 

「ねーちゃんの〝真言術(マントラ・エンチャント)〟は〔意味〕を込めて体に宿すもの、そしてにーちゃんの“武装色の覇気”は〔意志〕を込めて体に纏わせるものなんだよ」

 

「????」

ソラがそう言って説明するが、アラタは分からないのか首を傾げていた。

 

「つまり強い思いを魔術を使わずに拳に宿らせる感じか?」

 

「まぁだいたいそんな感じだ」

 

「…こうか?」

アキオが不意に右腕を上げて真言術(マントラ・エンチャント)を発動する感じで、意識を右腕に集中させるが何も変化は起きなかった。

 

「駄目だなこりゃ」

 

「一朝一夕で会得できるほど簡単じゃないからな」

 

「それもそうか、はははっ」

まだ覇気を纏える実力がないと言われたアキオだが、あまり気にしていないのか声を出して笑っていた。

 

「なにを悠長な事を言ってるんですかアキオ!!彼女が覇気を使えるということは、この不浄な男もいずれ覇気を覚える可能性が━━」

 

「えっ!?オレも覇気を使えるようになんのっ!!??」

 

「今のマスターじゃ無理だな」

 

「…………」

いつか覇気を習得出来るかもしれないと喜ぶアラタであったが、ソラのストレートな言葉に膝をついて撃沈した。

 

「…話が終わったなら、俺はもう行く」

 

「そうですね」

 

「行くとしますか」

膝をついて絶望するアラタを見据えながらカタクリはそう言ってドアから出ていき、ミラとアキオも伝えることも伝えたので膝をつくアラタを無視して部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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翌日

 

 

「さてさて!!というわけで、ささっとリベル学園の近くまで飛ばしちゃうけど心の準備はいいかな?」

夜が明けての早朝、カタクリ達は学園長の案内のもと遺跡のような外観をした魔道転送施設へと来ていた。

そして、学園長の言葉と共に全員が立っている場所の天井部分がゆっくりと回転し始めると徐々に速度を上げていった。

 

「お……おぉ…」

やがて残像を残すほどに高速回転していた天井部分に目的地であるリベル学園の風景が見えてアラタはその光景に驚いていた。

 

 

 

しかし

 

 

 

「っ!?…なにか来るぞ!!」

 

 

ピシッ

 

 

「おっと…!?これは?」

 

「不浄の気配っ!?」

カタクリがなにかの気配を感じとり警告した瞬間、天井に写っていたリベル学園の風景に亀裂が走った。

 

「何者かが転移に干渉してるぜ!!」

 

「転移中に干渉だと!?」

 

「そんなことをされたら下手をすれば時空の狭間に飛んでしまうかもしれません!!」

 

「なんとかなんねーのか学園長!!」

 

「無理だねぇ、今止めたらそれこそ君たちの体が半分だけ飛んじゃうかもよ?」

突然の事態に皆が慌てている中、学園長とカタクリは余裕そうな表情をしていた。

 

「まぁ僕のプライドにかけて必ず無事に君たちを届けるけどね、多少の座標のズレは勘弁してくれたまえよ?」

 

「大丈夫だ」

 

「カタクリ君?」

 

「あんたの転移は成功する、誰も死なねぇよ」

 

「フフッ、学園最強の君にそこまで言われちゃったら頑張っちゃうしかないねぇ」

そう言って学園長は術式を展開させると魔道転移を強化させると同時に、全員に魔道転移特有の浮遊感が襲った。

 

「っ…ミラ!!」

転移が始まる瞬間、アラタとソラとミラの三人が別の場所に転移される未来を見たカタクリが咄嗟に腕をモチに変えて伸ばしミラの手を掴もうとするが

 

「くっ!?」

なにかに阻まれるように伸ばした手が弾かれてしまった。

 

「ミラァァーー!!!!」

カタクリの叫びが響く中、全員を転移の光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!……ここは?」

転移の光により視界が失われていたカタクリであったが、転移が終わり目を開けた先には古城のような城壁があった。

 

「リベル学園…か?だが消滅したはずでは……」

過去にミラと共に訪れたことがあるカタクリは、目の前の古城がリベル学園だとすぐに分かった。

 

「…それにここは裏門か」

そして、自分のいる場所が裏門であると確認したカタクリは目を閉じて神経を研ぎ澄ませた。

 

「俺以外には誰がいる………正門の方向に気配が三つ…いや四つ?ミラとあの男と魔道書の女の気配は分かるがあと一人は誰だ?」

見聞色の覇気を使って自身のいる場所とは正反対の位置に、気配を感じたカタクリだったが四つの気配の内一つだけ覚えのない気配を感じていた。

 

「まぁいい、敵なら始末するだけだ……それよりミラたちと合流した方がいいだろう」

そう言ってカタクリはモチモチの能力で腕を膨張させて武装色の覇気で硬化させると

 

「“象銃(エレファントガン)”」

巨大化した拳を裏門に向けて放ち城壁ごと粉々に粉砕した。

 

 

 

 

 

 

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