カタクリでも勝てるか分からないようなヤツがウジャウジャいるとかヤバいな
「アラタ!!」
カタクリの渾身の一撃によりアラタは殴り飛ばされ、その衝撃により壁に大穴が開いてしまっていた。
「ありがとうございます、カタクリ」
「………」
仕事をこなしたカタクリにミラは礼を言うが、カタクリはその場から動かずに壁に開いた大穴を睨み続けていた。
「彼の魔力が消えたわ」
「そ……そんな………」
同じく大穴を見ながらアリンがそう言うと、リリスは崩れるようにその場に座り込んでしまった。
「……さて仕事は片付きました…帰りましょうか、カタクリ、アキオ」
ミラはマントを
「いや、まだ終わっちゃいねぇ」
「え?」
カタクリがそう呟いた一瞬の間のあと、止まったと思われた崩壊現象の粒子化が再び始まったのだ。
「なっ……崩壊現象が終わらない!?」
「どういうことだよ大将!!アイツが崩壊現象の基点じゃないのか!?」
「まちがいないハズなのですが…っ」
「ならば考えられる答えはひとつだ」
動揺するミラとアキオにカタクリは静かに呟いた。
「アイツはまだ生きてるってことだ」
「そんな……カタクリの攻撃をまともに受けて生きているはずがありません!?」
「あぁ……だがあの野郎…俺の攻撃を受ける瞬間、誰かに助けられたみたいだな」
「あの状況で……いったい誰が!?」
「確証はねぇが……あの気配はおそらく地下で寝てるアイツだ」
「彼女が!?」
アラタを助けた者に心当たりがあるのかカタクリの答えを聞いたミラは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「とりあえず今は私たちでバリアを張りますからカタクリはこちらに来てください」
「わかった」
そう言いながら、ミラはカタクリをリリスたちの所へと案内した。
そしてミラたちがバリアを張り崩壊現象の影響を防いでいるものの徐々に周囲の床が粒子に変わっていき始めた。
「くっ……このままじゃ…早くなんとかしないと…」
「いまいましい魔王候補め…っ!!」
「しかしこりゃホントにヤバいかもな」
バリアを張りながらリリスはこの崩壊現象をなんとかしようと模索しており、ミラとアキオも解決策を探しているが困り果てている状況であった。
「いよいよこのままだとジリ貧ですね……」
そうしてしばらくの間、バリアでしのぎ続けてきたがしびれを切らしたミラをとある突破策を提示した。
「アキオ、いっそこの辺りの空間ごと消し飛ばしてしまいましょう」
「はぁ!?」
ミラの突拍子のない策にさすがのアキオも驚きの声をあげた。
「ったく……無茶言うよな大将は」
驚きながらもアキオは右足の脛にルーン文字のようなものを浮かび上がらせ空間を消し飛ばす準備をしていた。
その時
「アキオ」
「ん?」
カタクリが呼び掛けアキオの行動を止めた。
「どうした?カタクリ」
「その場所から三歩ほど下がれ」
「?」
「ヤツが戻ってくる」
そう言った瞬間、アキオの立っている場所の近くの床に亀裂が入った。
それを気づいたアキオは慌てて三歩ほど下がった。
すると
「そいやぁぁー!!」
「えっ…」
床を破壊して人影がひとつ現れ、その人影を見てリリスは驚いた。
「あっ…アラタ!!生きていたのですか!?」
「よっこいせっと……ん?」
床から現れた人影は殴り飛ばされたはずのアラタであった。
「あぁ…なんかリリスほどじゃないがスタイルのいい美少女に助けられた」
「ス…スタイルのいい…」
「たぶん…ユイ……あの子の夢の世界ね」
アラタが助けてもらった少女の特徴を言い、リリスが誰なのかと考えていると先に気づいたアリンがその人物を言い当てた。
「やはりカタクリの言った通りユイさんに助けられていましたか」
「運がいいなアイツ」
平然と現れたアラタを見ても、ミラとアキオはあらかじめカタクリからの情報でわかっていたのでほとんど驚いていなかった。
「ではもう一度今度こそ確実に…」
「待て」
ミラは再びアラタを殺すために今度はアキオに指示を出そうとするがカタクリに止められた。
「何故止めるのですかカタクリ」
「どうやらアイツには策があるようだ」
「策?」
「その通り!!」
カタクリの言葉に不思議そうにするミラに、アラタが胸を張りながら自信満々にそう言った。
「ようはこの崩壊現象をオレがコントロール出来れば殺される必要ねーんだろ?」
軽々と崩壊現象をコントロールすると宣言したアラタにカタクリ以外の者たちは唖然としていた。
「何を言い出すかと思えば……」
「そうですよアラタ!!崩壊現象なんてコントロール出来るハズありません!!」
アラタの宣言にミラは
「だか【魔道はすべての可能性を否定しない】んだろ?だったらやってみなきゃわからんさ」
「
「ミラ」
それでも崩壊現象をコントロールすることを諦めないアラタに、ミラが否定しようとするとカタクリが話しかけてきた。
「なんですか?」
「その男の好きにさせてやれ」
「っ!!……まさか…」
「あぁ……俺はすでに"見た"」
「……わかりました」
カタクリの言葉を聞き、ミラはため息をひとつ吐いた。
「今回だけはあなたの好きにしてください」
「?…なんか以外とアッサリ許可もらえたな……まぁいいか、魔道書よ!!」
カタクリとの会話から一転ミラは、アラタの好きにさせるように言い放った。
突然の手のひら返しにアラタは呆然としたが、すぐに気を取り直して魔道書に話しかけた。
「オレのテーマを言うぜっ!!」
「〈あん?ああなんだ決まったのか〉」
「おうよ!!俺のテーマが気に入ったら力を貸してくれよな」
「〈ははっいいぜ!!気に入ったらな!!さあ言えよアラタ!!〉」
「ああ…オレのテーマは――"
ひと呼吸置いてアラタは自身の決めたテーマを宣言した。
それと同時にアスティルの写本に十字に巻き付いていた鎖が弾け、ページが開かれた。
「〈ハハハハ!!たしかにお前の心 存在 本質 魂の意味――それはまさに"
「だろう!?あのしかめっ面がヒントになったんだ」
そう言いながらアラタはチラリとミラの方を見て、しかめっ面と言いながらこちらを見られてミラはムッとした表情になった。
そこへカタクリがそっとミラに近付きなにやら耳打ちした。
「〈今ここにアスティルの写本は"
「おうよっ、"
アラタは目を閉じ、右手を天に向けて魔術を使うために必要な詠唱を口にした。
すると突風が吹き荒れアラタの姿が一瞬見えなくなり、風が収まるとそこにはビブリア学園の制服から黒一色の服を着たメイガスモードへと変わっていた。
「アラタのメイガスモード……」
「すごい魔力……」
それを見たリリスたちはアラタから発せられる膨大な魔力を感じとり驚いていた。
「ここに溢れる全魔力を支配して打ち消すぜアスティルの写本!!」
「あいよマスター!!」
「崩壊現象だかなんだか知らねーが消え失せろ!!」
声高らかに魔術を使った瞬間、空に浮かんでいた黒い太陽は跡形もなく消え去った。
そして、リリスたちの服も消え去った。
「(あ……あれ?)」
「▼□◇●@!?!?キャアアアア!!」
「これはビックリ…メイガスモードの強制解除」
突然の事態にリリスは赤面してその場にしゃがみこみ、アリンは色々見えてることを気に止めずにアラタの行った魔術の考察をしていた。
「おかしいなぁ…途中までは主人公っぽくてかなりイケてたんだが……」
「〈まあそういうのもお前らしくて良かったんじゃないか?ハッハッハッ!!〉」
「そっ…そうだよなっ!?はは……ははは…」
「ってどうしてミラさんとアキオさんは今の魔術を受けて大丈夫なんですか!?」
アラタとアスティルの写本が呑気にそんな会話をしてる間に、リリスが気になっていたことにツッコミを入れた。
「カタクリに事前に用心するように言われてましたので、私とアキオに向かってきた魔術を水晶で反射させたんです」
「カタクリさんが……ってそうでしたカタクリさんも居たんでした!?」
「大丈夫ですよ、カタクリはすでに外に出てますので……それでは」
アラタ以外にも男性がいることに気がついたリリスはカタクリの姿を探したが、すでに外に出ていたようだ。
そして、ミラとアキオも外に出るためにドアに向かって歩き始めた時にミラが反射させた魔術の効果が現れてアラタの服が消し飛んだ。
「いやあああ!!」
アラタはリリスとアリンの方に身体を向けていたがために、リリスは真正面からアラタの裸を見てしまい悲鳴をあげた。
「魔王候補」
「ん?」
「今回は退きますが、もし次こんなことがあれば私の"
そう言ってミラは、パタンと保健室の扉を閉じて出ていった。
「では行きましょうアキオ、カタクリ」
「あいよ」
「あぁ」
そうしていつも通りミラは、アキオとカタクリを引き連れて歩き始めた。
「そういやカタクリのメリエンダどうする?学園がこの有り様じゃ作れないかもしれないぞ」
「む?…それは困りましたね、カタクリの覇気を回復するには必要不可欠ですし」
「それについては俺が自分でなんとかする………本当ならアキオのドーナツが食べたかったが……」
メリエンダの準備が出来ないことに困っている二人を見かねたカタクリは自身でなんとかしようとするが、いつものメリエンダを食べられないからか少しションボリしたような雰囲気を出していた。
「よし!!ならこれから三人で甘いモノでも食べに行くか!!」
「ちょっとアキオ!?」
「まあまあいいじゃないか大将、昔みたいにカタクリと一緒に食いに行こうぜ」
「……はぁ…わかりました、しょうがないですね」
アキオの強引な誘いに、ため息を吐きつつ同意したミラだったがその表情は穏やかなものであった。
「いや…しかし……」
そんな二人を見てカタクリは、ファーの上から口元の部分を押さえていた。
「そのことだったら、私たちは気にしないよ」
「ええ……どんな姿であろうとカタクリはカタクリなんですから」
そんなカタクリを見かねて、二人は微笑みながらそう言った。
「……ふっ」
いつも通りの二人を見たカタクリも軽く笑みを浮かべると、街に向けて歩き出し
「おいおい待てよカタクリ」
「ちょっと待ってくださいカタクリ」
そんなカタクリの左右をミラとアキオがついて並んで歩き始めた。
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アラタの崩壊現象事件から翌日
ビブリア学園の生徒達は南の島へと来ていた。
「…………」
そしてカタクリは巨大パラソルの日陰の下、特注サイズのトランクスタイプの水着を履いて、これまた特注サイズのビーチチェアに両手を頭の後ろに組んで寝転んでいた。
ちゃんとファーは着けたままである。
「…?」
ふと誰かの気配を感じとり閉じていた目を開くと、水着に着替えたミラとアキオがビーチチェアに寝転んでいたカタクリの顔を覗きこんでいた。
「よう!!カタクリ」
「……なにか用か?」
アキオが軽く挨拶をするがカタクリはスルーして要件を聞いた。
「さっきから暇そうに寝転んでるんならよ、私とミラはあっちの浅瀬の方に行くけど一緒に来るかって誘いに来たんだよ」
「そうか」
「ミラもカタクリと一緒に行きたいって言ってたぞー」
「なっ!?アキオ何を!!」
アキオの言葉に隣にいたミラが顔を赤らめて抗議した。
「…………」
「…うぅっ」
カタクリが視線をミラに向けると、彼女はカタクリから目をそらしてモジモジしていた。
「…わかった……だが少し腹が空いた、腹ごしらえを済ませたらそっちへ行く」
「おう、待ってるぞ」
「…あの…その……待ってますので……」
「…あぁ」
そう言ってミラとアキオは浅瀬の方へ歩いていき、カタクリはビーチチェアから起き上がると食べ物を売っている海の家へと足を運んだ。
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一方その頃、海の家では
「うーむ……何故こうなった…」
昨日の事件の原因となったアラタが焼きそばを焼いていた。
そして、考える暇もなく次々と注文が殺到していたのでアラタは考えることを一旦中断して作業に集中した。
そこへ水着の上にパーカーを着たリリスがやってきた。
「自業自得ですっ!!そもそも貴方達が学園の校舎を壊しちゃったからでしょうがっ!!」
「そうは言ってもなぁ…」
リリスの言葉にアラタが不満そうに呟くと、そこへ学園指定のスク水にエプロン姿のアリンが客から注文を受け取ってからこちらへ寄ってきた。
「そうよ…旦那様のせいだもの、しょうがないわ」
「お前のせいでもあるだろうがっ」
「つまり夫婦の共同作業?」
「ふむ…そうとも言える」
二人の会話をそばで聞いていたリリスが肩を震わせて怒っていた。
「とにかくっ!!校舎を破壊するような実験は一切禁止ですからねっ!!」
「わ…わかりました……」
「……難しいのね」
リリスの説教を受けてアラタは頷き、アリンは反省どころか実験出来ないことに不満そうな表情浮かべていた。
「しかし罰として労働を強いられるのはわかるが、どうして南の島なんだ?」
「ああ…それはですね」
ふとアラタが何故南の島まで来たのかという質問には、リリスが答えてくれた。
要約すると、ビブリア学園の学園長が
それを聞いたアラタは、この行事を決行した学園長に対して胡散臭そうな表情を浮かべた。
「ただアイツが遊びたかっただけなんじゃねーの?…そんで、その学園長は?」
「頑張って校舎を直しています」
「なにっ!?」
それを聞いたアラタは驚愕した。
なぜなら普段から見た学園長におちゃらけた性格で、いつもふざけたような態度をとっているだけの印象が多かったのである。
「…凄かったんだなアイツ」
「そりゃもう、学園長はあれでもこの世界で5本の指に入る大魔道士ですから」
学園長のすごさを改めて知ったアラタはそう呟くと、背後から声を掛けられアラタが後ろを見ると黒の水着を着たレヴィとカメラをもち水玉模様の水着を着た金髪ツインテールの少女がいた。
彼女の名前は、『セリナ=シャルロック』
新聞部に所属しており常にカメラを持ち歩きスクープを求め続けており、アラタが魔王候補ということからよく彼に取材をすることが多い。
「ようっ!!なかなか可愛い水着じゃねーか」
「あはは!ありがとうございますっ」
「ペタ属性の皆さんを悩殺っす」
「ってそんなに私はペタじゃないですよ!?」
そんなこんなでレヴィとセリナも加わり、その後もセリナにパーカーを脱がされリリスのビキニ披露やアラタの新必殺技に興味を持ったセリナが取材を申し込んだりなどと賑わっていると
「あれ?」
「ん?どうかしたっすかアラタさん」
「いや、なんか客が妙に静かに……」
アラタ達がワイワイ騒いでるのとは裏腹に、海の家内の客の賑わいが鳴りを潜めたことに気がついたアラタとレヴィが客達のいる方を見ると
「…………」
「あっ…アイツは」
「最強の男の登場っすね」
海の家の入り口から水着を履いて首にファーを巻いた大男がこちらに向かって歩いて来るのが目に入った。
そして、リリスやアリン、セリナもその存在に気がついた。
「あっ、あの人は!?」
特にスクープを求めるセリナが一番反応していた。
「…………」
「いらっしゃい!!…えっと、たしかカタクリって名前だったか?」
「……あぁ」
焼きそばを焼いている鉄板の前にやってきたカタクリにアラタが声をかけるが、周囲の客もといビブリア学園の生徒達は初対面からタメ口で話しかけるアラタに驚いていた。
「アラタ!!カタクリさんはあなたより年上なんですから…」
「いやリリス先生、俺はタメ口でも構わないですよ」
「コイツがこう言ってるんだから大丈夫だろ?」
「もうっ」
いきなりタメ口で話すアラタにリリスが注意しようとするが、カタクリ本人が気にしてないことを言ったので仕方なく引き下がることとなった。
「それで注文は?食いに来たんだろ」
「あぁ……焼きそばを5つ、ホットドッグを10個、コーラのLサイズを3つだ」
「ちょっ!?スゲー食うなお前!!」
カタクリの食べる量に目が飛び出そうになるアラタであったが、早急に注文された品を作り始めた。
一方カタクリは近くの壁に背中を預け、腕を組みながら料理が出来上がるのを待っていた。
「あの…すいません」
「……ん?」
そこへ声を掛けられカタクリが視線を下げると、セリナがペンとメモ帳を手にカタクリのことを見上げていた。
「なんだ?」
「カ、カタクリさんに取材しても大丈夫ですか?」
カタクリに取材を申し込んだセリナであったが、若干涙目になって怖がっていた。
それもそのはずカタクリの目付きは鋭く常に目元に影がさしている、さらにセリナの場合カタクリよりも身長が低いので上から睨みつけられてる感じなので怖さ倍増であった。
「かまわん……それで聞きたいことはなんだ?」
「はっ、はい……えっとカタクリさんはミラさんとアキオさんとは親しいらしいですが、
「親しい……というよりは俺にとっては家族…のようなものだ」
「家族?」
「……あぁ」
そう言ってカタクリは過去を懐かしむような表情を浮かべた。
「カタクリさんは怖いイメージがありましたけど、本当は優しい人なんですね」
「何故そう思う?」
「だって今の表情はミラさんとアキオさんの事ををすごく大切にしてるって感じでしたもん」
「そうか」
「それになんだかカタクリって、ミラさん達からしたら頼れるお兄ちゃんって雰囲気ですし」
「……お兄ちゃん…か………ミラに一度だけそう呼ばれたな…」
セリナのお兄ちゃんという言葉に、カタクリがふと昔あったことを思い出しポツリと呟いた。
それを聞き逃さなかったのか好奇心を刺激されたセリナはカタクリに詰め寄った。
「今の話を詳しく!!」
「むっ!?」
「
「おっ落ち着け!?それにそう呼ばれたのは一度だけで、甘えてきたこともない!!」
カタクリはセリナに詰め寄られ驚きつつもそう言うが、セリナは聞く耳を持たずにもの凄いスピードでメモ帳にミラのお兄ちゃん発言の事をスラスラと書いていた。
「…………」
ここまで来たらもうダメだと諦めたカタクリは、目を閉じて再び壁に背中を預けた。
「おーい、出来たぞー!!」
「すまない」
しばらくして注文した品を受け取ったカタクリは、アラタ達から遠く離れた席にて背を向けるように座った。
ちなみに少し前まで客で満席だったが、カタクリの存在感に負けたのか現在は一人残らず食事を終えて居なくなっていた。
「…………」
そして、カタクリはファーを脱ぎ食事を始めた。
「……なぁ」
「どうしたッスか?」
アラタはこちらに背を向けて食事をしているカタクリを見ながら、そばにいたレヴィに声をかけた。
「なんでカタクリはいつも首巻きを巻いてんだ?」
「あー、やっぱりそこ気になっちゃうッスか」
「やっぱり…ってことはアイツの首巻きの下を見たことあるのか?」
「いや、ないッス」
「ないのかよ!!」
アラタはカタクリのファーの事を聞いたが、レヴィの紛らわしい言い方にツッコミを入れた。
「というかカタクリさんの首巻きの下はビブリア学園七不思議のひとつなんスよ」
「マジか!?ってことはリリスにアリン、セリナもカタクリの首巻きの下がどうなってるのか知らないのか?」
「……はい」
「私も見たことはないわ」
「私もです」
アラタの問いかけにリリスとアリン、セリナからは全員同じ答えが返ってきた。
「……そうなのか」
「…アラタさん、一応言っとくッスけどあんまり詮索しない方がいいッスよ」
「えっ?」
「カタクリさんの首巻きの下を見た人はよくて半殺し、最悪な場合は跡形もなく消されるって噂ッスから」
それを聞いたアラタとたまたま近くにいて聞こえてしまったセリナは、顔を青ざめさせた。
そんな話をしている間にカタクリは食事を済ませたのか口元を腕で拭うとファーをいつものように首に巻き直すと皿を返しにアラタ達の方へ歩いてきた。
「……うまかったぞ」
率直な食事の感想を言うと、カタクリはそのまま海の家から立ち去っていった。
「それでも俺は……アイツはいい奴だって思うんだ」
「なんでッスか?」
「まぁ、俺の勘だな」
なんの抵抗もなく勘と言い放ったアラタ。
それを聞いたレヴィはアラタらしいと思い微笑んでいた。
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カタクリが約束していた浅瀬に来ると、ミラは浮き輪の寝転ぶような体制で漂っておりアキオはそんなミラのそばに立っている状態で待っていた。
「待たせたな」
「遅いですよ、カタクリ」
「なんだカタクリゆっくり食ってたのか?おかげで大将はこの通り拗ねちまったぞ」
「べ、別に拗ねてません!!」
アキオの言葉にミラは顔を真っ赤にしていた。
「ふっ……すまなかったな」
「カタクリ!?だから私は拗ねてなんかいません!!」
「まあまあ大将、落ち着けって」
「もとはといえばアキオ、あなたが変なことを言うから!!」
「…………(俺の家族は必ず守ってやる)」
仲良く言い合いをしているミラとアキオの二人を見ながら、カタクリはかえがえのない仲間であり家族である二人を守りとおす事を心に決めた。