王立ビブリア学園の完璧超人   作:滅悪狩人

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眠れる少女と完璧超人

 

 

南国での修学旅行からビブリア学園に帰って来たカタクリは現在、摩訶不思議な現象に出くわしていた。

 

「………どういうことだ?」

いつもと比べてやけに静かだったので、近くの教室を覗いて見ると生徒達全員が眠っている場面に遭遇していた。

 

「カタクリ、ここにいましたか探しましたよ」

 

「ミラか、この状況は一体?」

 

「そのことについてですが、学園長から召集がかかってますので行きましょう」

この現象についてカタクリはミラに聞こうとしたが、彼女から学園長室に向かうように言われたのでそれについていくことにした。

 

 

 

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「崩壊現象だね」

学園長室に集結したメンバーであるアラタ、リリス、アリン、レヴィ、ミラ、アキオ、カタクリは学園長から今回の騒動の原因を聞かされた。

 

「強い魔力を持つ子…つまりキミら以外の生徒はみんな寝てしまった━━そういうことみたいだね」

 

「あれ?ならなんで魔力がないカタクリは寝てないんだ?」

学園長の説明を聞いたアラタがカタクリを見ながら不思議に思いそう質問した。

 

「カタクリ君の場合は、おそらく彼に潜在する覇気が眠るのを防いでいるのだと思うよ」

 

「また覇気か……なぁ覇気っていったいなんなんだ?」

カタクリが眠りにつかない理由を聞いたアラタは、カタクリに眠りを防いでる覇気のことを聞いた。

 

「まぁその疑問ももっともだが、アラタ君我々にはやらなければならないことがある」

 

「やらなければならないこと?」

 

「そう……というわけで…」

そう言うと学園長は席を立って学園長室の扉を勢いよく開け放ち

 

「早速眠っているカワイコちゃんたちにイタズラしに行こうっ!!」

 

「ふっ!!オレもついに本気を出す時が来たようだ…」

堂々と変態発言をしてアラタもそれに乗っかり学園長に付いていこうとしていたが、そんな二人の後頭部をカタクリが覇気を纏った拳で殴り飛ばし、二人は壁に頭から突き刺さるようにめり込んだ。

 

「ふざけてる場合か?」

カタクリは額に血管を浮き上がらせ二人を睨みつけて威圧した。

 

「…なにも覇気を纏って殴らなくてもいいと思うんだよカタクリ君」

 

「だいたい殴られるなら、リリスに殴られた方が良かったんだけどな」

 

「ふざけるのもいい加減にしてください!!」

カタクリに殴られてもなお反省の色を見せない二人に今度はリリスが怒った。

 

「まったくバカバカしい…」

そんなふざけた雰囲気に嫌気がさしたのかミラがそう呟いた。

 

「行きますよアキオ、カタクリ…これ以上の話は時間の無駄です、とっととその崩壊現象を消滅させればいいのでしょう?」

 

「そうそう!!そうしてもらおうと君たちを呼んだんだよ」

今回の召集の目的を簡潔にまとめてミラがそう確認を取ると、学園長は足を生まれたての小鹿のようにプルプルさせつつも頷いた。

 

「ここはやっぱり皆で力を合わせて謎の事件に挑む…!!まさに王道な魔道学園マンガではないかなぁとね!!」

 

「私たち以外は必要ありませんから━━足手まといです……それでは…」

学園長の提案をミラは冷たく切り捨ててアキオとカタクリを連れて学園室から出ていく。

その際、ミラはアラタのことを睨み付けていた。

 

「…なんだ惚れられたか?」

 

「だんな様ってば、とっても自意識過剰ね」

 

「それより学園長、話を戻したいのですが━━ホントに崩壊現象なんですか?」

アラタとアリンの漫才を無視して、リリスが学園長に今回の騒動の原因が本当に崩壊現象かを尋ねていた。

それに対して学園長は先程とはうってかわって真剣な表情となった。

 

「……あぁ本当だ、学園の地下からすごい魔力が溢れ出していてね」

 

「地下…?地下って━━」

 

「やっぱりユイさんッスか!?」

学園長の言葉に、アラタのセリフを(さえぎ)ってレヴィがいつもの冷静な雰囲気ではなく焦った様子で学園長に問い詰めていた。

 

「ユイって…前にカタクリに殺されかけた時に、俺を助けてくれたリリスの次にスタイルのいいあの子か?」

 

「…スタイルで覚えないでください」

アラタの妙な覚え方にリリスは頭を抱えていた。

 

「ご明察のとおりだネ、この現象は彼女の魔力が大暴走して起きている……彼女は学園の地下にあるダンジョンに住んでいてね」

 

「ダンジョンなんてあんのかよ!?」

 

「ここは魔道学園だからねっ!!」

 

「しっ、しかしですね!!いくら魔力が高いからといって━━━まだ見習いであるアラタを連れていくのはどうかと思います!!」

学園長の説明を聞いてアラタが地下ダンジョンについて興味を示しているが、地下ダンジョンの危険性を知っているリリスはまだ見習いのアラタを連れていくことに反対していた。

 

「だがアラタ君は他人の魔術式を外部起動(マルチブート)できたんだろう?」

 

「うっ…それはそうですが……」

学園長にそう言われ、リリスは先日南国にてアラタが行った他人の魔術式をコピーした瞬間を思いだしていた。

 

「理論上出来ないことを可能にした魔王候補――とても興味深いじゃないか…ぜひ行ってきたまえ━━━それに彼は崩壊現象を打ち消す力も持っているしね…あと」

アラタの起こした興味深い行動が今回の騒動解決に役立つと判断した学園長はそう言いつつ

 

「カタクリ君の覇気の力を近くで見て学べるいい機会だよ」

アラタのさらなる成長に期待していた。

 

 

 

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アラタ達は学園の地下ダンジョンに足を踏み入れ、慎重に進んでいた。

そして道中に、ユイという今回の眠りの崩壊現象の原因である少女についてや、現在の崩壊現象が世界中に広がれば世界が消滅するであろうことなどの話をしていた。

 

ふとアラタは先程の学園長との会話に出ていたある話題を思い出した。

 

「なぁ結局、覇気っていうのはどんなものなんだ?カタクリを初めて見た時に少しだけ教えてもらったけどよ」

 

「では簡単に覇気の説明をしましょうか」

アラタの質問に対して、隣を歩いていたリリスが人差し指を立てて授業をするように覇気の解説を始めた。

 

「覇気というのは存在する全ての人間の中に潜在する力であり、全ての人間は必ず覇気の才能を持っています……ただし、ほとんどの人間が覇気という力を引き出すことなく一生を終えてしまうというほど会得は困難だと言われています」

 

「全ての人間に潜在する力か」

リリスの説明で覇気という存在を知ったアラタは自身の拳を握りしめて見つめていた。

 

「そういや前に俺が崩壊現象を起こしちまった時に、カタクリが腕を黒く変色させてたけどあれも覇気の力だったのか?」

 

「そうですね……それは『武装色の覇気』という力です」

 

「武装色?」

 

「覇気は大きく分けて三つの色に分かれているんです……まず『武装色の覇気』これは見えない鎧のようなものを纏って防御にも攻撃にも転用することができ、武器に纏わせればより強力な武器となります」

 

「たしかにさっき学園長室の時に殴られた時、鉄で殴られたような感触だったな」

アラタは後頭部をさすりながら先程の学園長室での一件を思い出していた。

 

「次に『見聞色の覇気』これは相手の気配をより強く感じる力で、視界に入らない敵の数、距離を知ることができ、さらに相手が次の瞬間どのような攻撃をするのかということが分かると言われてます」

 

「ちなみに自分は、独自の方法で見聞色の覇気を習得するための修行中ッス」

 

「そうなのか!?」

レヴィの見聞色の修行発言にアラタは驚きつつも興味を持った。

 

「どんな修行してるんだ?」

 

「企業秘密ッス」

アラタが修行内容を聞いたが、レヴィは人差し指を唇に当ててイタズラっぽく笑いながらそう言った。

 

「こほんっ!!」

 

「あっ、悪い…それで三つ目の覇気ってのは?」

アラタがレヴィの修行の方へ興味が移ってしまったので、リリスはわざと咳払いをしてこちらに意識を向けさせた。

 

「最後は『覇王色の覇気』という相手を威圧する覇気です」

 

「威圧……それってもしかして?」

 

「そうッス……アラタさんがカタクリさんを初めて見た時、突然意識を失いかけたッスよね?それが『覇王色の覇気』ッス」

 

「…あれが」

あの時の感覚を思い出す度に、アラタは自分の身体に震えが来るのを感じていた。

 

「『覇王色の覇気』は生まれ持った資質がある者にしか扱えない覇気と言われており、武装色や見聞色のように修行で鍛えることが出来ず本人の成長でのみ高まる覇気です」

 

「資質か……魔王候補の俺なら使えたりするんじゃ━━」

資質と聞いてアラタは魔王候補という肩書きがある自分なら使えるんじゃと思った矢先

 

「だんな様ってば自信過剰なのね」

 

「どういう意味だよ!?」

 

「さっきも言ったッスけど、覇気の会得はかなり難しい上に仮にアラタさんに資質があったとしても覇王色は武装色、見聞色以上に習得が困難なモノなんスよ」

 

「そもそもアラタは戦闘経験が一切ないのですから、覇気の習得だけでも相当の年数が必要だと思います」

 

「……そうですか………」

アリン、レヴィ、リリスに遠回しに覇気の習得は諦めろと言われたように感じたアラタは四つん這いなって落ち込んだ。

 

「さてと覇気の話はいったん止めて、ミラさん達に先越されないようにとっととユイさんを探すッスよー」

 

「ミラに?どうして?」

覇気の話題から本題に戻したレヴィがそう言うと、アラタは立ち上がって首をかしげた。

 

「ミラさんとアキオさんとカタクリさんは、見つけ次第ユイさんを消し飛ばすに違いないッス」

 

「消し飛ばすって……あいつら、いつもそんななのかよ!?」

 

「はい……彼女たち王立図書館検閲官(グリモワールセキュリティ)は崩壊現象の完全除去(リ・フォーマット)が任務の一つですから…」

 

「…すべての不浄を消し去る、そのための団体……」

驚くアラタにリリスとアリンもミラたちの行うことを説明した。

 

「つまりこの現象はユイが原因だからアイツを消す、そういうわけか…」

 

「だからあの3人よりも先にユイさんを見つける必要があるんス、アラタさんはこの先危険なのでメイガスモードでお願いするッス」

 

「お…おうっ!!」

 

「じゃあ行くッスよー」

そう言ってレヴィが先頭を歩き、他の三人もレヴィについて歩き出していった。

 

 

 

 

 

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レヴィたちがダンジョンに入り始めた時と同じころ、ミラとアキオとカタクリの三人はダンジョンの中間まで来ていた。

レヴィたちの気配をカタクリの『見聞色の覇気』が捉えていた。

 

「…ん?」

 

「どうしました?カタクリ」

 

「レヴィたちもダンジョンに入ってきたようだ」

 

「そうですか、では急ぎましょう…アキオ!!」

 

「あいよ、たーい…しょっ!!」

ミラの呼び掛けに答えながらアキオは地面に踵落としを繰り出すと地面に大穴を開けた。

 

「よいしょっと」

 

「ミラ行くぞ」

 

「は、はい」

そしてアキオはそのまま大穴から飛び降り、カタクリはミラを抱えると大穴から下の階へと飛び降りた。

 

「あのカタクリ、先程から言ってますが別に飛び降りる度に抱えなくてもいいんですよ」

 

「…そうか?」

 

「なーに言ってんだよ大将、ホントは嬉しいくせに」

 

「アキオ!!」

 

「はっはっはっ!!」

アキオのからかいにミラは顔を真っ赤にして怒鳴ったがアキオは一切堪えておらず笑っていた。

 

「ところでカタクリ、ユイはまだ下か?」

 

「ちょっと待て」

そう言うと、カタクリは目を閉じて『見聞色の覇気』で探し始めた。

 

「………まだまだ下の方だな」

 

「まだあるのかよ」

 

「…交代するか?」

 

「そうだな、なら頼むカタクリ」

 

「…あぁ」

そしてカタクリは一歩踏み出し足を武装色で黒く硬化させると

 

「ふんっ!!」

アキオと同じように踵落としを繰り出し、地面に大穴を開けた。

 

「……なぁカタクリ」

 

「なんだ?」

 

「なんか…深くないか?」

そう言ってアキオとミラは大穴を覗きこむが、あきらかにアキオの時よりも深さが段違いであった。

 

「一階一階壊すのは面倒だからな、覇気と俺の能力を使って10階ほど貫いた」

 

「いや掘りすぎだろ!?」

平然と10階分の深さの大穴を開けたことを語るカタクリにアキオがツッコミを入れた。

 

「さすがに私とアキオでもこの高さからは飛び降りれないですね」

 

「だな……一階ずつ降りていくか」

 

「大丈夫だ」

 

「「えっ!?」」

カタクリはミラとアキオを両側に抱えこむと大穴に向かって歩き出した。

 

「これなら問題ない」

 

「ちょっと待ってくださいカタクリ!?あなたいったい何を!?」

 

「ちょちょ!?冗談キツいぜカタクリ!?」

 

「…行くぞ」

 

「だから待ってください!?」

 

「一旦考え直そうぜカタクリ!?」

さすがの二人もカタクリがやろうとしていることに気付いたのか慌てだしたが

 

「ふっ!!」

 

「「ああああぁぁっ!!??」」

無慈悲にもカタクリは大穴に飛び降りてしまい、ダンジョンにミラとアキオの絶叫が響きわたることとなった。

 

 

 

 

 

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「さて━━そろそろ最深部ッスね」

その頃、アラタたち一行はレヴィの案内のもと最短ルートで最深部へとやって来ていた。

 

「なんか随分歩いたなぁ、敵はみんなニンジャがやっつけてくれたから楽だったが……」

 

「あの程度の影では束になってもレヴィさんには敵いませんからね」

 

「…そうね……敵になるとしたら━━」

その時、天井にヒビが入り

 

「うおっ!?」

なにかが天井を突き破り落ちてきて、アラタは驚いて後ろへ飛び退いた。

 

「なんだ!?」

 

「なにかが落ちてっ!?」

アラタたちが衝撃による風圧を両腕で顔を庇いながら落下してきた"何か"を確認しようとした時、砂塵の中に巨大な人影が現れた。

 

「やっぱりここであの人が出てくるッスよね」

 

「だんな様、ここからは相当の覚悟がいるわ」

人影が現れると同時にレヴィとアリンが前に出て戦闘体勢に入った。

 

「…お前らか」

威圧するような低い声が響き砂塵が晴れると、そこには両脇に目を回したミラとアキオを抱えたカタクリが着地の衝撃により出来た小さいクレーターの中から現れた。

 

「少し待て」

カタクリはアラタたちに待ったをいうと、ミラとアキオの二人を慎重に壁に寄りかからせた。

 

「なんでそいつら気を失ってんだよ?」

 

「10階ほど上の階から下に向けて大穴を開けて飛び降りてきたんだが、着地の衝撃で4、5階ぶち抜いてしまったんだ」

 

「なにしてんだ!?」

カタクリの無茶苦茶な行動にアラタは目が飛び出しそうな勢いで驚きながらもツッコミを入れた。

 

「ミラ、アキオ起きろ」

カタクリは二人に声をかけながら頬をやさしくペチペチと叩いた。

 

「うぅ……はっ!?ここは!?」

 

「……あれ?私らカタクリに抱えられて大穴に」

 

「起きたか?」

カタクリの呼び掛けにミラとアキオは意識を取り戻し、カタクリの顔を確認すると

 

ゴンッ バシッ

 

ミラは手に持っていた水晶でカタクリの頭を殴り、アキオはルーンを宿した腕でカタクリの頭を叩いた。

 

「こんな無茶は二度と…二度と!!しないでくださいカタクリ」

 

「今回ばかりは私もダメかと思ったぜ」

 

「……すまん」

頭にたんこぶが出来たままカタクリは二人に謝った。

そしてミラとアキオはいつも通りの調子を取り戻し本来の目的に向けて動き出した。

 

「さて行きますよアキオ、カタクリ━━レヴィさんがここにいることが、この先にユイさんがいる何よりの証明…!!」

 

「いやいや待てって!!行ってユイを殺すんだよな!?」

 

「消滅させるつもりです、崩壊現象の原因ですから」

 

「短絡的すぎんだろ!?」

一切の妥協もなしにユイを消滅させるというミラに我慢出来ないアラタは走りだしミラたちの前に立ちふさがった。

 

「…別に貴方から消してあげても構わないんですよ?貴方の魔術は私には効かないんですから」

 

「うっ!?そうだった!!」

前に自身が起こしてしまった崩壊現象にて魔力を打ち消す魔術が効かなかったことを思い出して焦り後ずさったアラタに一人の救世主が現れた。

 

「しょうがないッスね、アラタさんはまだ銃も使いこなせない素人状態ッスからねー」

 

「お…おい……ニンジャ?」

 

「へぇ……もしかしてレヴィが相手してくれんのかい?」

 

「こういう熱い展開もちょっと面白いッスよ」

そしてレヴィは腰にある忍刀を抜いて構えた。

 

「たしかに!!私もレヴィと一度本気(ガチ)でやってみたかったんだよー!!」

 

「だがアキオ、時間はねぇからなここは俺も行くぞ」

 

「ホントはレヴィと一対一でやりたかったけど仕方ないよな」

 

「そういうことだレヴィ、俺たちの任務のためだ……悪く思うな」

対するレヴィの眼前には、トリニティセブン随一の攻撃力を持つアキオと学園最強の男カタクリのタッグが立っていた。

その二人を前にしてレヴィは冷や汗を流していた。

 

「ここは自分が引き受けるんでリリス先生たちは先に行ってくださいッス、ユイさんを助けられるのはアラタさんだけッスからね」

 

「でもあの二人が相手では…さすがに」

 

「大丈夫ッスよ、自分ニンジャッスから」

 

「……了解しました」

 

「わかったわ…」

 

「"嫉妬(インウィディア)"の書庫(アーカイブ)に接続――テーマを実行するッス!!…"神風招来(しんぷうしょうらい)"」

レヴィが巻物型の魔道書を口に咥えて術式を展開した途端、周囲に暴風が吹き荒れた。

 

「きゃっ…!?」

 

「ぐっ……なんつー風だっ…!!」

突然の暴風にリリスは捲れあがるスカートを押さえ、アラタも思わず姿勢を低くして暴風に耐えていた。

しかし不意に視線を前に向けると、捲れあがったスカートと縞模様の

 

「ウサギ……パンツ…?」

 

「━━━━っ!!」

お気に入りのウサギの縞パンをガン見されたミラは顔から火が出るほど真っ赤にしていた。

 

「アアアアアキオっっ!!!!はは早く終わらせてこの不浄な男の眼球をとっとと潰してくださいっ!!」

 

「…大将は純情だなぁー」

 

「いいから早くっ!!」

 

「アラタ…!!今のうちに行きましょう」

 

「おっ おう…」

ミラが取り乱してる間に先に進もうとアラタが立ち上がろうとした時、突然寒気を感じて一歩身を引いた瞬間

 

ガキイィィンッ

 

アラタの顔のすぐ横に三又の槍が高速で飛来して壁に深々と突き刺さり、アラタの首に一筋の傷が出来てそこから流血し始めた。

もし身を引かなかったら間違いなくアラタの首は飛んでいたことだろう。

 

「なん…だよ……これ?」

 

「かわしやがったか」

いきなりの臨死体験をして腰を抜かしたアラタの前にカタクリが現れ、深々と壁に突き刺さった三又槍を軽々と引き抜いた。

 

「槍の名は"土竜(モグラ)"、お前の頭……眼球ごと(えぐ)りとってやる!!」

そう言ってカタクリは、三又槍"土竜(モグラ)"を構え直し再びアラタの頭目掛けて突き立てようとしていたが

 

「アラタっ!!」

 

「アラタさん!!」

 

「ちぃっ!?」

リリスの射撃とレヴィのクナイ投げにカタクリは土竜を素早く振るい飛んで来たクナイと弾丸を弾き飛ばした。

 

「だんな様!!」

 

「うおっ!?」

その隙にアリンがアラタを抱えてカタクリから距離をとったことで窮地は救われた。

 

「逃がさん!!」

 

「おっと、今の相手は自分ッスよ」

逃げるアラタを追撃しようとするカタクリを背後からレヴィが忍刀で攻撃するが、カタクリは背中に武装色の覇気を纏ってレヴィの攻撃を防いだ。

 

「やっぱり簡単には行かないッスよね」

 

「無駄だ、お前の動きは見えている」

カタクリは防御からすぐに土竜を構えて突きを繰り出すが、普段からニンジャといっているだけはあるのかレヴィは持ち前の超スピードで回避して後ろへ回り込もうとする。

 

しかし

 

「…見えているといったはずだ」

 

「くぅっ!?」

回り込む前にカタクリからの蹴りをくらい、レヴィは忍刀で防ぐが体格の差からか風に吹かれる枯れ葉のごとく吹き飛ばされ壁に激突した。

 

さらに

 

「おっと私も忘れちゃ困るぜ?」

アキオの蹴りが迫りレヴィは咄嗟に横に転がってかわすが、蹴りによって破壊された壁の破片が飛び散りいくつか身体に当たってしまった。

 

「(やっぱりこの二人相手に勝負したのは間違いだったッスかね?)」

 

「あぁ、間違いだな」

 

「……カタクリさん、乙女の心の声を見聞色で聞くのは失礼ッスよ?」

 

「…………」

今さらながらトリニティセブンの一角と学園最強を同時に相手したことに少し後悔していた心の声をカタクリの見聞色の覇気で聞かれたレヴィはジト目で睨みカタクリはそっと視線をそらした。

 

「……行くぞアキオ」

 

「あいよ」

沈黙に耐えられなかったのかカタクリはアキオに呼び掛け二人同時にレヴィに向かって走り出した。

 

「オラぁ!!」

まずはアキオが蹴りを繰り出すが、レヴィは持ち前の超スピードの俊敏な動きでかわすが

 

「…無駄だ」

 

「くっ!?」

回避した先をカタクリの三又槍で的確に突かれレヴィは反射的に忍刀で受け流した。

そして、カタクリに反撃しょうとするが

 

「セイヤぁ!!」

 

「おっと!?」

再びアキオの蹴りが迫りかわして距離をとることにした。

 

「まだまだ行くぜー!!」

 

「!!…待てアキオ!!」

 

「うおっと!?」

距離をとったレヴィに接近しようとアキオが動こうとしたとき、突然カタクリがアキオの後ろ襟を掴み引き止めた。

 

「なにすんだよカタクリ!?」

 

「前をよく見ろ」

 

「はぁ?…前を見ろって何を……ってなんだこれ?」

言われた通りにアキオが前をよく見ると何やら黒い糸のようなものが張り巡らされていた。

 

「よく気付いたッスね、カタクリさん━━『忍法・(えい)()(ばく)()』」

 

「お前の使いそうな手だ、だが………無意味だ」

そう言うと、カタクリはレヴィに向かってゆっくりと歩き始めた。

 

「止まるッス!!その糸は無理に通ろうとすると身体が切れるッスよ!!」

 

「そうか……だがさっきも言ったが俺には無意味だ 」

糸はカタクリの身体に食い込み無惨にも切断された。

 

「なっ!?」

だが身体が切断されたにも関わらずカタクリはそのまま進み、なんと影糸縛鎖を抜けた。

さらに、切断されたはずの身体も服も傷一つ付いていなかった。

 

「い、今のは…いったい……!?」

 

「……そうか、お前は俺の能力を知らないんだったな」

 

「カタクリさんの能力は覇気だけじゃ………っ!?」

 

「っ!?」

 

「これは……っ!?」

レヴィが目の前で起きた現象に驚いていると、先程アラタたちが向かった方向から強大な瘴気(しょうき)を感じとり動きを止めた。

 

「…ミラ、アキオ、レヴィ……ここは一時休戦だ」

 

「わかりました」

 

「この状況じゃ、しょうがないか…」

 

「たしかにそうッスね」

カタクリが一時休戦を提案して他の三人が賛成すると四人はアラタたちが向かっていった方向へ走り出していった。

 

 

 

そして、カタクリたちが目的の部屋に辿り着いた時、そこには漆黒のドラゴンとそのドラゴンに囚われている今回の崩壊現象の原因である少女の姿があった。

 

「"Dの幻魔(コードD)"…やはり顕現(けんげん)していましたか……」

 

「……少し厄介だな」

漆黒のドラゴン"Dの幻魔(コードD)"を見たミラとカタクリはドラゴンを睨みつけていた。

 

「一時休戦?」

 

「まぁ、あんなのが現れちゃ悠長に遊んでらんないわなー」

アリンがそう聞くと、アキオはよほど暴れたりなかったのか不満そうな表情をしていた。

 

「幻想種の中で最強と(うた)われるドラゴンの形態をした幻魔…」

 

「…所詮(しょせん)は魔物だ……だが油断はしねぇ行くぞ」

 

「援護しますっ」

Dの幻魔(コードD)を警戒するミラだがカタクリは余裕を見せながら倒す敵に向かって歩き、その後ろをアキオとアリン、そして武器を錬成したリリスが続いてついていった。

 

「俺とアキオが前に出る、アリンはサポートをしてくれ」

それだけ言うと、カタクリはドラゴンに急接近するとその頭を蹴りあげ

 

「アキオ!!」

 

「おう!!」

カタクリが合図を出すと、アキオは飛び上がりさらにドラゴンの頭を蹴り飛ばした。

しかし、ただやられるだけのドラゴンではなく空中にいるアキオ目掛けて鋭い爪で引き裂こうとした。

 

「させませんっ!!」

だがそれを黙って見ているだけではないリリスが、手にした大型ライフルでの援護射撃でドラゴンの鋭い爪に風穴を開け消しとばした。

 

「グルゥアアァァ!!」

 

「させないわっ」

腕を消してとばされて怒ったドラゴンはリリスにブレスを放つが、リリスの前にアリンが立ち防御の魔法陣を展開して防いでくれた。

 

「ハアァァッ!!」

ブレスの隙を突くようにカタクリはドラゴンの懐に滑り込むと武装色の覇気を纏わせた三又槍"土竜"を素早く振るい長い胴体を等間隔にブツ切りにした。

 

「リリス先生ーっ」

 

「はい…っ!?」

ドラゴンがブツ切りにされたその時、突然レヴィに呼ばれリリスは戦闘の手を止めて振り返った。

 

「アラタさんに魔術のレクチャーを」

 

「ああ…!!了解しました……ミラさんしばらくお願いします」

そう言って、リリスはカタクリたちへの援護をミラに任せるとアラタのもとへ向かった。

 

「グギャアアァァッ!!」

それと同時にドラゴンはブツ切りにされた身体を修復して咆哮(ほうこう)をあげ、自分をブツ切りにしたカタクリを視界に捉えると大口を開けて突進してきた。

 

「無駄なことを……いい加減…」

突進してくるドラゴンを見据えながらカタクリは三又槍に再び武装色の覇気を纏わせると上段に構え

 

「失せろ」

渾身の力で三又槍を振り下ろしドラゴンの身体を真っ二つに叩き斬った。

さらには、振り下ろした軌道をなぞるように天井、壁、床にも大きく切り込みが入っていた。

 

「流石です、カタクリ」

 

「まだまだ勝てる気がしないなー、カタクリには」

 

「学園最強の異名は伊達じゃないッスね」

 

「…すごいわ」

 

「まさかカタクリさんの力がこれほどとは…」

 

「これが……学園最強…」

それを見ていた面々はカタクリの力に驚いていたり、流石だと称賛したりとそれぞれの反応をしていた。

 

「おっと……こんなことしてる場合じゃなくて、行くぜ魔道書!!〝認識顕現(リアライズ)〟!!」

 

「〈OKマスター!!術式(マクロ)を実行するぜ!!〉」

アラタが詠唱(スペル)を唱えると魔道書は淡く光り形を銃の姿へと変わった。

 

「……できた」

 

「っ!?」

 

「なに…っ!?この物凄い不浄な魔力…!?」

膨大な魔力を感じとりミラとアキオが振り返ると、すでにドラゴンへ照準を合わせたアラタの姿があった。

 

「みんな……そこをどいてくれーっ!!」

 

「〈なぁマスター、なんかカッチョイイ必殺技名でブチかましてやってくれよ〉」

 

「おうよ…えー…えーと…」

突然の要望に頭を悩ませたアラタだが、いい技名が決まったのかドラゴンにしっかりと狙いを定めると

 

「崩壊現象を消し去れ!!メテオパニッシャー!!」

 

「グギャアアァァ!?」

銃口から極太のレーザーのような魔弾を撃ちだし、真っ二つの状態から復活したドラゴンの頭を正確に捉え完全に消し去った。

 

 

 

 

 

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「……んっ…レヴィ…さん…?」

 

「おっ、気がついたみたいッスね」

"Dの幻魔(コードD)"がアラタの必殺技により消し去られしばらく経った時、崩壊現象の原因であった少女『倉田(くらた)ユイ』は深い眠りから覚めると目の前にいた親友の姿が目に入った。

ちなみに今のユイは一糸纏わぬ裸姿ゆえにアラタのメイガスモードのコートを掛けられている。

 

「よ…よう、大丈夫…か?」

 

「あ……」

そして、アラタがそう言いながらユイに近づき声をかけるとユイは目尻に涙を浮かべると

 

「お兄さんーっ、助けてくれたんだね!!だいすきっ!!」

 

「おわーっ!?」

 

「コラー!?アラタ!!貴方って人はーっ!!」

掛けられていたコートを払いのけるとユイは裸姿のままアラタに抱きつき、小柄ながら豊満な胸部を押しつけた。

日頃からスケベなことを言うアラタだが純情なのか顔を赤らめて恥ずかしがり、いつものようにリリスに怒られていた。

 

「……せめて隠せ」

 

「わぁ…」

カタクリは払いのけられたコートを拾うとアラタに抱きついたままのユイの肩に羽織らせた。

ユイはカタクリの顔を見た途端に満面の笑顔になると

 

「カタクリお兄ちゃんもユイを助けてくれたんだ!!嬉しいっ!!」

 

「うぶっ!?」

ユイはアラタから離れ今度はカタクリに抱きついた、しかしコートを羽織らせるためにしゃがんでいたためか頭に抱きつかれてしまい豊満な胸部に顔を包まれたカタクリはうめき声をあげてしまった。

 

「なななぁっ!?」

ユイがカタクリに抱きついたのを見たミラは、顔を真っ赤にして甲高い声をあげて驚いた。

 

「おいカタクリ!?なに羨ましいことやってんだよーっ!!」

 

「そういうことじゃないでしょ!!アラタ!!」

顔面に胸を押しつけられているのを見て羨ましそうに騒ぐアラタの頭にリリスは強めのチョップを叩き込んだ。

 

「ユユユユイさん!?いい加減カタクリから離れてください!!」

 

「やーだーっ!!カタクリお兄ちゃんから離れたくないーっ!!」

そして、いまだにカタクリに抱きつくユイを引き離そうとするミラだがユイも駄々をこねて離れようとしなかった。

 

「やれやれ、相変わらず騒がしいこった」

 

「まぁ、これで一件落着ってことでいいんじゃないッスかね」

 

「…だな」

そんな騒がしい光景を少し遠目からアキオとレヴィが眺めながらそう語り合っていた。

 

 

 

 

 

こうして、ビブリア学園にて起こった眠りの崩壊現象事件は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

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