「お姉ちゃん……どうして…」
「どうしてって……悪の魔道士っぽくてかっこいいでしょ?」
悲痛な表情で姉に問うセリナを見ても、リーゼは気にする様子もなく自身の衣装を自慢気に見せていた。
それを見たセリナが何かを言おうとするがミラに遮られ後ろへ下がった。
「何故、我々の元を去り禁忌を犯したのですか?」
「それは…ほら、魔道士だもん……魔道の研究のためよ」
ミラに問われてもなお学園を去ったこと、禁忌を犯したことに対してまったく悪びれる様子もなくリーゼは手元にタブレット型の魔道書を呼び出した。
そして、リーゼが魔道書を操作すると周囲に無数の数字羅列が現れた。
「
「なっ…!?」
そう言うとリーゼの姿は光とともに消え失せたが、アラタの背後へ瞬間移動のように移動していた。
「(ふふっ、いただき……っ!?)」
そのままアラタから魔力を奪おうとしたが、悪寒を感じたリーゼが後ろへ飛び退くと眼前を鋭い刃が通過していった。
「あぶないっ!!」
「おわっ!?」
少し遅れてセリナもリーゼの現れる場所がわかっていたのかアラタを引っ張ってその場から離れた。
「お前の動きは読めている」
「もう、しつこい男は嫌われるわよ?コワモテくん」
アラタの危機を救ったのはカタクリであった。
彼が誰よりもいち早くリーゼの移動先へと三又槍を投げつけていたのだった。
「それにしても、セリナにはまたバレたわね?」
「わっ…私だって
「…………」
セリナのやや強気な発言を聞いたリーゼは一瞬ポカンとしていたが
「あーん…うれしいわ!!さすが私の愛しい双子の妹!!ちゃーんと研究して魔力も高めてるのね!!」
口では褒めつつも品定めするような視線を向けており、セリナはその視線に恐怖を感じていた。
「ちょっとおイタが過ぎないかい?……っ!?」
そう言って、背後からアキオが蹴りを叩きこむもリーゼの上半身が黒い霧のように崩れて受け流されてしまった。
「……あぶないじゃない」
そして、霧のように崩れた上半身を修復すると何事もなかったようにリーゼは笑みを浮かべていた。
「加勢するッスよ」
「…私も教え子の不良化は止めないといけませんっ!!」
アキオの蹴りを容易く回避したリーゼをみたレヴィとリリスはそれぞれの武器を持ち戦闘態勢に入った。
「うーん……さすがにアキオにニンジャ、センセさらに学園最強まで相手にするには分が悪いわね」
リーゼは分が悪いと言いつつも余裕そうに瓦礫に腰掛け足を組んでいた。
「そういえば噂の魔王候補くんは、まだ魔道士なりたてなんだ」
「まあな、だからいまだに禁忌やら不浄とか言われてもよくわからん!!」
アラタは敵であるリーゼに話しかけられても、あっけらかんとした様子で会話していたが
「なにをのんびり話をしていやがる!!」
「うおっ!?」
カタクリが回収した三又槍を手にして再びリーゼに攻撃を繰り出すが瞬間移動でかわされ、攻撃の余波でアラタは吹き飛ばされてしまった。
「危ねーだろ!!」
「敵と話してるお前が悪い!!」
「敵って……でもアイツはセリナの…」
「カタクリ!!」
「っ!?」
アラタと口論しているとミラに呼ばれ、カタクリはリーゼから意識を外してしまったことに気付き周囲を警戒するが
「いただきまーす♥️」
「あっ…んあっ…」
リーゼはセリナの背後に回り首筋に吸い付き魔力を吸収してしまった。
「ぷはっ」
「セリナ!!」
魔力を吸収したリーゼはセリナを離すと瞬間移動でカタクリ達から少し離れた場所に移動し、セリナはその場に倒れてしまった。
すぐにアラタが駆け寄り身体を起こすがセリナの意識はなく苦しそうにしていた。
「んー……セリナ…ちゃんと頑張って魔力を溜めてたみたいねエライエライ♥️」
「なっ!!……不浄な魔力が上昇している…!?」
「こりゃヤバいぜ大将」
セリナの魔力を吸収して魔力が上がり黒い瘴気のようなオーラを背中から出しているリーゼを見て、ミラとアキオは冷や汗を流した。
「
背中に黒い瘴気の翼を生やしたリーゼは不敵な笑みを浮かべていた。
「おいっ!!セリナ…セリナ!!」
「……見てだんな様」
アラタがセリナに呼び掛けるが依然として気を失っており、そばに寄ってきたアリンがセリナの首筋を見てあることに気がついた。
「首筋になにか刻印みたいなものがあるわ」
「これは……魔王の刻印…!?」
アリンと一緒に刻印を見たリリスは、それがなんなのか知っているのか顔を青ざめていた。
「…世界を飲み込み消滅させる崩壊現象を、ただそこに在るだけで導くもの━━リーゼ……あなたは本当に不浄な魔王の候補者になってしまったのですね」
妹に手を出してまで魔王候補になったリーゼを、ミラが睨み付けるがその言葉の中にはかつて信頼していた仲間の悪行に対しての悲しさが感じとれた。
「魔道士の究極の悲願である〔魔王〕……その候補者になりたいって思うのは、魔道士なら当たり前じゃない?」
「ですが…!?それは研究と
リーゼの言葉にリリスが教師らしく努力の必要性や大切さを教えるがリーゼは気に食わなかったのか不満そうな表情をしていた。
「えーっ、嫌よそんなの━━私はそこにいる魔王候補くんみたいに一足飛びがいいのっ!!過程をすっとばして結果にたどりつく、それが私の研究だしね!!」
リーゼはアラタに視線を向けるが、それを遮るようにカタクリが立ちはだかり睨みつけていた。
「あら?コワモテくんは楽な道はキライなのかしら?」
「……いや俺も楽な道があるならそちらを選ぶ、その方が効率がいいからな…」
「カッ…カタクリさんっ!?」
カタクリがリーゼの言葉に同意してリリスは驚いたが
「…だが……仲間や家族に手をかけてまで楽な道に進みたいとは思わねぇ」
一呼吸置いて、カタクリは三又槍を突きつけてはっきりとリーゼの考えを否定した。
「そうだな…カタクリの言うとおりだ、オレもなんつーかダチの魔力を奪う……ってのは嫌だな」
そして、その言葉に同調するようにアラタはカタクリの隣に並び立ちリーゼに向けて魔道書を持った右手を突きつけた。
「へぇ…魔王候補くんとコワモテくんって意外と熱血系?」
「……俺をこんなバカと一緒にするな、心外だ」
「ひどくねっ!?」
リーゼのセリフに反応したカタクリの心ない言葉にアラタはツッコんだ。
そんな漫才のようなことをしていると、魔道書であるアスティルの写本がアラタに語りかけてきた。
「〈ホントにやるのか?アイツはいままでの奴の何倍もやべーぞ?〉」
「へっ!!…魔王候補はオレの専売特許なんでね!!」
「〈ハハッ!!違いない!!〉」
そうして、アラタは魔力を右手に集中させた。
「〝
「〈OKマスター!!
アラタの魔術が発動されて魔道書は光り輝くと、その姿を一挺のリボルバーへと変えた。
「わお!!錬金術!!……どれどれ…」
アラタの使った錬金術に見たリーゼが、タブレット型の魔道書『
「…〔魔力を完全に消滅させて崩壊現象すら打ち消す力〕〔倉田ユイの溢れる魔力をも打ち消して目を覚ますことにも成功〕…か」
何故かアラタ達しか知らないはずの情報をスラスラと口にしたのである。
「…セリナの研究結果によるとなかなか侮れないみたいね」
「セリナの研究結果?」
「そっ…アタシは魔力を喰らった相手の研究も盗めるのよ」
「……他人の魔力と研究を盗める…か」
「厄介だな」
リーゼの驚きの能力にアラタは冷や汗を流して警戒し、カタクリは普段と変わらぬ表情でいるがすぐに動けるように構えていた。
「魔王候補くんの特殊な力も他の魔術をパクるってやつでしょ?……どう?アタシと一緒に〝こっち側〟へ来ない?」
アラタとカタクリが身構える中、リーゼはアラタに突然の勧誘を持ち掛けてきたのであった。
「そっちって……〝悪の魔道士〟サイドか?」
「そっ!!センセやセンパイがいると悪いこと出来ないでしょ?」
「おいっ!!こいつの話に耳を傾けんじゃ……!?」
「それにね……たぶんだけど━━━」
「っ!!」
カタクリが咄嗟に話を終わらせようと声をかけるが、リーゼが空間に投影した画像を見たアラタの耳にカタクリの言葉は届かなかった。
「『
「なっ!?……なんでお前が聖のことを!!」
「知りたい?」
そう言った瞬間、リーゼはアラタのそばに移動して胸元に寄り添い下からアラタの顔を見上げていた。
「知りたいなら、ほらコッチにおいで春日アラタくん……それとも
こちらを見上げて妖艶な笑みを浮かべるリーゼの顔を見たアラタは身体が思うように動かなくなっていた。
「今ですアキオ!!彼ごとやりなさい!!」
「あいよっ」
それを好機と見たのかミラはアキオにアラタごとリーゼを殺すように指示を出し
「レヴィさん、なるべくアラタは━━」
「検討するッス!!」
リリスはレヴィにアラタを傷付けずリーゼを倒すように嘆願した。
「このバカ野郎っ!!」
そしてアラタの隣にいたカタクリも、リーゼを始末するために三又槍を突き刺そうとする。
「「「っ!?」」」
「レヴィさんっ!?」
「アキオ!!カタクリ!!」
しかし、三人の攻撃が届くよりも速くリーゼは背中から黒い翼を展開すると暴風の障壁を生み出して三人を弾き飛ばし、レヴィとアキオは地面に叩きつけられたが、カタクリは空中で身を翻して着地していた。
「さーて………いただきまーす♥️」
邪魔者を弾き飛ばしたリーゼは、アラタの顔に自身の顔を近づけそのままキスをした。
その光景に赤面する者、呆然とする者、ショックを受ける者と色々な反応を示していた。
「んくっ……あっ、ああぁ♥️…す、すごい……こんなに
「ぐあぁぁっ!?」
アラタの質の高い魔力を吸収したためかリーゼが色っぽい表情で官能的なセリフを呟いてるそばで、アラタは苦痛の表情で断末魔をあげていた。
「アラタっ!!」
断末魔をあげて倒れるアラタを咄嗟にリリスが駆け寄って受け止めるが、アラタはぐったりとした様子で動けれそうにはなかった。
「かっ、体の…力が……」
「〈あー…こりゃヤバいな、マスターの魔力がほぼスッカラカンになっちまった〉」
「ははは!!すごいわね~、さすが魔王候補くん!!」
アラタの魔力を吸収してさらに魔王因子の力を引き出したリーゼは、気分が良くなったのか高笑いしていた。
「せっかくだから……ちょっと試してみようかしら♥️」
不意にリーゼはそう言うとリリス達に向けて手を伸ばしパチンッと指を鳴らした瞬間、なんとアラタが初めて崩壊現象の魔力を消し去った時のようにリリス達の衣服が跡形もなく破れさってしまったのである。
「あははは!!爽快ねコレ!!」
その様を見たリーゼは、さらに気分を良くして高笑いしていた。
「おイタが過ぎますよ、リーゼロッテ・シャルロック!!」
「おっと…さすがにセンパイははね返したみたいね」
しかし魔術の解析・反射を得意とするミラはリーゼの魔術を反射して防いでいた。
だがさすがに完全に反射出来なかったのか衣服は少しボロボロになっていた。
「自分もいるッスよ」
「へぇ……ニンジャまで…」
レヴィも何らかの方法で防いではいたがトレードマークであるマフラーはボロボロになり、手にしている忍刀も刀身がほとんど砕けてしまっていた。
「…………」
「あぁそっか……コワモテくんは魔力がないから服は破けないのは当然よね」
そしてカタクリの衣服はまったく破けてはいなかった。
魔道士の衣服は魔力で構築していることが多いが、カタクリは普通の服であったために衣服破壊が効いていなかったようだ。
「せっかくだからちょっと本気を━━」
「レヴィ」
「なんすか?カタクリさん」
クナイと少しの刀身しかない忍刀を構えたレヴィをカタクリが前に出て止めた。
「お前はリリス先生達のそばにいろ、アイツの相手は俺がやる」
「ならここは二人で行った方が確実に━━」
「お前が警戒してくれれば、俺は戦闘に集中出来る」
「……はぁ~、わかったッスよ」
ため息混じりにそう言ってレヴィはクナイと忍刀をしまい、衣服を消されて身動きがとれなくなったリリス達の所へ移動していった。
「そういうことだミラ……すまない」
「相変わらずですねカタクリ」
レヴィを身動きのとれない者たちのために警戒にあたらせるカタクリの仲間思いの行動にミラは思わず笑みを浮かべていた。
「……行くぞ」
「はい」
カタクリはミラの前に出て三又槍を構え、ミラは後方で魔力を高めて戦闘準備を整えた。
「
「いいわ…かかってきなさい!!今の私が最強だってこと教えてあげるっ!!」