王立ビブリア学園の完璧超人   作:滅悪狩人

8 / 11
首席検閲官(トップセキュリティ)と完璧超人

 

「カタクリ、彼女の魔力をスキャンしますのでその間の時間稼ぎをお願いします!!」

 

「…あぁ」

リーゼとの戦闘が開始されると同時に、ミラの指示を受けたカタクリはリーゼに向かって接近した。

 

「学園最高の魔道士と学園最強の男の実力…見せて━━」

もらうわ!!と言いかけた矢先、カタクリがいつの間にか拾っていた石ころを指で弾き弾丸のように飛ばしてリーゼの眉間を貫いた。

だがリーゼはこれを予想していたのか頭を黒い霧のように霧散して受け流すとその場から消えてしまった。

 

「……そこか」

 

「っ!?」

霧散して消えたリーゼを見たカタクリが誰もいない空間に向かって覇気を込めた三又槍を突き出すと、0と1の帯と共に瞬間移動してきたリーゼの頬を掠めた。

 

「逃がさん」

たまらずリーゼは後ろへ下がるが、カタクリは一気に距離を詰めて武装色の覇気で黒く硬化させた拳を繰り出す。

だがリーゼは当たる直前に自発的に黒い霧のように霧散して回避して消えた。

 

「…………」

リーゼが消えるとカタクリは、なんとミラの方へ向けて石ころ二つを指で弾いて飛ばしたのであった。

 

 

 

しかし、その弾道はミラの頭の横をすり抜けその後ろに発生していた黒い魔力の塊を撃ち抜いた。

それはリーゼの魔力をスキャンしていて無防備になっていたミラを狙ってリーゼが攻撃するために発生させた魔力の塊であった。

 

「ありがとうございます、カタクリ」

 

「……お前はそのままスキャンに専念しろ、お前には指一本触れさせん」

ミラは自分の頭の左右を石ころが弾丸のような速度で通過したにも関わらず一切動じておらず礼を言いカタクリが応えてそう言うと、ミラは頬を赤らめていた。

 

「(スキありっ!!)」

その時、ミラの方を向いていたカタクリの背後からリーゼが瞬間移動で現れた。

 

「…お前の動きは見えている」

だがカタクリは身をかがめて地面から石ころを多めに取ると、腕を振るいすべての石ころを散弾のように撃ち出した。

 

「くぅっ!?」

それを見たリーゼはたまらず背中の翼で自分の体を包むようにして石ころの散弾を防いだが衝撃が強く、後ろへ弾き飛ばされた。

 

「ふぅ…相変わらず速いわね、それにまるで未来が見えてるみたいに移動先を攻撃してくる先読み……アタシも強くなったつもりなんだけどなー」

 

「たしかにあの夜より強くなってはいるが、この程度なら問題なく対処は可能だ」

リーゼは自身の強化された力についてくるカタクリに感心すると、カタクリに真っ向からその程度と言われてしまった。

 

「そこまではっきり言われちゃうと悲しいわね、コワモテくんとセンパイの目を盗んであの子らの魔力をいただくっていうのも出来そうにないし………ここはあの手で行きましょうか」

そう言うと、リーゼは手元に魔道書を呼び出すとなにかを操作し始めた。

 

「ふむふむ……魔王候補くんの研究によると、コワモテくんのその力は覇気っていうのね……攻撃と防御の強化に行動の先読み、敵への威圧」

 

「…魔力を奪ったあの男の研究から俺の情報を引き出したか」

 

「ふふっ、情報はとっても重要な武器なのよ♥️」

リーゼはカタクリにウィンクしながらそう言うと、その場から瞬間移動で姿を消してしまった。

 

「…無駄だ」

カタクリは見聞色の覇気で先読みをしてリーゼの現れる場所に向かって三又槍を突き出した。

 

「言ったでしょ?情報は武器だって」

 

「っ!?」

だが三又槍を突き出した先にリーゼは現れたが攻撃は当たらなかった。

リーゼは先読みした先に現れたと同時に体を黒い霧のように霧散させて攻撃を回避してカタクリの懐へと接近していたのであった。

 

「舐めてかかると痛い目見るわよ♥️」

リーゼはそう言いながら手をカタクリの腹部に当てると、黒い波動のようなものを放ち吹き飛ばすがカタクリは腹に武装色の覇気を纏わせて防いでいた。

 

「うわっ、今のかなり本気で攻撃したのにほとんど効いてないってちょっとショックだわ」

 

「…………」

 

「あら?なんで攻撃が当たらなかったか不思議なんでしょ?」

攻撃をくらい立ったまま動かないカタクリを見たリーゼはイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべていた。

 

「簡単よ、移動先を先読みして攻撃されると分かっているなら移動した先で攻撃に対処すればいいだけのこと」

 

「つまりカタクリの先読みを逆手にとったってわけか…」

 

「まさかそんなことが…」

 

「魔王候補になったアタシにならそれが出来るのよ、今のアタシは学園最強よりも強い!!」

 

「ふっ」

カタクリに攻撃を当てたことに驚くアキオとミラに自信満々に最強になったと宣言するリーゼだが、不意にカタクリが笑いだした。

 

「……なにがおかしいのかしら?」

 

「久しぶりに俺に攻撃を当てたヤツと出会えてうれしいのさ、お前なら俺の能力を使っても簡単には終わらなさそうだ」

そう言った瞬間、カタクリが左手の人差し指と親指で銃のように構えて向けると手の部分が白く変色して人差し指の指先だけが黒く染まっていた。

 

「なんだ…カタクリの手が白く……?」

 

「あれは…いったい…」

 

「カタクリがあの能力を使うなんて久しぶりだな」

それを見ていたアラタとリリスが突然白く変色した手に困惑している横でアキオはどこか懐かしそうな表情で呟いた。

 

「あの能力?」

 

「あぁ、カタクリには覇気とは別にもうひとつの能力があるんだよ」

 

「それはいったい?」

 

「見てれば分かるさ、ただひとつ言えるとすれば……いままで見てきたカタクリの強さは全力じゃなかったってことだよ」

アラタとリリスはアキオに言われるままに再びリーゼとカタクリの戦いに視線を向けた。

 

「“モチ刃弾(はだん)”」

 

「っ!?」

カタクリは左手を構えたままそう言った瞬間、なんと武装色の覇気を纏わせていた人差し指の指先を銃弾のように射出したのであった。

予想外の攻撃方法にリーゼは驚くが咄嗟に黒い霧となり回避して、その場から消えた。

 

「…右」

カタクリが右と言って左手を右に向けて指先を射出すると

 

「なっ!?」

射出させた先にリーゼが現れて弾丸は腕を掠めた。

突然のことに動揺するが、とどまっていると危険と判断したリーゼはすぐにその場から瞬間移動で消えた。

 

「…左」

次に左に向けて指先を射出すると

 

「あぐっ!?」

再び射出させた先にリーゼが現れ、今度は腹部に弾丸が命中した。

しかし、直前に魔力で防がれ貫通はしなかったようだが流石に完璧には防げなかったのか撃たれた腹部には血が滲んでいた。

そして、リーゼはまた瞬間移動でその場から逃げるが

 

「…右…前…左…後ろ…」

次々とリーゼの現れる場所を言い当て弾丸となった指先を撃ちリーゼを追い詰めていった。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

先程まで優勢に立っていた状況から一変してリーゼは肩を上下させながら大きく呼吸しており、体の至るところに血が滲んでいた。

 

「もう逃げるのは終わりか?」

 

「っ……まだよ!!」

カタクリの挑発にリーゼは怒ると、瞬間移動でカタクリの目の前へと移動したが

 

「…前」

当然カタクリは待ち構えており指先をリーゼの眉間に狙いすませていた。

指先が撃ち出されリーゼの眉間に迫るがリーゼはそれを狙っていたのか首を傾けて弾丸を紙一重でかわした。

 

「…捕まえたっ!!」

そして、そのまま0と1の羅列帯をカタクリの左腕に巻きつかせて拘束したのだ。

 

「これでコワモテくんの左腕は封じたわよ」

 

「……ほぅ、なかなかやるな」

追い詰められた状況から決死の行動で左腕を拘束したリーゼにカタクリは感心したように誉めていた。

 

「コワモテくんには悪いけど、このまま左腕をへし折らせて……」

しかし、そこまで言ってリーゼの言葉は続かなかった。

なんとカタクリは右手に持っていた三又槍を器用に片手で回すと、三又槍を振り下ろし拘束されていた左腕を肩の部分から切り落としてしまった。

 

「カタクリっ!?」

 

「いやああぁぁ!!カタクリお兄ちゃん!?」

なんの躊躇もなく左腕を切り落としたカタクリを見たアラタは叫び、ユイは悲鳴をあげて両手で顔を覆った。

リリスとレヴィ、アリンも突然の行動に言葉を失っていたが、ミラとアキオだけは驚いてはいなかった。

 

「アナタいったいなにを……っ!?」

リーゼも驚いており血迷った行動を起こしたカタクリになにか言おうとした時あることに気がついた。

肩からバッサリと左腕を切り落としたにも関わらず血が一滴も流れていないのだ。

 

「この程度で騒ぐな」

そう冷たく言い放つと、左腕を切り落とした際の切断面から白い粘液のようなものが流れ出てくると、それはまたたく間に左腕の形を成したのであった。

 

「ふぇ~っ!?カタクリお兄ちゃんの左腕が……治ってる!?」

 

「……どういうことだよ」

両手で顔を覆ったまま指の間からカタクリを見たユイは左腕が治っていることに驚き、アラタは混乱しているのか呆然としていた。

驚く面々を見たアキオがカタクリの謎の能力について説明し始めた。

 

「カタクリは体を餅に変える不思議な能力があるんだよ」

 

「体を餅にっ!?」

 

「でも、そんな魔術は聞いたことがないッスよ?」

アキオの言葉にリリスは驚き、レヴィは内心驚きつつも冷静にアキオに質問していた。

 

「そりゃそうさ、あれは魔術じゃないからさ」

 

「魔術…じゃない?」

 

「カタクリが言うには、変な果物を食べたら体を餅に変えられるようになったらしい」

 

「そんな馬鹿な話が……!?」

 

「実際にあるんだよリリス先生」

馬鹿げた話にリリスがなにかを言おうとするが、アキオの言葉に黙るしかなかった。

 

 

 

その時

 

 

 

「カタクリありがとうございます、読み取り完了しました」

ようやくミラのスキャンが完了したのであった。

 

怠惰(アケディア)書庫(アーカイブ)から停滞(スタグナ)のテーマを抽出」

 

「ヤバッ!?」

ミラの魔術が来ると感じたリーゼがその場から逃げようとしたが

 

「逃がさん……“(とり)モチ”」

カタクリがなにかを操作するような動きをすると、リーゼのそばにあったカタクリの切り落とした左腕が液状の餅になりそのままリーゼに飛びかかるとその場でがんじがらめに拘束してしまった。

 

「やん!!なによこれベタベタする~!?」

 

「…粘液になった餅と美少女……あれはあれでエロいな」

 

「アラター!!」

液状となった餅の粘液がまとわりつき少々きわどい姿になったリーゼを見たアラタが鼻の下を伸ばしていたがすぐにリリスに怒られていた。

 

そして

 

「〝白き時(ホワイト)冬の世界(ユニバース)〟!!」

ミラの強力な魔術が発動しミラを中心にして周囲を吹き飛ばす衝撃波が放たれ、カタクリの鳥モチによって拘束されていたリーゼはその衝撃波に飲み込まれていった。

 

 

煙が晴れるとミラの立っている場所を中心に周囲の地面が大きく抉られていた。

 

「……やりましたか?」

 

「…いや」

リーゼの姿が見えないことにミラがそうカタクリに聞くと、カタクリは拳に覇気を纏わせると

 

「まだだ」

 

「いったぁ!?」

ミラの背後から迫っていたリーゼの手をはたき落とした。

手をはたかれたリーゼはそのままミラとカタクリの前に瞬間移動で現れた。

 

「ふぅ~、危なかったわ……魔王候補クンの魔力も貰っておかなかったらやられてたわね」

 

「まったく…忌々しいのはいつも彼ですね…」

アラタの魔力のおかげで助かったと聞いたミラは、心底嫌そうな表情をしていた。

 

その時、緊迫した空気の中おもむろにカタクリは懐から懐中時計を取り出して見ていた。

 

 

 

 

「あー、こりゃちょっとヤバいな……」

懐中時計を見たまま動かないカタクリを見たアキオは、冷や汗を流していた。

冷や汗を流していたアキオを見て不思議に思ったアラタがどうしたのか聞いてみた。

 

「なにがヤバいんだ?」

 

「カタクリのヤツ、メリエンダの時間が過ぎてイラついてるんだよ」

 

「メリエンダ?」

聞きなれない言葉にアラタは首を傾げていた。

 

「〈おいマスター、取り込み中のところ悪いが私はさっさとトンズラすることをオススメするぜ〉」

 

「トンズラ!?……でもそんなにヤベーのか?見るからにカタクリが優勢に見えるんだが……」

 

「〈今のところはな……だがあのニーちゃんの攻撃…だんだん荒さが目立ってきてる上に、あの魔王候補のネーちゃんの方も攻撃に慣れ始めてやがるぜ〉」

 

 

 

 

「…………」

 

「どうかしましたか?カタクリ」

 

「今日のメリエンダが20分……遅れている」

 

「っ!?」

 

「メリエンダ?」

メリエンダが遅れていると聞いて、ミラは引きつった表情をしておりそれを聞いていたレヴィは首を傾げていた。

 

「早急にカタをつけるか」

そう言うと、カタクリの両腕がグニョグニョとうごめくとなんとガトリング砲へと変形したのであった。

 

「ちょっ!?それは流石にシャレになんないわよ!?」

 

「お前は抵抗するようだが捻り潰すまでだ……“二連・無双モチ刃弾”」

ガトリング砲に怯えるリーゼを気にも止めずカタクリは無情にも両腕のガトリング砲を向けると、弾丸の雨をリーゼに放った。

 

「きゃあぁぁっ!?」

リーゼは悲鳴を上げつつも瞬間移動と翼の防御を駆使して弾丸の雨を防いでいた。

その間カタクリはただ無言で弾丸の雨を降らせ続け、ついにはリーゼの姿は土煙の中に消えていた。

 

「うわー、カタクリさんエゲつないッスねー」

 

「敵に情けはかけないこと、それがカタクリの戦い方ですので」

無言で弾丸を撃ちこみまくるカタクリを見てレヴィが引きぎみな様子で呟くと、ミラはカタクリらしい戦法だと返した。

 

 

 

しばらく撃ち続けてカタクリは両腕のガトリング砲の回転を止めて腕を下ろして、両腕をガトリング砲から元の腕に戻した。

 

「終わりましたか?カタクリ」

 

「あぁ、これで奴は終わっ……!?」

ミラの言葉にカタクリが応えようとした時、不穏な気配を感じていまだ攻撃の余波で舞う土煙に視線を向けた。

 

 

すると

 

 

「うーん、今のは流石のアタシもダメかと思ったわ」

なんと土煙の中から〝無傷〟のリーゼが姿を現したのであった。

そのリーゼの姿を見たミラは目を見開き驚いた。

 

「何故……先程の攻撃の傷どころか、さっきまで負っていた傷が消えているんですか!?」

そう今のリーゼは先程のカタクリの攻撃の傷の前に、カタクリのモチ刃弾により体中にあった傷がすべて治っていたのだ。

 

「簡単よ…私の数秘術(ロゴス・アート)は時間の操作が得意な魔術でね、傷の治りを早めたおかげでこのとおりってわけよ」

リーゼは服の裾をつまみ上げてグラマラスなボディを見せつけるような行動をとりながら、傷が完全に治癒しているのを証明した。

 

「さてと…まだアタシとやる気?それとも逃げる?」

リーゼはそう言いながら、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 

「……(ひじり)

リーゼの言葉を聞いてアラタは、自身が魔道士になった目的である従姉妹(いとこ)のことを思い出し唇を噛みしめた。

 

 

その時

 

 

「…っ!?……なに?…今の感覚…」

リーゼは身体に巡る不穏な魔力を感じとった。

カタクリとレヴィは、そのほんのわずかな動作を見逃さなかった。

 

「(今が攻め時だが……セリナが限界か…)」

リーゼを見据えながらカタクリは構えるが、視線を後ろへ向けると魔力を奪われてから時間が経つにつれて苦しそうに呼吸しているセリナの姿があった。

 

「ここで逃げたらダメなんだろうけどよ、今はセリナがピンチなんでな逃げさせてもらう!!」

 

「……簡単に逃がすと思う?」

アラタもセリナの容態に気が付いていたのかリーゼから逃げる決断を決めていたが、どうやらリーゼは元から逃がす気はなかったようだ。

 

「時間がないからな、ここは無理矢理にでも逃げさせてもらう……レヴィ、同時に仕掛けるぞ」

 

「……ようやく自分の出番みたいッスね」

 

「ニンジャ…カタクリ…」

そんなリーゼに、アラタとセリナを守るようにカタクリとレヴィが前に出て互いに武器を構えていた。

 

「まずは自分が行くッス!!」

そう言ってレヴィはその場から消えるといつの間にかリーゼの真上に移動していた。

 

「ふっ…残念だけどアタシには止まって見えるわよニンジャ!!」

 

「そうッスか?」

 

「っ!?」

カタクリとの戦闘を経験したリーゼにとってはレヴィの動きは遅いようではあったが、レヴィが自信ありげに口角を上げて笑うと身動きの取れないはずの空中から消えてしまった。

警戒してリーゼはその場から少し離れた場所に瞬間移動で現れたが

 

「……後ろッスよ?」

 

「うわっと!?」

瞬間移動先の後ろにレヴィが先回りしており、リーゼが咄嗟に身を屈めると頭の上をレヴィのクナイが通りすぎていった。

 

「ちょっと!?瞬間移動について来られるチートは、コワモテくんだけで十分よっ!!」

文句を言いながらレヴィの攻撃をよけたリーゼは手に魔力を纏わせるとレヴィに手刀を叩き込んだ。

 

 

 

 

かに思われたが、そこにあったのは宙を舞うレヴィの制服だけだった。

 

「…自分ニンジャッスからねっ」

そしてレヴィ自身は下着姿でリーゼの真後ろに移動しており、リーゼの片方の翼をすれ違い際に切り落としていた。

 

「くっ!?」

片方の翼を切られ、動揺したリーゼだが後ろに立つレヴィに向かって振り返りながら再び手刀を繰り出したがすでにレヴィの姿はそこにはなかった。

 

「あとは頼むッスよ、カタクリさん」

 

「あぁ」

代わりにカタクリがリーゼ目掛けて突進してきていて、三又槍を持つ腕が白く膨張しており槍が高速回転していた。

 

「“モチ(つき)”!!」

 

「ぐぅっ!?」

カタクリの強力な刺突をリーゼは体を捻りかわしたが、カタクリの狙いはリーゼ本人ではなく残ったもう片方の翼であった。

カタクリの高速回転する刺突はいともたやすく翼を抉りとった。

 

「慣れない翼を生やすべきではなかったな」

 

「翼の分遅れている……というわけですね」

 

「まさかさっきの異変で見抜かれてたとわね……」

カタクリとミラに動きの鈍くなった理由を言われて、図星だったのかリーゼは困ったような表情をしていた。

 

「弱点を突く戦法をレクチャーしたのは私ですよリーゼ……現在あなたの魔力は最高位ですが、それを使いこなせていないならそれは三流魔道士と同じこと」

 

「あははー…なるほどこれは分が悪いわね……アタシの魔力が落ち着いた頃、また招待することにするわね…アデューッ♥️」

ミラの言葉を聞いたリーゼは、自身の魔道書を呼び寄せると近いうちにまた現れるような事を言うと投げキッスをしながら去っていった。

そして、リーゼが消えたためか荒れ地の荒野の風景から一変して元いた図書館へと戻ってきていた。

 

「戻って……これたのか…?」

 

「まぁ、今回は痛み分けってとこッスね」

アラタの言葉にレヴィが頷いて答えた。

 

「……ですが次は…この男の不浄な力を使いこなせるようになっているということですか……」

 

「あーえっと……その…すまんっ」

 

「?」

ミラが今後起こりうることを言っていると、突然アラタが顔を赤くさせてミラに謝ってきた。

 

「セクシーな格好ありがとう…だな」

 

「え?…なっ…ななっ…」

おそらくリーゼとの戦闘で限界を迎えていたのかミラの服はボロボロになっていてほとんど裸に近い姿をしており、ミラは両腕で自身の体を抱くようにして隠した。

 

「むぐっ!?」

アラタがそんなミラに何かを言おうとした瞬間、ミラの後ろから白い物体が飛来してアラタの顔面を覆うように貼り付いた。

 

「むぐぐ!?…むー!!…むー!!」

 

「アラタ!!大丈夫ですか!?」

 

「わー!?お兄さーん!!」

 

「…これは?」

ミラが突然のことに驚いていると、後ろからカタクリが現れて着ていたレザーベストをミラに羽織らせた。

 

「間に合わせだか、それで勘弁してくれ」

 

「いえ…その…ありがとうございます」

羽織らせられた服がカタクリがさっきまで着ていたレザーベストだと分かったミラは顔を赤くしていた。

 

「いい雰囲気のところ悪いけどよ、あの兄ちゃん大丈夫なのか?」

そんな中アキオが二人のそばに来て指差す方を見ると、そこには顔に貼り付くモチを必死に剥がそうとしてのたうち回るアラタの姿があった。

 

「当然の報いだ」

 

「そうですね、当然の報いです」

 

「はぁ~、やれやれ」

そんなアラタの姿を見てもなお冷たい対応をする二人にアキオは呆れていた。

 

「そんなことよりアキオ、カタクリ……本当は嫌ですが━━━」

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「リーゼさんが次に襲ってくる前に……あの不埒な魔王候補を使えるようにしますよ」

 

「なんだと?」

 

「正気か?大将」

 

「認めたくはありませんがリーゼさんに対抗するには、あの男の力が必要なんです」

ミラの決断にカタクリとアキオも最初は驚いていたが、最終的には二人ともミラの考えに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとカタクリさん!?これどうやって取るんですか!!」

 

「うわーん!!全然取れないよー!!」

ちなみにアラタの顔に貼り付いたモチは、リリスとユイの頼みによってカタクリから教えてもらった助言により取り除くことに成功したそうな

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。