ハヤテのごとく! オリ主もの   作:生きた屍

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第一話

 ――とある公園。

 その公園の草陰に、身を隠すようにして潜む影が二つ。

 一人は綾崎ハヤテ。

 そしてもう一人は――。

 

「本当に、うまくいくんですかね……」

「カカッ、この俺様、笹井一条を信じろよぅ、ハヤテ」

 

 どこか悪人染みた笑いを上げる、怪しい男だった。

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

「は~、ったくよ~。スリは失敗するわ、強盗はやる前に仲間が全員いなくなっちまうわ、借金取りには追われるわ……。今日はどうにもついてねえなぁ、おい」

 

 笹井は行く当てもなくふらふらと、町の中を歩いていた。

 と言うのも、彼がつぶやいている通り、今日は何をやっても失敗しているからだった。

 ――ケッ。やってられねえな、今日は。

 そう思って公園で野宿でもするか、と歩き出すと、突然、後ろから走ってきた少年とぶつかった。

 

「あ?」

「うわわわ……すみません、すみません! 今はいろいろヤバいのですみません!」

 

 そう言って、その少年は急いで去って行った。 

 ――なんだぁ、あのガキ? 随分と急いでるみてえだが……。

 少し経つと、笹井にも見覚えのある奴らがやってきた。

 

「げえ!? お前は笹井ィ!?」

「あん? 借金取りの連中か……。ヒャッハハ! どうしたぁ? 俺から金を持ってくのかよぉ?」

「い、今はお前に用はない! お前ら、さっきの奴を追うぞ!」

「「は、はい!」」

 

 借金取りたちは、去り際笹井をちらちら見ながらいなくなった。

 ――詰まんねえ連中だ。

 

「……ん? あいつらの言うさっきの奴って、俺にぶつかってきた奴か? カカッ、こりゃ面白くなってきたぜえ!」

 

 笹井もさっきの少年を追うことにした。

 ――だが、借金取りの奴らを追ってっても見つからねえだろうしなぁ……。それにこの辺で身を隠せてかつ、野宿までできそうなとこは……公園がちょうどいいか? ま、もともと当てはねえんだ。見つかりゃ儲けもんだな。

 笹井は公園に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

 そして、難なくハヤテを見つけた笹井は、二人で誘拐でもしようぜ! と、強引に誘って冒頭に至る。

 すでに辺りは暗くなり、すっかり夜になっていた。

 今現在二人は自販機近くの草陰に潜み、ターゲットが来るのを待っていた。

 

「……あ、なんか女の子が来ましたよ」

「……みてえだな。パッと見ただのガキで金にはならなそうだが……」

 

 ――あのパーティードレス……安物じゃあねえな……。これは、当たりか?

 笹井が早速行動に移ろうとしたところで、邪魔な男二人が現れた。

 

「ね~ね~、君可愛いね」

「こんなところにいないで、俺らとどっか一緒に行かない?」

「え? へ?」

 

 ――カカッ。

 

「邪魔だ、ガキ共ぉ! 帰ってママの乳でも吸ってなぁ!」

 

 その男たちにイラついた笹井は、すぐさま近くの一人の鳩尾に蹴りを入れると、そのまま二人目に突っ込んでいった。

 

「ヨ、ヨッちゃ~ん!? ……な、なんだよ、アンタ……」

「なんだ、だぁ? こちとら生活が懸かってんだよ! とっとと失せろ!」

 

 蹴り飛ばした男をひるんでいる男のほうに投げ飛ばし、笹井は威嚇した。

 

「う、うう……ヨッちゃ~ん、こいつ怖ぇよお~……」

 

 泣き言を言いながら、もう片方の男を肩で担ぎ去って行った。

 ――けっ、骨のねえ奴らだぜ。……はっ!

 

「あ、あの、ありがとう。助かったよ」

 

 笹井はターゲットにお礼を言われていた。

 ――……カカッ。……いや、笑えねえ……。

 笹井が草陰にいるハヤテに目を向けると、どうやら驚きのああまり固まっているらしかった。

 ――こりゃあ完全に俺の失敗だな……。本当に今日はついてねえぜ……。

 

「……別に俺ぁアンタを助けたわけじゃあねえよ。……ったく、予定が狂っちまったぜ……ハヤテェ! 別の奴見つけんぞ」

 

 草陰にいるハヤテに声をかけ、次のターゲットを見つけようと、笹井は公園の出口に向かっていった。

 そんな笹井に、後ろから声がかけられた。

 先ほどの少女だ。

 

「あ、あの……何か、お礼がしたいんだが」

「ああ? お礼? この俺に?」

 

 少女はこくんと頷いた。

 ――……はあ。お礼、お礼ねえ……。正直もうこのガキに興味はねえんだよなあ。

 笹井は数秒考えると。

 

「じゃあ俺のことはもう忘れてくれよ。これで俺とアンタは何の関係もない赤の他人ってこった……はあ」

「あっ、お、おい」

 

 笹井はそれっきり振り返ることはなく、そのまま公園の外に出た。

 ハヤテはこそこそと笹井の後をついていき、同じように外に出た。

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

 ――さて、これからどうすっかなあ。

 笹井は公園から出てから途方に暮れていた。

 ハヤテも同様に。

 

「さっきは悪かったな、ハヤテ。調子に乗った結果がこのざまだ……」

「い、いえ。僕もあのままだったら、このイライラをあいつらにぶつけてたと思いますし……」

「……そうか……。つまりは元から成功するはずがなかったってわけだ」

「「……はあ」」

 

 笹井とハヤテが同時にため息をついた。

 ――……あ、そういや。

 

「お前は何で追われてんだ?」

「あ、え!? 知らなかったんですか!? いきなりあんなこと言ってきたから知っているものだと」

「いや、借金取りに追われてんの見たからよ。なんかあんのは分かってたが、それが何かまでは分からねえよ」

「そうだったんですか……」

 

 少しの沈黙の後、ハヤテは口を開いた。

 

「……実は、親から莫大な借金の代わりに、その、売られまして……」

「……ほほう。その親ってのも、なかなかに悪人みてえだな。んで、お前はそれが嫌で逃げてきて、俺に会ったってわけか……」

「笹井さんは?」

「俺か? 俺はだな……」

 

 笹井が話し始めようとしたところで、聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえてきた。

 

「誰かーーー!」

「くっ、うるせえ!」

「とっとと乗りやがれ!」

「ぐっ、くそ、離せ!」

 

 ――ん? あれはさっきの……。

 先ほど自販機の前で笹井が助けた女の子が、二人の男に車に乗せられそうになっていた。

 どうやら縄で捕まっているようだ。

 

「さ、笹井さんっ! あの子、さっきの!」

「分かってるよぉ! 先に見つけて諦めた獲物だがなあ、他の奴にとられるってのは気に入らねえ……一丁、助けるとすっかぁ!」

 

 そう決めたところで、車が発進したのが見えた。

 ――さ~て、啖呵切ったのはいいが、どうするか……。

 

「……ん?」

 

 ――こりゃちょうどいいぜ。

 笹井の視線の先には、ママチャリを引いている一人の女性が写っていた。

 

「大変! あの娘ったら誘拐されてる!」

 

 その女性は、その誘拐されいる現場を見つけてそう言った。

 ――おいおい。こいつはマジで運が回ってきたんじゃねえか?

 

「笹井さん!」

「おうよ! 分かってるってぇ! おい、そこのアンタ。そのチャリ借りるぜ!」

 

 笹井はママチャリを引いていた女性から、半ば強奪する勢いでとった。

 

「も、もしかしてあの娘を助けてくれるんですか?」

「さあな。行くぞハヤテ! お前は自転車漕げ!」

「了解です! 笹井さんは?」

「お前の肩に乗る」

「……え」  

 

 

 

 

 ―――――――――

 

 

 

 

 一方車で逃げている誘拐犯たちと少女。

 

「へへっ、うまくいきやしたね、兄貴」

「一人になってくれて助かったぜ」

「……で、これからどうするんですか兄貴」

「今考えているぞ弟よ。まあとりあえず身元がわからんとな」

 

 その様子を後部座席で見ていた少女は一言。

 

「空気が汚れるから、しゃべるのをやめてくれないか?」

「な、なんだとこのガキ!」

「待て弟よ! 殺しちまったら金も要求できなくなるんだぞ!」

 

 少女の一言に怒って、少女に手を出そうとする弟に、兄は忠告する。

 

「だったら、こいつの体に直接教え込むだけだぜ」

「……え、お前いつの間にそっちに……」

 

 弟は後部座席の少女に近づく。

 

「くっ、やめろ、こっちに来るな! 人を呼ぶぞ、馬鹿者!」

「馬鹿はどっちだよ嬢ちゃん! ここに助けに来てくれる奴がいるとでも思ってんのか!」

 

 着々と近づいていく男の手。

 少女は、ただ願う。

 ――誰か、助けて。

 その願いが届いたかのように、一人の男がボンネットに現れた。

 

「ヒャッハハハハッ! 助けが来ねえとでも思ってたのかよぉ!」

「うおお!?」

 

 運転していた男は、突然現れた笹井に驚き、ハンドルを切った。

 

「落ちるわけがねえだろ!」

 

 だが笹井は落ちない。

 ひたすらしがみついていた。

 そして車は止まった。

 

「く、くそ!」

「さあて、壊させてもらうぜえ!」

 

 笹井はボンネットに立ち、フロントガラスを蹴り続ける。

 

「は、はん! そんなので壊れ――」

「ねえわきゃねえだろ!」

 

 フロントガラスは数回目の蹴りで呆気なく割れ、中の誘拐犯たちに降り注いだ。

 

「ぎゃあああ!?」

「うおお、い、痛ぇ! 刺さってる、刺さってるって!?」

「うるせえんだよ! ……ったく。おい嬢ちゃん、無事か」

 

 笹井はボンネットから降り、後部座席のドアを無理やりこじ開けた。

 あまりの出来事に呆けていた少女は、その声に気の抜けた返事をした。

 

「おいおい、大丈夫かよ……まあいいや。とっととここから離れんぞ。警察が来ると厄介だからな」

 

 そう言いながら、まだ呆けている少女を脇で抱える。

 

「う、うわ!? 何をする!」

 

 笹井は少女の声には耳を傾けず、外で待たせているハヤテのところに向かった。

 

 

 

 

 ――――――――― 

 

 

 

 

 そしてまた公園の入り口に戻ってきた四人。

 先ほど笹井が自転車を拝借した女性もいる。

 

「よ~し。上出来だハヤテ。お前は予想以上の逸材だ。いい悪人になるぜ?」

「それ……褒めてるんですか……?」

「あ、あの、ありがとうございます。この娘を助けてくれて」

「いえいえ。当然のことをしたまで――」

「ええそうなんですよ。私たちはその娘を助けたわけで」

 

 笹井はハヤテの言葉に割り込んで話した。

 

「こっちも善意だけでやるってのは、さすがに、ねぇ」

(笹井さん、口調まで変わってるよ……)

 

 ハヤテは、笹井のその態度の豹変に呆れたような視線を送る。

 

「は、はあ」

「で、実はですね。私たちは今仕事がなくなってしまって……そこらへんをどうにかこう、できればと」

「そんなことでいいのか?」

 

 それまで黙っていた少女が、笹井に話しかけた。

 黙っていたというより、叫び疲れて休んでいた、と言ったほうが正しいだろう。

 

「なら、三千院家で働けばいい」

「あ?」

「へ?」

 

 これが、これから長い付き合いとなる、三千院ナギとの出会いだった。

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