PARALLEL QUEST   作:8mn

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この話はポップを強化しているのですが、
進行の関係上、ダイは若干ですが弱体化されてます。
ついでにダイの天然も強化。

でないと序盤の中ボスぐらい余裕でボコボコ(笑)


気高き者・2

「な、なんだ・・・この雄たけびは・・・!?」

 

凄まじい威圧感と共に近づいてくるその雄叫びに、マァムは心当たりがあった。

 

「この叫び声・・・モンスターが群れを成してお城を襲う時に、いつも聞こえる雄たけび!」

「て事は、こりゃモンスターの親玉の声だな・・・」

 

イキナリの大物の接近に、ポップは軽く腕を鳴らす。

 

「よっしゃ!このまま村までこられちゃマズイ。

どこか森の中で迎え撃つぞ!!」

 

「・・・丁度いい場所があるわ、案内する!」

「頼む!!行くぞ、ダイ!」

「うんっ!」

 

簡単な作戦をと打ち合わせが済むと、ポップ達は森の奥へ――雄たけびの主の元へと駆けて行く。

 

 

***

 

 

マァムが案内した場所は、鬱蒼と光も差し込むことが少ない魔の森とは思えぬほど開けた場所だった。

 

「よし!ここで声の主が来るのを待つぞ!!」

「・・・ねぇポップ?

村の方に行っちゃったらどうするの??」

「お前な・・・」

 

ダイの天然発言に、せっかく入れた気合が根こそぎ萎えていくのを感じながら、ポップは噛んで含める様に説明してやる。

 

「城すっ飛ばして森の奥の村に、今さら魔王軍が何の用で攻め込んで来るんだよ・・・

タイミングからして、俺達狙って来てるに決まってるだろうが!」

「・・・何で?」

「ダイ、お前デルムリン島で追い返したの、誰だか忘れたんじゃ・・・」

 

素直で可愛いダイだが、勇者としての才能はともかく、脳みそはお花畑のようだ。

 

とりあえず少しずつ勉強させようと、ダイが知ったら逃げ出しそうな計画を立てていると、例の雄たけびはすぐそこまで迫ってきた。

 

「来たわ!!」

 

 ウオオオォォンッ!!

 

人間が発しているとはとても思えない叫びは、その振動だけで近くの木々を引き裂き、ポップ達に凄まじいプレッシャーを与えてくる。

 

そして――

 

 バキイィィッ!!

 

「見つけたぞ・・・・・・小僧ども!」

 

ついに声の主は巨大な斧で近くの木々を打ち払い、ポップ達の前に姿を現した。

 

「リザードマン!」

 

モンスターとしてはかなり上位の種だ。

さすがに最強のドラゴン族に比べれば多少劣るが、見たところ知性も高く厄介な相手には違いない。

 

「我が名は獣王クロコダイン!

魔軍司令ハドラー様が指揮する六つの軍団の一つ、百獣魔団の軍団長だ!!」

 

律儀に名乗るところに真面目な軍人ぶりが窺える・・・

 

「我が魔王軍はモンスターの性質によって百獣・氷炎・不死・妖魔・魔影・超竜の六つの軍団に分かれておる。

――俺の軍団は恐れを知らぬ魔獣の群れよ!!」

 

さらに聞かれもしないのに軍の構成を教えてくれるのだから、実は親切な奴なのかもしれないな・・・などど、こんな時に呑気に感心しているポップを尻目に、クロコダインはポップ達にさらに宣言する。

 

「ダイ・・・そしてポップよ!」

 

「どうして俺の名前を・・・!」

「・・・・・・」

 

「ハドラー様の勅命によりお前達を討つ!

――死にたくなければ必死で発揮するのだな・・・魔軍司令殿をも傷つけたという、お前達の真の力を・・・!」

 

強い者を求める典型的な戦士・・・クロコダインをそう評価したポップは、側にいたダイとマァムにそっと声を掛ける。

 

「なあマァム・・・お前は前衛・後衛・・・どっちだ?」

「一応どちらもイケるわ・・・呪文はさほど得意じゃないけど、回復系を少しとこの『魔弾銃(マダンガン)』がある!」

 

そうして手に取って見せてくれた変わった形状の『銃』を、ポップはマジマジと見つめた。

 

「それ『鉄砲』だよな?」

「ええ。

本物の鉄砲は火薬が詰まった弾丸を撃ち出すらしいんだけど、アバン先生がくれた『魔弾銃』は、火薬の代わりに魔法を撃ちだすことができるのよ!」

「そいつは便利だな・・・よし!作戦決まり!!

ダイ、お前は前衛であの鰐ひっかき回せ!

マァムは少し後ろでダイの援護だ!」

「・・・ポップは戦わないの?」

 

再び放たれるダイの天然発言に、ポップは軽ーく眩暈を感じた。

 

「俺はか弱い魔法使い様なんだよ!

あんな力押しの鰐男相手に腕力勝負が出来るか!

いいから!お前は!俺が呪文撃つ時間を稼げ!」

 

「うん!分かった!!」

 

分かってくれたようだ・・・

そんな二人の様子を見て、マァムが戸惑いの声をかける。

 

「なんだか・・・大変そうね・・・?」

「まぁな・・・アイツはまだ駆け出しの勇者で、レベルが全然足りないからな・・・」

 

この戦いが終わったら、まずは戦術の基礎から叩き込もう・・・そう心に誓うと、今度はクロコダインが心配そうに声をかけてきた。

 

「・・・そろそろ、はじめてもいいか・・・?」

 

やはり真面目な男のようだ・・・

 

 

***

 

 

先制はマァムの攻撃。中距離から銃を撃つ!

 

おそらく炎系呪文が詰まっていたのだろう・・・人の頭ほどの火球が敵に襲い掛かる。

 

しかしクロコダインはそれを避けるでもなく、一つ大きく息を吸い込むと・・・

 

 ぐはあっ!!

 

吐き出す気迫だけで炎をかき消す。

 

「うそ!?」

 

そんなことで攻撃を無効化されたマァムが、驚きに目を見張る。

 

「フッ、そんな攻撃じゃスライムだって殺せんぞ!

それっ!今度はこっちの番だ!!」

 

クロコダインは斧を構えると、

 

「ぬおおおおっ!!」

 

 ドガアアッ!!

 

振り抜かれた衝撃波が、背後の大岩も森の木々も薙ぎ払ってしまう。

 

「すごい!

パワーだけならハドラーより上だ!!」

 

完全に地形が変わったその威力に驚くダイ達に、クロコダインは誇らしげに語りだす。

 

「クククッ・・・我ら軍団長を見くびるなよ!

各々の得意とする技においては、ハドラー殿を上回る力があるからこそ、軍団長を任せられておるのだからな!!」

 

「・・・なら!これならどうだ!!」

 

続けてダイがクロコダインに飛び込む!

 

「アバン流刀殺法大地斬!!」

 

 ドガァッ!!

 

ナイフはクロコダインの小手を砕くも、そこで終わり。

強固な鱗に覆われた皮膚には、かすり傷も付けられない。

 

「おいおい・・・」

 

その丈夫さにポップが声をもらす。

ダイの大地斬は大岩も割ることが出来る・・・その攻撃が効かないなら、力押しの物理攻撃はほぼ無効という事だ。

 

マァムの戦力にしても初見ではハッキリしないが、どうも詰められた魔法の威力や種類によって上下すると見ていい。

 

(やっぱり、俺が行くしかないか・・・)

 

何も貧弱な魔法使いだから前線に出ないのではない。

 

本当の目的はダイの戦闘能力の底上げだ。

 

この先ハドラーや、その後に控える大魔王を倒すためにダイは強くならなくてはいけない。

アバン亡き今、実戦のみが確実に強くなる手段なのだが、魔法の使えぬダイの攻撃がほぼ無効なら、彼を主体にした戦法は使えない。

 

あまりポップ自身が出張って戦うとダイの成長を妨げるかもしれないが、今回は贅沢は言ってられないようだ。

 

――兄弟子としてダイ君を導いて下さい。

 

(やっぱり先生の代わりは難しいです・・・)

 

師の言葉を思いだし、胸中静かに息をついた。

 

「ダイ!もうちっと動いてスピードでかき回せ!

マァムも無理せず中距離の援護に徹してくれ!!」

 

「ほう?なかなか賢い奴がいるな・・・」

 

ポップの的確な指示にクロコダインが感嘆の声を上げる。

敵とパーティーの戦力を見抜き、一番確実な戦法を取るのが、後方を守る呪文使いの役目・・・

 

子供だらけのメンツでその重責を担うポップに、クロコダインの興味が移る。

 

「確かポップとかいう賢者だな・・・次は貴様が出てくるか?

だが呪文を使う隙はやらんぞ!!

唸れ!真空の斧よ!!」

 

 ゴオォォァアアッ!!

 

クロコダインの持つ大斧の宝玉が輝き、辺りを真空の風が渦巻く。風は刃となり周囲をランダムに切り刻んでいく。

 

「これは・・・『バギ(初級風系呪文)』!」

 

「前に先生が言ってたよ・・・伝説の武器の中には道具として使うと、呪文の効果をもつものがあるって・・・!!」

「だ・・・だめ!

これじゃ近づけない!!」

 

「ぐふふ・・・これで呪文は使えまい!!」

 

ダイもマァムもその場に踏ん張るのが精一杯だ。

 

クロコダインの言うとおり、炎や氷の呪文は使えない――敵に届く前に霧散する可能性が高いし、下手をしたら味方に跳ね返る。

 

だがポップは冷静に戦術を組み立てていく――

 

「バギマ(中級風系呪文)!!」

 

「何!?」

 

『力ある言葉』と共に、ポップの腕から放たれた突風が敵の呪文をかき消していく。

 

「メラ!!」

 

 ドオオォォン!!

 

「――早い!?」

 

まだ先に唱えた『バギマ』の効果も収まらぬうちに唱えられた呪文の早さと、『メラ』とは思えぬ威力のすさまじさに、クロコダインは戦慄する。

 

これでは詠唱など『無い』も同然だ!

 

そして、クロコダインが態勢を立て直す隙をポップは与えない。

 

「『イオ(初級爆烈呪文)!』」

 

やはりほぼ『ゼロ』から放たれる爆撃がクロコダインのすぐ目の前で弾けた。

 

「グウオォッ!?」

 

呪文は直撃せず、クロコダインの目の前で弾け、ダメージの代わりにその視界を奪う。

 

「ほれっ!」

 

隙を逃さずポップがクロコダインの間合いの内に飛び込み、ひざ裏に回し蹴りを叩き込んだ。

 

「ぬうう・・・!?舐めるなぁ!!」

 

その攻撃に一瞬クロコダインがバランスを崩しかけるも、そこは非力な魔法使い――決定打に欠けたようで

踏ん張られてしまう。

 

「ちっ!」

 

「これで終わりだ!!」

 

すぐ真下にいるポップに攻撃すべく、斧を振り上げたその時――

 

 ドォン!!

 

「な!・・・これは『ヒャド(初級氷系呪文)』!?」

 

マァムの魔弾銃から放たれた攻撃が、その腕ごと『真空の斧』を封じる!

 

「・・・いい判断だ!」

 

幼い顔に似合わぬ笑みをその口元に浮かべ、ポップは狼狽えるクロコダインの顎をコブシで打ち上げる。

 

――いや、それはコブシではなく・・・

 

「『バギ』!」

 

 バシュウゥゥッ!!

 

「グワアアァッ!!」

 

上方向に威力を特化させた『バギ』だった。

至近距離で放たれた威力は凄まじく、その巨体が一瞬浮いた。

 

「今だ!ダイ!!」

 

「クロコダイン!これでも喰らえっ!!」」

 

その言葉の意味を理解したダイが、追撃をする為飛び上がる!

 

「でやああああっ!!」

 

 ガッ!!

 

ダイの一撃が、今度はクロコダインの左の瞼を穿つ!

 

「ぐああああっ!!」

 

いかな丈夫なクロコダインも目までは鍛えられない。

絶叫を上げると、そのまま倒れ込んだ。

 

「・・・やった!」

 

確かな手ごたえにダイが目を見開く。

 

「バカ野郎・・・!

一撃入れたくらいで油断するな・・・!」

 

強敵を撃退したと喜ぶダイに、ポップの厳しい叱責が飛ぶ。

ポップの指摘通り、すぐにクロコダインはお起き上がる。

 

「グウウウウッ・・・!

よくも俺の顔に・・・いや!俺の誇りに傷をつけてくれたな!!」

 

左目と自尊心を傷つけられたクロコダインは、まさに『怨嗟』の言葉を振り絞るように宣言する。

 

「覚えていろよ!小僧ども・・・!!

お前達は俺の手で必ず殺す・・・必ずだ!!」

 

そのまま腕を振り上げると――

 

 ドガアアッ!!

 

大地に掌打を叩き込み、その威力で巻き上がる爆風の中にクロコダインは消えて行った。

 

「とりあえず・・・追い払ったな。」

 

しかしそれは第一ラウンドの終了でしかないことを、その場の全員が理解していた。

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