「父が戦士で母が僧侶だから、私は僧侶戦士ってところかな・・・」
獣王クロコダインを撃退し、ネイルへと戻るポップ達はその道すがら、懐かしい師の思い出話に花を咲かせていた。
「先生からは回復系や防御系の呪文と、武道を少し習ったわ。
でも、攻撃呪文が出来なかったから・・・」
「あの鉄砲を貰ったんだね?」
「ええ、卒業の日にね。
――あの日の事は忘れられないわ・・・」
目を閉じれば思い出せる・・・懐かしい師との優しい思い出――
――マァムが渡されたのは、一抱えもある大きめの箱。
そしてアバンは続けて懐から、涙型のペンダントを取り出した。
『卒業の証“アバンのしるし”です。
これを着けておけば、全国公認の正義の味方ですよ!』
首にかけられたペンダントが胸元で揺れるのを、マァムはこそばゆく見つめていた。
多少やんちゃでも、マァムも女の子だ。
小さいながらも繊細な作りのアクセサリーに心躍る。
だが続けて受け取った箱は受け取ることを拒否した。
当時のマァムにとって、魔弾銃――鉄砲は、『人を傷つける武器』だったから――
『・・・マァム。
貴女は本当に優しい人ですね。』
欲しかったのは、誰かの幸せを守る力。
――傷つける為のものじゃない・・・
そう訴える少女の優しさを誇らしく思いながら、アバンはマァムの肩にそっと手を置く。
『・・・でもねマァム、愛や優しさだけでは必ずしも他人(ヒト)を守れない時もあるのです。
正義無き力が無力であるのと同時に、力無き正義もまた無力なのですよ。』
それが悲しい現実。
この心優しい少女が傷つくことないよう、アバンは言葉を選んでそのことを伝える。
『それにこの武器はあなたの攻撃力を補うだけでなく、回復・防御呪文で人を救うことも出来ます。
――要は使い方ですよ。』
アバンは『魔弾銃』を再びマァムに手渡す。
『大丈夫!貴女が使っている限り、これが正義無き力になる事は絶対にありません!
・・・私が保証しますよ、マァム。』
おどけた笑顔は、彼女をを安心させる優しさに満ちていて・・・
それが、アバンが旅立つ前の、とても大切な思い出――
「・・・・ちょっととぼけてるけど・・・強くて・・・優しくて・・・
・・・・・・ホントに素敵な先生だったわ・・・」
歩きながら語る彼女の瞳に涙が滲む。
「あ~あ!なんだか急に会いたくなっちゃったなあ~・・・!!」
一瞬目を伏せたが、再び上を向いたときには、大粒の涙を浮かべながらも晴れやかな笑顔だった。
先程の戦いで見せた勇ましい女戦士の面影は消え、代わりに浮かぶ心優しい少女の姿に、ポップもダイもこっそりと目を合わせる。
――アバンはもういない。
その事実を伝えるべきか・・・二人が葛藤していると、不意にマァムがその足を止める。
「何か、あったのかしら・・・?」
村の傍まで来ると、何やら村人が大騒ぎする声が聞こえる。
「・・・まさか、モンスターが襲ってきたんじゃ!?」
「!!?」
ダイの言葉に、ポップとマァムの二人が顔を見合わせる。
完全に想定外だ。
「行くぞ!!」
ポップがそう叫ぶと、二人と共に村へと駆けて行った。
***
騒ぎの元に駆けつけると――
「あ!マァム、大変だ・・・モンスターが!!」
思った通り、モンスターが騒ぎの原因だった。
――だがそのモンスターは・・・
「ピ~!ピピィ~~!!」
まん丸い涙型のシルエット、一対の翼、そして黄金色に輝くその姿は・・・
「ゴメちゃん!?」
「ゴメ!」
「・・・ピピピィィ~~ッ!!?」
村人に追われて泣きながら逃げ回っていたのは、デルムリン島においてきたはずのダイの親友――ゴールデンメタルスライムのゴメちゃんだった。
「ピ~!ピイ~!!」
「ゴメちゃあ~ん!!」
ダイがゴメちゃんに駆け寄ると、ゴメちゃんもこちらに気付き飛びついてくる。
「ピイ~ピピ~・・・!!」
「ゴメちゃん?」
「どうやってついてきたんだ?」
網だ籠だをシーツだと持ってゴメちゃんを追い回してた村人が事情を説明してくれる。
「子供達がアンタ達の置いてった荷を勝手に開けたんだ・・・そしたらそっからソイツが・・・」
「しょうがねえな、潜りこんでたのか。」
「でもよかった、会いたかったよ!」
「ピ~~!!」
喜びにダイの周りをゴメちゃんが飛び回る。
「ダイ・・・その子・・・大丈夫なの?」
「うん!俺の友達なんだ!!」
マァムの心配の声に元気にダイが答えると、ポップも不思議そうに声を上げる。
「でも変だよな。
島を出たのに悪いモンスターにならないなんて?」
「・・・もしかしたら、この子には魔王の邪悪な意思を受け付けない、不思議な力があるのかしらね?」
そういってマァムが撫でると、ゴメちゃんは嬉しそうにその場を回りだした。
「さあ皆!安全なモンスターだと分かったから解散よ。
――二人とも、部屋に案内するから食事が出来るまで休んでて頂戴!」
「助かるよ。
よく考えたら眠くてしょうがないぜ・・・」
すでに夜が明け完徹状態だ。
マァムの案内に二人は素直に寝床に向かう。
アバンの死を胸にかかえながら…
***
ダイ達が島を出て三日目の夜。
デルムリン島のモンスターの多くも、アバンの残した加護の中、穏やかな眠りについている。
そんな中、ブラスは不安そうに夜空を見上げていた。
「どうやらゴメもダイについて行ったようじゃな・・・
無事であってほしいもんじゃが・・・」
旅立った子供達の安全を願い、ぼんやりとしていると…に
――ゾクッ!!
突如ブラスの背を悪寒が走る。
「何じゃ?この凄まじい妖気は!?」
慌てて辺りを見渡すと、どこからとなく不気味な声が響く。
「キヒヒヒヒ・・・
お前がブラスとかいう鬼面同士じゃな・・・」
「ま、魔王軍・・・!?馬鹿なっ!!
この島はアバン殿が残してくれた魔法陣で守られているはず。
あのハドラーでさえ、凄まじい衝撃と共に打ち破ったのに、音も立てずに入って来るとは・・・!!」
「ヒッヒッヒッ、そのくらい造作もないことよ・・・
このワシの・・・妖魔力をもってすればな・・・!!」
――目の前に怪しげな力が満ち、それが徐々に『人』の形をとる。
「おおお・・・お前は・・・!?」
それは小柄な老人だった。
どうやら魔導師のようだが、その目はどんよりと曇り穢れていた。
「ワシの名は妖魔司教ザボエラ・・・!
大魔王六軍団の一つ、妖魔士団の軍団長よ!!」
ザボエラと名乗った老人は、その手に持つ蜘蛛を模った不気味な杖をブラスに向ける。
杖が妖しく光ると、ブラスの意識が遠のいた。
「ワシの役に立ってもらおう・・・」
その不気味な宣言が、ブラスの聞いた最後のザボエラの声だった・・・
きりの好いところで終わらせたら文字数スッキリ
原作通りで盛るところもないからね