「クロコダインとボラホーンの腐った話ほしいのぉ(意訳)」
みたいな感想いただくのですが、ダイ大の界隈でクロコ×ボラホ流行っているのだろうか?(遠い目)
謁見の間は奇妙に静まり返っていた。
「今さら呪文使いのお前が駆けつけた所で何になる!?
確かにポップの魔法使いとしての実力も、参謀としての才能も脅威――しかし本来どちらも後衛の力であって、盾となる者がいない状況では実力も半減する。
そのことを十分理解しているからこそ、クロコダインは年端もいかぬ少年に臆した動揺を振り払う。
だが相手に弱点があるのを見抜いているのはポップも同じだ。
「その貧弱な呪文使い様に、テメーはどんな卑怯な手を使うんだい?」
「!!?」
クロコダインがあからさまに動揺したのが伝わってくる。
やはり彼自身は真っ当な武人だ。とてもブラスを攫ってダイにぶつけてくるような卑劣な手が思いつくような人物ではない。
ならば、いるはずだ――クロコダインに武人の尊厳を捨てるよう唆(そそのか)した者が・・・
「・・・よう、いつまで見てるんだ?
それともあんたは、子供相手にコソコソしなきゃならんほど弱っちいのかい?」
ぐるりと視線を巡らせた先はマァム――正確には彼女を押さえる魔物だ。
悪魔の目玉
あまりメジャーな存在ではないが、確か魔族が偵察や通信を行う際によく用いられるモンスターだと記憶している。
「・・・キヒヒヒ・・・!なかなかスルドイ小僧じゃのう・・・」
たぶんこの魔物の先にいるのが黒幕だろうとあたりを付ければ、案の定魔物から奇怪な声が響いてくる。その目玉の奥にいかにも魔導師然とした老人を確認すると、ポップはあらゆる侮蔑を込めて吐き捨てる。
「思った以上に使えなそうな爺さんだな。
どつかれてポックリ逝く前、に引退した方がいいんじゃないの?」
「フェッフェッ!そうやって相手を挑発して戦力を削ぐか!
小僧のくせに大した役者ぶり・・・やはり油断ならんのう?」
冷静に返され、ポップは舌打ちする。ここで逆上して手を変えるような相手ならやりやすいのだが、思ったより『知略』を重んじるタイプのようだ。
いずれにせよ、遠くから石を投げるような戦い方をする相手にムキになっても仕方ないので、ザボエラは後回しに当面の敵に向き直る。
「フン・・・いかに貴様が優れた賢者であっても、正面から俺を倒せると思うな・・・!」
「冗談!敵の大将叩くのは『勇者の役目』と相場が決まってら!!
・・・俺は俺の役目をこなすまでさ!!」
「役目!?」
てっきり先日の森でしたように、自ら挑んでくると予想したクロコダインは訝しげに片眉(存在しないが)を上げる。
「・・・なあ?俺が今までどこにいたと思う?」
「・・・?」
不敵な笑みを口元に張り付けたまま、ポップは懐から一かけらの『塊』を取り出して見せた。
それはおそらく水晶だろうか?
掌に乗る程度の大きさの塊に、クロコダインが怪訝の視線を投げかける。
「それがどうした・・・まさかそんな石ころで俺を倒す気か?」
「まさか!コイツは昨夜のポーカーの戦利品さ。
・・・あとで返すつもりだったけど、急に必要になってこんな欠片に砕いちまったんだ。」
「だから!それがどうしたと言うのだ!!」
質問にまともに答えない事に痺れを切らしたのか、クロコダインが怒鳴り散らすも、ポップは飄々としたポーズを崩さない。
「焦んなさんな。俺はここに来るまでに、町中のモンスターを一掃するために走り回ってたんだ。
慣れない体力仕事で、明日は筋肉痛間違いなしだぜ・・・!」
「何を言い出すかと思えばハッタリか!
あれだけのモンスターを貴様一人で倒して回っただと!?
出鱈目ならもう少しマシなモノを用意しろ!!」
「だから・・焦んなよ?
誰も一匹ずつ倒して回るわけないだろ――何百匹いたと思ってるんだよ・・・
俺が・・・『俺達』が駆け回ったのは、あくまで準備。
そしてコイツがその答えだ!!」
ポップの全身が淡い燐光に包まれる。
指先から水晶へ・・・そして大地に張り巡らされた『媒介』へ・・・ポップの魔法力が伝わっていく。
昨夜マゾッホから預かった水晶の欠片に、魔法力を込めた簡易の魔法道具(マジック・アイテム)。
それらがポップの望む形で自身の力に呼応することに歓喜する。
(ありがてえ・・・!やっぱあんた等『ニセモン』何かじゃなかったぜ!!)
あれ程怯えていたデロリン達だが、やはり根っからの悪党ではなかったようで、ちゃんと期待に応えてくれた事に強く感謝する。
砕いた水晶の欠片は全部で五つ。
それらは『もう一組の勇者一行』によって町全体を囲う。
ポップを頂点に描かれた文様は――五芒星!!
「これこそが我が師アバンが得意とした伝説の呪文・・・!
――邪なる威力よ・・・退け・・・!!」
城が・大地が・・・ロモスの町全体がポップの魔法力に反応し、眩く輝く!
「マホカトール(破邪呪文)!!」
(凄い・・・ポップ・・・!)
大呪文に呼応するかのように緑の魔法力に輝くポップは、戦場にはどこか場違いなまでの神秘に満ちていた。
そして、その清れつな輝きに呼応するかのように変化が起こる。
「オ・・・オオオオ・・・ッ・・・!!」
大魔王の支配を退ける結界に身を置いたブラスの瞳に、徐々に理性の光が戻り始める。
「バッ・・・馬鹿な!!?」
悪魔の目玉の奥から、ザボエラの驚愕が伝わる。
いかにポップが優れた賢者だとしても、元来複雑な手順を要する儀式魔法を、これほどの大規模で発動させるなど完全に計算違いだ。
「ハッ!?
こ・・・ここは何処じゃ・・・!?わしは一体・・・?」
正気に返ったブラスは全く見覚えのない部屋、状況に狼狽える。
「じいさん!あんた魔王軍に操られてたんだよ!!」
「ポップ君!?・・・・げえっ!!?」
見知った顔を見てほっとしたのも束の間、ブラスは見たこともないような強面のモンスターが自分を見下ろしているのに気づき慌てふためく。
「・・・おのれっ!」
その巨大な腕がブラスに迫る――
ツドオォオン・・・!!
「むうっ・・・!!?」
触れる直前で、クロコダインの腕は火炎魔法に弾かれる。
撃ったのは――マァム!
マホカトールによりザボエラの支配が及ばなくなくなり、弱くなった拘束を振り払い、魔弾銃を撃ち隙を見てブラスを救出する。
「いいぞマァム!そのままじいさんとダイを頼む!!」
「分かったわ!無理しないで!」
これで大分状況は改善した。あとはダイが回復するまでクロコダインを押さえておけばいい。
一方のクロコダインは突然の劣勢に困惑を隠せない。
「貴様!一体何をしたのだ・・・!?」
「魔を拒む光の魔方陣で、効果範囲内の低級モンスターを無害化したのさ。」
何でもないかのように語るが効果は絶大だ。
今頃町中のモンスター達も、大魔王の支配から解放され大人しく逃げ帰っていることだろう。
「・・・どんな気分だ?」
「何ぃっ!?」
「妖怪爺の策にまんまと踊らされた揚句、何もかも失う気分は、どんなかって聞いてるんだよ。」
「・・・・・・!!」
安い挑発だが、今のクロコダインにとってはこれほど滑稽な結末はない。
己が身の可愛さに誇りを捨て、卑怯な手段を用いてまで栄光に固執したのに、今はその全てが否定されようとしている
男の誇りを失ってまで、自分はこんな結末を望んでいたのか?
葛藤の果てに光明を探るも、同じく策を失い追い詰められた者の声が響く。
「えええ~~いっ、クロコダイン!!
何をしている!?早くそのガキを殺してしまわんか!!」
マホカトールの影響下でも通信機能だけは失われなかったようで、悪魔の目玉の奥からザボエラが、なおもけしかけてくる。
このままクロコダインが敗北すれば、策を授けたザボエラも責任を追及されかねない。
保身の為というならクロコダインの百倍は卑怯な老魔導師は、口角を飛ばして喚きたてる。
「時間稼ぎに乗るでない!
マホカトールは大技じゃ!いかにそのガキが優秀な賢者でも、大幅な魔力の減退は避けられん!!
援軍が現れん内に殺してしまえ!!」
「!?」
「・・・面倒な爺だ・・・!」
大当たりだった。
そもそもここに来るまで町を駆け回り、障害を排するため少なからず魔力を消費していた。
戦えないほどではないが、戦士相手に一対一で向かい合うには少々コンディションが悪い。
――挑発にのって我を失ったクロコダイン相手に、短期決戦を挑みたいところだが、残念な事に伊達に年はとってないザボエラまでは騙しきれなかったようだ。
「・・・許せ・・・小僧!!」
「生憎、大人しく殺されてやる気はねえよ・・・!」
もう引き返せぬクロコダインと、引く気のないポップ。
両者決め手のないままに睨み合う事数瞬――
待ち望んでいた展開が訪れた。
――カアァッ・・・!!
「ムゥッ!?何だ、この光は・・・!?」
背後から溢れる閃光にクロコダインが訝しがるも、正面にいるポップにはその正体がハッキリ確認できた。
「ダイ――!!」
回復をし、静かに・・・しかし怒りに震えるポップの勇者が、力強く立ち上がった。
「クロコダイン・・・許さないぞ・・・!」
全身を黄金の輝きに包まれたダイの瞳は深く閉ざされていたが、それでもその身が怒りに震えているのが伝わる。
「・・・たとえどんな理由があったとしても・・・俺のじいちゃんに悪い事をさせ、俺の仲間を傷つけたあんたを・・・」
キイィィィン・・・!
共鳴と共に輝きは徐々に一点に――額へと収束していく。
「・・・許すことは出来ない!!」
カアアァッ!!
「むああっ!!?」
(あれは・・・!?)
感情の爆発と同時に見開かれたダイの瞳――その額には、デルムリンでポップが見た紋章が燦然と輝いていた。
「あの紋章は何だ?それにこのパワーは・・・!?」
クロコダインは恐ろしかった。
瀕死の重傷から立ち上がったダイ、その額に輝く謎の紋章も・・・歴戦の戦士の感が、今のダイがどれほど危険か伝えてくる。
「来いッ!!!」
両腕を構え、迎え撃つ体制を取るダイに、それでもクロコダインは自らを奮い立たせる。
――こんな子供に臆するわけにはいかないのだ!!
「しゃ・・・しゃらくさいっ!!!」
その巨体は一歩大地を踏みしめただけで、容易にダイの元まで間合いを詰めてしまう。
クロコダインは勢いのままに斧を振りかぶった。
「くらえいッ!!」
普段のダイなら、この一撃で絶命したろう。
だがダイは全く避ける気配を見せぬまま――
ガシィーンッ!!
「バ・・・バカな!?素手で止めたあっ!!」
決してクロコダインの力が弱いわけでは無い。
それが証拠にダイの小柄な体で受け止めきれない衝撃が、その足を大地にめり込ませたが、それでもダイは怯むことなく受けた斧の刃に力を込めると――
「だああああっ!!」
バキンッ・・・!!
巨大な斧を握り砕いた!
目を剥くクロコダインに構うことなく、そのまま巨体を掴んだ斧ごと振り回し、弾き飛ばす。
壁に叩き付けられ、クロコダインは思い知る――
これがハドラーを退けたダイの、真の力なのだと。
(負けられん!ここで負けてしまったら、何の為に誇りをかなぐり捨てたのだ!!?)
死んでも負けるわけにはいかない――クロコダインは最後の意地をもって、右腕に最強の力を集中させた・・・
ダイとクロコダインが交戦に入ると同時に、ポップはマァムと共に負傷者の救護・避難にあたっていた。
「ぽ・・・ポップ・・・
あのダイの力は・・・一体・・・!?」
ブラスやロモス王が巻き込まれぬよう遠ざけながらも、マァムは初めて見るダイの強さに目を見張る。
「俺にも分からねえ・・・あれがアイツの秘めた力なんだ・・・――だが今一つだけ分かった事がある・・・」
「えっ!?」
「あの謎の紋章と力は、ダイの怒りに反応するんだ・・・!
パプニカの姫様が傷ついた時、先生が死んだ時!」
ポップは確信をもって答える。あの紋章が浮かび上がるのは、いつもダイが怒りに燃える時だった。
「そして今、あいつは心底怒っている・・・!
魔王軍のきたねえやり方に、怒りを爆発させてるんだ!!」
目の前で展開される超人的なダイの戦いぶりに、一体どうなるのかと見守っていると、吹き飛ばさて起き上がるクロコダインの右腕が闘気の集中により輝く――獣王痛恨撃だ。
「いかに今の貴様の肉体が鋼のような強度でも、至近距離からこれを食らわせれば砕けぬはずがない・・・!!
俺の最大最強の技で、あの世に行けいっ!!」
半端な攻撃では今のダイに通じないと判断したクロコダインが、己のすべてをかけて短期決戦に挑む。
対するダイは――
(や・・・やべえ・・・!今のダイは丸腰だ!!)
何時の間に失ったのか、肩に差してあったパプニカのナイフが見当たらない。
迎え撃つならどうしても武器は必要だ。
「・・・ポップ・・・アレ・・・!」
なんとかしなくてはと思考を巡らすと、マァムが指差した先に城の兵士が落としたのだろう――放置された剣が視界に入る。
「ダイを・・・助けて・・・!」
「・・・おうっ!!」
マァムの意思を受け、力強くうなずき、ポップは剣の元へと走る。
「うおおおおっ!!」
「!?」
クロコダインが咆哮と共に闘気のコブシを振り上げたのと、ポップが一足飛びに剣の元に辿り着いたのは、ほぼ同時だった。
「ダイ!今こそぶちかませっ!!
俺達の先生の・・・あの技を!!」
投げ込まれた剣を難なく受け取り、ダイはそのまま剣を構える。
剣はダイの闘気を受け、青く輝く!
「今さら遅いわあッ!!喰らえ~~ッ!!
獣王痛恨撃っ!!!」
「アバンストラッシュッ!!!」
獣王と勇者は閃光と共に交錯した。
静寂が満ちた――全ての時間が停止したかのような中で、先に沈黙を破ったのはクロコダインだった。
「・・・グ・・・グフフッ・・・
アバンストラッシュ・・・か・・・」
確かに手ごたえはあったが、丈夫なクロコダインには決定打にならなかったのだろうか?
「!?」
最悪の事態にダイは全身を強張らせたが、それは杞憂に終わる。
「み・・・見事な技だ・・・
・・・俺の・・・負けだ・・・!」
次の瞬間、クロコダインの脇腹から、盛大に血飛沫が上がる。
すぐさま両腕で抑えるも、それは死をほんの少し先延ばしにするくらいの効果しかないだろう――どう見ても致命傷だ。
それでも必死に傷口を押さえ、よろめきながらもクロコダインはダイに向き直る。
「フ・・・フフフ
どうせ負けるなら、正々堂々お前と戦って負ければよかったよ・・・」
「・・・クロコダイン・・・?」
「ポップ・・・お前にも、痛いほど教えられたぞ・・・
目先の栄光に目が眩み、尊厳を失った戦士の惨めさをな・・・!」
「・・・・・・」
「お前達のような相手に敗れたのであれば全く悔いはない・・・むしろ誇るべきことだ・・・
目先の勝利に狂った俺は――馬鹿だった・・・!」
すでに死相が浮かぶその瞳から、後悔が一滴(ひとしずく)こぼれる。
だが弱々しさは一瞬で振り払い、崩れ落ちそうな膝を叱咤しながら、ヨロヨロと大穴の空いた壁へと向かう。
ドス・・・!
自らが空けた大穴の横にもたれかかる。
「さらばだ・・・ダイ、ポップ!」
「・・・・・・!!」
背後に広がるロモスの空が視界に入ったとき、その場にいた全員がクロコダインの覚悟に気付く。
「・・・負けるなよ・・・勇者は常に、強くあれ・・・!!」
気高さを取り戻した武人は、その言葉を最後に虚空へと身を躍らせる。
「ああああ!!?」
ウオオオォォ・・・ン・・・!!
誇り高い獣王の雄たけびが、ロモスに轟くのは、これが最後だった・・・
長かった、手直しだけでも長い!
この後はおまけ話を挟んでヒュンケル編。
長兄のこと考えるとBLの血が騒ぐのですが、ここまで意図的に恋愛要素は(男女も含めて)排除しているのでガマンします!
「鎮まれ!俺の右手!」
クロコ×ボラホも書きません(宣言)