PARALLEL QUEST   作:8mn

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おまけ②俺たち『も』勇者!?

百獣魔団の襲撃を受けた翌日。

けして浅くはない傷跡を残しながらも、ロモスの町は復興に向け前へと進んでいた。

 

「人間てのは逞しいな~」

「・・・ガラにもないこと言ってると知恵熱がでるぞ?」

 

散乱する瓦礫を運びながら、掛け合い漫才を披露しているのは、昨日まで頭に『ニセモノ』がついていた勇者一行の勇者デロリンと戦士ヘロヘロだ。

ちなみに(一応)回復が出来る僧侶のズルポンは負傷者の救護を、魔法使いのマゾッホは復興会議に出席するため、ちゃっかり城へと出向していった。

 

「いいなあ~・・・城に行ったら美味いモンがたらふく食えるんだろうな~・・・」

「バカ野郎!『勇者一行』がセコイ事言ってんじゃねーよ!

・・・町の人間が見てるんだから、もちっとシャキっとしろっ!!」

 

ヘロヘロの背中に一発“バシ”っと喝を入れると、デロリンは周囲の見物人達(主に若い女性)に向かってさわやかに手を振って見せる。

 

 キャアアァァッ~~!!

 

とたんに賑わう周囲の黄色い歓声に、今度はデロリンの顔がだらしなく綻んでいくのを、ヘロヘロは白い目で眺める。

 

「にしても・・・ホントにあの小僧の言うとおりに『英雄』になっちまったんだな、俺達・・・」

 

曲がりなりにも城に参じて、復興を指揮する立場に出世したマゾッホと違い、彼らがやっているのは『雑用』もいいとこ。

それでも『町を救った』勇者を一目見ようと、辺りは『押すな・押すな』の大盛況だ。

 

たった一日でデロリン達を取り巻く環境は一変した。

 

 

***

 

 

「ダイ、ポップ、マァム・・・

そしてデロリン一行に、我が城の兵士諸君・・・!

みんなよく戦ってくれた!!」

 

王と言うよりは人のいい好々爺のイメージの強いロモス王は、まだ修繕もソコソコで穴だらけの謁見の間で、国を救った英雄たちに謝辞を述べる。

 

「特にダイ、この度の勝利、まさにおまえのおかげじゃ・・・!!」

 

王の暖かな言葉に、周囲から自然と拍手が送られ、慣れない雰囲気にダイはテレて真っ赤になる。

 

「・・・そなた等もだ、デロリンよ!

この度の活躍、ポップより聞き及んでおる。

これからも、いっそうの活躍を期待しておるぞ!!」

 

「え!?俺達もいいんスか??」

 

サプライズな王からの謝辞に、大仰に驚くデロリン達に、自然と周囲から笑いがこぼれる。

 

実際にデロリン達に『国を救った』実感はあまりない。

チラリと横目で見れば、この場にデロリン達が呼ばれるきっかけとなった若い魔法使いが、可愛らしいウインクを返してくる。

 

「もはや名実ともに勇者に相応しい男に成長したと言えよう。

晴れて今日から『勇者ダイ』『勇者デロリン』を名乗るがよい!!」

 

「やったなダイ!」

「おめでとう!夢が叶ったじゃない!」

 

ロモス王のはからいに、ポップもマァムもダイを励まし、デロリン達は喜びに飛び上がる。

 

だが肝心のダイはどこか固い表情のままだ。

そして何を決意したのか、スクッと立ち上がると――

 

「王様、俺・・・まだいいです!」

 

「エエッ・・・!!?」

 

まさかの『辞退宣言』。

いっそ清々しいまでの態度に、一同唖然とする。

 

「な、何言ってんだ・・・!?」

 

突然の爆弾発言に驚いたポップが詰め寄るも、ダイは穏やかな表情で真意を伝える。

 

「俺一人じゃ勝てなかった・・・

ポップ、マァム、ゴメちゃん・・・

みんなが力を合わせたから勝てたんだ・・・」

 

「ダイ・・・!」

 

そんな自分が勇者なら、ここにいる全員が勇者だ。

 

「だからせめて、もう少し強くなって、みんなに迷惑をかけないで戦えるようになるまで・・・“勇者”なんて呼ばないで下さい・・・

・・・恥ずかしいや・・・」

 

途中からテレて頭をかいているダイをポップは・・・そしてその場の全員が美しいモノを見るかのように目を細めて見守る。

 

「あい!分かった!!

さらに大きな成長を期待しておるぞ!」

 

ダイの謙虚さを受け入れた王が、視線を向けた先にはブラスがいた。

 

「ブラス殿・・・

本当に良い子を育てられましたな・・・」

 

「は・・・はい・・・

この子は・・・この子はわしの誇りです・・・!」

 

感激にダダ泣き状態のブラス。

そこで終わればいいのだが、微妙に空気の読めないダイが余計なひと言を発する。

 

「・・・よせよぉ、じいちゃん・・・

そういうの『親ばか』っていうんだぞ・・・」

 

「な!?

バッバカモン!!!つまらん口をはさむなっ!!」

 

親に叱られきまり悪そうに肩をすぼめる様は、いかにも年相応の少年だ。

 

「・・・そなた等はどうするかな?」

 

微笑ましい光景に目を細める王は、もう一組の勇者にも尋ねてみる。

別に称号など許可が無くても自由に名乗ってもいいのだが(事実これまでデロリン達は無許可で名乗ってる)、

 

「もももっ、もちろん我々も未熟者ゆえ・・・

今回の王のご好意は・・・じ、じ辞退させて・・・いただきマス・・・」

 

(オイオイ・・・別におまえ等まで断ることはねぇ~だろ・・・)

 

せっかくの栄誉を半泣きの膝下ガクブル状態で断るデロリンだが、『主役』が断った以上見栄を張るしかあるまい。

 

 

ダイたちの前に大きな箱が七つ並ぶ。

 

「二組の勇者たちよ・・・

それはわしからの、せめてもの贈り物じゃ。それを身に着けて国民の前に姿を見せてやってくれい。

みんな国を救った英雄の姿を見たがっておるからな。」

 

思わぬご褒美に喜々として箱を開ければ、そこには真新しい装備。

それらの意味を察した勇者たちは、競うように身に着けていった。

 

 

 

 

「何でもまだ小さな少年らしい」

「あれ?勇者って、前に騒ぎを起こして城を追い出された奴じゃなかったっけ?」

「とにかく一目、勇者様を拝みたいものじゃ・・・」

 

国を救った勇者のお披露目がある――

突然の御触れに、ロモス城の前にはたくさんの人が集まった。

 

老いも若きも男も女も、自分達を助けてくれた勇者に思いを馳せ、その登場を今か今かと待ち続けていると・・・

 

 パンパカパパパパ~ン・・・!

 

民衆の期待が頂点に達したのを見計らったかのように、ファンファーレが高らかに響き、城の外観で最も目立つバルコニーの幕が上がる。

 

 ワアアァァ・・・!

 

ダイ達が前面に、デロリン達は少し後ろに・・・

現れた『七人』の英雄たちを確認すると、歓声はますます大きくなる。

 

「あの人達が国を救ったのか?」

 

「我らが英雄ばんざーいっ!!」

 

 ばんざ~い・ばんざ~い・・・!!

 

いつまでも続く祝福の歓声に、ダイやマァムが少し照れくさそうに佇む後ろで、デロリン達はどこか現実感がわかない思いでいっぱいだった。

 

「・・・どうしたんだよ?

せっかく祝ってもらってんだから、もうちょっと喜べよ。」

 

「え?・・・ああ」

 

「?」

 

「いやな・・・今さらだが、大したことをはしてないのに、お前らと一緒にここにいていいものか・・・と?」

 

 ドスッ・・・

 

「おふっ!?」

 

全てを言い終わる前に、脇腹にポップの肘鉄が決まる。

たいした衝撃はないが、不意打ちに目を白黒させているデロリンに、ポップはいつものチョット皮肉めいた笑顔を向ける。

 

「アンタ等がいなきゃ町の被害はこんなもんじゃすまなかった。

もっと自信もてよ・・・この声援を受ける権利があんた等にはある。

――勇者はもっと堂々としとけ!!」

 

「・・・・・・!!」

 

その言葉に、デロリン達は泣きそうになりながら城下に目を向ける。

欲も打算もなく成し遂げたはじめての正義――向けられる尊敬と感謝の声援は何と心地よい事か。

 

大きく手を振れば、よりいっそう大きな歓声が帰ってくる。

 

デロリン達は、この光景に密かに誓った。

自分達はこの日を――『勇者になった日』を忘れないと。

 

 

***

 

 

「おお~い!ひとまず休憩にするぞ~~!!」

 

せっかく感動をプレイバックしていると、仕事がひと段落ついたのか、マゾッホとズルポンがそろってやってくる。

 

「ホラ!早く場所開けなさいよ!!

城から全員分持ってくるの大変だったんだからね!」

 

プリプリしながら大きなバケットを下すズルポンに、男性陣は一斉に飛び退くように埃を払い、簡易の食卓を完成させる。

こういう時は女性は怒らせるものではないと、長年の経験で全員知っている。

 

「ひょ~~!!ウマそう~~!」

「やっぱ城は豪勢だよな~~」

 

まだ城も復旧途中なので簡単な軽食程度だが、それでも庶民には豪華な食事に舌鼓をうっていると、デロリンがごにょごにょとしゃべり出す。

 

「あのさ・・・俺らも心を入れ替えて、本物の勇者にならないか?」

「はあ?ウチ等は昨日王様に認めてもらったばっかじゃない・・・!?」

「バッカヤロっ!

あんなん、たまたま小僧ども活躍に便乗しただけじゃねぇか!?

――そうじゃなくて・・・俺らも魔王軍と戦う『真の勇者』を目指すんだよ!!」

 

「・・・・・・」

 

「な・何だよ・・・!」

 

しら~っとした視線に怯むも、なけなしの勇気を振り絞り、デロリンは天を指差し誓う。

 

「とにかく!俺は決めたのだ!」

 

「でも、具体的に何やるのよ?」

 

どうやら本気のようだと呆れ半分のズルポンの問いに、掲げた人差し指を顔の横まで下げてみる。

 

「そうだな・・・」

 

これからの成長の為に必要な、『大きな』目標――それは・・・

 

「とりあえず、自分より『チョットだけ』強い怪物は逃げない・・・ってので、どうだ?」

 

「「「小っさ!!」」」

 

・・・はたして何日もつか・・・

自分の子供のような年齢の勇者の『チョッピリ』の成長を微笑みながら、でもやっぱり自分達はもう『ニセモノ』何かじゃないのだと、マゾッホは誇らしく思える。

 

(あの小僧のおかげじゃの・・・)

 

風のように現れて、暴風を巻き起こした――今頃パプニカに向かう船にいるだろう、輝かしい未来に彩られた魔法使い。

 

「目指せ!レベルMAX勇者!!」

 

少年がくれた勇気は、口だけ勇者一行に、確かな輝きをもたらしていた。

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