PARALLEL QUEST   作:8mn

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そろそろ書きためてたストックが無くなるので、更新ペース落ちます。
そりゃあもうガックリ落ちます。


手繰りよせる真実・2

「そんな・・・先生の弟子が、軍団長だなんて・・・!」

 

「ヒュンケル!あなた知ってるの!?

先生は・・・アバン先生は殺されたのよ、魔王軍に!!

あなたは・・・それでも魔王軍に味方するの!?」

 

「・・・ハドラーに殺されたんだそうだな・・・・・・

ガックリ来たよ・・・」

 

ヒュンケルに失望が滲むを堪忍するも、彼の真意は全く真逆にあった。

 

「弟子づくりなどに現(うつつ)を抜かして自らの修行を怠った証拠だ。・・・俺の手で引導を渡してやろうと思っていたのに、まったく口惜しいわ!」

 

言葉ひとつに失望し怒りを隠せない三人の様子が楽しいのか、ヒュンケルの表情が不敵に歪む。

 

「腹いせに弟子どもの始末を申し出てみれば、このような小僧どもとは・・・骸骨たちの遊び相手が丁度よかろう

――いけっ!!亡者の群れよっ!!!」

 

両者の間で構えていた骸骨達が、一斉に向かってくる。

 

「うおおおおおーーっ!!」

 

それらにダイが飛びだし、一閃を振るう。

見る間に粉々に砕かれ、骸は地に帰っていく。

 

「大地斬か・・・!」

 

「先生を殺すつもりだっただと・・・!?

たとえ誰でもそんな事を言う奴は許さないぞ!取り消せ!!」

 

「ほう・・・面白い・・・!」

 

激情に任せて叫ぶダイに何を感じとったのか、ヒュンケルは肩から下げていた、いかにも重そうな鞘をはずし、大地に突き立てた。

 

「取り消せない・・・と言ったら、どうするつもりだ?」

 

「こうだっ!!!」

 

挑発を流すことも出来ない真っ直ぐな少年は、囃し立てられるままに斬り付ける。

 

 ガシ――ン・・・!

 

「!!?」

 

「偉そうな口は実力と相談してきくんだな!小僧!!」

 

放った大地斬は片手でいなされ、あげくそのままダイは弾き飛ばされる。

ならばと海波斬を放つも簡単に躱され、次々に襲い来る剣撃にダイは防戦一方になる。

 

「いけない!ダイの攻撃が全く通じないわ!!」

 

「しかたないさ・・・!」

 

一方的な攻撃にマァムが悲鳴を上げるもポップは冷静だ。

 

「アイツの言ってる事が真実なら、奴はアバン流刀殺法は体得の上で卒業してるんだ――たった三日しか修行を受けてないダイじゃ相手にならない・・・!」

 

たった数瞬の攻防だが凄まじい実力差だ。

しかしまだダイの攻撃のすべてが無効とは限らない。

 

「わかったか・・・お前程度の技量ならなんなく躱せるわ・・・!!」

 

「ま、まだだ・・・!これなら躱せるかっ・・・!!」

 

ポップの考えが伝わったワケでもないだろうが、ダイもまた自身最強の技で勝負をかける。

――逆手に構える独特の構えに反応したのか、ヒュンケルもまた剣逆手に構え直す。

 

「アバンストラッシュッ!!」

 

「むううううんっ!!!」

 

 ドガ――ン・・・!!

 

同時に振り抜いた剣撃同士が撃ちあい激しい衝撃を生む。巻き上がる爆風にダイが目を伏せるも――

 

「フフフッ・・・これがアバンストラッシュだと・・・?」

 

衝撃の静まりとともに現れたヒュンケルには掠り傷一つ付いていない。

 

「成程な、見切ったぞ・・・お前はアバン流刀殺法を極めていない!!」

 

オマケにアッサリとダイの弱点もバレてしまう。

 

「大地斬・海波斬、そして俺すらも体得できなかったアバン流最大の奥義『空裂斬』・・・これらがすべて備わってはじめてアバンストラッシュは究極の破壊力を発揮する!

――つまり、お前の技は未完成の紛い物というわけだ!」

 

「くうう・・・!」

 

「それ!紛い物でいいなら俺でも撃てるぞ――アバンストラッシュ!!」

 

 バンッ!!

 

「うわああああ――っ!!」

 

戯れ事のように撃たれた技を盾で防ぐも、ヒュンケルの技の威力に砕け、それでも殺しきれない衝撃に吹き飛ばされてたダイの小さな身体は、背後の壁に叩き付けられる。

 

「ダ・・・ダイ――っ!?」

 

見かねたマァムとポップが間に入る。

 

「フッ・・・今度はお前達が相手をするというのか・・・?」

 

「これ以上先生の力を悪に使わせないわ!」

 

「そうか、三対一だな・・・よかろう!

ならば遠慮なくこちらも切り札を使わせてもらうぞ。」

 

先程地面に突き立てた鞘に剣を戻すと、ヒュンケルは付けていたマントを脱ぎ棄てた。

 

「俺は戦士ゆえ呪文は使えない・・・だから大魔王バーン様は俺に究極の鎧を下さったのだ――あらゆる呪文を跳ね返す最強の鎧をな・・・!」

 

「最強の鎧?何処にも見当たらないが・・・?」

 

だが見当はつく。

ずっと気になっていた鞘――ただの鞘にしては装飾が過多すぎる。

そして、その推測は正しかった。

 

「あるさ・・・お前たちの目の前に・・・!!」

 

眼前に構えた剣に、ヒュンケルは言葉を捧げる――魔法が使えぬ戦士が持つ、ただ一つの『力ある言葉』を・・・

 

「『鎧化(アムド)!!』」

 

 カアアァアッ・・・!!

 

『鞘』が変形していく。今まではそれでも『鞘』でしかなかったものが、男の言葉に呼応し、金属から流体へ――確かな意図を持ってヒュンケルの身体に纏わりついていく!

 

鞘の装飾すべてがヒュンケルへの移動を終了した後、それは再び金属としてその正体を明かす。

――フルアーマーを装備した戦士が誕生した。

 

「剣が、鎧になった・・・!?」

 

「そうだこの『鎧の魔剣』そのものが究極の鎧なのだ。

大魔王様からいただいた最強の武器であり・・・同時に最強の防具だ!」

 

「そうかよ・・・!

なら、試させてもらうぞ・・・メラミっ(中級炎系呪文)!!」

 

目くばせを交わし、マァムも同時に攻撃に移りポップが詰め直した魔弾銃を撃つ。

 

 ドオォン・・・ッ!!

 

通常の中級呪文とは一線を画す巨大な火球がヒュンケルを襲う。舞い上がる爆炎は常ならば対象を消し炭にするほどの威力を誇るが――

 

「それが限界か・・・?」

 

効いていない。

爆風の奥から現れた敵の鎧には焦げ跡一つ見当たらない。

 

「分かったか・・・俺のこの鎧はいかなる攻撃呪文も受け付けない。

――かといって剣で俺を上回る者などこの世に存在せ・・・ん?」

 

ふと意識を向けると、諦めないマァムが「ならば」と愛用のハンマースピアを構えるのを確認する。

 

「よせ!女を殺すなど性にあわん。」

 

「バカにしないでよ!女だって命を懸けるわ・・・

正義の為の戦いなら・・・!!」

 

「フン・・・それがアバンの教えというわけか・・・」

 

「そうよ!貴方も教わったでしょう!?

先生は間違った人間には絶対にその印をわたしたりしないはずだわ!

――きっと貴方だって・・・!」

 

「これか?」

 

マァムは最後の望み――アバンの弟子を思う心に懸けた。あの優しい師の希望が、少しでもヒュンケルの心に残っていれば・・・

しかしヒュンケルはそんな彼女の甘い希望に眉一つ動かすことなく胸の印をはずすと、投げ捨ててしまった。

 

「何てことを・・・」

 

何の未練も感じさせない行動に、マァムだけでなく成り行きを見守っていたポップ達も驚きを隠せない。

 

「もう必要ない。これは元々アバンやその弟子を探り当てる”手がかり”として持ち歩いていたもの・・・

探り当てて・・・俺の手で地獄に送ってやる為にな・・・!!」

 

「何故?何故そんなにまで先生を憎むの!?」

 

アバンはどう考えても人から憎まれる人物ではない。

少なくとも弟子として過ごした経験のあるヒュンケルが、それを知らないはずがない。

 

――何か重大な勘違いがあるはず・・・

 

その誤解さえ解ければ弟子同士で戦う愚を回避できるかもしれない。

戦いを好まないマァムが、ヒュンケルの心の闇を晴らすことで問題を解決しようとするのは、決して彼女が悪いわけでは無いだろう。

 

それでも・・・彼女は聞くべきではなかったのかもしれない。

 

「何故憎むか・・・?

それは・・・アバンが、俺の父の仇だからだ・・・!!」

 

ヒュンケルの語る闇は、たかだか十六年生きて来ただけの少女が晴らすには重すぎるものだった。

 

 

 

ヒュンケルの語る過去――それはアバンが勇者として魔王を倒す十五年前より、さらに数年遡る。

 

かつてこのホルキア大陸は旧魔王軍による地上侵略の拠点であり、それ故激戦区であった。

町は焼かれ、沢山の死傷者が出る中、それでも向かい来る人間達と戦う一人の骸骨騎士――バルトスが、瓦礫の中から人間の乳飲み子を見つけ拾い上げた。

 

『親に見捨てられたか・・・哀れな・・・』

 

その赤子がヒュンケルだった。

 

魔王軍最強の騎士でありながらも、慈悲深いバルトスはハドラーの許可を得て、その赤子を地底魔城で育てることとなる。

 

『お前をヒュンケルと名付けよう。

かつて魔界を牛耳った伝説の剣豪の名前だ・・・!」

 

『だあだあ』

 

『ははははっ・・・!』

 

城の外に出ることは許されなかったが、それでもヒュンケルはバルトスの愛情を受け成長していく。

そこには魔物と人間という壁を越えたぬくもりが確かに存在しており、ヒュンケルはそこに何一つ疑問を持つことはなかった。

 

だが、終わりは唐突に訪れる。

ついに城にまで攻め込んできた勇者一行を迎え撃つため、ハドラーの間へと続く地獄門の番人であるバルトスも出陣の準備を固める。

 

『いいかヒュンケル・・・決してここからでるではないぞ!

そして・・・ワシが死んでも強く生きるのだ・・・一人でな・・・!』

 

最後に子供のヒュンケルに戦いが及ばぬよう、彼を多くの物置の一つに隠すと、バルトスは戦地へと赴いていく。

 

父は大丈夫なのだろうか?

・・・彼だけじゃない。これまで自分の成長を見届けてくれた者、一緒に遊んでくれた者・・・たくさんの“仲間達”が“勇者”を倒すために戦っている。

 

平和な日常を脅かす”勇者”とは何者なのだろう・・・

 

魔界も地上も、その戦いの複雑さも碌に知らないヒュンケルに出来たのは、『父』の言いつけどおり息をひそめ隠れ続ける事だけ――ただバルトスの身の安全を祈りながら・・・

 

暗い物置の中、どれほど経った時だろう。

 

 オオオオォォ――!!!

 

(!!?)

 

一際大きな悲鳴が響き渡り――それを最後に地底魔城は静寂に包まれる。

 

もうじっとしてはいられず、ヒュンケルは物置を飛び出した。

バルトスの姿を探して城中駆け回る間も、おびただしい数の“仲間達”の遺体を見つけては動揺し涙が止まらない。

 

無事でいてください、それ以外は何も願わなかったのに――祈りは届かなかった・・・

 

『父さん!?』

 

ボロボロに崩れ落ちている骸骨兵士。見間違えるはずがない。

装備している鎧・そばに落ちている剣・・・そしてその首には何時の間にかけたのか、以前ヒュンケルが紙で作った星形の『勲章』がかけられていた。

 

『父さん!父さぁんっ!!』

 

駆け寄り、その身に触れれば・・・

 

ボロロ・・・ッ!

 

バルトスの身体は瞬く間に風化していく。

他のモンスターと違い、アンデッド系は魔王の魔力なくして肉体は維持できない。

魔王が息絶え、その魔力が途絶える時――『死せる者』であるアンデッドに真の安らぎが訪れる。

 

すなわち、灰となり地に還るのだ。

 

『・・・ヒュンケル・・・思い出を・・・あ・・・り・・・が・・・と・・・・う・・・』

 

最期の言葉とともに、『勲章』以外のすべてが消滅した。

 

『とうさあああん!!うわああ~~んっ!!!』

 

墓をつくる骨すらも残らない死。

ヒュンケルはバルトスが『いた』場所に倒れ込み、その死を嘆き続けた。

 

『どうしましたか?』

 

零れる涙も枯れかけたころ、男は現れた。

実際には『男』と呼ぶには若すぎるだろう、一人の青年・・・

 

一目で分かった――この男が“勇者”だ。

父の命を奪った仇なのだ!!

 

『大丈夫ですか・・・?』

 

差しのべられた手を払いのけたかったが、ヒュンケルはあえてその手を取って立ち上がった。

 

『もう大丈夫・・・一緒に行きましょう!』

 

自分の手を引き、地上へと誘う男の背を睨みつけながらヒュンケルは誓った。

 

必ず力をつけ、この男を討とうと!

 

 

 

「それゆえアバンに師事し剣を習ったのだ!

・・・その剣で奴に止めを刺すためにっ!!」

 

「っ・・・もうやめて!

貴方の・・・貴方の気持ちはわかるわ・・・でも、先生は――」

 

「正義に為に戦ったとでも言いたいのか?

たとえ正義の為だろうと俺の父の命を奪った事に違いはない・・・!

それを正義と呼ぶなら――正義そのものが俺の敵だっ!!」

 

マァムも、そしてダイもそれ以上の言葉は出なかった。

二人にとって『正義』とは常に正しいもので、それが誰かを不幸にしていたなど理解の範囲外のモノだ。

ましてダイからしてみれば境遇が自分と似ている分、今までのように正面からヒュンケルを非難することなど出来なくなってしまった。

 

「・・・さがってろ、マァム。ダイの回復を頼む・・・!」

 

それでも言葉を尽くそうとするマァムを見かねて、ポップは前に出る。

 

「・・・やめておけ、小僧。貴様は呪文使いだろう?

どれ程強力な使い手かは知らんが、たとえ極大呪文が使えたとしても、この鎧には傷一つ付けられんぞ・・・!」

 

それは敵に与えるには、かなり譲歩した気遣いだ。

元来弱者に自ら手をかけるなどヒュンケルの本意ではない。それは女性だけでなく、子供も同じことだ。

 

そもそもアバンの弟子でさえなければ、たとえ勇者でも子供の討伐を申し出るなど、普段のヒュンケルからすれば考えも及ばない。

 

勇者だけでいいのだ。

失われた勇者の代わりに、その弟子の勇者を殺す――それだけで敵討ちの目的は達せられる。

 

たとえ勇者のパーティーでも、後方支援の呪文使い・・・子供を殺すなど寝覚めが悪すぎる。

 

「お気遣いアリガトサン・・・

だけど、『じゃあ後はよろしく』ってしたくても、こちらは駒が少なくてね。

メンドクサイかもしれないけど、チョッとお相手してくれや・・・!」

 

「成程、やはり貴様は他の二人とは違うようだな・・・?

よかろう、少し遊んでやる!!」

 

少し真相を知ったくらいで動揺しているダイやマァムと違い、瞳から戦意を失わないポップに再び興味が移る。

どうせ自分の勝利は揺らがない――そんな慢心がヒュンケルにあったのは確かだが、あいにくポップは守られているだけの魔法使いではない。

 

ヒュンケルは思いもしないだろう。

まさか目の前の華奢な魔法使いが「魔法が効かなきゃ、力づくで『どついて』やろう!」と、物騒な計画を立てているなどと――

 

「さて、うちの勇者に代わって、このポップ様が頑固者の目を覚ます『きつ~いゲンコツ』を喰わせてやるから、覚悟しとけよ?」

 

おどけて見せながらも、ポップは油断なく物理攻撃を補助する呪文の詠唱を始めた・・・




ダイが盾で攻撃を防ぐ描写はこれで最後でしたね。
今思えばダイ大は防具関係が貧弱なままストーリーが進んでいたような…

まあ素手でオリハルコン砕いたり、生身でカイザーフェニックスを無効化するような脳筋揃いでしたから
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