PARALLEL QUEST   作:8mn

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出会い・6

以前より格段に強くなったハドラー・・・そしてそれをも上回る『大魔王』の存在にアバンは懊悩する。

 

決して自身の鍛錬を怠けてきたわけではない。

だが、敵の成長速度は想像よりずっと早かった。

 

「アバンよ、十五年前に貴様に贈った言葉を今一度繰り返そう――敗北を悟った今なら素直に聞くことが出来るだろう・・・」

 

そんなアバンの様子を諦めたと勘違いしたのか、ハドラーは実に楽しそうに語りかける。

 

「俺の部下になれ!そうすれば世界の半分を与えてやるぞ!!

・・・なんなら、その賢者も助けてやってもいいぞ?」

 

ブラスのベホイミ(中級回復呪文)を受けながらも動かないポップに視線を送るも、アバンの答えは十五年前と変わらなかった。

 

「・・・断る!!」

「答えは変わらんか・・・この俺の情けが分からんとな。」

「お前に情けなど無い!もし『YES』と答えても、いずれは私の命を奪うだろう!!

・・・それに、大魔王の使い魔に成り下がったお前に、世界の半分を与える権力があるとは思えんし・・・な!」

「なんだとぉっ!?使い魔・・・!!」

 

アバンのあからさまな挑発にハドラーは簡単に激昂する――どうも見た目以上に単純な性質(タチ)のようだ。

 

「貴様この俺を・・・大魔王の使い魔とぬかしたなぁーー!!」

「図星を指されたみたいだな・・・!」

 

「だまれェッ!!もはや生かしておかん!!

弟子の見ている前で灰にしてやる!!」

 

 ジジジジジッ・・・!!

 

ハドラーの掲げ上げた両手にエネルギーが集約し、放電が起こる。

 

「あれは・・・イオナズン(極大爆烈呪文)じゃ!!」

 

ハドラーが自身最大の攻撃呪文を放たんとするのを見て、アバンもまた剣を逆手にもつ独特の構えを見せる。

――アバンストラッシュだ。

 

「むううう・・・!

喰らえっ・・・イオナズンッ!!」

「アバンストラッシュ!!」

 

渦を巻きながら放たれた爆撃と、アバンの必殺技が交錯した。

 

 ドカーーンッッ!!

 

「うわあああっ!?」

 

爆風と閃光が洞窟内に溢れた。

ダイとブラスはポップを庇いながら、巻き込まれぬよう伏せることしが出来ない。

 

「だ・・・大丈夫?ポップ!?」

「・・・ああ・・・!」

 

ベホイミのおかげか、声を出す程度には回復したようだ。

 

「俺より・・・先生は?」

「!!」

 

弾かれたように視線を巡らせば、そこには勝敗の決した二人の姿があった。

 

「うあああっ!!」

 

着弾した爆撃はそのまま炎と変わり、爆風が収まると同時にアバンは膝をつき、動けなくなる。

 

一方のハドラーも無傷ではなかった。

 

「ぬううううっ!!」

 

アバンの攻撃が胸に裂傷を与え、大量の血を噴出しているが、なんとか踏み耐えている。

 

「フフフ・・・さすがは一度は我が生命を奪った奥義・アバンストラッシュ・・・!!

大した威力だ・・・・・・だがっ!!」

 

ハドラーが力を込めると、その裂傷すらもピタリと塞がった。

――出鱈目な体質である。

 

「蘇った俺を倒すには力が足りんという事か・・・衰えたな、アバン。

――いや・・・」

 

動けないアバンに、ゆっくりとハドラーが迫る。

 

「所詮その程度が人間の限界なのかもしれん・・・

今楽にしてやる!」

 

止めを刺すため、ハドラーのコブシが掲げられその時、

 

「やめろぉっ!!」

 

それまで静観していたダイがたまらず飛び出した。

 

 ガキンッ!!

 

「!?」

 

しかし、大岩をも切り裂くダイのナイフは、ハドラーに指一本で防がれる。

 

「そんなに死に急ぎたいか?アバンの弟子よ!」

 

そのまま手首を掴むと、力任せにダイを地面に叩き付ける。

 

「ぐああ!!?」

 

二度・三度と連続して叩き付けられ、力を失ったダイをポップ達の元へと投げつける。

 

「・・・そうそう、その不気味な賢者も含めて、アバンの弟子は皆殺しにしておかんとな!」

「いけないっ!」

 

ハドラーのコブシにベギラマの光が灯るのを見て、アバンが駆け出す。

 

「ポップ・・・ダイ君!」

 

間に合ってくれ・・・それだけがアバンの心を占めるものだった。

もう碌に力の入らない膝に力を入れ、全力で走る。

 

(頼む!間に合え!!)

 

 ボグアアアンッ!!

 

一際大きな閃光が洞窟内を焼く。

熱い風に煽られポップを守りながら、ダイは漠然と死を覚悟していた。

 

だが何時まで経ってもその時は訪れない・・・

意を決し目を開ければ――

 

「アバン先生!?」

 

そこには両腕を広げ、自分達を守る師の姿があった。

 

「よかった・・・very nice timingでしたね・・・!

う・・・ぐううっ!!」

「先生!?」

 

微笑むも、すぐにアバンは苦しげに膝をつく――その背は焼け爛れていた。

 

「先生、大丈夫!?

・・・痛むでしょう・・・?」

「フフ、そりゃ痛いですよ、だけど痛がってる場合じゃありません。

奴のパワーはかつて魔王だった時以上・・・!

しかも、その上には大魔王が控えているというなら、今の我々では勝てません!!

だから――」

 

最後の力で立ち上がったアバンは、真剣な瞳でダイ達を見つめる。

 

「奴は・・・ハドラーだけは私がこの場で倒します!

そしてポップ!ダイ君!!

あなた達の手で、いつか大魔王バーンを倒してください!!」

 

告げると、アバンは背を向けハドラーの元へと向かっていく。

その歩みを、か細い声が繋ぎ止める。

 

「ダメです先生・・・死なないでください・・・」

「・・・ポップ!」

 

振り返れば、ポップが必死の表情でこちらを見ていた。

 

「他に方法はあるはずです・・・

だから、簡単に覚悟を決めたりしないで下さい・・・!!」

「・・・!

先生、俺も戦います!!」

 

(ああ・・・この子達は)

 

本当に、なんと良い子達なのだろう。

自分の覚悟を見抜き、共に戦うと言ってくれる弟子達が誇らしかった。

けれど、だからこそ・・・ハドラーとの戦いに巻き込むわけにはいかない!

 

「アストロン(鋼鉄変化呪文!)」

 

 ビキ・ビキキィッ!!

 

「これは!!」

 

アバンの唱えた呪文に、ポップ達の身体が固い魔法物質で覆われていく。

 

「アストロン!身体が鋼鉄の塊になり、あらゆる攻撃を跳ね返す高等呪文じゃ!!」

「でも・・・これじゃあ動けないよ!?」

 

狼狽えるポップ達を見つめながら、懐から何かを取り出す。

それは涙型の宝石のついた、繊細な造りのペンダントだった。

 

「『アバンのしるし』・・・卒業の証だ。」

「卒業の証!?」

 

どこか女性的なペンダントを、アバンはそっと勇者候補の少年の首にかけてやる。

 

「・・・ダイ君。君は素晴らしい素質を持った少年でした。

修行が中断してしまったのは残念ですが、あと四日続けていれば、間違いなく勇者になれたでしょう。

だからこれを授けます・・・あとは自分で修行を続けて真の勇者になって下さい!」

「アバン先生!!」

 

必死に訴えてくる視線が辛くて、アバンが顔を逸らした先ではポップが大きな瞳に涙を溜めている。

 

「いやだよ先生!そんなのいらない!!

縁起でも無いことはやめて下さいっ!」

 

「・・・ポップ・・・」

 

ポップの元まで来ると、アバンは倒れているポップの上半身を抱き上げ、優しく抱きしめた。

 

「ポップ・・・君は私が育てた弟子の中で最も優秀な子でした。

これからは兄弟子としてダイ君を導いてあげて下さい。」

 

抱きしめている為、表情の見えないポップの細い身体がビクリと戦慄いた。

 

「俺達には・・・まだ先生が必要なんです!」

「残念ですが、犠牲を避けて勝てるような相手じゃありません――きっと私の力はこの日の為に・・・あなた達を守る為に神様から授かったのでしょう。」

 

そういって、ポップの首にもアバンのしるしをかけて・・・最後に宥める様に頭を撫でてやる――いつもは柔らかな感触のくせ毛が、今はアストロンのせいで楽しめない事だけが心残りだった。

 

「おやおや?まだ仮免中なのにそんなに感動してもらっちゃ困りますよ。

これからも『ブリバリ』努力してもらわないといけないんですからね♪」

 

Vサインと共に向けられた笑顔は実に晴れやかだ。

 

「ブラスさん、ゴメちゃん・・・

お世話になりました。」

 

「アバン殿!早まってはいかんっ!!」

「ピ~~!ピィ~~ッ!」

「・・・大丈夫です、私は絶対に負けませんから!!」

 

最後にブラスに頭を下げると、今度こそ振り返ることなくハドラーの元に戻っていく。

 

「・・・勝負だ!ハドラー!!」

「残された魔法力を弟子共のために使った今、貴様に勝機はないぞ?」

「魔法力が消耗しているのはお前も同じはず!

――行くぞ!!」

 

 ブオォッ!!

 

「ぐっ・・・!?」

 

気力を振り絞り、ハドラーへ斬り付けるもあっさり上空に躱され、振り向きざまにコブシを背中に叩き付けられる。

 

「馬鹿め!俺には格闘技だけでも十分に貴様を倒せるパワーがあるわ!!」

 

 ドゴゴゴゴッ!!

 

続けざまに連続攻撃を受けるアバンは、もはやサンドバック状態だ。

 

「先生!」

「くっ・・・くそっ!!」

 

見ていることしか出来ないでいるのが辛くて、何とか身体を動かそうとするも、ポップ達の力ではアストロンはビクともしない。

 

「死ねえぇぇ!アバンっ!!」

 

そうこうしているうちに、吹き飛ばされたアバンを追撃する為、ハドラーがコブシを振り上げる。

 

「うおおお!」

 

 ドガッ!!

 

「!?貴様・・・何故避けん!!」

 

鳩尾にはまったコブシが肋骨を砕く痛みにアバンが顔を顰めるも、驚いたのはハドラーの方だ。

真正面からの攻撃は、避けることを想定したフェイント!――それが分からぬアバンではないはずなのに、あえて受け止めた彼に、ハドラーは一瞬動きを止めた。

 

「でやあああっ!!」

 

そのチャンスを逃さず、アバンの両手の指がハドラーのこめかみに突き刺さる!

 

――バチバチバチ!

 

「呪文!馬鹿な・・・!?」

 

突き刺さったアバンの両腕から起こる放電に、ハドラーは恐怖した。

もはやアバンに魔法力など残っていない筈なのに!・・・そんなハドラーの思惑をアバンは裏切った。

 

「この呪文は魔法力はほとんど使わない・・・その代わりに全生命エネルギーを爆発力と変えて敵を討つ・・・!!」

 

「ああああ!!まさか・・・この呪文は!!」

 

慌ててアバンを引き剥がそうとするも、すでに遅い。

 

「やめろ!やめるんだーーっ!!」

 

(ポップ・ダイ!あとは頼みますよ!!)

 

最期の思いを乗せて、アバンは生命を開放する!!

 

『メ・ガ・ン・テ・・・!!』

 

世界が白く輝いた!!

 

 ドドーーンッ!!

 

生命エネルギーが巨大な光柱となって天へ突き抜けていく。

その余波だけで洞窟も周囲の自然も吹き飛ぶ。

アストロンが掛かっていなかったら、ポップ達も無事では済まなかったろう。

 

そのまま暫く、何もかも押し流していくかのような爆発が続き――収まったとき眼前に広がったのは・・・

 

「あ・・・あぁ・・・!」

「先生!」

 

更地となった一帯・・・

大地に突き刺さったアバンの剣・・・そしてメガンテの威力で出来上がった巨大なクレーターだった。

 

「よりにもよって・・・メガンテだなんて!!」

「先生が命を懸けて守ってくれたのに、何もできなかった・・・!!」

 

『メガンテ(自己犠牲呪文)』・・・生命と引き換えに敵を討つ破壊呪文。

そんなものを使わせなければならないほど、力無い自分達が情けなかった。

 

そうやって動くことも出来ない代わりに・・・ジッとアバンの剣を眺めてどのくらい経った頃だろうか。

 

…ゴゴゴゴッ!

 

「!!?」

 

クレーターの中央が小さく盛り上がった!

 

「アバン先生!」

 

よかった!生きていた!!

大きすぎる程の期待は、直後に絶望へと塗り替わる。

 

 バアーーンッ!!

 

「かああああっ!!」

「ハドラー!!」

 

最悪だ。

決して無傷ではないが、穴から這い上がったのは確かにハドラーだった。

 

「ク・・・ククク・・・やはり衰えたわアバン!!

メガンテをもってしても、この俺に止めを刺すに至らない!!

 

これでもう恐れるものは何もない!魔王軍の天下だ!!

フハハハハッ!!」

 

宿敵を葬ったハドラーの高笑いが響く。

そうして暫く余韻に浸っていたハドラーが、ギラリとポップ達を睨んだ。

 

「・・・だが念の為、貴様らアバンの弟子共もこの場で根絶やしにしておかねばな・・・!」

「くっ!!」

 

かなり消耗しているのか、足取りは重いが、確かな殺意をもってポップ達に近づいてくる。

 

「大丈夫じゃ!まだアバン殿が掛けてくれたアストロンの効果が残っておる!!

どんな攻撃でも跳ね返せるわ!!」

「・・・どうかな?

貴様らが身動き出来ん以上、かえって好都合よ!」

 

 ボオオオッ!

 

ハドラーの指先に炎が生まれる。

 

「メラ(火炎呪文)も使うのか!?」

「俺のメラは地獄の炎・・・相手を焼き尽くすまで決して消えん!

こいつを放っておけば、呪文が解けた瞬間、貴様らは黒コゲだ!!」

 

切望的な状況だった。

このままでは全員が無駄死にしてしまう――そう追い詰められた瞬間、ダイに変化が起きた!

 

「ぬうううっ!!」

 

 ピシ・・・ピシピシッ!

 

ダイのアストロンに亀裂が入っていく。

 

(ダイが自力でアストロンを破ってる!?)

 

そんなはずはないと、ポップは思う。

自力で動くことは不可能になる代わりに絶対的な防御力を持つ――それがポップの知るアストロンだ。

 

だがそんな疑問をあざ笑うかのように、ダイの亀裂は大きくなっていく。

 

「おのれ・・・焼け死ね!!

メラゾーマ(上級火炎呪文)!!」

 

ありえない現実に驚いているのはハドラーも同じだ。

灯した炎を慌ててダイに向かって放った。

 

「うおおおおっ!!」

 

 カァッ!!

 

ほぼ同時にアストロンは完全に砕け、ダイは自由の身となる。

 

「ヒャダルコ(中級氷系呪文)!!」

「ダイが呪文を!?」

 

魔法が苦手なはずのダイが突然呪文を唱えたのを見て、ブラスもダイ驚愕の声を上げる。

 

ダイとハドラーの呪文が空中で衝突し――

 

 ボンッ!!

 

相殺された。

 

「ゲエェッ!」

 

いくら魔法力が弱まっているとはいえ、ポップに続いてダイにまで術で炎を消されて、ハドラーは動揺を隠せない。

 

「おのれー!こうなったら我が拳でうち殺してくれるわ!!」

 

人間風情に手こずる現実に逆上したハドラーが、コブシを構えて突進する。

 

 バキィッ!!

 

「お・・・ぐう・・・っ!?」

 

しかし、一撃を腹に喰らったのは――ハドラーだった!

 

「でやああっ!!」

「ぐはあーっ!?」

 

前のめりになった顎を、続けざまにアッパーで撃ち抜かれ、ハドラーは大きく吹き飛ばされる。

 

「なんだ・・・この力は!?

このガキ・・・一体!?」

 

自分は弱っている。

子供とはいえ、アバンの弟子でもあるのも分かる。

 

だがそれらの事情を差し引いても、ダイの攻撃力は異常だった。

 

 ヒイイイィィンッ!

 

「う!?」

 

そしてハドラーは気付いてしまった――ダイの額にありえないものが輝いているのを・・・

 

「ばかな・・・あの紋章は・・・!」

 

(竜の紋章!!)

 

それはハドラーにとって、『絶対に』あってはならない現実だった。




アバン先生がアストロンのかかったポップをどうやって抱きしめたか…私にも分かりません
どうしても別れの抱擁させたかったのよ、書きたかったの。
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