自由な世界の探偵事務所   作:水無月 驟雨

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オンライン授業決まりましたね。最悪オブ最悪です。急いでみますが、時間的に数日遅れそうです。
ちなみにこれはコウも言ってましたが、○○オブ○○は僕の口癖です。


圧倒的な糸使い

 □【探偵】 コウ

 

 

「これは…………死ぬかも」

 

 要塞が消え去り開けた視界で、降ってきたのは15人以上の男たちだった。

 その中でも、奥に居た頭領らしき人物は大きく、特に目立っていた。身長が2メテルは軽く越しているし、武装も他の奴らより高価だとひと目でわかる代物。

 

「かかれぇ!」

 

 頭領が蛮刀を抜き放ち、部下たちに戦闘開始を告げる。

 それと同時に、命令を受けた部下たちが迫る。

 

「なぁコウくん。あの要塞、監禁部屋じゃなくて盗賊団のアジトだね」

「そうですね! ……逃げよ

「あぁ、いや。キミは()()()()()()()()()()()()()

 

 どうやら、ディルガルドさんは固定救済イベントであり、そして定期殲滅イベントだったらしい。

 ディルガルドさんが軽く腕を振るう。その直線上に居た盗賊が断ち切られ、崩れ落ち、光の塵となって消えていった。

 

 

 ◇

 

 

 □【大山賊】 ジャラザード

 

 

 ──なんなんだ、コイツは。

 

 俺様の<エンブリオ>は現在第五形態。触れたものを腐食させる、武器破壊などに特化したものだ。基本的に、TYPE:アームズの<エンブリオ>と特典武具以外はものの数分もあれば溶かせるし、軽く触れるだけでも、剣などの刃は潰れる。使い物にならなくできる。

 だが、コイツは何なんだ。誰かは知らねぇが、腕を振ると、その直線上が根こそぎ斬られる。刃に実体があるのか確認もできない。

 振られる腕はゆったりとしていて、確かに避けることは難しくない。というより、先程から動揺から回復した俺様と少なくない仲間は何回か(かわ)せている。だが、それだけ。躱すことしかできない。

 

 そんなことを思っていると、また一人。真正面から攻撃を受けた、盾を構えた【戦士】が光の塵へと変わった。あの斬撃、盾持ちはもちろん防御特化の【盾戦士】すら抵抗させずに葬りやがる。

 

「クソッ、どんな攻撃力してんだ。──相性が悪すぎるな……」

 

 クランの新入りのレベリングをしていただけなんだ。もう全員目標まで上げ終わったとはいえ、ここでデスペナを喰らうのは気に入らない。

 

 故に、俺様は切り札を切ることにした。

 

「こっちに来い! 《武装誘引(アームズ・インダクション)》』!」

「え!? うわっ!?」

 

 スキルを使い、横に立っていたガキを俺様の手元へ引き寄せる。

 元は相手の武器なんかを誘引して俺様が触れやすくするスキルだが、第五形態に進化したことで出力が上がり、軽装のガキ一人を手元へ引き寄せるくらいなら出来る様になった。

 

 ガキの襟を掴み、人質という名の盾にする。

 

「ほらよ。このガキを殺されたくなかったら、大人しく死ね。動いたら首がおさらばだ」

 

 ヤツの動きが止まる。俯き、サラサラと目にかかった前髪に隠れてよく見えねぇが、悔しそうにしているのが分かる。心配はしてなかったが、このガキはきっちり人質として機能したようだ。

 残っていた周りの仲間に指示を出す。

 

「おいお前ら、この男を殺せ」

 

 人質を得て大分余裕が出来たので、『看破』を男に使う。

 意味不明な強さだが、人質も得たことだ。おおまかでも強さを暴いて、ゆっくり嬲り殺してやればいい。

 

 ──だが、俺様が見た結果は予想外のものだった。

 

 

 

 ディルガルド

 

 職業:【繰糸王(キング・オブ・スレッダー)

 

 レベル:382(合計レベル:882)

 

 HP:30258

 

 MP:5984

 

 SP:466327

 

 STR:19011

 

 AGI:25058

 

 END:2036

 

 DEX:12426

 

 LUC:120

 

 

 

「なっ……! ()()()……!?」

 

 ガキが暴れるが、STRが全く足りていないからか全く逃れることが出来ていない。というか、今の俺様にそんなことを気にする余裕はなかった。

 

 有り得ないと感情が否定する一方、看破したのだから間違えようがないと理性も叫ぶ。

 

「……だが、こっちには人質がいるんだ……。早くやれ!」

「くそっ、キャロルさんたちをどこへやった!」

「何言ってんだてめぇ、黙ってろ! こっちは余裕ねぇんだよ……

 

 ガキが何か喚いているが、意味が分からないしうわ言だと切り捨て、意識から排する。何よりも、今大事なのはこの男だ。

 予想外の超級職だが、<超級>じゃないだけマシだろ。そう思い直し、なんとか戦意を繋ぐ。

 仲間にこの男──ディルガルドが超級職だと伝えると隙が出来そうだったから、あえて伝えない。代わりに、もう一度殺せと強く命じ、俺様も懐から麻痺毒に濡れた投げナイフを取り出す。悟られない様体で隠し、万が一に備えて不意打ちの用意をしておく。

 

 仲間が、それぞれの得物を持って飛びかかる。剣や、メイスや、槍に弓。あらゆる方向から狙われれば、いくら超級職でもひとたまりもないだろ。──そう、思ったのが間違いだった。

 

 その瞬間、またしても予想外が起きた。

 四方八方から襲いかかった俺様たちの得物が、ディルガルドとの間の空間で、巨人に掴まれたかのようにピタリと止まった。その内数人は、金縛りの様に空中に縫い止められたヤツも居た。

 

「テメェ……な、何をした! 抵抗すれば殺すって言ってんだろうが!」

「抵抗も何も」

 

 戯けた様子でディルガルドが肩を竦める。ふと、背後に隠し構えていた俺様の投げナイフも動かないことに気付く。

 ──確かに動かない。俺様は前衛職だからかなり高いSTRを持っているはずだが、それでも小刻みに震わせることしか出来ない。多分、俺様が手を離せばこの投げナイフは宙に浮くのだろう。

 ……だが、コイツが腕を振るった直線上が斬られていたんだから、動いていなかったコイツが俺様をどうにかできるはずがない。

 

「そもそも、キミは『動けば殺す』と言ったんだ。ボクはスキルは使ったが、ここから1歩も動いていないさ」

「屁理屈を……!」

「それに。……見えないかい? ──まぁ見えてなんとかなるものでも無いけれど」

 

 ディルガルドがローブを翻す。そのローブの内側には、テグスを巻いたリールの様な部品がいっぱいに仕込まれていた。

 

「! ──まさかッ!」

「そうだとも。ボクは【繰糸王(キング・オブ・スレッダー)】。糸を自在に操る超級職だ。この糸の長さがボクの間合い。逃げたくば地平線まで走るがいい。──ま、どうせ『看破』でも使ったんだろう?」

「──くそったれ。糸さえあれば動かなくても操れるって訳か。これだから超級職連中は嫌いなんだよ……」

 

 確かによくよく見ると、投げナイフの刃や、空中に縫い止められた仲間の身体に糸が巻き付いている。だが、これだけよく見なければ見えない細い糸に、俺達を縛る程の力があるってのか?

 

 わざとだろうが、ディルガルドが大きな声で説明した為に、俺の仲間達もその内容を()()()()()()()

 

「……な。──糸を操る、だと?」

「超級職……! そんなの勝てる訳ねぇだろ!」

 

 まずいな。怖じ気づきだした。……これでは、優位を奪われたも同然か。

 そして更に、事態は俺様の不利な方向へ向かっていく。リールを見せる為にディルガルドが舞わせたローブに刺繍されたマークが目に入る。〝三日月と閉じた目〟か。あれは確か──

 

「お、お頭ぁ! コイツ……<()()()()>の所属だ!」

「! んなところになんであのクランの野郎がいやがんだよ!」

 

 

 ◇

 

 

 <月世の会>。

 

 その実態はウチ(アルター王国)のクランランキング1位にして、現実で実際にある宗教団体、<月世の会>だ。

 クランオーナー、もとい教主は扶桑月夜。ウチ(アルター王国)の<超級>の1人で、通り名は〝月世界〟。

 なんでゲームの中にまで宗教団体が出張ってくるかという話は置いといて、恐ろしいのはここからだ。

 

 奴らは、物凄く良く言えば『仲間を大切にする』。物凄く悪く言えば『身内贔屓が過ぎる』。

 つまり何かと言うと、クランの下っ端1人PK(プレイヤーキル)したくらいでクラン全体がPKK(プレイヤーキラー・キル)しにくるのだ。話に聞いただけであり、そもそも俺様達はPK自体したことがないが、知り合いの情報屋に聞いた確かな情報だ。

 あのバカみたいな規模に加え、その数の利をキチンと活かしてくるんだから嫌な連中だ。

 だが……基本アイツらは【司祭】や【神殿騎士】などの聖職者で構成されてたはず。……なんで糸使いのジョブが居るんだ?

 

 

 ◇

 

 

「<月世の会>ってあの現実の……。えっ! ディルガルドさんが!?」

 

 どうやらこのガキも知らなかったらしい。レベル差が大分あるから野良パーティって訳ではなさそうだし、リアルの知り合いか?

 

 ──なんにせよ、ヤバイ連中に喧嘩を売ったのは確かだ。

 ……初めに突っ込んで来たのはそっちだってのに。

 

 ディルガルドはやれやれと首を振る。今や、その動作一つ一つが余裕の表れに見える。

 

「──ま、という訳だ。ボクは動いてないしね」

 

 平然と、今更にしてそんなことを言い出す。

 そして、ガキに向けウインクした。

 

「じゃ、よろしく」

 

 ディルガルドはそう呟いた。よろしく? 誰に言っているのか。コイツの仲間であるガキは捕まえてあるし、そもそもステータスからして俺をなんとかできるようには──

 

「人質取られたてめぇらに何ができ──」

「ひ、《ヒート・ジャベリン》!」

「ぐがぁっ!?」

 

 ガキが懐から【ジェム】を取り出し、上級魔法を放ちやがった。

 ほぼゼロ距離で受けた俺様の体は大きく吹き飛び、思わずガキを掴む手を放してしまう。ダメージは心配するほどじゃあないが、今問題はそこじゃあない。()()()()()()だ。

 放られたガキが地面へ転がりながら、ディルガルドへと叫ぶ。

 

「ディルガルドさん!」

「任せたまえ。──『■■■■■(スレッダー・シュレッダー)』!」

 

 その瞬間に悟った。俺様は死ぬと。この世界を去る前に最後に見たのは、ディルガルドのどこまでも無機質な顔だった。

 

「初めから俺様なんか眼中に無いってか? ……嫌な野郎だな」

 

【致死ダメージ】

【蘇生可能時間経過】

【パーティ全滅】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

 ◇

 

 

 □【探偵】 コウ

 

 完璧なタイミングで放たれたディルガルドさんのスキルは、手から束になり、ワイヤーの様に硬質化した糸を撃ち出した。すごい速度で相手を粉々に貫き、直後に消し飛ばす。

 周りに居た残党も、知らない内に光の塵と化していた。恐らく、いやもちろん、ディルガルドさんが掃討したのだろう。

 

 ひと仕事終えたとばかりに、ディルガルドさんがこちらへやってくる。

 その顔は、出会った時と寸分違わぬ、空っぽの笑みだった。何を考えているのか判らない、そして、考えているのかすら判らない。そんな笑顔。

 

「や。ナイスジャベリンだったよ。怪我は無いかい?」

「あー、どうも。大丈夫です」

 

 状況がきちんと整理出来ていないのもあって未だ困惑していた俺だが、やっと落ち着き、取り敢えず、今一番優先すべきことを聞いた。

 

「あの。キャロルさん──行方不明になった人達は!?」

 

 俺の質問に、ディルガルドさんは辺りを見回し、嘆息する。

 

「──ダメだね。辺りにそれらしい人影は無い。奴らは無関係だったのか、拉致した上で別の場所へ監禁したか……。どちらにせよ、急いだ方が良いだろう」

「ん……。なら何処へ行ったんだろ……」

 

 考えていても仕方ないとは思ったが、それにしたって何処をどう探すのかも決まっていない状態で動くのも無理がある。

 

「考えろ……判っていること、理由、原因を導き出すんだ……」

 

 考えることは大得意だ。長考癖は昔から。虹架にも伝染ったようだが、所詮ゲーム専門。練度も相まって、虹架のオリジナル(原因)はその遥か上の集中力であると自負している。

 

 ゆっくりと、海に潜る。

 深い深い、記憶と思考の深海へと。

 

 




このクラン、途中でも言ってたように、悪い人たちじゃありません。PKしたことないし、ただレベル上げしてただけです。優しいんです。「部下」とか「配下」じゃなくて「仲間」と言うところに片鱗が。やられたのは完璧な、成り行き。ツキがね……。

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【武装誘引】(アームズ・インダクション)
 ジャラザードさんのエンブリオのスキル。半径10メテル以内の、正式には武器ではなく、金属を引き寄せるスキル。当然近いほど強力になるが、STRが1000以下なら人間ごと呼び寄せられる。
これを使い、切り結ぶ際などに刃に触れ、刃を潰す。そして油断したところを─という戦闘スタイル。糸に使うと多分、ダメにする前に手が斬られる。
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そう! 最近UAの伸びが良くなってます。ありがとうございます。よろしければ、評価つけてください。たとえ低くても、もちろん『評価』なので文句を言うつもりはございません。
一応遅れない様努力したいと思います。では。
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