自由な世界の探偵事務所   作:水無月 驟雨

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じゃん!前話さ!投稿したと思ったら出来てなかった!

てわけで連投です
情緒不安定許して


降り立った。そして迷った。

 □王都アルテア南門前 コウ

 

 

「……ゲホゴッホ……ヴッヴン……──あー、死ぬかと思ったー」

 

 文面だけなら多少の強がりが混ざっているようにも見えただろうが、そんな余裕はもちろん無く、ただ放心気味なだけだ。

 実際上空での落下時に叫び過ぎて、もう声がほぼ出ていない。

 

「初手いきなり、ファンタジーな草原に臓物を撒き散らかすのかと思ったわ………。あーもう、何かする気力無い」

 

 自分の部屋で、ベッドで横になった時の好奇心やワクワクはどこへやら。まさかまさかの、ゲームの管理側の人間にその思いをごっそり削がれることになろうとは思わなんだ。

 果たして、誰がそんなことを予想できただろうか。

 

「虹架は大丈夫だったかな……」

 

 なんか、それこそゲームの状態異常の如く盛られているが、虹架は運動音痴の他にも虫やカラスなど、結構な数の弱点がある。そして、その中に高所恐怖症があるのだ。

 修学旅行で東京にある赤い電波塔に行った時はもちろん、婆ちゃん家にある昔の家らしい少し急な階段(高さ約3m未満)など、とにかく重症だ。

 原因は、小さい頃に二段ベッドから落ちたことなんだがそれはともかく、要は大人に肩車されたくらいの高さでパニックになる虹架は、高所恐怖症ではないはずの鏡介ですらこうだったのだ。アイツがこんなことになればどんな惨事になるというのか。

 

「まぁ、今考えても仕方ないか」

 

 自分でも、別のことを考えてさっきの恐怖を紛らわそうとしているのは分かっている。

 それに、虹架は虹架で考えるほどに気になってログアウトしたくなるので、この話は一旦吹き飛ばしておく。

 

「はぁ…………これが……ゲーム、なのか?」

 

 俺は他のVRゲームをプレイしたことが無かったので、他のもこんなにクオリティーが高いのかーと何とはなしに思っていた。少し前まで俺が居たあの本棚の部屋でも思ったが、風景から感覚から何まで本物そっくり。赤ちゃんを連れて来てここで育てれば本物の異世界人が生まれそうだな。

 若干恐ろしい思考になっていたのをほぼ無意識に修正。

 それにまぁ、リアルに見えることに関しては、さっき俺がそう設定したんだし。

 

 首をぐるりと巡らせると背後に、大きな門があった。地図でみた映像の中にもあった門なので、落下中風に煽られて別の国に着いたり……なんて事態にはならなかったらしい。

 その門からはなかなかの量の人が出たり入ったりを繰り返していて、思った通り、なかなかの活気だ。

 

「うん。とにかく行ってみるか」

 

 いつまでも落下地点でウジウジしている訳にもいかない。もしかすると、また別の新規プレイヤーが降って来て俺の頭に直撃する可能性もままあるのだから。

 

 門には警備兵の様な鎧の人が居たものの、特に検問なんかは無く、出入り自由のフリーエントランスだった。国として大丈夫なのだろうか。

 ただ、俺の不安は杞憂だったらしく、特にトラブル──チンピラに絡まれたり、肩をぶつけてきて金を請求する輩だったり──に見舞われることもなく中央通りを歩いていた。

 

「さて、と。初期金額は5万円あるし、何か装備を整えなくちゃいけないんだよな」

 

 虹架や、その他ゲーマー達と違いRPG脳ではない俺は、リルという単位を使いこなす自信が無かった為に、結局、脳内で円換算することでなんとかやっていけそうだった。

 俺はごくごく一般的なただの大学生なので、精々1ドルが100円前後を行ったり来たりしているくらいの知識しか無く、当然円以外の通貨に関心が無いのだ。

 

「えーと、確か虹架は……」

 

 ログイン前に詰め込まれた基本知識の中から、スタート時の装備についての内容を探していく。

 結構記憶力には自信がある方だが、如何せんデンドロ以外の、そもそもRPGの用語の説明から入ったのだ。早く慣れなくちゃしんどすぎる。

 そうぶつくさ言いながら、とにかく真面目に進めてみようと思った俺だった。

 

 

 ◇

 

 

「───迷った……」

 

 現在地は路地。正面の大通りを歩いていたはずなのだが、気づいたらここに居た。

 最初通りすがりの人に道を聞いたとき、「この道を噴水の方向へ真っ直ぐ歩けばギルドがあるから、まずはそこに行け」と言われ、言われた通り真っ直ぐ進んだはずだったのだが。

 

 路地とは行っても、本当に建物と建物の間の抜け道といった風で、いわゆるスラムやトラブルの匂いはしない。

 その代わり全く人通りが無く、道を聞こうにも相手が居ない。

 

 今、俺の目の前には物置のような小屋があり、そこから左右と俺の後ろへ3つの道が延びている。ただ、おかしいのはここからで、なぜかどこの道へ進んでも最終的にはこの物置の前に帰ってくるのだ。

 メニューの地図を見ていたのでどんな道からこの路地へ入ったのも分からないし、分岐は全て試した筈なのだがな。

 

「これが虹架から聞いたTYPE:ラビリンスの<エンブリオ>ってやつなのか……?」

「───いや、違うから。キミさぁ、方向音痴極まりすぎでしょ」

 

 突然後ろから声がかかり、びっくりして勢い良く振り返る。

 するとそこには、ニコニコと怪しげな笑みを貼り付けたような男が、口元を手で隠してクスクスと笑っていた。

 

「ふふふ……。──あ、すまないね。別に初心者狩りをしようってんじゃないんだ。ただ、キミがこの路地で延々と迷子になってたから、さすがにちょっとかわいそうだと思ってさ」

「……み、見てたんですか?」

 

 自分から行ったり道を聞く程度なら大丈夫ながら、向こうから来られると途端話せなくなるタイプの人見知りの俺は、突然始まった会話にビクビクしながら続いた。

 確かに武装を取り出す素振りは無い。──まぁ、まだこのゲームを始めて進捗無しの俺なんか、大抵のプレイヤーは素手で倒せるだろうが。

 ラフな白いローブ姿の、白銀の髪の優男は肩を竦め、

 

「キミ、分岐は全部試したと思ってるでしょ。実際、確かに全部通ってるんだけど『あぁあのルートなら大丈夫だな』と思って目を外した瞬間道を逸れて、酷い時は来た道をほぼUターンしてたね。あれは笑えるよ──ふふっ、失敬。また思い出し笑いが」

「取り敢えず殴ってもいいでございましょうか」

 

 なんか突然馬鹿にされたので、無職レベルゼロの俺が僭越(せんえつ)ながらグーパンを見舞おうかなと拳を握って構えるジェスチャーをする。

 すると。

 

「──まぁまぁ。言っただろう? ボクはキミを狩りに来たわけじゃないってね。平和的に行こうよ」

「な…! いつの間に背後に!?」

 

 俺が軽くシャドーボクシングを始めると男の姿が掻き消え、いきなり至近距離から囁かれる。少女マンガならときめいている距離だが、俺は男だしなによりコイツにときめく要素は無い。

 そりゃまぁ美形と言って差し支え無い程の顔立ちではあるが、それを越す勢いで胡散臭い。

 要は一瞬で相手の背後に回るなど、俺は気持ち悪いくらいの間合いの男に監視されていたらしい。

 

「監視なんて大層なものじゃない。ただなんとなーく飛んでたらキミがぐるぐる回ってたから、これまたなんとなーく、微笑ましく見てただけさ」

「さらっと心を読まないでください」

 

 あと『なんとなーく飛んでたら』ってどんな日本語だ。

 だが、当のご本人は「距離を感じるなぁー」とどこまでも余裕そうだ。

 それもそうか。

 

「ボクはディルガルド。よろしく。キミの名前は?」

「コウ、……ですけど」

「コウくんか、いい名前だね。」

「あ、俺、あんま敬うのとか出来ないんで。タメ口とか呼び捨てにするかもですけどお願いします」

「ふむ。……まぁ極力敬語の努力はしているだけ充分さ。それに、ボクも最近新入り達に敬われすぎて困っているしね」

「新入り?」

「こっちの話さ。とあるクランのね、幹部だから」

「へえー。じゃ結構偉い人じゃないですか。」

「そんなことはない。確かにクラン自体は控えめに言っても大きいが、ボク自身は大したものじゃないよ。成り損ないの準<超級>だしね」

「準<超級>……?」

 

 どこか聞き覚えのある単語に首を傾げつつも、あまりこの話を続けたくないのか再び「よろしくね」と話を締めた。

 ディルガルドさんは握手を求め左手を差し出す。左利きなのだろうか。合わせてこちらも左手を出しかけ、ふと、その左手にある紋章が気になった。

 

「あの……何度もすみませんが……。その<エンブリオ>の紋章、俺どっかで見たことある気がするんですよね」

「…………はぁ」

 

 あからさまに、いかにも退屈、飽きたという風にため息を吐かれる。

 

「何かまずいこと言いましたかね…?」

「いやいいんだ。気にしないでくれ。それより、ボクは用事を思い出したんだ。──うん、その前にキミにこれをあげよう」

 

 そう言って、腰に巻いている風な形状のカバンから一つの指輪を取り出した。

 手を出すように促されたので、甲を上に向け差し出すと、それじゃあ結婚式じゃないかと笑われ、手を返し握らされる。

 

「それは導きの指輪と言ってね。……まぁ名前通りの代物で、マップの行きたいところを指定すると、その場所への最短ルートが地面に青い線として示される。本当に最短距離だから、外で使うとモンスターがうようよ居るところを通らされるかもしれないが、まぁ街中なら安全だよ」

「そんな便利な物が」

「いや、単にマップを開けば良いから要らないって結論に至って売れなくなった死滅品だよ。相場が低すぎてボクも売ろうとも思わないから存在を忘れてた」

「…………」

 

 なんだ、この気分。グーしたい。グー。

 

「あとはい、キミ面白いから、フレンド登録してくれよ」

 

 釈然としない気分のまま、なし崩し的にフレンドになる。

 

「じゃ、ボクはこれで。また機会があれば会おう!」

 

 その瞬間、ディルガルドさんは俺の視界に居なかった。

 

 頭の片隅に、彼の手の甲とローブにあった〝三日月と閉じた目〟の模様が燻っていた。

 




俺ってステータスとかの裏設定を考えるのが好きなタイプで、そのせいで出歯亀とかやられ役の<エンブリオ>すらちゃんと能力を考えてしまいます。
そして出てきたばっかしのディルガルドさんの能力を公開したくて疼いてます。左腕が。
もしかしたらこのスペースに登場したザコさん達の<エンブリオ>を出したりするかも、ですね。
ちなみに作者も敬語苦手です。
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