失礼致しました。
「いやー、画期的だと思うんだけどなぁ」
無事ギルドに着き、適職診断とやらを終えた俺は、左手についている指輪を眺めながら零した。
地面に現れた線を辿って歩くと路地を抜け、無事にギルドへ着いた。──まぁ下を向いて歩いてたから3回程人にぶつかったが。
それと、問題の適職診断だが、文字通り質問に答えていくと、自分にどんな職業が向いているかを教えてくれるものだった。
結果は、『戦闘職はあまりオススメしない』。意味が分からん。
普通は【騎士】とか【錬金術師】とか、職業名をズバリ言われるらしいのだが、戦闘職をオススメではなく否定という謎な結果になった。
そもそも、適職じゃなくて非適職を診断されても困る。戦闘職以外と言ってもなかなか幅広いし。
この国で就ける戦闘職以外の職業──ジョブには、大抵の生産職と、他に【司祭】、【絵師】、【記者】に【作家】などがあった。
あと、『ピンプ』というジョブもあったが、意味を知らなかったので日本語で聞くと、『
「──結局はあなた次第ですし、あなたがやりたいと思ったことをなさってください。それに、
だそうだ。
「──つっても、別にやりたいことなんか特別あるわけでもないしなぁ」
ジョブはたくさんあって、100個を超えた時点で数えるのをやめた。まぁ、それだけあれば自分に合ったジョブも30個くらいあるだろう。
「とはいえ、せっかくのゲームに居るんだし、何か成果を残したいな。【絵師】や【作家】もあるらしいけど、絵も小説も現実でも出来るし、何かゲームならではなジョブが良いな」
話では、討伐や掃討、採取クエストなどを専門的に請け負う【傭兵】もいるそうだ。他に、ファンタジー産の、現実では食べられない食材を使った【料理人】など。受け付けのお姉さんのイチオシは果実と肉らしい。
「とはいえ採取はなぁ……。ちまちましたモンは嫌いだし……。料理も、現実の料理の上手さプラスゲームのやり込みだろうし、気は向かないかな。つーか料理も
嫌いなのであって苦手ではないのだが、なんにせよゲームの中に来てまでしたくはない。
「──ん? これは……『総合攻略掲示板』?」
見つけたそれは、初心者から中堅者までのプレイヤー向けの経験値効率の良い狩り場の場所、そこに出現するモンスターの種類と対策や、『どこどこへ狩りへ行くのでパーティメンバーを募集』という張り紙などの、確かに攻略で役立ちそうな情報などが沢山載っていた。
「そういえば、お姉さんが記者関連の職業の人達は攻略情報をまとめて掲示板に張り出してるって言ってたか。その掲示板がこれだな?」
「──あれれ〜、初心者さんかにゃ? むむむ〜、見たところ、オニーサンにオススメするのは良い狩り場よりも良いジョブだにゃ〜」
「な、なんなんだ一体……」
突然声が掛かり、返事をする間も無く勝手に話が進む。
俺が若干辟易とした感じで振り向くと、そこに居るのは──簡単に言えば犬人間(
頭の茶髪から耳が生えていて、背中からは同じく茶色い尻尾もチラチラと覗いている。短い茶髪の髪は狙ったようにフワフワで、動物の毛並みのよう。女性の髪を動物に例えて良いのかは知らないが。
小柄な体にそぐわず軽装備で、というか露出がちだ。痴女というレベルではないが、肩とか、お腹とか、脚とか。マントを羽織っていて後ろからは見えないが、気休めだな。
見た感じの顔では、俺より1つか2つ下くらいだろう。ちょうど俺と虹架の間くらいか。──アバターの外見年齢はアテにならないんだったか。
とにかく、その口調もあって一瞬猫女かと思ったが、よく見ると耳も尻尾もフワフワでチワワの様な感じだった。
「……猫? …………あ、犬か」
「失礼にゃ! どっからどー見ても
「いや、お前もう何の生物なんだよ」
犬の耳と尻尾、語尾は猫なのに名前はウルフ。ここまで癖の強いプレイヤーが居るのか。
………ふと、思ったことを言ってみる。
「お前、自分のこと何系だと思ってる?」
「もちろん、
「好きな料理は?」
「小さいときに食べた
「大切な物は?」
「
「その革装備は?」
「ノズ森林の【亜竜爪
「好きな童話は?」
「『
「はぁ…………」
「ちなみにメインジョブは【記者】だけど、サブの上級職は【猛
「うわぁ………」
「ウルフの<エンブリオ>は
「もうお前嫌いだわ」
「うにゃっ!?」
問答の末に折れる。もう無理。なんか無理。
えーと? 猫、犬、狼、リス、猪、ハムスター、熊、兎、亀、虎、そして鹿か。
………………徹底し過ぎだろ。
「ウルフはオニーサン結構好きにゃ〜? ウルフのこと解ってくれてるしにゃ〜」
言う通り、確かに俺が質問を連呼すると、きれいに動物関連の返答が返ってきた。自分で言うのではなく、『相手に聞かれてから答えた方が』面白くはあるのだろうが。
見た目だけはかなり美少女なウルフがすり寄ってくる。周りの男性プレイヤーがあからさまに舌打ちしながら通り過ぎて行くのを震えて見送りながら、半目でウルフを押し退けつつ。
「にゃ〜?
「うん、まぁ、だいぶ。かなり、いや、超ネタキャラだってのは
正直に思いの丈をぶつける。特に面白くもない非情なだけの一言だな。
ウルフが「ネタキャラとは失礼にゃ!」と、堂々巡りになりそうなことを語り出したのでその話題については一旦無視。
「で、ウルフは【記者】なんだって?」
「──だからもっと敬ってぶつくさくどくど……え? うん。確かにウルフは【記者】にゃ。一応、専門分野はジョブ関連となってますにゃ〜」
あぁ、納得。
「それで最初、良い狩り場より良いジョブの方がオススメだって言ったのか」
「うんにゃ、そうじゃなくて、ただ【看破】使って見てみたらレベルゼロで、なおかつ何のジョブにも就いてなかったからにゃ」
「言っとくけどそれ個人情報だからね!?」
「それがデンドロってゲームなのにゃー。何をしようと自由。たとえ人のステータス情報をお金に変えても、誰も文句は言えないのにゃあ」
「改めて恐ろしい世界だな…………」
というか、何回も言うが『自由』って言葉軽々しすぎやしないか? ……それとも、こんな風に考えてるのは俺だけなのかな。
「あ、そうだ。ちょうど良いからさ、俺に合いそうなジョブ見繕ってくれない?」
「んにゃ? 別に良いけど、金取るにゃ。──ま、ここではなんだし、場所移そーにゃ」
「金取んのかよ。……けど俺
「……うん。ま、にゃー別にいいにゃ。先輩だし、店の代金はウルフが持つにゃあ。……それに」
顔を背け「図々しいにゃ…」と言いつつ。聞こえてるんだがな。ウルフは、気分を切り替えるようにパチーンと大きくウインクを決めて、
「ちょうど
◇
ナイフとフォークをカチャカチャと言わせながらパンケーキを頬張る。
「もぐもぐ。……クソッ…………超うめえ」
「にゃふふふ〜。なんで悔しそうなのかは分かんにゃいけど、美味しいならなによりにゃ」
「──こちら、ご注文のコーヒーです。ごゆっくりどうぞ」
「ずずず……。ふっ、コーヒーは妹が淹れた方が美味いな」
「だからにゃんで誇るのにゃ」
俺たちは誰も来ないような…………いや、例外として
隠れ家的な雰囲気も気に入ったし美味しいのだが、正直一人じゃ二度と来れないだろうし、恐らくここで俺一人にされるともう帰れない。というか、路地から抜け出せない。
この国の路地、やっぱり誰かの<エンブリオ>で迷路と化している気がする。ラビリンス。
閑話休題。
「そもそも、職業ならウルフに聞くより、ギルドで適職診断受けた方が手っ取り早いんじゃないのかにゃ?」
「あぁ、受けたんだけどさ、『戦闘職はオススメしない』って意味不明な結果になった」
「出たにゃそれ。数千回に一回なる、『診断の倦怠期』って言われてるにゃ」
「ふざけんな」
サボるなよ。ゲーム歴ゼロだから詰みかけだわ。
ウルフは、職業名がズラリとリストアップされたウインドウを出し、こちらに見せながらボヤく。
「んまー倦怠期が言ったことだし戦闘職も視野に入れるとして……。なにかしたいことはあるかにゃ?」
「いや、特に」
「なにか武道の経験は? 空手とか、剣道とか」
「無い。帰宅部オンリーだな」
「な、ならデンドロを始めた経緯はなんなのかにゃ?」
「『妹に誘われた』から」
「ウルフはどうすればいいのにゃ!」
ウルフは「うがー!」と喋り方を猫から虎へランクアップさせながらコーヒーを一気飲みし、「熱っ! にゃうっ!」と騒ぐ。
どうでもいいが、
「にゃー。
そんなこと言われても。
けれど、俺はどうせゲームをするのなら魔王討伐とか、そんな風に明確に目標がある方が良いのかもしれない。
「
「もーこいつ放って帰ってやろうかにゃ……」
最大級に呆れた顔で、ウルフは運ばれて来たパフェにがっつき始めたのだった。
コウさー、、、別に悪いヤツじゃないんですよ。
いろんな世界線通してこんなキャラなんですよね。恋愛とか、ゲームとか。ホラー系もあったかなぁ……。
淡々としてるっていうか、マイペースというか。
作者共々よろしくお願いします。
今回の捏造は上級職、【猛虎戦士】です。
下級職は戦士派生の【虎戦士】。この手のネーミングセンスは無いんですよね。
パワーと素早さが特徴のジョブで、多少の潜伏性能もあります。基本的には虎です。