自由な世界の探偵事務所   作:水無月 驟雨

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お陰様でUAが1000突破しました!8話で1000ってどうなの?遅いのか??って感じですが、兎にも角にも皆様のお陰です。ありがとうございます。



探偵業スタート
探偵事務所と初依頼


 □【探偵】 コウ

 

 

「──────はぁ」

 

 同日、なんだかんだ暇でまたログインしたのは良いが、結局虹架の所属国を聞けなかった。

 更によくよく思い出せば、俺の所属国も教えられていない。

 

 夕食を食べ終えた後、時計を見た虹架は「のんびり食べすぎた!」と焦り、すぐさま自分の部屋へ帰っていったのだ。俺は最近、友達に大学のサークル見学(時期外れすぎる)に連れ回されていて帰りが遅かったので知らなかったのだが、虹架は2日前から、夕食を食べるとすぐ部屋に戻り、ゲームを再開しているらしい。

 ただ、それでも早食いしたり残したりしないところは、さすが母さんの娘といったところか。

 そういった訳で、俺が夕飯を食い終わり、虹架に色々聞こうと思った時には既に、虹架は電脳世界に舞い戻った後だった、と。

 お互いに所属国を知らないので、会うことはほぼ不可能だと言える。──いや、明日にでも聞けばいいのだか。

 

「最悪オブ最悪だな。……ま、妹に頼ってるようじゃダサいし、まずは自力で稼げるようになるか」

 

 自立、と言えばいいのか。日本語は難しい。

 一番手っ取り早いのはモンスターを狩って素材を換金することだろうが、せっかく【探偵】をとったのに始めから狩りを始めては負けた気がする。

 なんか、話の熱にあてられて流れのままにとった【探偵】だが、これを使って稼ぐにはどうすれば良いのだろう。

 

「探偵事務所かなんか建てれば良いのか?」

 

 ジョブクエストという便利なものの存在を俺が知るのは、もう少し先になる。

 

 

 ◇

 

 

 ──今後当面の行動方針を、探偵事務所の設立とする。

 

 とはいえ、建物1つを所有しようと言うのだ。もちろん金はかかるし、というかそもそも場所すら見繕っていない。

 数分後、俺は、現実で言うところの『不動産屋』に来ていた。

 

「近くに目印になる建物があって、安くて、最低限人が住めるところを紹介してください」

「人が住めるところってなんだ、ウチを馬鹿にしてんのか」

 

 ……見事にキレられた。一体何が悪かったのか。

 不動産屋……なのだろう。明らかに武闘派だろうと言いたくなるほど筋骨隆々とした肉体のそのティアンは、ふんぞり返って鼻息荒くそう怒鳴った。

 

「……いや、誤解を産んだのなら反省します。一度、父さんが不動産の詐欺に遭って不良物件に住みかけたことがあってですね」

 

 俺が産まれる前にな。あれは酷い話だった。

 

「……あぁ、なるほどな。喧嘩売られたかと思っちまったよ。許せ」

 

 『許せ』って謝る気無いよな、などと不躾なことを言う気はない。

 ……思うだけで。…………思うけどな。

 

「んで、さっきの条件だが、どれくらい妥協できる?」

「目印さえあれば王都の端の方でも大丈夫だと言うのなら、いくつかアテはあります。お金は……安くなれば当然、古いものになりますかね。まぁそれでも人は住めますが。──あと、いきなり口調変わりましたねお客様」

 

 お前もだろ。お客様だと認識した途端敬語になりやがって。

 言った後で気づく。これ……若干ブーメランになってないか?

 案の定、店主は嘲笑う様な笑みを貼り付けた顔でに片眉を上げ、不動産屋の制服を脱いだ。どうやら、その足で物件を案内してくれるらしい。

 

 そして、「全く最近の若いモンは」とでも言いたげに俺を呼ぶ。

 

「……まぁいい。数件、心当たりがある。ついて来い」

 

 

 ◇

 

 

「──お買上げありがとうございましたー」

「いや違う違う違う。買ってない。『借りる』って言ってんだろ」

 

 ムキムキの不動産屋に、純度100%の営業スマイルを向けられる。見てくんな、気持ち悪い。

 当の不動産屋は、いかにも「何をおっしゃいますお客様」という雰囲気で肩を竦めた。

 

「? 当店では『借りる』というサービスは行っておりませんが」

「そーかよ! じゃ買います! 契約書書いちゃったしな! ──いかに日本が良いか再認識したわ!!」

「納金、送れないでくださいねー」

「うるせーこの脳筋不動産がよ! とっとと帰ってダンベル上げてろ!」

 

 結果︰騙されました。というか、久々にあそこまでキレた。

 

 『嘘』だけなら別に嫌いじゃないし、俺も言う。だが、他者を巻き込む『騙す嘘』は心底嫌いなのだ。俺は。

 そして、そんな『騙す嘘』を吐かれるとめちゃキレる。さっきみたく。

 

「──ま、まぁ、最大限いい方向に捉えて、拠点が見つかったし妥協ってことで」

 

 騙されはしたものの、こちらの要求であった近くに『目印がある建物』はきちんとクリアしている。それに、購入にしてはかなり安い。

 事故物件だろうか。それならそれで幽霊は信じないタチなので良しとする。──そもそもゲーム内に幽霊なんているのか。

 

 俺が購入したさせられたのは王都の端にある、二階建てのオーソドックスな一軒家だ。ちゃんと人間も住めるし、それこそ事故物件でもなければこの値段はおかしいくらい安い。

 ちなみにその値段だが、現実の俺の小遣いの150年分以上、とだけ言っておこう。そしてその全額もちろんローン。これでも安い方らしいけどな。

 

 場所は、俺が最初入ってきた門の側。そして大通りの一つ奥の通りの端だ。つまり、『門』というこれ以上無い目印があり、かつ一つ奥の通りに入るだけという分かりやすい立地。

 ──何かへの道中に通りかかることだけは絶対に無いが。

 

「んじゃま、今日は掃除して、看板立てて、最低限事務所として完成させてから落ちるか」

 

 その後、ゲームの中ではホコリは積もらないことが判明したが、それはそれとして人が住んでいるようには見えないので(廃墟という意味ではなく)、せめて探偵事務所だとは分かるように看板を立てておいた。

 ……が、さっきも言った通り、『何かのついで』には通りにくい立地なので、ここらへんに住んでいるティアン達が見つけて、話を広めてくれることに期待するしかないだろう。

 

 某探偵マンガの探偵事務所を見習って、居住スペースを二階にし、一階を事務所としておく。

 入口の前に看板を設置し、ある程度部屋を整えて(家具は元から少しあった)から椅子に座り込む。

 いくらゲームでも、この肉体は未だレベルゼロ。筋力や体力になんの補正も無く、大きいソファーや机を動かしただけで息切れがした。

 ──現実の俺の体力の無さもあるのだろうが。

 

 椅子の上で寛いでいると、チリンと呼び鈴が鳴った。疲れてほとんど寝かけていた頭が起きる。いそいそと玄関へ向かう。──ちなみに、玄関とはいえど土足で入れる家だ。

 

「お? ……早速依頼か?」

 

 ドアを開けると誰も居ない……いや、視線を下に下げると、そこに居た。

 

「……? んーと、どうしたの? お嬢さん」

「あ、あの! た、たんてーさんですか!?」

 

 微笑ましい、と素直に思った。いや、そっちの意味は無く。

 髪は金色、目は蒼く。身長は……コウの半分も無い。ツインテールにした髪は長く、服は綺麗で、少なくとも貧乏な家の出ではないことが分かる。

 更に、両手で茶色い熊のぬいぐるみを抱えている。──お腹が潰れる程に強く抱きかかえられているが。

 

「そうだけど、いや待って、そもそも、どこで此処(ここ)を知ったの?」

「えと、パパをさがしてたの!」

「え、こんな早速依頼来る? しかも失踪事件とかガチかよ」

「?」

 

 自分から探偵を始めると言った手前アレだが、まさかこんなに早く依頼が来るとは思わなかった。数奇な巡り合わせもあったものだ。

 ──だが、これから、俺の長い1日が始まるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「あのぉ……すみません。お邪魔しちゃって」

「あ……いえ、大丈夫ですよ。広いですし」

 

 1時間後、事務所には女の子──ルルちゃんのママ(母親)、ロズレアさんが来ていた。

 早い話が、小さい子1人だと何かと不都合だと思い、ルルちゃんの家に行って親御さんに説明したのだ。

 どうやらルルちゃんは勝手に外出していたらしく、怒られていたが、今では(あめ)を貰いすっかりご機嫌。その間にロズレアさんから事情を聞いていた。

 ロズレアさんは、勝手に家に上がりこんだと思って恐縮しているが、実際一人暮らしには広すぎる上、元々家なので存分に使ってくれた方が騙された感も薄れるし全く問題無い。

 

 ロズレアさん曰く、騎士に頼んでもお手上げで諦めかけていたが、<エンブリオ>を始め色々特別な<マスター>に探してもらえるなら嬉しい、と喜んで依頼し直してくださった。

 だが、ここで想定外が。依頼を受けた際にクエストが発生すると思っていたのだが、(というかウルフからそう聞いた)何度ウインドウを確認してもクエストは受けることができなかった。何か制限や、受けられない理由があるのだろうか。

 とはいえ、クエストじゃないというのは助けない理由にはならない。放っておくのも後味が悪そうだ。

 

 ちなみに、ルルちゃんもロズレアさんも俗に言う金髪碧眼だが、失踪したお父さん──キャロルさんの髪は逆に蒼く、そして目が金色らしい。

 

「ルル、パパ見つかると良いね」

「うん!」

 

 こんな感じで、仲睦(なかむつ)まじい。

 それは置いといて、ロズレアさんに話を聞いたところ、これらのことが分かった。

 

 1つ、キャロルさんは、一昨日の夜出ていったきり帰って来ないらしいこと。

 2つ、キャロルさんの仕事は衛兵で、夜間に門の周りにモンスターが増えた為、それらを掃討する為に鎧フル装備で出たらしいこと。

 3つ、キャロルさん以外にも、近辺のティアン数人が行方不明になっていること。

 4つ、昨日今日と探しているが、王都はおろか、門の傍の詰所などにも痕跡は見られなかったこと。

 

(うーん……。ハッキリ言ってしまえば、そのモンスターにやられたというのが1番しっくりくる。くるけれど、それなら門の周りにでも何か痕跡があるはずなんだよなぁ……)

 

 付け加えると、居なくなったティアンはキャロルさん含め5人で、他の人も皆衛兵と、騎士だそうだ。

 

 ──探偵と言っても、頭を使う傭兵程度だと認識していたくらいだ。のっけから本格ミステリーになるとは予想していなかったが。

 非情ながら、既に死んでしまっている可能性もあった。だが、確定していない以上決めつける訳にもいかない。確信が得られるまでは探すべきだろう。

 

「まぁとにかく、門の方へ行ってみましょう。話を聞いただけじゃ分かるものも分からないですし」

「は、はい。そうですね」

 

 とはいえ、非武装の女子供を外に連れる訳にもいかないので、俺が単独で門を出た。

 そこは初ログイン時に見た草原で、初心者の狩り場らしくモンスターは少ない。だいぶ遠くに動物が見えるくらいだ。

 

「えーっと、現場現場……」

 

 ロズレアさんに教えてもらった通りに、門の右側を重点的にぐるぐる歩き回る。

 すると、何か気になるものを見つけた。

 

「あれは……? ──お」

 

 門からかなり離れた場所に、地面が抉れた箇所があった。

 見たところ、かなり力をかけながら線で抉れていた。簡単に言えば、スコップではなく剣や槍をゴルフの様に下から振り上げたかの様。

 当然線状なので、その先に向かってみる。すると、

 

「……! おい、これって……!」

 

 それは、血痕だった。

 出血しながら歩いた様で、点々と道が出来ている。

 草原の、草が長い地面に付いていて、血も変色して黒くなっている為、確かに目印無しでは見つけにくいだろう。

 

「これを辿れば良い訳だ。──よし、違う人かもしれないけど、意外となんとかなったな」

 

 

 取り敢えず、それを辿ってみることにした。

 




何話分かは分かりませんが、この事件結構続きます。

それと、昨日ですが、割烹にお知らせ(?)を書いときました。割烹の通知がどうなっているのか、とかは分からないのですが、この作品を見てくださっている人には一応目を通しておいてほしい内容です。
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