5話
俺が郵便局強盗事件により怪我を負い、入院してから凡そ1週間。あっという間に怪我は完治し、今は支部で溜まっている書類仕事をこなしているとこだ。·····結構な大怪我だったとは思うが、あのカエルみてえな顔している医者曰く「僕にかかればざっとこんなところだね? まあ君の治癒力が、一般の人よりあったからでもあるね?」らしい。
後でこの医者の事を調べた所、どうやらかなりの有名人で「
今の時間は固法先輩と白井ちゃんはパトロールへと出ている。俺が行こうと最初は思っていたんだが「一応治ったとは言えこの前まで入院してたんだから、ここは私達が行くから軍丞君は書類仕事をお願いするわ」と固法先輩から言われた為、俺は今は書類仕事をしているのである。とりあえず、溜まっている書類を整理し仕事別に分けていると電話が掛かってきた·····支部の備え付けの電話では無く、俺の電話にだが。
「一体こんな時間に誰が? ·····まじでなんでこいつからの電話だ? なんの用事かは知らんが·····まあいいや、もしもし?」
『あらぁ、思っていたよりも元気そうねぇ? 私が思っているよりも、回復力がいいみたいねぇ?』
「お蔭さまでな·····んで、一体何の用なんだ
───4ヶ月前 第七学区
俺こと軍丞京介は、その日はいつもだったらパトロールへと出ている時間だったが、書類仕事が溜まっていた為急遽予定変更。固法先輩と俺で書類仕事の処理を行っていた。·····にしても、今日は本当に暇なもんだ。俺はそう思いながら書類に不備がないか調べていた時、突然呼び出し用のベルが鳴ったのだ。
「あら、何かあったのかな?」
「ああ、いいっすよ先輩。俺が出ます」
俺はそう言い、インターホンを覗き込む。そこには、名門である常盤台中学の制服を着た少女が立っていた。髪はブロンドって言うよりは蜂蜜色、体はまだ成長途中と言った感じだ。多分まだ中1って所か? そう思いながら俺はインターホンの呼び掛け用のボタンを押した。
「はーい、こちらは
『えっとぉ·····落し物があったから届けに来たのだけどぉ?』
「落し物ですか、分かりました。ではドアを開けますので少々お待ちを」
そう言い、ボタンから手を離した俺は入口のドアへと向かい、ドアを開けた。そして落し物を届けに来てくれた少女を「では、此方へお願いします」といい応接室へと案内する。何故こんな事をするかって言うと、落し物ってのは基本にいつ、何処で、どんな状況で拾ったか等を確認する必要があり、それらを証明する為の書類を作らないといけないからだ。
まあ、交番とかでの落し物の対応をイメージしてもらった方が早いだろう。とりあえず少女から落し物を拾った時について聞いていき、落し物を拾った本人のサインをお願いする。
そこで俺は書類を見た時、かなり驚いた。何せそこには「常盤台中学1年生 食蜂操祈」と書かれていたからだ。·····まさか
「·····ちょっとぉ、もうサインしたから帰ってもいいかしら?」
「ん、ああ。すみません、協力感謝します。·····あ、そういえば落し物をまだ受け取っていませんでした。すみませんが、渡していただけますか?」
「·····あら、確かにまだ渡していなかったわねぇ。それなら、はいこれよぉ」
そう言い、食蜂さんから携帯を受け取ろうとする。すると、その携帯をよく見ると親友である上条当麻が使っている携帯だった。·····あいつ、いつも通りの不幸発動してんだなぁ。まあ、そこが当麻らしいけども。
「·····あらぁ? この携帯の持ち主を知っていそうな感じかしらぁ?」
「·····えぇ、自分の友人の物でしたので。まさか、携帯を落としているとは·····」
「あらそうなのぉ、あの人と知り合いねぇ。·····案外、これを見越して仕組まれた必然力なのかしらぁ?」
「仕組まれた? ·····いやいや、あいつはそういう事はしないですよ。ただの不幸が頻発する一般学生ですから」
「全部偶然ってことぉ? なんて不幸力の人なのかしらぁ」
「あはは·····とりあえず、自分が預かって本人に直接渡しますので問題はありません。この度はご協力ありがとうございました!」
「えぇ·····それじゃあ失礼するわねぇ?」
そう言い食蜂さんは応接室から出て行った。·····とりあえず、固法先輩へとこれらの事を報告して、仕事に戻るとすっか·····そう思いながら俺は書類を固法先輩へと渡しに行った。
「先輩〜? 生徒への対応終わりました。とりあえずこれが落し物の報告書っす」
「ありがとね軍丞君。·····ふむふむ、って食蜂操祈ってあの常盤台の女王サマ!?」
「みたいっす。いやあ、女王サマって言われてますけど案外気配り出来るのかもですねぇ」
「·····まあ、対応ありがとね。それで、落し物の携帯は?」
「あー·····実はこれ俺の親友の携帯だったらしくって、俺が
「あらそうなの·····うん、落し物の人が分かってるんだったら、特に問題は無いかな? それじゃあその携帯は軍丞君に任せるね?」
「了解です、任されました。·····とりあえず、書類仕事に戻りますねー」
俺はそう言い自分のデスクへと戻る。さてと、さっさと仕事終わらせて早く当麻に携帯を届けねえとな·····と、その時俺は思っていた。しかし、結局緊急で入ってきた仕事があり、それらを終わらせるのに夕方までかかり、俺が寮へと着いたのは夜の8時位だった。·····実は、当麻の携帯のはメールが届いていたのだが、俺は仕事で気づかなかった。
俺が寮へと帰宅してからすぐに当麻へと携帯を返しに行った。割かし遅めの訪問だったから、寝ちまってると思っていたが、やはりまだ中学生の為、まだ当麻は起きていた。俺の突然の訪問には驚いていたが、俺が来た理由を説明すると
「まじか! いやーサンキューな軍丞。どこで携帯落としちまったんだろって思ってたから、本当に良かったぜ」
と言い当麻は俺から携帯を受け取った。とりあえず、これで今日の俺の仕事は終了·····さっさと自分の部屋に戻るか。そう思っていると、当麻の顔が携帯を開いた時に急に青ざめた。·····一体何があった?
「───くそっ、マジかよ!」
「どうした当麻? ·····おい、何処へ行くんだよいきなり! 今は門限なんざとっくにオーバーしてるぞ!」
いきなり当麻が玄関を飛び出し、夜の学園都市へと飛び出して行った。───あいつ、一体何があったんだ? もしかして、メールとかでやばい事でも起きているかもしれない。そうなると
何か金属音が聞こえて来ていたが、どうやら寮に移動用として置かれている自転車で飛び出したようだ。·····緊急事態だし仕方ない。俺は能力を使用し当麻の後を付けていく。にしても、いくら自転車乗ってるっつっても早すぎだろ!? 能力フルに使っても、後ろへと着いていくのがやっとだ。どんだけ急いでいるんだ当麻のやつは!
·····当麻を追い始めて凡そ30分位経ったとこだろうか、既に第七学区は抜けていて2つ先の第二十一学区へと辿り着いた。辿り着いた場所は実験用で使用されている地殻発電所の人工湖。近くに自転車が置かれているので、どうやら近くに当麻はいる様子だ。少し探すと、少し小高くなっている崖の手前で、当麻は膝を着いて呆然とした雰囲気で座り込んでいた。
「───はぁ、はぁ。どうしたんだよ、当麻、一体なんでこんなとこ·····へ?」
息も絶え絶えに俺はそう当麻へと話しかける。俺が着いてきていた事に今まで気づいていなかったのか、かなり驚いた表情で当麻は俺を見た。俺に向けたその顔は、酷く暗い表情で何かを後悔しているかのような顔だった。·····まじで何があったんだ?
俺はそう思いながら当麻の周囲を何気なしに見渡した。·····よく見ると、当麻が座り込んでいた前の部分には靴が置いてあった。多分、女性用のローファーらしい物で、
「軍·····丞か? なんで、こんな所に───」
「·····まず、俺の質問に答えてくれ。一体、何があったんだよ?」
そう俺は当麻へと質問をする。·····もう答えは出ているも同然だが、何があったかを聞く事が先決だ。当麻は苦しげな表情を浮かべながらも、何があったかをポツポツと話していく。
「───実は、
「·····それで?」
「さっき携帯を見たら、その子からのメールが届いていたんだよ。そのメールの内容は·····『今までありがとう。迷惑かけてごめんなさい。私の事は忘れて下さい』ってメールだったんだ·····」
当麻のその言葉で、俺は金槌で思い切り頭を殴られたかのような衝撃を受けた。·····つまり、さっき当麻が言っていた内容のメールを送ったが、それを俺が仕事してたせいで気づかなくて、こんな遅い時間になって当麻が気づいたって事なのか·····? 俺が、何かしら気づいていたらこんな結末じゃなかったかもしれなかったんだ。俺がその考えに行き着くと、当麻は抑えきれなかったのか涙を流し始める。
「俺が携帯を落とすなんて不幸がなければ救えたかもしれねぇってのに、なんで俺は·····! くそぉ!」
その言葉に俺は何も言えなかった。いや、何も言える言葉が無かったが正しいか。実質俺のミスでこんな結末になったと言ってもいい。·····何が、学生を守る
「すまねぇ当麻。俺が気づいてさえいれば·····」
「·····結局の所、蜜蟻は俺の不幸のせいでこんな結末になっちまったんだ。軍丞のせいじゃねえよ·····」
その後は覚えていない。もうとにかく自責の念でいっぱいで、俺がその後どうしたのかも分からなかった。ただ分かっている事は、気づいたら俺は自分の部屋に戻っていたって事だけだ。当然、全部が夢オチな訳じゃない。当麻の面を見りゃ分かる。「あれは実際にあった現実だった」のだと·····。
───その日、第一七七支部へと向かうと固法先輩からとある情報が届いた。「第二十一学区の湖で、地殻発電所の作業員が亡くなった女生徒の亡骸が発見された」という事らしい。それを聞いた俺は俺が知っている事を先輩に話した。
それを聞いた先輩は「·····仕方なかったって言うつもりはないけれど、あなた達には責任は無いの。だから、それを忘れるなとは言わないけども引き摺らない様にね?」と言われた。───確かに先輩が言っている事は分かる。確かにこれを引き摺らない事が大事だ。だけど、それだからって言っても直ぐには割り切る事は出来ない。こればっかりは、前世で生きていた時から苦手だ。·····まあ、このまま落ち込んでいたら先輩に迷惑がかかる。今は割り切って仕事とへと移らないとな。
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───あの一件から2日経った。俺と当麻は、蜜蟻さんが亡くなった場所へと来ていた。俺は仕事とかもあるし、ある程度はマシにはなったが当麻は違う。こいつは俺みたいに転生している訳じゃない。
俺だってある程度割り切る事が出来たのも、前世での人生経験があったからでしかない。しかし当麻は、蜜蟻さんが亡くなる前は相談に乗ったりしていたので、より一層今回の事で精神的ダメージを負っていた。だから、俺から蜜蟻さんが亡くなった場所へあの日と同じ時間に、献花をしに行こうと誘った。
これは当麻が割り切る為に必要だと思っていたし、当麻自身にもこの1件を乗り越える必要があると思っていたからだ。·····まあ、そんな簡単に割り切れる訳では無いしな。当麻はまだ中学3年の一般人で、まだ少年だ。普通だったら割り切れないのが当たり前。俺みたいなのが異端なんだ。ただまあ、一応当麻自身は献花のお陰か、踏ん切りは着いたらしくさっきまでの沈んだ表情は薄れていた。
「───心配かけて、悪かったな軍丞。少しだけ心が軽くなった」
「それなら良かったよ。·····すぐに割り切れって訳じゃないけど、これである程度は踏ん切りは着いたみてえで良かったよ」
そう言い、俺達は帰り道を歩いていく。·····5分位歩いた所で、当麻が何かがあったらしいのか、何かへと指を指しながら俺に話しかけてきた。
「·····あれ?なあ軍丞。あそこに何か見えないか?」
「んー? 一体何が·····」
そう言われ、俺は当麻が指さした方へと視線を向ける。よーく暗い中だが目を凝らしてみると、そこには誰か寝転がっていた。一体こんな夜更けになんでこんな所へ? 俺達はあの子の場所へと献花のつもりできたが·····こんな所で寝っ転がるとは、物好きな奴なのか? 俺がそう思っていると、当麻はその寝っ転がってる人の方へと歩み始めた。
「一体どうしたんだ当麻、知っている人だったか?」
「いや、多分知らない人だけど───何か、
当麻がそう言うと、その子の方へと急ぎ目に歩いていった。·····蜜蟻愛愉と同じ雰囲気ってなると·····まさか、あの子も自殺を考えているって事か!? それだったら止めなきゃだな。そう思い俺も当麻の後に続き寝転がっていた子へと早足で向かった。
寝転がっていた子へと近くなると、その様子が見えるようになってきた。近づいてから気づいたが、この子この前当麻の携帯を届けに来てくれた食蜂操祈だという事に気づいた。何やら手には家庭によくあるテレビのリモコンを持っていて、それを頭へと向けていた。·····まるでその光景は、
「あれ? お前、そんなトコで何をやっているんだ?」
当麻にいきなり話し掛けられた食蜂さんは、少しだけこちらへと視線を向けたが、興味が無いような感じで視線を外し、「なんでもいいでしょぉ·····」と無気力な返事が返ってきた。
「いや、良くはないとは思うけど」
「何よ、ひょっとして
「俺は
当麻の返答に、食蜂さんは、ようやく俺に視線を向けた。·····いやしかしだけども、なんでこんなに無気力になってんだ食蜂さんは。まあ、確かに支部で会った時にもダウナーっぽい雰囲気だったけども、悪化してるよな? 俺がそう思っていると、食蜂が俺に向けて口を開いた。
「あなた、この前の
「ああそうだけども·····もう既に門限は過ぎていると思うが、食蜂さんはなんでこんな所にいるんだ?」
「·····ちょっと色々と疲労力が限界にきただけ、ただそれだけよぉ。·····それで、言いたい事はもうそれだけぇ?」
その言葉に俺は少しだけ言葉が詰まる。·····言ってもいいかは分からないけども·····いやまあ、そりゃ位置関係的には仕方ないかもだけど、俺は一応視線は外しているから問題は無い·····筈だけども。言った方が良いのかこれ? 俺がそう悩んでいると、当麻が代わりに答えた。
「言っていいか分かんないけども、とりあえずその格好は辞めた方がいいと思うぞ上条さんは」
「·····? なんでかしらぁ?」
「·····だってお前、大の字で寝っ転がっているからここから見るとスカートの中が凄いことになってるぞ? なんて言うか、全体的に袋とじしなさいっていうか」
そう当麻が言うと、一瞬だけ周辺が凍り付いたかのような錯覚を感じた。·····やっぱりすげえよ、当麻は。いやまあ、俺は一応人生経験だったら前世込みでもうかれこれ30年は越すけども·····言いづらいことを良くもまあ言えるよなあ。まあ、そこが当麻のいい所でもあり、悪い所でもあるとは俺は思うけども。
当麻の言葉でようやく気づいたのか、食蜂さんは耳まで真っ赤にさせてこっちを見る。そしたらすぐにバックからリモコンを取り出したかと思うと、俺達へリモコン向けてこう言い放った。
「
食蜂さんがそう言うと、俺の頭の中で
そう考えていると、当麻と食蜂さんが何やら話をしていると、急に食蜂さんがリモコンを当麻へと向けて「っ!! 消去っっ!!」と叫んだ。しかし、当麻がさっきと同じ様に
·····何があったかは知らんけど、無限ループって怖くね? 俺は傍から見ていてそう思った。つーか、これって当麻は能力使われているって事だよな。この感じからして記憶を操作する系の能力を今使ってるって事か?
「もう記憶消去は三十八回目·····あなた、どうしてそこまで私の下着を目に焼き付けている訳ぇ!? 一体どんだけ変態力がみなぎっているのよぉ!! そっちの人は私の能力が効いているみたいなのにぃ!!」
「ん? あれ? ひょっとしてお前、ほんとにそういう能力の持ち主だったのか!? パンツ一枚で危なっかしいなおい! つーか、軍丞にもその能力使いやがったのかよ!? 軍丞、今治してやっからな!」
そう言い当麻は俺の頭に右手で触れる。すると、ぼんやりとしていたさっきまでの記憶が蘇った。·····ありがたいけども、何回も能力行使されてたってのに気づいていなかったのかよこいつ·····。相変わらず鈍いっていうか、平常運転というか·····。
「というか、あなた見覚えがあるわねぇ·····? あ、思い出したわぁ。この前の交差点の食パン激突男ねぇ?」
「食パンはくわえてねえよ。つーことは、お前が俺の携帯を
「ふーん·····やっぱりこれって全て最初から仕組まれた新手のナンパだったのかしらぁ?」
「なるほどな。その制服、名門の常盤台だろ。自意識過剰なイタイお嬢様と遭遇しちまったってのは理解したぞ」
「はぁ!?」と心外だと言わんばかりの表情を浮かべる食蜂さん。·····まあ、確かにそういう事を言うにはまだまだ成長が足りんよな。今そういう事言っても、なんか背伸びしている感が半端ないからなぁ。もう少しナイスバディになってから出直せって言うのは心の中でだが、当麻の意見に俺は同意していた。すると、俺の考えている事に気づいたかかは知らないが、食蜂さんがこっちに視線を向ける。·····今度は一体何をする気なんだ?
「あなた、今不愉快な事考えていたでしょぉ·····?」
「ん? 一体何のことだ?」
「·····私の能力は知っているわよねぇ?
やっべ、全部筒抜けって事かよ!? それを理解した俺は、当麻を抱えて逃げる事にした。例え第5位とは言えど
「うわ、ちょ!? 一体何するんだ軍丞!? おわぁ!?」
「それじゃ失礼するわ!
「あっ、ちょっと待ちなさいよぉ!!」
「待てん! それじゃあなぁ!?」
そう言い一気に食蜂さんから距離を離す。·····多分これ位離れれば問題は無いかなと思った所で、当麻を下ろして普通に寮へと帰った。·····だけど、またどっかで会いそうだよなあの子。そん時になにかされなけりゃ良いけど·····。
とりあえず、今回はここまで。次回は食蜂操祈の過去編の続きからです。良ければ、また次回も楽しみにしてくださると幸いです!それではまた次回!
※無理やりだけど、主人公を絡ませたかったので食蜂が携帯を届けたのは警備員から風紀委員へと変更しました。·····矛盾が無ければいいけど。