とあるオタク女の受難(Fate/Series編)。 作:SUN'S
間桐鶴野の妻は魔術師の中では異端視されることが多い。彼女の製作した道具の殆んどは近代兵器をベースとしており、その中には起源弾を使うために必要な銃器も加わっている。
ただ、彼女の掲げている理念には賛同している。
僕は彼女の話を聞いた時は本当に魔術師なのかと疑っていたが、彼女の考案した安全な聖杯戦争を取り込もうとする機関は数知れない。なにより彼女を紛争地域で見掛けることは多かった。
少しばかり強引な手口を使うときもあるようだが、彼女の通り掛かった戦場は「一滴の血も流れなくなる」とまで言われるほど巧みな誘導を行う。
僕も何度か話したことはあるが、恐らく彼女が居なければナタリア・カミンスキーは死んでいた。
いや、僕がナタリアを殺していたかもしれない。彼女には色々と借りもあるし、僕が尊敬している数少ない人物と言っても過言ではない。
「……アイリ、なにを怒っているんだい?」
「いいえ、怒ってないわ。その人が居なければキリツグは壊れていたかもしれないもの…」
ああ、そうだ、彼女が居なければ僕は「少」を切り捨てでも「多」を救おうとしていたと思う。そんなことを考えながら「娘を見せに来い」と綴られた手紙を手に取る。
「正義の味方も楽じゃないな…」
「そうねぇ…」
僕達は日本へ向かう飛行機のチケットを受け取り、アインツベル領土に張り巡らされた結界を通り抜け、ビリビリとした感覚にアイリと眠っていたイリヤがビクッと身体を跳ねさせているのが面白くて笑いそうになった。
「キィ~リィ~ツゥ~グゥ~?」
「ま、待つんだ、こんな狭いところで魔術なんて使ったらイリヤに当たってしまう!」
「キリツグ、心配は御無用です。イリヤスフィールとアイリスフィールは私が守ります」
「いや、そういうことじゃあッ!?」
いま、僕の首を絞めるようにゴリラの腕が伸びてきたような気がするんだが…。いや、落ち着こう、これは錬金術を応用した使い魔の一種のはずだ。
たぶん、きっと、おそらく、アイリも冗談で作っただけに違いない。うん、そうとしか考えられない。出来るかぎり刺激しないように笑顔を浮かべつつ、ゴリラから離れようとアイリに近寄る。
「キリツグ、もしかして寒いの?」
「あ、ああ、そうだね…」
「キリツグ、私は子供の前で不埒な行いは控えるべきかと思います」
「(セイバー、君はどっちの味方なんだ?)」
僕の召喚した英霊はマスターを救うどころか貶しているような気もする。まあ、アイリ達と仲良くしている彼女を悪く言うつもりはないが、イリヤを膝に乗せるのは僕とアイリの特権だったはずだ。
そんなことを思いながらフロントガラス越しに見えてきた都市部に安堵の溜め息を吐き出し、今後の活動について取り決めることをアイリ達に伝えると「日本のサブカルチャーを楽しむのね!」等と変なことを言い始めた。
おい、僕のかわいい奥さんに変な知識を与えたの誰だ?なんて思っていると僕の視線に気付いたのか。リムジンの運転席に座っていた久宇舞弥がピースサインを送ってきた。
いや、えっ、君なのか!?