やはり俺に義妹が出来るのはまちがっている。 作:マッキーガイア
あれでもでない…これでも…ない……
ついぞ、例の彼女は出てこなかった…
奉仕部での活動が終わり、兄さんと帰りの道を行く。
ここで出てくれたら完璧だろうけど…
カバンが少し重くなる幻想に気づきつつ歩みを進めた。
「そういえばどうしたんだ?なんだか雪ノ下も由比ヶ浜も一色も…ついでにお前も様子が変だったが…?」
「え?あ、いやぁ…ちょっと…う〜ん…」
正直、話しちゃっても問題ないかも知れないと思いかけている…
いやいやダメだよ、きっと兄さんにも言えない事情があるんだよ、多分きっと…
「え、えっと…じ、実は一色さんが好きな人が出来たって…」
ごめんなさい一色さん!
多分後々ちゃんと誤解は解きますので!!
「…葉山だろ?」
誤解じゃなかった!?
え、えぇ…兄さんにあんなに反応していたのに、葉山さんが好きなの?
「え、えぇ…っと、だけど私達…ほら、恋愛経験が乏しいじゃないですか、
だから辿々しくなっちゃって…」
「ほぉ〜、由比ヶ浜あたりは豊富だと思ったんだが、あいつビッチだし、」
「兄さん…?女の子にそう言う事いっちゃダメですよ?」
「…ア、ハイ」
ジト目で睨み付けるとヘラジカの様に震えている兄さんが一つ、
あ、ダメだ。
そう思った瞬間だった。
次の瞬間、私は、兄さんの腕に抱きついた。
「ばッ、な、なんだよ。いきなり抱きついたりして!?」
いきなり抱き付かれて驚いたのか兄さんは声を荒げる。
「………ほんの少しだけ…こうさせてください。」
少し心に風穴が開いた様なそんな不器用な気持ちが私の中に残る。兄さんに好きな人が出来て、兄さんが私の前から居なくなるって考えたのが悪かった。
『じゃあな、』
って、言われる日がくるのが怖かった。
「…お、おう、」
兄さんは意味が分からないように私の頭を撫でる。
「いっぱい…甘やかしてください。」
「はい、はい、いくらでも甘やかしてやりますよ。お嬢様」
「本当ですか?」
「当たり前だろ。
妹のお願いを聞かない奴が何処にいる。」
妹のお願い…か、
「……義妹、でもですか…?」
「義理でもなんでも妹は妹だよ。」
兄妹……兄さんと私の間にはこの壁がずっと立ちはだかっている
あの夜、告白してもなお、その関係は薄れる事は無く。むしろ強まっていた。
しかし、私もこの関係を少なからず好んでいた。この関係なら少なくとも兄さんと離れないで済む、私を愛してくれる。
そして、何より今の私を見てくれる。
ーーー今まで外見で物を言われていた神田心にとってそれは破格の条件だった。彼の前だけは色眼鏡で見られず、内面だけを見てくれる。今まで欲しくても手が届かなかった愛をくれる。
しかし、基本的に彼女は男が嫌いだ。
兄である八幡以外にはまったくと言い程内面を見せない。
外には出さないが男子と話すことすら煩わしく思っている。だから傷ついたしつけた事がある。
対して義兄である比企谷八幡もまた内面を全くと言っていいほど見せない。妹達や奉仕部の人間達にもあまり内面を見せない分神田心よりも重症であり、それを自分自身で知っている。
故にこの関係は歪だった。
どちらも似たもの同士、だから分かり合えない。
どちらも傷ついた。だから愛し合える。
だが、この愛はきっと恋愛の類では無い。
この関係を一言で表すと言うならば
"傷の舐め合い"であった。
「………」
「………」
私と兄さんの間を風は吹き抜けた。
どちら黙って茜色の空を仰ぐ、
汚い事も、嫌な事も、綺麗な事も、優しい事も、悲しい事も、嬉しい事も、
全部嘘だったら良いのに、兄さんに会う前……あの時はそう思っていた。だけど今は私を思ってくれる人はいる。だから、もうこの関係を義理…偽物とはもう見たくない。嘘なんかじゃない、
本物だから、
「……ねぇ、兄さん…」
「…ん…?」
「愛してます。」
心臓の音は、激しかった。
☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー
『あ、ゆきのちゃーん?』
「…姉さん…、何かしら?」
『実はね、聞いて欲しい事があってね!』
「……?」
『これなんだけど、』
【愛してるよ】