やはり俺に義妹が出来るのはまちがっている。 作:マッキーガイア
「神田さん、今日は一緒にお昼食べないかい?」
事の発端は葉山隼人が神田心をお昼に誘った事だった。
その一言でクラスの空気は凍る。事実彼、葉山隼人はクラスの人気者である、だがそれと同時にあまり表ざたには言えないが彼は一定数に嫌われている、その代表格がクラスの嫌われ者(最近は空気)比企谷八幡(周りにはそう認識されている)とその義理の妹である"神田心"である。
比企谷八幡は言わずもがな、神田心…彼女は以前彼を表立って拒絶したことがある。
今でも語り草になっているソレ以降彼は一切と言うほど彼女に接触してこなかった。
だからこの状況をあり得ないと思っていた生徒も多かったのだ。
「…葉山さんでしたっけ。ごめんなさい義兄とお昼を共にする約束なので」
「でもそればかりじゃ、友達とか周りの交流が図れないよ?」
「いえ、それは貴方が心配する様な事ではないですし、貴方とはあまり関わり合いが無かったですよね?」
彼女は淡々とそう言う。
たしかに彼女と葉山は一緒にお昼を食べる程の仲ではない、なんだったらまだ比企谷がお昼に呼ばれる方が自然だった。
比企谷と葉山は実は側から見ればそれなりに仲良い様に見える。時折、自動販売機の近くで話をしている二人を他生徒に発見された事もあるし、持久走だってなんだかんだ一緒に走っていたのを確認できた。
比企谷八幡と葉山隼人は仲はいい、が意見が合わず嫌い合っているというのがクラス内の見解であった。
実際それは正しいのだろう。比企谷八幡はともかく葉山隼人は比企谷八幡を信用している。断じて信頼はしていないが。
しかし、妹の神田心は別である。男子を基本的に信用してないし、嫌いだし、実は陽キャグループを毛嫌いしている。一応由比ヶ浜の様な例外もいるが、それに目の前にいる葉山隼人はこころにとって陽キャ+男子という最悪な布陣である。
「そうか…確かにな、すまない足を止めさせてしまって、」
「…いえ、では」
愛想なくそう呟くと、がらがらがらと部屋を出ていく心にクラスの皆は見守った。
「どうした?なんかやけに教室が静かだったが、」
「兄さんが気にする必要はないですよ!」
なんて打って変わって明るい声が向こうのほうで聞こえる。…葉山隼人が二度も振られたか、葉山は静かにグループの席に戻ると弁当を開けた。
その姿を近くにいた女は面白くなさそうに見つめていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「眼福眼福、」
なんて兄さんはテニスコートを見ながらそういった。目線の先には戸塚さんが走っている。
戸塚さんを最初見た時は驚いたものだ。あの容姿にあの物腰の柔らかさである。
なんだったらそこら辺の女子ですら超越しうる、あの容姿はきっと国宝ものだろう。
しかし女子にすらあんな顔見せた事ない兄さんがあんな風になるなんて、女としては複雑ですね…
文字だけ見れば男性の方が好きな人なんだろうかと思うところですが、実際見ると分かってしまうのが辛いところです。
私だって少しは容姿に自信はあるのですが…
女の子とは色々複雑なんです…
そんな事を思いながら箸を進めると兄さんは黄色い缶を取り出す。
「兄さん…それ…」
私が指を指すと兄さんは軽くコーヒーを振った。
「マックスコーヒー、略してマッカン。千葉のソウルフードだよ。」
「でも良く甘すぎるって聞きますが…」
「何を、この甘さが良いんだろうが、人生は苦いから、コーヒーくらいは甘くていい」
それを聞いて私はため息を吐いた。
「…まったく、誰の人生が苦いんでしょうね?」
そう聞くと兄さんは明後日の方向に視線をずらした。
あの雪ノ下雪乃等部活仲間全員に好意を向けられてハーレム状態であり、側から見てあっまあまな人生を送っている兄さんにそれを言われたらこの日本の人の殆どが苦い人生を送っていると思う。
「しかし、まぁ、今日も、」
「平和だなぁ、」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「おい、あのナントカ親衛隊って奴らがまた隣の組潰したらしいぞ、」
とある路地裏で柄の悪い男二人が話をしていた。深い夜に落ちる前の空はまだ薄ら青く周りが薄く見えている。
「ああ怖っ、いつウチが襲われるかわかったもんじゃねーぞ、まったく何モンだ?アイツら、」
「なんでもオリヒロを守り、ハチマンを助けるとかなんとか狂ってんじゃねーかって思ってたんだが、じゃああんな党勢作れるはずねーしな。なんかヤバイ宗教みたいで正直こぇな」
「だけど…だからってこんな場所で事務所の護衛って…あー寒っ」
ただでさえ寒い夜に組の常用のうっすいジャージを着て立っているのだ。
気温は0度を切っていた。
身体の芯から凍りつくほどに寒い、
しばらく体を温めようと手足を擦り付けると少し周りが明るくなった様に感じた。
「最近はオヤジも表に立つ事すらままならねぇ状況だしな、
俺たちヤクザもんには生きづらい世の中だよ、」
それは端の方から聞こえた。
「じゃあ、一つ俺と取引しないか?」
ゆったりと一目みてホームレスだとわかる男が一人、そこには立っていた。