やはり俺に義妹が出来るのはまちがっている。 作:マッキーガイア
結局帰路に着くのは6時をすぎた頃だった。神田はあの後チンピラどものキン○マを蹴り潰し、
『ち○こなんか無ければ良いのよ』
と爆弾発言をかました後、こうして無言の威圧で俺を睨みつけ、俺は股間に無駄な緊張感を抱えながら帰っていた。
ふと彼女の視線が下の方に行く事に気づくと、俺に向けて口を開く。
「……兄さん、ゲーム上手だったんですね。」
「まぁな、中学の時はやる事が無くて、ずっと入り浸ってたからな。」
「やる事が無くてって…?」
「……まぁ、あれだよ。
中学の頃、色々あってな、」
俺がそう答えると彼女は心配そうに俺を見つめる。
すると、少し察した様な口ぶりで俺の言葉に返した。
「…一緒ですね、」
「一緒?…どこがだ。」
神田は薄らに微笑む。
「私、昔好きな人がいたんです。」
神田は自嘲したようにそう言った。
それは何処か寂しそうな…そんな雰囲気を醸し出している。
「…そうか、さぞかしそいつは幸せだったんだろうな」
「ううん、…彼にとっては重みでしか無かったと思います。彼、好きな人が居るって言ってたから、」
首に掛けていた十字架を持ち出すと、彼女は少し悔やんだ様に首を垂らす。
「彼の目に私は存在しなかったし、存在できなかった。まあ、私みたいなのが誰かを好きになる事自体間違って居るんですが。」
「間違っている?」
彼女の言葉のニュアンスに違和感を感じる。
「ええ、間違ってますよ。」
「どう言う意味だよ?」
「私は人間の………ううん、女性としての務めを果たせないんですから。」
果たせない。意味を持たせた言葉にピースを嵌める。
「…お前、」
「ええ、」
彼女はお腹を摩った。
「……私、産めないんです……子供」
風が吹く。
…何を言えばいいのか、何と返せばいいのか、
あれもこれも全て俺に返って来た。これは自分の問題じゃない、何を言おうと彼女のそれが治るわけじゃないし、治せるわけもない。
「彼は私を恨みました。彼を取り巻く環境が全て、私中心になっていた様なものだったので、」
ふと、彼女は十字架を握りしめる。
「あの後、、、私の居場所は無くなり。唯一の砦だった物が消えたあの日、
今までの景色の裏側が流れ込む様に、私はその流れに揉まれました。」
ふと、彼女は俺に向かって笑いかけた。
「…すいません、こんな暗い話しちゃって、空気悪くしちゃいましたよね。」
「…いや。大丈夫だ。」
「こういうのは先に言っておかなくちゃって思って、私なんかに愛情を持つ前に」
大丈夫じゃない、今にもこの世界の不条理を呪いたい。
「…じゃあ、早く帰りましょう。まだお母さんに会った事ないので今から会うのが楽しみですね。」
「ああ、そうだな。」
彼女の声に変えす。不思議と消えていたあの感情は一時的な病気の様な、
すると、夜道の電灯の下で、
次の瞬間だった。
「………っ、…え、、、」
彼女は怯えた様に、
震えた様に、
そう呟いた。
明らかに普通じゃない。
何かに怯えている様で、
ーーーまるでトラウマが目の前にいる様な、
過ぎていく気配が消え去る頃には、標準という状況が分からなくなっていた。
いくら聞いても「な、……なんで、」としか答えない。
「ど、どうしたんだよ、、、?」
「なんで?なんで、彼が……?」
そういった次の瞬間だった。彼女は怯えたよう俺の両腕を掴み、大声で言う。
「は、早く帰りましょう!!」
「え、お、おう、」
腕が震えてる。何があったのだろうか?
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「………へぇ、」
電灯の影で瞳が濁りを見せながら光る。
その瞳はあの二人の影を捉えていた。
口元は釣り上がり、楽しそうに笑みを浮かべる。
しかし、ふと、片方の影に目を向けると顔を歪めた。
「……誰だ?……アレ?……イルノ?….…あんなのが?」
歪みは少しずつ確実に増えていく。
「ハハ、アレいらないよ、だって心ちゃんは単体であるべき物なんだ。別の異物が紛れ込んでる。
あはは、いらないおもちゃは捨てなくちゃ、」
笑い声が出る。
「ゴミはゴミ箱、おもちゃはおもちゃ箱、
ふふ、あれはゴミ箱だ。」
彼女がいなくなる頃にはその影は消えていた。