生徒会長になる女とその右腕になるかもしれない男子生徒のお話   作:バロックス(駄犬

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蓮華「ウルトラマンエースが許せないわ」
ミギー「なぜだ」
蓮華「この弥勒を差し置いて、宇宙のエースを名乗ることが納得いかないの」
ミギー「四国のエースで収まっとけ」
蓮華「ほら見なさいミギー、ウルトラマンエースからエースを取ったらただのウルトラマンよ!」
ミギー「やはりエースは敗北者じゃけぇ……!」




ミギーと蓮華と時々ヒッポリト星人

 四月とは始まりの季節だ。

 入学式を終えて、新しい制服とクラスメイト、これから三年間通う事になる学び舎、学校行事、部活動。

 それらの不安と期待に溢れ、心の臓をこれでもかと鳴らしていた時期である。

 

 

 心臓に毛が生えた、強メンタル持ちと言われた俺でさえも、最初は戸惑った。

 小学校から中学へと進むにあたって、親の都合で住む場所が変わり、今まで知らない土地に来た。

 

 

 知り合いも特に居ないし、土地勘も働かない、俺にとってまさに未開の地。

 朝起きて、朝食を済ませて玄関を出るまでは親といる。知っている人がいる。

 でも玄関を出れば、親意外の面識はないまるで別世界だ。

 学校までたどり着くまでに辺りをキョロキョロしながら不安で仕方がなかった感覚も今では懐かしい。

 

 

 

 象頭中学校。

 この春、新しく住む場所も変わるに至って通うことになった中学に来てから早数週間。

 時期的にも、入学したての少年少女たちの浮ついた気持ちがようやく落ち着いてきた頃だろうか。

 

 

 時刻は夕方、外では部活に勤しむ運動部の掛け声が聞こえ始め、学校の廊下には音楽室から漏れる吹奏楽部の演奏がうっすらと聞こえてくる。そんな時間帯。

 

 

 授業が終わって、少しずつ人が出払っているであろう、人気の少なくなっている廊下を俺は歩く。 

 もはや一年生として2階、3階の階段を上り下りすることに抵抗も無くなる程に慣れたこの校内を闊歩して約数分、彼女によって『指定された時間と場所』に辿り着いた俺は息を呑み、扉の取っ手に恐る恐る手を掛けた。

 

 

 

「遅いわね、ミギー。この弥勒を待たせることがどれほどの罪深い事なのか、分かっているのかしら」

 

 

 何故か。

 まだ扉に手を掛けただけなのに、まだ姿すら見せていないのに扉越しに己の正体を悟った教室内から女の声。

 だが構わん、もうこれほどの衝撃など慣れた、そう言わんばかりに俺は扉を開ける。

 

 

「扉開けてねェーのに誰来たか分かるなんてお前なんなの、エスパー絽場かなにか?」

 

「エスパー絽場ではないわ、弥勒よ。

 弥勒ほどの女になると一万メートル程先の米粒のサイズも判別できるわ。壁越しの人間を判別するなど、造作もない」

 

「バルタン星人かよ。あと視力と透視能力は別物なんだが」

 

 

 それでも文句と言うか、反論の一つはしてみたいものだと意気込んでみるが、目の前の少女はどこ吹く風であった。

 教室の椅子に座り、机に肘をかけ、頬杖をついた黒髪の少女は気さくに笑う。

 

 

「さぁミギー。今日もこの私、弥勒蓮華と楽しい楽しい放課後弥勒タイムを始めましょうか」

 

 

 

 

 

 

 弥勒蓮華。

 象頭中学一年生。

 学級委員で学級委員長。

 一年生にして生徒会役員として抜擢される怪腕少女、次期生徒会長を自称するヤベーやつ。

 

 

 入学式が終わり、忙しさから漸く解放された俺に待っていたのは新学期早々の自己紹介。

 新入生にとって自分をアピールする絶好の場所。

 そして、今後のクラスの立ち位置を決定づける天国と地獄の境目。

 

 

 陽キャ気取りでフザけたことを言い、受けが良ければクラスで同じ陽キャ同士でのグループを容易に形成できる。

 逆に突出した事を言いすぎてしまえば、滑るような事を口走ってしまった時、周りが静まり返った時の蔑みなのか同情なのか良くわからない雰囲気はマジで嫌いだ。

 

 

 公衆の面前で自己紹介する習慣って、出来れば止めて欲しい。

 どちらかと陽キャ陰キャのどちらの派閥にも慣れない俺にとっては関係ないかもしれないが、人前で喋る事が苦手な人間にとってあの空間って地獄だと思う。

 にっこにこ顔で「さぁ、つぎはキミの番だね」と語る顔の教師がこれほど憎たらしく感じたことはなかった。

 

 

 陰キャ生徒を地獄に叩き落す教師、地獄教師……地獄少女の親戚かな。藁人形を用意しておこう。

 

 

「―――――弥勒蓮華よ」

 

 

 そんな長ったらしい、退屈にも感じた自己紹介。

 俺の番を終えた矢先、真後ろから高圧的な声が聞こえた。

 

 

「いずれ万人のために世界を手中に収める女の名よ。その名をしっかりとここで覚えておきなさい」

 

 

 思わず振り返っちまったね。

 振り返った顔をもとに戻せないくらいの黒髪美人がそこに居るんだから。

 

 

「フッ、驚愕しすぎて声も出ないようね。

 いいわ、弥勒は寛大よ。この場でサイン入りブロマイドをばら撒こうと思ったけど、それはまたの機会にさせてもらうわ。

 欲しければいつでも私のところに来なさい」

 

 

 お前の自己紹介なんだから誰も口挟むわけねーだろが、とツッコミそうになった自分が居た。

 

 

 

 それは強烈な、神をも黙らせるであろう自己紹介だった。

 俺は唖然としていた。

 涼宮ハルヒの席の前にいたキョンの気持ちがこの時ようやく分かった気がした。

 キョンってこんな感じの気持ちだったんだな。ところで谷川先生、『驚愕』以降の新刊はまだ時間かかりそうですかね……。

 

 

 弥勒蓮華のセリフはまさに俺様的な、世界が自分を中心に回っている事を知らしめるように尊大で。

 

 

 そんな蓮華を笑う者もいた。

 貶す者も居たけど。

 その言葉が嘘偽りのない、真の意志を宿したものだとクラスが、学校中の皆が後で知ることになった。

 

 

 その姿はまさに品行方正。

 私がこれをやると言ったらこれをやる、という有言実行能力。

 一年生の身で生徒会に抜擢され、その手腕ぶりから次期生徒会長と呼ばれ、そして自ら自称するほど。

 学級委員には誰よりも早く手を挙げて立候補し、クラスを率いる力を手にし、教員からの評価は高い。

 そのセリフに裏打ちされた実力に最初は興味なさげに、そして嘲笑っていたクラスメイト達も心を改めて、彼女の事を認めるようになる。

 

 

 

 

 

 

 そして現在、有言実行の鬼と完璧超人の名を欲しいままにした弥勒蓮華と俺は誰も居なくなった教室にいる訳なのだが。

 

 

 

 

「フフッ、さぁミギ―。お茶を飲みなさい、弥勒が用意した御茶……名付けて弥勒茶よ」

 

「自販機で買ってたペットボトルのお茶だよな、コレ……しかも俺が買ってきた」

 

「弥勒茶よ」

 

「勝手に新しいブランド茶作り出すなよな」

 

「弥勒茶よ」

 

「あ、これ強引に押し通す気だろ。意地でも自分のプライド曲げないつもりだろ」

 

 

 ずい、とキンキンに冷えた、自販機で俺が買ってきたペットボトルをさも自分のモノのように紙コップに注ぎ、差し出して振舞う蓮華。

 こちらの言葉など意に介さないその意志の固さにはライズファルコンのような鋼鉄の意志と鋼のような強さを感じる。

 

 

「さぁミギ―、生徒会に入りなさい」

 

「話の脈絡が出鱈目すぎる!!なんだお前、カブトボーグ並みに会話のドッヂボールだぞコレ!」

 

 

 話のスイッチが切り替わるという現象も慣れてきたが、相変わらずペースは彼女のものだった。

 デュエルでターン終了時に魔法カード「サイクロン」を発動する「エンドサイク」くらいに相手の伏カード破壊してゲームの主導権を握る感じに、弥勒蓮華は掴みどころのない女だった。

 コイツの名前は今日からエンドサイク弥勒だ。

 

 

 ちなみに「ミギー」というのは俺の仇名だ。断じて本名ではない。

 

 

「弥勒がいずれ生徒会長になる時に万人の為に世界を統べる時、あなたが必要なのよ。

 弥勒の目に狂いはないわ。あなたは弥勒の右腕となる男よ」

 

 

 

 と、最初の放課後に胸をドキドキさせながら待ち合わせた教室でそう言われて数秒程放心した当時の俺の心中を察してくれ。

 だってそうだろ?こんな黒髪系美少女に放課後誰もいない教室に呼び出されでもしたら、誰だって期待してしまう。

 

 

 ここである程度察しはつくかもしれないが俺の仇名である「ミギー」とは、いずれ弥勒蓮華の右腕になる人物、から来ている。

 寄生獣みたいな顔パカッとか出来ない一般人ですよ俺。

 

 

 ちなみに生徒会の件は丁重にお断りした。

 生徒会なんて真面目な役柄は俺には合わないと思ってたし、何より自分の時間が消えてしまう事を俺は畏れた。

 

 

 それなら、「弥勒の時間つぶしに付き合え」と言われるがままに誘われ、俺は蓮華と教室で会話をするという謎の時間が生まれたのだ。

 

 

 最初は嫌だった。

 だって、これこそ何物にも代えがたい自分の時間が奪われることだろうと。

 

 

 しかし、何故か。弥勒蓮華という女が繰り出す言葉には相手を従わせる魔力があるのかもしれない。

 不思議なことに聞いていて、自然とその内容にめり込んでいく自分が居た。

 蓮華は何かを語ることが好きなのか、相手を乗せるのが得意で会話能力というものがずば抜けていた。

 

 

 

「ヒッポリト星人について語るわ」

 

「また唐突だな……ってなんでウルトラシリーズ?」

 

「宇宙で一番強い生き物と自称するテンプレの雑魚を思わせるセリフを吐く癖に、真っ向勝負でも強いウルトラの敵ってなかなかいないと思うのよ」

 

「そういえばなんだかんだセブンも倒したし、ウルトラパパンも倒してたな……パパンがエネルギーをエースに分け与えてなかったら地球終わってたな」

 

「ミギーは父親のことをパパンと呼ぶのね……可愛いわ」

 

「ファザコンみたいに誤解されてしまいそうだが、断じて違うぞ……と、話が逸れたな。なんだっけ、ヒッポリト星人だ」

 

 

 奇抜な長い鼻の敵、不意打ち、だまし討ちを好む卑劣な性格を持つけど何故か普通に強い。それがヒッポリト星人。

 

 

「フフッ、弥勒の会話に付いてこれるなんてなかなかやるじゃない、褒めてあげるわ」

 

「そりゃどうも。お前とこのまま会話を続けていれば、その内にバルタン星人とも宇宙語で喋れる自信がある」

 

「それじゃあミギー。あなたが思う、ヒッポリト星人の魅力を語りなさいな」

 

 

 会話の切り返しだ。

 必ず会話中に起こることで、蓮華が一つ語ったら相手はそれに対して語り返すというものである。

 なお、語る内容はお互いがちゃんと共通で認識できてる内容であるとする、という条件付きなのだが。

 

 

「俺が思うヒッポリト星人の魅力は……ヒッポリトカプセルの完璧性だな」

 

「ほぅ?」

 

「上下左右あらゆる角度から迫るカプセルに捕らわれたら最後、ヒッポリトタールで生きたままブロンズ像にされるんだぜ。

 外部からの衝撃にモロ弱いが、内部からは絶対に壊せない……正義のヒーローウルトラマンが抵抗できないままにブロンズ像にされる……その光景は子供たちに相当堪えたはずだ。

 

 俺が小4くらいに初めて手にしたいって考えた敵キャラの能力だった」

 

「なるほど。悪に屈しない正義の味方が抵抗も虚しく蹂躙される様に快感を覚えるのね、ミギーは」

 

「オイこら人を変態扱いするなァ! たしかにな!?アレのせいで別の境地開いちゃった奴らいるよ!?

 クトゥーラの触手に捕まったネクサスに興奮する奴らとかいるけど!!怪文書とか出来ちゃってるけど!!」

 

「……ごめんなさい、ちょっと引いたわ」

 

「だからそれ俺じゃねぇってェ!!」

 

「ミギーは弥勒もブロンズ像にしたいという性的な欲求があるのでしょう?生きたまま動けないように固めて弥勒の身体を舐め回す様に眺めるのね……嫌らしい、厭らしいわ」

 

 

 そんなエロ同人みたいな事を誰がするものか。

 しかし、ブロンズ像にされて身動きできない弥勒蓮華……正直見てみたい感はある。見たくない?

 こんなこと言ったら本人に斬り刻まれるだけじゃなくて、神樹様からもお叱りというなの天罰を食らってしまいそうだ。

 それを言葉にすることなく、胸の内に思うだけにして俺は冷静に取り乱すことなく会話を続ける。

 

 

「でも……フフッ、いいかもしれないわね、ヒッポリトカプセル。弥勒も欲しいわ」

 

「なんで?」

 

「だってもし好きな人が居たら、永遠にその人を捕らえて固めて独り占めできるのよ。

 そうね、もし西園寺世界にこの能力を与えたら伊藤誠もきっと悲しみの向こう側なんていく必要もなく、nice boat.も流れることなく平和的にスクールデイズが楽しめたかもね」

 

「それちょっとヤンデレ入ってないですか弥勒さん……

 それ平和って言えるのか弥勒さん……結局伊藤誠は永遠に被害者じゃないか。いや、それぐらいのことしたんだけどさ」

 

「でも最終的には逆上した桂言葉がカプセル破壊して世界も誠も殺すわ」

 

「結局nice boat.避けれてねぇじゃねェか!!」

 

 

 伊藤誠、死すべし。慈悲はない。

 

 

 ツッコミの絶えない会話だ。

 しかしその喧騒さに何故か俺は居心地の良さを感じる。

 

 

 こんな感じで、俺と弥勒は指定した時間と場所に集まり、談笑をしている。

 学校が今一番話題に上がっている美少女、弥勒蓮華と男が仲良さげに会話しているなど、傍から見たらお前ら絶対付き合ってるよなと噂されてしまいそうだが。

 それでも俺は明確な意思でそれを否定することが出来るだろう。

 

 

 蓮華はただ、俺を生徒会に勧誘しに来ているだけだ。これはその交渉である。異論は認めない。

 ちなみに交渉は時間制限がある。蓮華が決めた時間は交渉開始してから30分間。

 その制限時間が今まさに差し迫ってきていた。

 

 

「――――30分。時間ね……チッ」

 

 

「今明らかに舌打ちしたよな。絶対したよな。

 なんだ……時間内に俺を生徒会に勧誘できなかったのがそんなに悔しかったのか」

 

 

 悔しいでしょうねぇ。と、デュエリスト特有の煽り顔で罵ってやろうかと思ったが対して蓮華は小さくため息をついていた。

 まるで「もう終わりなのか」みたいな「時間の見間違いかな」と、何度も教室内の時計と自分の腕時計を確認する仕草だ。

 

 

「時間とは永遠ではないわ、有限よ。

 万人の為に命を燃やす弥勒にとって、一分一秒というのは貴重なの」

 

「なら俺みたいな奴を放っておいて、さっさと別の生徒を生徒会に誘えばいい、時間は有限なんだろ。なんで俺に拘ってんだ」

 

「フッ、いい事教えてあげるわミギー。

 いかに時間が有限で、弥勒にとって貴重な時間であっても、その時間を捧げても良い相手ならば話は別だわ。

 あなたはこの弥勒が、弥勒の時間を捧げるに相応しい相手だということよ」

 

 

 凛々しくも、楽し気に黒髪を掻き上げて蓮華は言った。

 決して崩れない自分自身への自信を肯定する力強い瞳が真っすぐ俺を納めている。

 俺は咄嗟に視線を背けて。

 

 

「ごめん、ちょっとよく分からない」

 

「……フッ」

 

 

 明らかにはぐらかした、俺の表情を見て蓮華はそう呟く。

 

 

「いいわ、分からないのなら……分からせてあげる。

 あなたに時間を捧げる意味を。

 あなたが弥勒にとってどういう存在なのかを。

 明日は理科室に来なさい、ミギー。遅刻したら罰金よ罰金。罰金額は56億7千円だから」

 

 

「俺に罰金で仏の悟りを開かせる気か」

 

 

 56億7千。その数字は弥勒菩薩が仏覚を開くまでにかかる年数である。

 出会ってからやたらとこの数字を押してくるので調べたら仏教に通じる数字だったことに驚いた。豆知識を身に付けたくらいの感覚だが。

 

 

「また明日ね、ミギー」

 

 

 そう言って、蓮華は教室から去っていく。

 弥勒蓮華はすまし顔で、クールに去っていった。スピードワゴンみたいなやつだ。

 

 

 また明日も、と言われてしまった。

 勝手に約束されてしまったわけだが、確約したわけではないし、なんなら勝手にこの約束を反故にして明日はそのまま帰宅することも出来るが。

 

 

 

 

 

 

 

「来たわねミギー、今日は無双竜機ボルバルザークについて語るわよ」

 

「デュエマを混迷の時代に導いたボルバルマスターズ、その諸悪の根源か……望むところだぜ」

 

 

 

 何故だろうか。面倒だなと思うのは確かなんだけど。

 放課後の俺は、そんな気持ちを抱きながらも蓮華が待つ教室へと向かうことになるのだ。

 

 

 

 

 続くのかコレ?




ミギー(オリ主)
主人公である。ミギーは仇名であり、それが作中で明らかになることは多分ない。
身長は弥勒より少し高く、意外にも体つきは良い。でも運動部には所属していない。
蓮華が鏑矢やってることを知らないただの一般人。


弥勒蓮華
ヒロイン。会話のペースを常に握り続けるヘルカイザー弥勒。エンドサイク弥勒。
ミギーを生徒会に入れたい。一緒にお仕事したい。学校生活を過ごしたい。
時間を捧げたい。もう堕ちてる。でも顔には出ない。でも鏑矢稼業があるから30分くらいしか自由に出来ない。
没落する前の弥勒蓮華様。


もしかしたら続く。
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