【朗報】修羅場系パーティーに入った俺♀だったが、勇者とフラグの立たない男友達ポジションに落ち着く   作:まさきたま(サンキューカッス)

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32話「精霊使いと、魔炎の勇者」

「久しぶり、魔炎の勇者アルデバラン。魔族探しは、順調かい?」

「うん、うん……。それがあんまり順調じゃなくて」

「元気を出しましょう、アル」

 

 数日ぶりに遭遇した勇者アルデバラン。

 

 精霊に纏わりつかれていて彼女と気付けなかった俺は、いきなり彼女を泣かせてしまっていた。

 

「本当に申し訳ありませんわ。その、突然に声をかけられて驚いてしまいまして」

「お嬢さん、かなりビビってたよな。何がそんなに怖かったんだ?」

「……それなんですが、ねぇ」

 

 アルデバランの仲間らしき、中年の冒険者が俺に話しかけてきた。

 

 多少だが、いきなりリーダーを泣かされてムッとした様子も見てとれる。しっかり謝った方が良いだろう。

 

 だが一応、カールとは敵対気味なんだよなこの連中。

 

 何処まで説明したもんか……。

 

「その、私は他人に見えないものが見える性質がありまして。アルデバランさんの周囲に、その、凄まじいモノが見えたのですわ」

「……何だ? 不思議ちゃん系か、あんた」

「いえいえ。それが、ユウリの言うには……」

 

 精霊の件だけ、話をしておくとするか。この話は、どうせ後で発表するモノだし。

 

 俺がカールの仲間であることは伏せておこう。

 

「イリーネは、精霊術師なのさ! 現代に、まさか本物の精霊使いが現れるとは思わなかった!」

 

 あ、興奮したユウリが割り込んできた。

 

 まだ、テンションは高めのままらしい。

 

「……精霊? あんた確か、前にそんなもの居ないって」

「居たんだよ! ボクは確かに、この目で精霊の痕跡を掴んだ! 精霊は、実在したんだよ!」

「……まぁ」

 

 パタパタと両手を上下に振りながら、小さな天才はピョンピョン跳ねている。

 

 元気になって何よりだ。

 

「……ああ、居るだろうな。女神様も、存在すると仰っていた」

 

 ユウリの精霊という発言を聞いて、アルデバランが口を挟んできた。

 

 メンタルが回復してきたらしい。

 

「おお、ともすれば。君の言っていた女神も、君の見た『幻覚』ではなく事実なのかもしれないね」

「あれ、信じてくれてなかったのか!?」

「流石に半信半疑だよ。君が嘘をついていなさそうだとは思ったが、狂人の類いかもしれんとも考えていた」

 

 まぁ、いきなり『魔王が復活した』なんて触れ回るやつを信用する気にはなれんよな。

 

 うちのパパンも半信半疑で、俺を呼んだしな。

 

「それより、その。貴族のお姉ちゃん、貴女が精霊術師って本当なの?」

「あら? ええと、多分本当ですわ」

「……多分?」

「私、精霊さんが見えるだけですもの。これを精霊術師と言っていいものか、さっぱりですわ」

 

 ユウリの話を聞いて、興味深そうにミドルヘアのショタが話しかけてきた。

 

 白ローブにしなやかな金髪、透き通りそうな肌。出で立ちと筋肉を見るに、魔法使いっぽいが。

 

「それが本当なら、相当凄いよ。ねぇアル、今って精霊が見えにくいんだよね?」

「そうだな。女神様曰く、現代は非魔法技術の発展に伴って、人と精霊との親和性が下がってるらしい。今時、精霊を知覚できるのは物凄い貴重な事だそうだ」

 

 ふむ? 確かに最近、精霊を見たって人は聞かないけど。

 

「技術が発展すると、精霊が見えなくなるのですか?」

「生活の上で力及ばぬところを、昔は精霊に手助けしてもらっていた。だから人間は精霊に感謝するし、精霊も人間と深い関係を築けていた」

「成る程」

 

 アルデバランは、俺の質問にスラスラと答えていく。

 

「様々な技術発展に伴って、人は精霊を必要としなくなった。こんな時代に、精霊を知覚できる人など滅多にいない。それこそ、精霊に限界まで愛されていないと厳しいだろう」

「……そうなのですね」

「改めて問おう、精霊術の使い手を称する者よ。貴様には、本当に見えておるのか?」

「見えておりますし、話もできますけど」

 

 そっか。俺ってば精霊にモテモテなのか。

 

 ……それとも波長が合うとかなのか? 俺はアルデバランみたいに、精霊がベタベタと張り付いていないし。

 

 どっちかというと、精霊に限界まで愛されているのはアルデバランっぽいが。

 

「実は、先ほどの件ですが。アルデバランさんの周囲に凄まじい量の精霊が見えております」

「何?」

「それで、パッと見で凄い絵面の怪物が迫ってきたように見えたのですわ。精霊に愛されているという意味では、アルデバランさんの方が凄そうですが」

「そ、そうなのか?」

 

 そうそう。何かアルデバランにくっついている精霊、みんなデレデレしてる様に見えるし。

 

 そうだ、実際に精霊に聞いてみよう。

 

「精霊さん、精霊さん。アルデバランさんが、お好きなのですか?」

「む、私の精霊に話しかけた……?」

 

 さて、返答は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……んほー。この魔力、たまんねぇ……

 

 

 

 ……魔力が腹の中でぐるぐるして、きもちいー

 

 

 

 ……もうらめぇ。この魔力なしで生きていけない身体になっちゃう

 

 

 

 ……すでに死んでるやろ、おまえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんかヤク中の危ない人みたいな精霊ばっかりだ。

 

「アルデバランさんの魔力が、大変美味しいそうです」

「はぁ、そうなのか」

「『んほぉ、たまんねぇ』と言って悶えてます」

「精霊ってそんな感じなの!?」

 

 そんな感じらしい。俺も最近見えるようになったばっかりだから、全部そうかは知らんけど。

 

「精霊さんにも、好みの魔力とか有るみたいですね」

「そうなのか……。何か精霊に対する夢が壊れたな」

 

 だよな、なんかオヤジ臭いよな、精霊。

 

 しかし流石に勇者を名乗るだけのことはあるな、アルデバランは。これだけ精霊に愛されてたら、さぞかし強力な魔法が撃てるだろう。

 

 

 

 

 

 

 ……おやじくさくなんかないもんー

 

 

 

 

 

 おや。

 

 俺の感想に不満を持ったのか、さっきユウリに悪戯を仕掛けていた精霊が頬を膨らまして突いてきた。可愛い。

 

「あら悪戯っ子な精霊さん。貴方は、アルデバランさんの所には行かないのですか?」

 

 

 

 

 ……あーいう味が濃い魔力、きらい。あんなのよろこぶの、火精だけー

 

 

 

 

 この精霊さんは、アルデバランに興味がないらしい。

 

 どうやら、精霊によって味の好みが変わる様だ。火精って事は、火魔法を司る精霊かな?

 

 

「おい、精霊は何て言ってる?」

「……火魔法の精霊は、アルデバランさんの魔力が大好きらしいです。しかし、他の種類の精霊はそうでもないご様子」

「そりゃ、私は火魔法しか適性ないし。私に纏わりつくとしたら、火の精霊だろう」

 

 あー。

 

 魔法の適性って、そう言うことか。その魔法を司る精霊が、その人の魔力を好むかどうかなんだな。

 

「にしても、どうやら本当に精霊が見えてるっぽいなお前。えっと、その……名前なんだっけ」

「ああ、申し遅れましたわ。私の名前はイリーネ。イリーネ・フォン・ヴェルムンドでございます」

「あー、イリーネね。ふむ、私はお前が気に入ったぞ。どうだ、私のパーティーに来ないか?」

 

 アルデバランは、俺が嘘をついてない事を察したらしい。

 

 少し値踏みをするような目で、俺の顔を見つめていた。

 

「仲間ですか?」

「そう、仲間。なのだが……うむむ、ヴェルムンド? えっと、すまん。もう一度名前を聞いていいか?」

「はい。私は、イリーネ・フォン・ヴェルムンドと申しますわ」

「ヴェルムンド……。ああっ!! それって確かウチの────」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」

 

 

 何かに気付いた様子のアルデバランの言葉を遮って、ウサギ仮面の不審者が割り込んできた。

 

 な、なんだコイツ。

 

 

「私の名前はウサギちゃん戦士1号! それ以上でも以下でもない!」

「は、はぁ」

 

 人と人が会話している最中に割り込んではいけないと、親に教えて貰わなかったんだろうか。

 

 親の顔が見てみたい。

 

「あーっと、ウサギちゃん戦士1号?」

「そうです、私はウサギちゃん戦士1号です!」

「あー。なんだ、その、黙っておいた方がいいのか?」

「リーダーの察しがいい所、好きです」

 

 シャキーン、と決めポーズを取る不審者。

 

 相変わらず、コイツはダサくてキモいなぁ。

 

「えっと、その。貴女は誰なんですか、ウサギちゃん戦士って何なのですか?」

「よくぞ聞いてくれました。では語りましょう、悲しきウサギの宿命を!!」

 

 え、そんな長々語られても困る。

 

「そのウサギは、信じていた人間に騙され、裏切られ、皮を剥がれてなぶり殺しにされました!」

「は、はぁ」

「その恨み、晴らさでおくべきか! 闇夜に哭く血に濡れた兎は、人への怨嗟を叫び、仮面となりて私を操りました! それがウサギちゃん戦士なのです!」

「すんごいシリアスな設定をぶっこんで来ましたわね」

 

 その設定じゃあお前、化けウサギに精神乗っ取られてますやん。

 

「そこの仮面はパーティでも指折りの奇人だ。気にしないでくれ」

「そのようですわね」

「誰が奇人ですか!!」

 

 そんな仮面被ってる時点で、お前以上の奇人は存在しないわ。

 

「あーっと。アルデバランさん、ごめんなさい。私には、既に旅の仲間がいるのですわ」

「何だ、そうなのか。……いや、だが我々は魔王を倒すべく立ち上がった正義のパーティ。イリーネが本物の精霊術師であるなら、是非にでもウチに移籍してほしい」

「そう言われましても」

 

 ウチのパーティも、魔王討伐を掲げているからなぁ。

 

 どうしよう、カールの事はうまく誤魔化して────

 

「ああ、言ってなかったねアルデバラン。彼女のパーティリーダーもまた、勇者を自称していたよ」

「……何だと?」

「カール、と名乗る青年だ。あまり深くは追及していなかったが、彼もまた嘘をついているようには見えなかったね」

「カール。カール、ああ。アイツか」

 

 あ、しまった。ユウリに口止めしてなかった。

 

「そうか。おまえはあの、偽勇者の」

「偽、ですか。カールは嘘をついているようには見えませんでしたが」

「偽勇者だよ。……まぁ、本人は嘘なんかついてないだろうがな」

 

 アルデバランは合点がいったという表情で、腕を組んで頷いていた。

 

 どうやら、カールについて俺達の知らない事を知っているらしい。

 

「本人は嘘をついていない、とは?」

「私の女神様に話を聞いたよ。カール、つまりお前のパーティのリーダーに力を貸しているのは悪神だ」

「悪神?」

「太古の昔に罪を犯し、神々の間で裁かれて地上に堕ちた罪業の女神さ。数百年の時を経てその女神は力を取り戻し、再び神としての権能を獲得した様子だが……」

 

 悪神、とな? 神にも善悪があるのか。

 

 と言うか、神様って一人じゃないのね。

 

「罪業の女神────彼女の精神は幼い。神としての力はあれど、神としての器はない」

「……はぁ」

「今回も、その悪神の『勇者を地上に送り込んで名声を得よう』という思い付きに、カールという人間が付き合わされているだけだそうだ。一応、神の端くれである以上は人間の味方ではあるのだが……。その悪神の本質は『罪業』、いずれお前達は被害を被ることになるだろう」

 

 何だって、それは本当なのか? 

 

 それなら確かに、カールが嘘をついていないのも納得できるが……。

 

「そうだ。お前らの所の神は、この街への魔族の襲撃についてどんなお告げをしている?」

「え、この街への襲撃、ですか?」

「そうだ。この街が狙われていると知って、ここへ来たのだろう」

 

 ……。ああ、ユウリからそういえばそんな事を聞いた。

 

 魔炎の勇者が『この街が魔族に襲われてしまう』と騒いでいたと。

 

「すみません。我々はたまたまこの街に来ていただけです」

「何だと?」

「此方のお告げでは『次の襲撃は何処か分からないので、適当に旅しといて』って感じでしたわ。それで、勇者伝説について調べようとこの街に伺いましたの」

「……おいおい、そっちの女神は大丈夫か?」

 

 大丈夫かと言われても。俺は実際に会ったことが無いので何とも言えない。

 

「まもなく、魔族からの何かしらの攻撃があるらしい。しかしその詳細が分からないので、どう警戒したものかと苦慮してるんだ」

「はいはい! アルデバランに質問だ、その予知は女神様に聞いたものかね?」

「そうだ、ユウリ。それがどうかしたか?」

「女神様に、その予知魔法の術式を聞いて来てくれ! 実在するんだろう、女神様!」

「……ああ、次に会ったら聞くだけ聞いて見るよ」

 

 ユウリは神の予知魔法が気になるらしい。

 

 いや、そこはどうでもいい。

 

「……情報提供、あらためて感謝いたしますわ。こちらでも、カールに相談してみます」

「ボクも、とりあえず毎日朝一番に予知魔法は行っている。そこで気になる結果が出たら、アルデバランにも知らせを出すよ」

「頼んだ」

 

 そう言うと、魔炎の勇者は、苦虫を噛み潰したような顔で俺の顔を見つめていた。

 

「お前達も、そちらの女神に話を聞いてみるといい。……恐らくだが、私を導く女神様を悪神扱いする筈だ」

「……ほう」

「何せ、数百年前────お前らの女神が『罪』を犯した時に裁きを下し、地上に落としたのは我が主神だそうだ。彼女からしたら、私の女神様はさぞかし憎いだろうさ」

 

 そのアルデバランの表情からは、何とも言えぬ複雑な感情が見てとれた。

 

「お前達がどのような力を授かったかは知らん。しかし、恐らく私とカールが共闘することはないだろう」

「……そうですか」

「それに、幼い悪神の使徒ごときでは、私の力の半分にも及ばん。足手まといだ」

 

 アルデバランなりに、色々と感じることがあるらしい。

 

 自らの信仰する女神を悪く言いたくはないが、『人類の危機に下らない喧嘩してる場合じゃねーだろ』と内心思っているのかもしれない。

 

「イリーネ、貴様は何か困ったことがあれば私のパーティーに逃げてこい。私こそ真の勇者だ、助けを乞う者を見捨てる事は絶対にしない」

「……それは、感謝致しますわ」

「うむ。では、また会おう」

 

 赤き勇者はそう言い残し、不敵な笑みを浮かべて立ち去った。

 

 ……うーん、これがアルデバランの人となりか。高圧的で不遜な言い回しだけど、悪い印象は受けなかった。

 

 むしろ、カールより勇者の風格あるかもしれん。

 

「面白い話を聞かせてくれてありがとう、貴族のお姉ちゃん」

「何か困ったことがあれば、いつでも我々にご相談を。勇者アルデバランとその一行は、全ての民の味方です」

「別に困ってなくても、一晩のアバンチュールを体験したくば俺の所に来い。こう見えても貴族令嬢の扱いには慣れていてな? お嬢ちゃん可愛いし、たっぷり────」

「私の中のウサギが血を求めている!! 色ボケを殺せと牙を剥き出しに慟哭している!!」

「ぐえええええっ!?」

 

 ウサギ仮面が、髭のオッサンにドロップキックを噛ました。

 

 アルデバランの仲間は、個性的で面白い奴ばかりらしい。

 

 特にあのウサギ仮面は、何処に向かっているのだろうか。ウサギは血を求めんだろ。

 

「では、私達も帰りましょうかユウリ。今の話を、カールに伝えねばなりませんわ」

「そうだね」

 

 こうして俺達は、アルデバランと笑顔で別れた。

 

 最初は敵対してしまったけど、今後は良い関係が築けそうだ。彼らは、意外と良い奴なのかもしれない。

 

「食らえ、ウサギ百連爪!!」

「地面から爪が生えて襲ってくるだと!! 何だこりゃ、はじめて見たぜ」

「きゃあ!? お嬢様、巻き込んでます! 貴女の忠実で従順な下僕が、魔法に巻き込まれてます!」

「2号お前、昨夜私に添い寝してやがりましただろ爪連撃!」 

「ひえーバレてます!?」

 

 それに奴等、ウチのパーティーより間違いなくキャラが濃い。愉快な旅路っぽくて羨ましいな。

 

「よ、ほ、とお」

「避けるなです、オッサン!」

「ひええええ」

 

 ギャアギャアと喧しいアルデバラン一行と別れて、俺はあのパーティーに入らなくて良かったと内心で胸を撫で下ろした。

 

 あんなウサギ仮面を被った変態と、一緒に旅なんかしてられないからな。

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