【朗報】修羅場系パーティーに入った俺♀だったが、勇者とフラグの立たない男友達ポジションに落ち着く   作:まさきたま(サンキューカッス)

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83話「姉妹再会」

 紅き髪の英雄、アルデバラン。

 

 彼女の一日は、仲間に布団から叩き出されるところから始まる。

 

「もー! 起きてくださいリーダー!」

「ぅあー」

「まーたですか。今日は朝練するって言い出したの、アルデバランさんでしたのに」

 

 彼女は低血圧気味で、朝は起きられずよく死んでいる。

 

 本人も何とかしたいらしいが、どうしようもないそうだ。

 

「良いんですかリーダー。このまま起きなければ、変態レズメイドに襲わせますよ」

「え、良いんですか」

「……」

 

 どれだけ声をかけても反応がない。イリア────イリーネの妹にしてメイドの主たる少女は溜め息をついた。

 

 勇者アルデバラン一行は、もうすぐ魔族との決戦が迫っている。

 

 少しでも、鍛練をしておかねばならない。

 

「でもでも、私にはお嬢様という人が……。確かにアルデバランさんも愛くるしいですけど、イリア様は全てが完成していますし……」

「うー。もうちょいと寝かせろ……」

「あぁ! 可愛い、寝惚けてるアルデバランさん可愛い! このままだと、私の理性が……」

「リーダー。貞操の危機ですよ、早く起きないと知りませんからねー」

 

 イリアはメイドが猛っているのを見て溜め息を吐く。

 

 メイドは躊躇いつつも、鼻息荒くアルデバランに馬乗りになる。

 

「これって良いんですか? でもお嬢様のご命令だし……♪」

「うー」

「さ、先っちょだけなら。そ、そーっと、そーっと服を……」

「早く起きないとやべぇですよリーダー。もう、本当にお嫁にいけなくなりますよ」

 

 とうとう、何も命令していないのにメイドはアルデバランの服を脱がしにかかった。

 

 念のため部屋の花瓶(メイド撲殺用)を手に持ちながら、妹は嘆息した。

 

 

「ふひっ、ふっひひ!!」

「あー、リーダーが襲われてます」

「だ、大丈夫やから! 先っちょだけやから、ひっひひ!」

 

 

 本格的に駄メイドがアウトな行為を始めたので、イリアは花瓶を高く持ち上げて────

 

 

 

 

 

「────危機!!」

「どわぁ!?」

 

 

 アルデバランが飛び起き、メイドは吹っ飛ばされた。

 

「まあ危機でしたね、リーダー。お目覚めはどうですか」

「……最悪の夢見だ」

「ち、ちちち違うんです! 私は本当はこんな事したくなかったのですがお嬢様の命令でぇ……」

「……」

「堪忍やぁ~!!」

 

 メイドは俊敏に土下座の体勢を作った。

 

 妹は迷わず主に罪を擦り付けた従者(サラ)をジトッとした目で睨んだ。

 

「皆を集めてくれ、イリア」

「あ、はい。……どうかしました?」

「嫌な予感がする。何か、取り返しのつかない事態が起きたような」

 

 しかし、アルデバランの様子がおかしい。

 

 どうやら、彼女の言う危機とは自分の貞操の事ではなかったらしい。

 

「……っ」

 

 こんなに真剣なアルデバランの顔は久し振りだ。

 

 イリアは、静かに唾を飲んだ。

 

「……女神様に、話を聞きに行く」

「……分かりました」

 

 勇者は、短く指示をだすと。

 

 紅の外套を纒い、仲間と共に教会へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだそうだ」

「は、死……?」

 

 

 彼女は少し肩をよろめかせ、少年魔導師に肩を借りながら教会から出てきた。

 

 その目には、かなりの疲れが見えた。

 

 

「セファの勇者が殺され、その力を奪われたらしい」

「は?」

「あの男。しくじりおったな……っ!!」

 

 

 吐き捨てるように、アルデバランはそう言った。

 

「……え。え?」

 

 勇者の、死。

 

 その言葉を聞いた妹は、目の前が真っ白になった。

 

 

 ────なら、勇者の仲間……姉のイリーネはどうなった!?

 

 

「仲間は? リーダー! 勇者の……、セファの勇者のパーティーメンバーはどうなりましたか!?」

「落ち着け、イリア」

「お姉様は!? どうです、どうなったんですかアルデバラン!!」

 

 悲痛な声で、勇者へと詰め寄る妹。

 

 しかし、アルデバランは黙って首を振るばかりであった。

 

「まだカールが殺され、力を奪われた事しか分からない」

「じゃ、じゃあ姉様は無事なんですね!?」

「……無事な、可能性も残っておろう」

 

 英雄は、そう言ってイリアを抱き締めた。

 

「今は深く考えるな。姉が生きていることだけを信じて、待て」

「……」

「イリーネは強き女だ。カールが殺されようと、きっと一人で脱出しておろう」

 

 その言葉を、妹はじっと噛み締めた。

 

 姉は、確かに強い。

 

 魔法を使えば、一族きっての天才。体を使えば、筋肉モリモリマッチョマンの変態。

 

 でも、そんな姉であっても────あの恐ろしい魔族に勝てるかどうかは疑問が残る。

 

「きっと、イリーネが生きているなら首都の私達を頼って来る」

「……そうですね」

「だから、待て」

 

 ……イリアに今出来ることは、何もない。

 

 妹は静かに、アルデバランの胸のうちで嗚咽をこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……深夜。

 

「姉様……」

 

 イリアは、姉に渡したペンダントに思いを馳せた。

 

 ……いつの間にか、使えなくなった追跡魔法。

 

 ヨウィンを旅立った辺りから、姉に持たせたお守りに追跡魔法が反応しなくなった。

 

 どうやら、魔力の補充が切れたらしい。1年くらいは持つように作ったはずだったが、どこか失敗したようだ。

 

「姉様は、今どちらに居ますか。ここまで、頑張って逃げてこられているのでしょうか」

「……お嬢様。そろそろ寝ないと」

「サラは部屋に帰ってください。……少し、一人にしてください」

 

 カール、と呼ばれた勇者を思い出す。

 

 思い返しても随分と、頼りない男だった。アルデバランのようなカリスマも心強さも、彼からは感じなかった。

 

 あの男が殺されたと聞いて、普通に負けたんだろうなと思った。

 

「……姉様の、性格なら」

 

 しかしイリアは、姉の性格をよく知っている。

 

 あの女性は、仲間を殺されてのうのう逃げ出す気質ではない。

 

「きっとカールが殺されたその時、激昂して、魔族に殴りかかって────」

 

 

 アルデバランは待てと言った。

 

 姉が逃げてくるのを信じて、待てと命じた。

 

 だけど。

 

「あの姉様が、逃げてくるわけないではないですか……っ」

 

 妹だからこそ、分かるのだ。

 

 姉ならばきっと仇討ちで突っ込むか、最後まで仲間を逃がすために殿を務める。

 

 ……ここまで逃げおおせる事が叶う筈も無かろう。

 

「姉様……」

 

 追跡出来なくなった、ペンダント。

 

 殺されて役目を果たせなくなった勇者。

 

「やはり、無茶だったのですよ……」

「やめろ、それは無茶だ!!」

 

 

 

 少女はここにはいない姉の笑顔を想い、月明かりの下で目を閉じた。

 

 

 

 

 

「大丈夫だ。道に迷った時は、高所から偵察するのが常套!!」

「だからって何故猿仮面を被る!?」

「だってこんな見苦しくバタバタ足を動かしている姿、貴族として見せられるか!」

 

 ……。

 

 突然に周囲が騒がしくなったので少女が目を開けると、猿の怪人がフワフワ宙に浮いていた。

 

「ウワァァァァァァ!! お前だったのかイリーネェ!?」

「……お、おおー!? 凄い、イケてるムーヴ……?」

「……レヴ!?」

 

 その猿はバタバタと手足でもがきながら、少しずつ空へと旅立っていく。

 

 深夜の街道で、謎の挙動を繰り広げる仮面の不審者。出来ることなら一生関わらずにいたい相手。

 

 しかしそれは、実姉だった。

 

「……」

「おい猿、誰かに見られてるぞ。……ほら、あそこの女の子」

「この仮面を被っているからには市民の目など気にならんなぁ!!」

「……あれ? あの娘、見たことあるような」

 

 姉の近くには、姉の仲間たちが勢揃いで猿仮面の奇行を諌めていた。

 

 ……生きていた。生きている筈の無かった姉は、無事に首都に辿り着いていた────

 

 

「あの娘、こっちに走ってくるわよぉ?」

「あっ。思い出した、あの娘は確か……」

 

 

 (イリア)は走り出す。

 

 メイドの制止も聞かず、暗い夜道を駆け出した。

 

 ただ一直線、無事に首都ぺディアまで辿り着いてくれた姉に向かって────

 

 

 

 

 

 

 

「何をよそ様に迷惑かけてるんですかこの愚姉がぁ!!!」

「ぐえー!」

「猿仮面が蹴っ飛ばされたぁ!?」

 

 そして、迷わずドロップキックをかました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正座です、姉様」

「……い、イリア? ですの?」

 

 姉は公道で、妹に正座させられた。

 

「何してるんですか、姉様」

「え、あ。暗くて道が分からなくなったので、飛んで偵察をと」

「流石は姉様、風魔法の応用でそんな技まで身に付けてらっしゃったのですね」

「え、えへへですわ♪」

「ただ、凄い風が吹き荒れてましたけど。風とはいえ、暴風になれば被害も出ます。周りの迷惑とか考えなかったのですか、姉様」

 

 ガチ説教。

 

 年上の筈のイリーネは、実妹から正論でぶん殴られていた。

 

「貴族としての、矜持と体裁はどうしたのです。ヴェルムンドの家門に泥を塗るおつもりですか」

「……あ、いえ。その」

「姉様、私は悲しいです。貴女を自慢の姉と信じて日々研鑽を重ねていたと言うのに」

 

 いたたまれない。

 

 自分より年下の妹に、クドクドお説教される姿は悲哀に満ちていた。

 

「い、イリア様そろそろ……」

「……そうですね」

 

 空気を読めるマイカがそれとなく助け船を出すまで、妹による愛の説教が続いた。

 

「ふ、ふぅ。肩が凝りましたわ」

「それと、そろそろその猿仮面取ってください。気味が悪いです」

「……気味が悪い!?」

 

 ガーン、と姉は愛妹に仮面を馬鹿にされショックを受けた。

 

 イリーネは、妹ならこの仮面のセンスを理解してくれると信じていた様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナトで魔族を撃退して、数日後。

 

 夕暮れの間際、俺達は襲われたりすることなく首都にたどり着いた。

 

「あれ、道これで合ってましたっけ」

「暗くて分かんないわ」

 

 以前お世話になったセファの教会に泊まろうと考えたが、街中を移動している間に日が暮れてしまった。

 

 だもんで道に迷ってしまい、空から偵察しようとしてみたら……。

 

「何をよそ様に迷惑かけてるんですかこの愚姉がぁ!!!」

 

 何と妹に蹴っ飛ばされてしまった。

 

「とりあえず、リーダーの下へ案内します」

「リーダー?」

「私が世話になっているパーティのリーダー、アルデバラン氏です」

「え、アルデバランさん!?」

 

 話を聞けば、何と妹はアルデバランのパーティの世話になっているという。

 

 どういう経緯でそうなったんだ……。そもそもイリアの奴、何で首都に居るんだ……?

 

 

「……何だ。生きてたのか、不細工」

「俺が死ぬ訳ねーだろ、チビ」

 

 久しぶりに再会したカールとアルデバランは、やはり互いに塩対応だった。

 

 カールの女神は死んだと言うのに、相変わらず二人の相性が悪い。

 

 もう仲良くすりゃ良いのに。

 

「しかし、見れば分かるぞ。────貴様、失ってるな?」

「……ああ」

「勇者だった頃に感じた、沸き上がる力がない。……力を奪われた、と言うのは真だった様だな」

「もう知っていたか。……今夜は、その話をしに来た」

 

 そして、勇者アルデバランはカールを見て察したらしい。

 

 彼の中に、勇者の力はもうないという事に。

 

「実はアナトで────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてカールは、ざっとアナトで起きたことを話した。

 

 女神が殺されたこと。

 

 イリューが魔王だったこと。

 

 勇者の力が食われ、奪われたこと。

 

「……貴様らの女神はアホなのか? 魔王を目前にして気付かず、むざむざ殺されたのか?」

「女神セファ様は、人類を救うために苦心してくださったんだ。侮辱するな」

「その結果がそれであろう。……はぁ、セファには女神としての力はあれど、女神としての器は無い。その評は的確だったらしい」

 

 アルデバランは始終を聞き、頭を抱えた。

 

 ……カールめ、殺されかけたのにまだセファをまだ狂信してるのか。コイツこそアホだろ。

 

「……それで?」

「アルデバラン。カールが女神セファの加護を失った以上、もう敵対する理由もないはずですわ」

「むむ」

「我らも、人類を守るために立ち上がった身。貴方の陣営に加えていただきたいのです」

 

 アルデバランと一番仲の良い俺が、俺達の合流を頼み込んでみる。

 

 ……俺の話を聞いたアルデバランは、少し困ったような顔になった。

 

「どうするんだ、大将」

「……仲間が多い方が良いんじゃない、アル?」

 

 彼女の仲間は、割と乗り気っぽい。

 

 ただ、いつものウサギ野郎がいないな。あの野郎は何か反対しそうな気がするが。

 

「私も、イリーネを仲間に加えることには異存無い」

「私は……ですか」

「貴様の腕は知っている、強力な魔法の使い手は何人いても困らん。その上、貴様は精霊術師と来ている」

 

 アルデバランは、結構俺の事を評価してくれているらしい。

 

 まぁ、精霊砲撃てる貴族ってだけで人類最高峰だしな。目の前の勇者(アルデバラン)を除けば、俺が人類最強の攻撃魔法使いな気はする。

 

 才能が全てな魔法が凄くても自慢にもならんけど。

 

「……それはどうも、ですわ」

「だがな……」

 

 しかし、アルデバランの口ぶりから想像はつくが。

 

 彼女は多分、俺の他の仲間を歓迎していない。

 

「そこの、サクラ・テンドーとかいう貴族」

「私? 私がどうかしたかしらぁ?」

「……あの後、貴様の家の手の者とやり合ってな。正直、貴様の家とはかなり確執があるぞ私」

「へ?」

 

 ……え?

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。私の家の者って誰? レーウィンの実家はもう……」

「ゴウキ・テンドーとか名乗ってる酒臭いオヤジだったが。火山都市で結構な目に遭わされた」

「何やってるのお父様!!?」

 

 サクラは、顔を真っ赤にして突っ込んだ。

 

 ……行方不明のサクラのお父さん、そんなところにいたのか。

 

「具体的には何があったんだ」

「旅人の足元を見て火魔石の値段を釣り上げておったから、成敗した」

「ちょ、殺してないでしょうね! もしお父様に何かあったら────」

「そしたら、ゴウキとかいうのに惚れられて求婚された。あれは困った」

「……」

 

 ……。

 

「私の火魔法に愛を感じたらしい」

「それは……何と言うか」

「あの酒臭い息で付け回されて困ったから、黙って逃げてるのだ。もうテンドー家と関わりたくない」

「……つまりサクラ、アルデバランが新しいママになるってこと?」

「冗談じゃないわぁ!!?」

 

 何とまぁ、それは。ご愁傷様です。

 

親父(おや)っさん、いい歳して何やってんですかい……」

「縁切りよ。今の話が本当なら、お父様とは縁切りよぉ!」

「見た感じ嘘をついていませんわ、アルデバランさん」

「冷静に分析しないでよイリーネ!!」

 

 そっか。そんな経緯があるならそりゃ難色示すわ。

 

「そもそも、足手まといを守る余裕はない。サクラからは大した魔力を感じん、どうせ大した腕では無かろ」

「まぁ。サクラさんほどの回復術師は稀少だと思いますわよ? 素晴らしい腕をお持ちですわ」

「何、回復術師だと? ……ふむ、であれば話は変わるが」

「何度も何度も、彼女には致命傷を治していただきましたわ。少なくとも、私が見た中では一番の名医です」

 

 俺からの紹介を聞いて、うーむと唸るアルデバラン。

 

 マジでサクラは超優秀な回復役だと思う。外傷専門とは言え、体半分吹き飛んでも治せるのは彼女くらいのモンだろ。

 

「そう、か。であれば、仲間に加わってもらいたい。今までウチの回復担当はキチョウ一人だったからな、彼がやられた場合どうしようもなくなるのだ」

「……まぁ、良いけど」

「後、貴様の父親が来たときは説得してくれ。マジで迷惑なのだ」

「ええ、息の根を止めてでも」

 

 少しサクラの目が死んだが、これでアルデバランに仲間と認めて貰えた。

 

 後は……。

 

「だが、他の連中はどうだ? イリーネから見て使える奴は居るか」

「そこのレイさんとレヴさんは素晴らしく優秀な剣士、拳士ですわ」

 

 近接戦闘で優秀な二人も紹介。この二人は、まぁ余裕で合格だろ。

 

「そうか。剣術は分からん、イノンどう見る?」

「はいはい、お任せくださいアル」

 

 アルデバランは見ただけでは剣士の強さは分からないようで、仲間に力を測って貰う様だ。

 

 ヌっと英雄の背後から出てきたのは、金髪サラサラで王子様みたいな風貌の剣士。糸目って言ってもいいくらい目が細いのが気になるが。

 

「……ほう、隙がありませんね。特に兄の方の完成度は素晴らしい……、しかしその剣は血濡れていると見ました」

 

 金髪細目の剣士は、ニコニコとレイ達を見てそう評した。

 

 ふむ。ヤサ男系だなコイツ、あんまり筋肉はなさそうだ。強いのかこの男?

 

「……そう言う貴様は、貴族の剣士か? ふむ、正統派の魔法剣と見た」

「ええ。イノン・フォン・マッキューンと申します。マッキューン派道場の師範代を務めております」

「……そうか」

 

 レイはそのヤサ男を見て、驚いたように目を細めた。何か感じるものがあったらしい。

 

 うーん。筋肉的にはレイの圧勝の筈なんだが……。

 

 このレイの反応見るに、金髪サラサラ君強いっぽいな。

 

「この二人は十分に戦力になりますよ。私が保証します、アル」

「そうか」

 

 そのサラサラ君の太鼓判で、レヴレイ兄妹は合格。

 

 で、残るは……。

 

「マイカさんは、素晴らしい戦略眼の持ち主で」

「知っている、ヨウィンで見た。要は貴様らの司令塔であろう」

「……や、そんな大それたもんじゃ」

「コヤツは敵に回すと厄介で、味方にして損の少ないタイプである」

 

 マイカの凄さは説明しづらかったが、アルデバランはなんとなく理解してくれていたらしい。

 

 ……敵に回すと厄介なのは確かだろうなぁ。

 

「まぁ、コイツはそんな感じだ」

「が、私は貴様が敵に回る可能性を考えておるぞマイカ。貴様、少し行動理念が偏っておるだろう。考えや信念の違いであっさり敵に回りかねん危さがある」

「む」

「勇者の力を失った男と、仲良く里帰りしたらどうだ。その男の隣にいる限り、大きくは道を違えんだろう」

 

 ジトリ、とアルデバランがマイカを睨んだ。

 

 嫌な予感がする。実は、なんとなく前から感じていた。この二人、相性が悪いんじゃないかと。

 

「私だってそうしたいんだけどね。カールの馬鹿が戦うって聞かないんだもん」

「ああ、俺は戦う」

「成程、貴様に引っ付いておるのかカール。勇者の力を失った貴様に何が出来る、とっとと田舎に帰れ」

「何が出来るだと? そうだな、イリューを……魔王を助ける事くらいは出来るさ」

 

 ……その言葉を聞き、アルデバランはカッと目を見開いた。

 

「貴様。魔王に与するか」

「イリュー……、魔王を名乗ったあの娘は、間違いなく俺の仲間だ。だから助ける」

「それは、我々との敵対宣言ととっても良いのか。私達は、魔王を倒す者だぞ」

「じゃあよ。俺達は、イリューを滅ぼしたらそれでオッケーなのか? ずっと死ねないあの娘を、また封印して何千何万年も苦しめるのが正解なのか!?」

「その女は、人類の滅亡を目標にして攻めて来るのだろう!! 滅ぼさねば、私達が滅ぼされるぞ!」

「そのイリューさえ救えたら、全員救えるってわかんないのか! もし手を取り合うことが出来たら……」

 

 カールの寝言を聞いて、アルデバランは激高する。

 

 ああ、本当にこの男はまっすぐで大馬鹿だ。そんな話を聞いて仲間に入れて貰えるはずが無いだろうに。

 

「絵空事。綺麗事。夢物語」

「それのどこが悪い」

「人類が亡ぶかどうかの瀬戸際に、絵空事を口ずさみ魔王に手を差し伸べる阿呆が悪くないとでも思うか」

 

 バシっと。

 

 俺が反応する隙も無いまま、アルデバランはカールに杖を向けた。

 

「……っ!」

「おっと、動かないでくださいね」

 

 咄嗟にカールを庇おうと剣に手を置いたレイは、金髪サラサラに回り込まれて首に手を回されていた。

 

 え、はやっ。金髪君、やっぱり強かった。

 

「今一度、問おう。カール、貴様は私の敵か」

「俺はイリューの仲間だ。それ以上でも以下でもない」

「あくまで魔王に与するものだと、そう言うのであるな」

「仲間を助ける。俺にあるのはその信条のみ」

 

 そのまま、チリチリと炎が杖先に揺らめき始める。

 

 アルデバランの奴、カールを焼く気だ。ちょ、どうする。今から筋肉天国を発動するか────

 

 

 

 

「────気に入ったっ!!!」

「……は?」

 

 

 

 

 そのまま、バーンと炎が弾けて花丸模様が虚空に浮かんだ。

 

 ……はい?

 

「考えは違えど、貴様の愛は確かに感じたぞカール。私の幕下に入る事を許そう」

「え、はい?」

「はっはっは!! 何だ、それが貴様の根っこか。はっはっは、ナヨナヨした頼りないボンクラかと思うたが……なかなかどうして男の子ではないか。いや、見直した!!」

 

 

 先ほどまでの剣幕が嘘のように。

 

 アルデバランは大笑いしながらカールの肩を抱いた。

 

「え、あのーアルデバランさん? 本当に、カールさんも仲間でよろしいのですか?」

「無論である。……正直なところ、私の意見もカールよりだからな」

「え」

「救えるものには手を差し伸べるのがマクロ教!! 和解の道が無ければ滅ぼさざるを得ないが────最初から和解の道を諦めるなど愚の骨頂!!」

 

 何とまさかの、アルデバランはカールよりの意見を持っていた。

 

 ……和解の道を諦めない、か。確かに、それが出来れば最上だが……。

 

「やれるだけやって見せよ、カール! その道は貴様に任せる!」

「お、おお!」

「私は人類を守るため、決死の覚悟で魔王を滅ぼす。しかし、その前に────貴様と魔王が話をする機会を作ってやる。どう生かすかは貴様次第だ」

 

 いや。そうだな、諦めないのも大事だ。

 

 俺だってイリューを救いたい。彼女と幸せに手を取り合って生きていける道があるなら────

 

「……ねぇ、アルデバランって結構馬鹿なの?」

「リーダーは割と馬鹿ですよ」

「思い付きで安請け合いして苦労するタイプですよ」

 

 背後で盛大に仲間からディスられているが、俺はアルデバランの意見を聞いて思い直した。

 

 そうだな。最初から和解を諦めてかかるのも良くないな。

 

「よし、では貴様ら全員を私の仲間として認める。明日より朝練に参加せよ!!」

「おお!!」

「打倒魔王、そして救え魔王!! 神聖アルデバランパーティ、結成である!!」

 

 そのアルデバランの掛け声とともに、俺は大きく手を突き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、どうして(イリア)は貴方の仲間に?」

「む? ああ、それだがな」

 

 

 そしてその後、妹はその場で正座させられ、姉から長時間説教を食らう事となった。

 

 

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