デート・ア・ライブ ~千歳チャイルド~   作:口十

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もう限界だよ。

-side 士道

 俺たちは、巨大な蜘蛛のようになってしまった千歳の進行方向へと転送された。

 

「いいか、くれぐれも怪我するなよ?」

「うむ・任せておけ」

「わ、私たちは腕を無力化すればいい・・・んですよね?」

 

 四糸乃の言葉に俺と琴里は静かに頷く。各自の耳には小さなインカムが付いており、精霊たち、そしてフラクシナスと連絡が取れる状況にある。

 小野尾の腕には、絶滅天使(メタトロン)刻々帝(ザフキエル)氷結傀儡(ザドキエル)・・・と現在確認されている全ての天使が割り振られている。

 

「じゃぁ、作戦開始だ!」

 

 俺の言葉を皮切りに、精霊たちは各々が天使を持つ腕へと飛ぶ。

 光は光、銃は銃、氷は氷、焔は焔、箒は箒、翼は翼、声は声、剣は剣、と対峙する。

 その間に俺は精霊の力を借りて宙へと飛び、千歳のもとへ向かう。

 

「くっ、なんだこれは」

 

 そこには、千歳を守るように繭のように無数の手が覆っている。

 

「くそっ」

 

 剥がしても剥がしても次が出てくる。どれだけ重なっているか、外からは伺うこともできない。

 

「うぐあっ!」

 

 途端、俺の右肩を光線が貫く。絶滅天使(メタトロン)のものだ。

 

「士道!うあっ」

 

 俺の方を向いた瞬間、折紙は颶風騎士(ラファエル)によって吹き飛ばされる。

 狡猾だ。他の精霊にも目をやると、わざと同じ天使で相対しないように腕は動いている。夕弦と耶倶矢が飛び回り注意を引いているが、それもあとどれだけ持つか分からない。

 何よりも危険なのが、破軍歌姫(ガブリエル)。腕の強化や、俺たちを寄せ付けない音を出している。美九が幾らか相殺しているが、全てではない。

 果たして、あとどれだけ精霊たちがもつか・・・その間に、俺が彼女を説得できるだろうか。

 ああダメだ。こういった土壇場で弱気になっては皆の恋人は務まらない。

 

「なぁ、千歳!聞こえるなら返事してくれ!」

 

 繭の中からは何も聞こえない。それでも俺は叫び続ける。腕を搔き分けて、幾度魔王に攻撃されようが、何度無視されようが。

 

「水族館、楽しかったよな。また一緒に行こうぜ。その時は、またワニに餌やったり」

「五月蠅い!」

 

 繭の中から千歳のものだろうか。少女の声がする。

 

「知るか!俺はただお前とまた一緒に遊びたいだけだ!」

「そんなの詭弁だ!お前ら男はいつもそうだ!そうやって私を騙して、また私を・・・」

「そんなことない!さっきお前の過去を聞いたよ。辛かったよな、痛かったよな、でももう大丈夫だから」

「お前に何がわかる!」

「分かるもんか!それを理解するための言葉だろうが!それを分かり合えるための心だろうが!」

「・・・」

「俺はしつこいぞ。何度でも破ってやる!お前が籠るんだったら、俺は何度でも引っ張り出してやる!」

「・・・」

 

 彼女の声が聞こえなくなり、幾秒か過ぎた後、腕はゆっくりと動くのを止め、その場に静止した。

 

「辛かったことも忘れるくらい、俺が幸せにしてやるから! だから出てきてくれ!」

 

 俺が思っていたよりも繭は分厚かった。けれども、ゆっくりと、それは薄くなっていき、最後には、ついに破れた。

 中では、泣き腫らした千歳がうずくまっているた。

 

 千歳は、こちらを向いてただ一言告げた。

 

「・・・助けて・辛い」

「はは、当たり前だ」

 

 繭の中からその小さな体を引っ張り出し、抱き抱えた俺はゆっくりと降下していく。

 

「・・・約束」

「や、約束?」

「幸せにするって」

「あ、あぁ、そうだな。じゃぁ、目を閉じてくれるか?」

「ん」

 

 さっきまでの暴力的な声は何処へ行ったのか、静かに目を閉じた千歳の姿は、愛らしく、美しい。

 その小さな唇に、俺はそっと口づけをした。

 

「・・・」

 

 ゆっくりと瞼を開いた千歳はにっこりと微笑んだ。だが途端、光りとなって散りゆく霊装を見て驚愕、と目を見開く。

 口をパクパクさせる。どうやら精霊の力が封印されたと同時に、精霊の力で補っていた声を失ったようだ。

 だが、なんとなく言いたいことは分かる。

 

 地に降りた俺は千歳を立たせ、すぐに上着を着せた。

 ありがと、と聞こえたような気がする。

 

「ふぅ・・・終わったみたいね」

 

 ボロボロな霊装を着た精霊たちが集まる。だが、どこにも狂三の姿はなかった。

 

「あぁ・・・あれ、狂三は?」

「さぁ?終戦した時にはもういなくなっていたの」

「そうか。お礼、したかったんだがな」

 

 もし狂三がいなかったら凶悪な天使刻々帝(ザフキエル)を抑える者がいなかった。だとしたら勝てなかっただろう。

 

「・・・?」

「あぁ、千歳と一緒の精霊だよ。大丈夫、皆優しいから」

 

 俺の言葉を聞くと、千歳はゆっくりと前に出ていき、ぺこりとお辞儀をした・・・否、謝った、という方が正しいだろうか。その足は震えている。

 

「気にしないで。私たちはやりたいことをやっただけ」

 

 皆が黙る中、折紙が口を開いた。

 その言葉に千歳が顔をあげる。

 

「・・・私も、同じようなことをした。だから安心して。貴方だけではない」

 

 千歳は改めて深々と頭を下げた。それは、涙を伴うものであった。






 はい。ということで、この話をもちまして、「千歳チャイルド」完結となります。如何だったでしょうか。面白い、つまらない、等々意見はございますでしょうが、私自身といたしましては、趣味を出せて楽しかったです。
 また詳しい話は別のところで致しましょう。後書きで長々と喋るのは私の性に合いません。

 ではまたどこかで、それは現実か、はたまた現実を模したページの中か。
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