それは一目惚れだった。
中2の3学期、僕、
朝のHRでの自己紹介はお世辞にも上手くいったとは言えなかった。昔からである。一人で何かをしようとすると舞い上がってしまい、普段できることもできなくなる。休み時間になると僕の席の周りに集まって、みんな僕のことを知ろうとしてくれていた。
「森谷くん!今日って放課後暇!?」
クラス1のお調子者であろう人が急に声をかけてくる。
「っ!?えっと、はい。大丈夫だと思いましゅ。」
しかし、それに上手く返せる僕ではない。
「森谷くんの歓迎会とかしようと思ってさ!皆もどうよ!?」
お調子者であろう彼の提案に、用事のある一部のクラスメイトを除き、みんなこぞって賛成。家に帰らず、直接カラオケに行くことになる。
カラオケで部屋に入るなり各々好き曲を入れ、歌う人がいればタンバリンやマラカスを振る人、終いには踊りだす人まで出たときにはすこしばかり恐怖を覚えた。
中盤になるにつれ、歌う人は少なくなり、
「こうやって遊べるのも今のうちだよなぁ。来年は受験生だしよぉ。」
残り時間も後一時間となれば、歌う人はおらず、みんなして来年の、受験のことを話し出す。
「そうだよなぁ。なぁ、森谷は引っ越してきたばかりだけど、進路とか決めてるのか?」
「僕ですか?ヒーロー科ということは決まってるんですが……具体的にどことまでは。」
「そらほとんどみんなそうだよ!」
「進路が決まってるって言えば、耳郎は雄英でもう確定だよな?」
「まあね、と言っても一般で倍率300だし、どうなるか全然わかんないよ。」
「それじゃあ、最後の〆、誰が歌う?」
「森谷じゃねぇの?」
「僕はいいですよ!何度か歌いましたし、皆さんの歌を聴けましたし。それより、そちらの耳郎さん?でしたっけ。まだ歌ってなかったと思うのですが。」
「それほんと!?なんで歌わないのよ響香。」
「歓迎会だから、今日はいいかなぁって。」
「歓迎会だからこそだろ!ラスト頼むぞ歌姫!」
「ウチをそれで呼ぶな!」
曲を入れイントロが流れる。同時にマイクを手に持ち立ち上がり、歌い始める。時に優しく、時に激しく。彼女が歌い終わったときに僕は涙を流していた。自分では気づかず、歌い終わった耳郎さんに指摘されてようやく自分が泣いているのだと気づいた。
「泣くなって、森谷!そこまで感動したか!」
「はい、うまく言い表せないんですが、とにかく感動して!僕ジャンルはなんでも音楽聞くの好きなんで。個性的にもその方がいいですし。」
「そういえば聞いてなかったね。森谷くんの個性。」
「そうだな。森谷の個性ってなんなんだ?音楽に関係するのか?」
「音楽には関係ないんですが、僕の個性は植物です。植物に音楽を聞かせるとよく育つってあるじゃないですか。あんな感じです。」
「植物って何ができるの!?花とか出せる!?」
「ええっと、出せるというよりは変えるですかね。この通り。」
と言い、僕は自分の指をバラに変える。女子受けは大変良かったが最後の「これで受け取れたれねぇ。」の一言には深く傷ついた。
「植物の促成とかも出来ますよ。母は地元で許可を取って地元で個性使いながら農作業してます。」
普通に育てるより味が引き締まってる気がする。あくまで気がするレベルだけど。
「農作業手伝おうとは思わなかったのか?」
「一度は思ったんですけど、僕は僕がやりたいことをやれと母が言ってくれたので。それでだめなら畑継いでもらうからと。」
「ヒーローなら誰が好きなんだ?」
「実は身内にヒーローがいまして。シンリンカムイがそうですね。一番身近で個性も近いですし憧れます。」
「マジか!俺カムイのファンなんだよ!サインとかもらえねえか!?」
クラスメイトにファンがいたことに少しびっくり。
「お願いはしてみますけど、住んでる家が違うので、貰えてもいつになるか分かりませんよ?」
「構わん!頼むだけ頼んでくれ!」
「分かったよ。お願いしとくね。」
「ほらほら、そろそろ出る時間だよ。出た出た。」
「ほーい。行こうぜ。」
「うん。」
カラオケを出て解散となり各々自分の家の方向へ歩みを進める。そんななか。
「じゃあね。響香、森谷くん。また明日ね。」
「じゃあね。」
「はい、また明日。」
なんの因果か、耳郎さんと二人になってしまった。たまたま家が同じ方向で若干嬉しかったりするが、如何せん話しかけるのが苦手な僕。なにも話さないまま歩みを進める。
「ねえ。ちょっといい?」
そんな沈黙を破ったのは耳郎さん。僕にそんな高等技術できるはずもない。
「なんでしょう?」
「さっきさ、カラオケで歌好きって言ってたじゃん。特にこれが一番好きってジャンルとかってある?」
「ええっと、一番だとJ-popや一昔の流行曲ですかね。一番身近ですし。リズムも一番とりやすいと思います。」
「ウチ、ロックとか好きなんだけどどうかな?」
「ロックですか。珍しいですね、女性でロック好きは。ですが残念ながらあまり聞きませんね。母がよく聞いてた
のが始まりなので。母が聞いていた曲を僕も好きになるのが多かったです。」
実際自分で気に入った曲もあるが母が聞いてた曲をそのまま好きになったパターンの方が多い。
「そっか、残念。ならさ、私が教えるよ、ロック。」
え?
「さっきの言い方だとさ、周りに影響されてるって事でしょ?だからさ、私が教えたらロックのことも好きになるんじゃないかなって。どうかな?」
自分の好きなジャンルが増えるのは願ってもないことだが。
「ええと、いいんでしょうか?そこまでしてもらって。」
耳郎さんは雄英高校を志望している。倍率が脅威の300。とすれば勉強の復習はもちろん、個性の訓練等も必要なはず。そこに付け加えて僕にロックを教える時間などあるのだろうか?
「いいもなにも、ロック好きな人が増えるとウチも嬉しいしね!」
にかっと笑うその表情に撃ち抜かれた気がした。
「好きです。」
あれ、僕今なんて言った?
「へっ!?」
ポロっと出た言葉で何を言ったか全く覚えてないが、耳郎さんは顔を真っ赤に耳たぶについたプラグを触っている。
「あの、僕なんて言いました?」
「覚えてないの!?《xsmall》ポロっと出る言葉って本音が出るってよく言うし、でも転校初日だよ!?/xsmall》」
「えっと、あの、何か気に障ることを言ったならすみません。」
何を言ったかわ分からないが、顔を真っ赤にしてるし怒っているだろう。まずは謝ろう。
「その、さっき言ったことってホントに思ってる?」
「(何を言ったか分からないけど)はい、親に嘘はつくなと教えられているので。」
「~~~~~!!?ごめん!先帰る!また明日!」
「え!耳郎さん!?」
追いかけようとしたがその時には曲がり角を曲がっており、見失ってしまった。
「明日からどうやって接すれば。」
転校初日、先行き不安である。
「森也、今大丈夫か?近所に引っ越しの挨拶回りに行こううと思うんだが、森也も来てくれないか。引っ越してすぐは忙しくて行けなかったから。」
「うん、大丈夫だよ。」
時計回りに回って最後に右隣の家に
「次で最後だな。次は耳、郎?何て読むんだろう?」
耳に郎?そのままだと耳郎でカラオケから一緒に帰って怒らせてしまった女性が一人思い浮かぶが、流石にお隣さんなんてないはず。……ないよね?
「こんばんわ。引っ越しの挨拶回りに来ました。夜分遅くに申し訳ありません。」
僕がそうこう悩んでいるうちに父はチャイムを鳴らしてしまった。
「はーい。 お待たせしました。って、森谷!?」
あ、終わった。
1話2話での同じ設定部分(2話の後書きで設定の違いを簡単に記しておきます。)
オリ主 森谷森也(もりやしんや)
個性 植物
体を植物に変えることが可能。
1話では指をバラに変えた。2話では少しだけ戦闘シーン。(2話あとがきでもう少し出来ることを書きます。)
アロマテラピーも可。アロマセラピー(ポケモン)も可。草タイプの技や草タイプが覚える技も可。(ご都合設定)
西屋森児ことヒーローシンリンカムイが従兄。