気を取り直して、Flip Over第4話です。どうぞ。
「あの、……僕に行かせてくれませんか。」
カードショップ<ヒストリー>の店内に天晴の声が鮮明に響く。
「改良したのデッキを試してみたいんです。」
鈴音と魔菜が顔を見合わせる。
「うん、分かった。」
「どうせなら二連勝で決めちゃいましょう。」
鈴音が小さく頷き、魔菜がサムズアップで応じる。
「こっちからは俺が出るぜ。」
智季が意気揚々と前に出る。
「「ゲートオープン、解放!!」」
RBSが起動し、2人はフィールドへ向かう。
「先行は僕です。」
【ターンプレイヤー】時川 天晴
【ライフ】5
【リザーブ】3+S1
【手札】5
「リザドエッジをレベル2で召喚。」
赤のシンボルが割れ、小さなトカゲが現れ、智季を威嚇する様に鳴く。
「さらに、ネクサス。新しき世界を配置。」
天晴の背後。自然のアーチが連なる水域が出現。
「ターンエンドです。」
「俺のターン。」
【ターンプレイヤー】久地縄 知季
【ライフ】5
【リザーブ】4+S1
【手札】5
「創界神オシリスを配置。」
機械の四肢に機械的な杖を携えた神、創界神オシリスが智季の後方に現れる。
オシリスは紫のオーラを放ちながら杖を掲げる。デッキからカイゼルマスタッシュスネーク、白晶防壁、ウシルコブラがトラッシュへ落ちる。
「神託発揮。コア2個をオシリスに置く。そして、ウシルコブラを召喚。」
紫のシンボルが砕け、ウシルコブラが召喚される。
「召喚時効果。デッキの上から2枚オープン。その中の神話ブレイヴ1枚か、系統:「妖蛇」を持つスピリットカード1枚を手札に加える。」
ウシルコブラが紫のオーラを発する。2枚のカードが捲られ、その姿を露にする。オープンされたのは、クリスタニードル、スネークビジョン。
「クリスタニードルを手札に。そして、スネークビジョンの効果。自分の紫の効果でデッキからオープンされた時、手札に加えられる。」
「!?」
「さらに、バーストセット。これでターンエンド。」
智季の場に裏向きのカードが出現。
(……バースト。)
天晴の脳裏に前回のバトルが甦り、緊張がいっそう高まる。
【ターンプレイヤー】時川 天晴
【ライフ】5
【リザーブ】2+S1
【手札】4
【フィールド】リザドエッジ(2)、新しき世界(0)
「新しき世界の効果。系統:「起幻」を持つスピリットを召喚する時、シンボルを全色としても扱う。」
瞬間、新しき世界が赤のオーラに包まれる。
「時間を越えて、起源へ至れ。時空龍クロノ・ドラゴンをレベル2で召喚。」
フィールドの空間が歪み、徐々にひび割れる。そして、緑のドラゴンがゆっくりと現れ、手に持っていた剣を智季に突きつける。
「不足コストはリザドエッジより確保。ありがとう、リザドエッジ。」
リザドエッジがフィールドから姿を消す。
「アタックステップ。クロノ・ドラゴンでアタック。アタック時、デッキから1枚ドロー!」
天晴は勢い良くカードを引く。
「さらに、相手はバーストを発動出来ない。」
「バースト封じか!厄介だな。」
剣を振り上げ、クロノ・ドラゴンが飛び出す。
「……ウシルコブラでブロック。」
智季のブロック宣言を聞き、ウシルコブラがクロノ・ドラゴンに飛び掛かる。クロノ・ドラゴンはそれをひらりと躱すと剣で真っ二つ。ウシルコブラは爆発を起こし破壊される。
「ターン……エンド。」
「クロノ・ドラゴンはライフを減らすか、フィールドから離れなければ転醒出来ない。だから、ウシルコブラを犠牲に転醒を防いだ訳ですか。」
モニターを見ながら、魔菜は推察する。
「それだけじゃない。新しき世界もライフを減らした時が条件。」
「成る程。二重で防いだ訳ですか。相手もやりますね。リンリンもそう思いません?」
魔菜は感心しながら聞く。
「その呼び方やめて。私はパンダじゃない。」
リンリンこと鈴音は呆れ顔で睨み付けるのだった。
【ターンプレイヤー】久地縄 知季
【ライフ】5
【リザーブ】5+S1
【手札】6
【フィールド】創界神オシリス(3)
「クリスタニードルを2体召喚。」
羽を生やした龍のごとき姿をした蛇、クリスタニードルが連続して現れる。
「そして、闇王蛇ペンドルクスを召喚。」
紫の特大シンボルがフィールドに出現。そこから、龍の鎧を纏った下半身が蛇、上半身が骸骨のスピリットが召喚される。
「召喚時効果。相手のスピリットすべてのコアを、それぞれ1個だけになるように相手のリザーブに置く。」
コアが2個リザーブへ移動。クロノ・ドラゴンが力無く項垂れる。
「レベル2にアップ。不足コストはクリスタニードル1体から。よって、消滅。」
クリスタニードルが消え、ペンドルクスにコアが追加される。
「ペンドルクスでアタック!アタック時効果。相手のスピリットのコア1個を相手のリザーブに置く。 」
「それって!」
「お察しの通り。クロノ・ドラゴンのコアをリザーブに。」
クロノ・ドラゴンから最後のコアが外される。バトルスピリッツにおいてコアはスピリットを維持するエネルギー源。コアが無くなれば当然フィールドに存在出来ない。
よって、クロノ・ドラゴンは苦悶の声をあげながら消滅する。
「クロノ・ドラゴン!!」
「クロノ・ドラゴンの転醒はレベル2から。レベル1の時なら安心してご退場願えるってわけだ。」
「そんな……。」
天晴は悔しげな表情を浮かべる。
「続けるぜ。この効果でそのスピリットのコアが0になったとき、自分はデッキから1枚ドロー。そして、メインアタック。」
ペンドルクスが迫る。骨の手から禍々しい波動が溢れ出る。
「ライフで受ける。」
【ライフ】5→4
「ターンエンド。」
不敵な表情で智季のターンが終了する。
【ターンプレイヤー】時川 天晴
【ライフ】4
【リザーブ】6+S1
【手札】5
【フィールド】新しき世界(0)
「リザドエッジを召喚。さらに、道化竜トリックスタードラゴンを召喚。」
シンボルが割れ、リザドエッジ、トリックスタードラゴンがフィールドへ。。
「新しき世界をレベル2にアップ。」
「!!」
「アタックステップ。効果で系統:「起幻」を持つトリックスタードラゴンをレベル3にアップ。そのまま、アタック。」
トリックスタードラゴンが宙に舞う。
「新しき世界の効果。系統:「起幻」を持つ本来のコストが4/5/6の自分のスピリットがアタックしている間、相手は、バースト効果を発揮できない。さらに、トリックスタードラゴンのアタック時効果。トラッシュのクロノ・ドラゴンを手札に加え、回復。」
智季が手札から1枚のカードを抜き取る。
「フラッシュタイミング。マジック、スネークビジョン。コスト確保の為、ペンドルクスをレベルダウンしクリスタニードルを消滅。」
紫の衝撃波がフィールドの全域に広がる。
「相手のスピリット/アルティメットすべてのコアを、それぞれ1個になるように相手のリザーブに置く。」
「またしても!?」
「それだけじゃない。自分の紫1色の創界神ネクサスのコア1個をボイドに置くことで、相手のスピリット/アルティメットのコア1個を相手のリザーブに置く。よって、トリックスタードラゴンを消滅。」
苦悶の声をあげ、トリックスタードラゴンは消滅。
「せっかく回復してたのに。」
「どうする?ターンエンドか?」
天晴は暫し考え込む。
「……リザドエッジでアタック。」
「ライフで受ける。」
【ライフ】5→4
「ライフが減ったのでトラッシュのソウルコアを置いて新しき世界を転醒。風雅龍エレア・ラグーンへ。」
空より雲が裂き、エレア・ラグーンがフィールドで咆哮する。
「転醒時効果。ボイドからコア2個を系統:「起幻」を持つ自身の上に置いてにレベル2にアップ。……ターンエンドです。」
【ターンプレイヤー】久地縄 知季
【ライフ】4
【リザーブ】6+S1
【手札】4
【フィールド】闇王蛇ペンドルクス(1)、創界神オシリス(3)
「悪いが、このターンで決めてやる。まずはペンドルクスをレベル2へ。そして、行くぜ!」
「死の淵より現れよ。叡智の化身。冥界蛇神アウザールを召喚。」
フィールドの一部に亀裂が入り、穴が開く。そこから機械の腕が現れ大地を掴む。ゆっくりと地上に這い出るは冥界蛇神アウザール。
「神託でコア追加。そして、召喚時効果。コア3個以上の相手のスピリットすべてを破壊する。エレア・ラグーンを破壊。」
「エレア・ラグーン!」
アウザールの手がエレア・ラグーンの首を掴む。そして、そのまま悲鳴をあげ、エレア・ラグーンは握り潰される。
「この効果で破壊したスピリット1体につき、ボイドからコア1個をこのスピリットか自分の紫の創界神ネクサスに置く。今回はアウザールに置いてにレベル2だ。」
アウザールにコアが置かれ、その力が増す。
「アタックステップ!【界放】発揮。オシリスのコア3個をこのスピリットに置くことで、このターンの間、系統:「妖蛇」を持つ自分のスピリットすべてに紫のシンボル1つを追加する。アウザールはレベル3に上昇。」
「!?」
「アウザール、ペンドルクスはダブルシンボルとなる。」
アウザールが咆哮。するとアウザールとペンドルクスは紫のオーラを纏う。
「行け、アウザール。アタックだ!」
アウザールが天晴に迫る。
「フラッシュタイミング。」
「!?」
「マジック、クリメイションフレイム。BP6000以下のスピリットを破壊。」
カードより炎が吹き荒れ、ペンドルクスを包み込む。そのまま爆発。破壊される。
「クリメイションフレイムはカウント1以上の時、ターンに1度だけ手札に戻せる。」
「だが、この時、バースト条件は満たされた。バースト発動!相手のスピリットのコア3個はリザーブへ。リザドエッジを消滅。」
裏向きのカードが捲れ上がる。
「カイゼルマスタッシュスネークをレベル3で召喚。神託でコアを追加、不足コストはアウザールより確保。よって、レベル2にダウン。」
フィールドにカイゼルマスタッシュスネークが降り立つ。
「アウザールの効果はこのターンの間。つまり、カイゼルマスタッシュスネークもダブルシンボルだ。」
「そんな。」
「カイゼルマスタッシュスネークのBPは8000。クリメイションフレイムでは破壊出来ない。これで終わりだ。」
「ライフで受ける。うわぁぁぁ!!」
【ライフ】4→2
ライフが砕ける。その衝撃で天晴は少しよろめくも真っ直ぐに前を見据える。
「……相手によって自分のライフが減ったとき、自分のトラッシュに赤1色のカードがあれば、コストを支払わずに使用できる。」
「何!?」
「マジック!ペネレイトフレイムをノーコストで使用。BP12000以下のスピリットを破壊。カイゼルマスタッシュスネークは範囲内です。」
炎の弾丸がカイゼルマスタッシュスネークに降り注ぎ爆散。
「くっ、ターンエンド。」
「何とか凌ぎましたね。」
魔菜はほっと胸を撫で下ろす。
「でも、フィールドはがら空き。次のターンも凌げるかは分からない。」
鈴音が冷静に戦局を読む。
(つまり、このターンが正念場。)
天晴がデッキに手をかける。
【ターンプレイヤー】時川 天晴
【ライフ】2
【リザーブ】11+S1
【手札】3
【カウント】1
「ドローステップ。ドロー!」
カードを引き、恐る恐る中身を見る。その瞬間、天晴の顔がぱっと明るくなる。
「来た!僕の第二の切り札。」
「灼熱の大地、龍巣食う活火山。転醒ネクサス、赤の世界を配置。」
天晴の後方。龍の顔を模した火山が迫り上がる。
「配置時効果。最もBPの低い相手のスピリットを1体破壊する。」
「何だと!」
智季のフィールドにはアウザールのみ。赤の世界の火山。その火口から炎が放射。アウザールを焼き尽くす。
「アウザール!!」
キースピリットを破壊され、智季は目に見えて動揺。額に汗がにじむ。
「さらに、時空龍クロノ・ドラゴンを再召喚。コア4個置いてレベル2!」
空間を裂き、クロノ・ドラゴンがフィールドに帰ってくる。
「アタックステップ。クロノ・ドラゴンでアタック。」
「……。」
智季はフィールドを見る。オシリスの神技はコアを外す効果。現在オシリスに置かれているコアは2個神技は発揮可能。しかし、外せるコアは1個のみ。コア4個置かれているクロノ・ドラゴンの転醒は止められない。
「ライフで受ける。」
【ライフ】4→3
クロノ・ドラゴンの剣がライフを砕く。
「ライフが減ったことでクロノ・ドラゴンは転醒する。」
「起源の果て、大いなる時の化身よ降り立て。時空龍皇クロノバース・ドラグーンに転醒。」
魔方陣を潜り、クロノ・ドラゴンはクロノバース・ドラグーンに転醒。
「創界神オシリスを破壊。そして、回復。」
クロノバース・ドラグーンのブレスがオシリスを破壊。そして、勝ち誇る様に嘶く。
「クロノバース・ドラグーンでアタック。」
クロノバース・ドラグーンが智季の元へ歩き出す。
「コスト5以上の自分の赤のスピリットがアタックしたとき、このネクサスは裏返る。」
「紅蓮の炎より転醒。飛翔せよ!赤き神龍皇。」
火山が振動する。その内部に丸まったドラゴンがゆっくりとまぶたを開く。瞬間、マグマが溢れ、火口から吹き出る。その上空。大きな翼を広げ、赤き神龍皇がフィールド全体に咆哮を轟かせる。
「赤き神龍皇の効果。本来のコストが5以上の自分の赤のスピリットすべてに赤シンボル1つを追加する。」
赤き神龍皇が再び吠える。クロノバース・ドラグーンに赤のシンボルが追加される。
「クロノバース・ドラグーンはコスト7。よってダブルシンボル。」
「ライフだ。」
【ライフ】3→1
「これで最後。赤き神龍皇でアタック!!」
赤き神龍皇が翼を広げ、飛翔。フィールドを一直線に突き抜ける。
「ふぅ。……ライフで受ける。」
1度深呼吸。目を開け、智季は真っ直ぐに赤き神龍皇を、そして天晴を見る。その表情は清々しく晴れやかだった。
赤き神龍皇が灼熱の息吹きを放つ。その炎が最後のライフを破壊する。
【ライフ】1→0
天晴はガッツポーズをつくる。
「みんな、ありがとう。僕達の勝ちだ!!」
その言葉を受け、クロノバース・ドラグーンと赤き神龍皇は勝利の雄叫びをあげるのだった。
「か~~!ストレート負けかよ。」
智季は悔しそうに頭を掻く。
「わたしの出番……。」
傍らで陽子がしゅんと落ち込む。それを慰める様に陸は肩に手を置く。
「やりましたね、勝ちましたよ!」
魔菜がハイタッチの姿勢で駆け寄る。後ろから鈴音も寄ってくる。
「勝利、おめでとう。」
「はい、ありがとうございます。」
魔菜にハイタッチされながら、天晴は鈴音に笑顔を向ける。
「天晴だっけ?やるじゃねえか。」
智季は天晴の前に立つ。そして、右手を差し出す。
「次は負けねえからな。」
「!……はい。またよろしくお願いします。」
差し出された手を握り、握手。天晴は嬉しそうに顔を綻ばせるのだった。
そう言えば、早くも第2章の名前が判明しましたね。
8月が待ち遠しいです。
次回もお楽しみに。