バトルスピリッツ Flip Over   作:puls9

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Flip Over第5話。どうぞ、お楽しみ下さい。









押し寄せる荒波の様に。青き異神、浮上。

今日は休日。天晴はいつもの様にヒストリーを訪れる。今回の目的は戦力増強。すなわち、デッキ強化。カウンターに向かう。

 

「「すいません。これください。」」

 

声が被る。横を見るとオールバックの如く髪を逆立てた少年がこちらを見ていた。

 

「あっ……えっと。お先にどうぞ。」

 

手をカウンターへ向け、天晴は場所を譲る。

 

「おう。サンキューな。」

 

少年は破顔する。そして、会計を済ませ、踵を返す。

天晴も、会計を終え、近くのスペースでパックの開封を行う。

 

「あっ。」

 

出てきたのは青のXレア。

 

(醒海皇ヴァルシャルク……か。)

 

カードを確認しながらどうするべきか思い悩む。

 

「うぉ!ヴァルシャルクじゃん!!」

 

背後から叫ぶ声。振り返ると先程かち合った少年が立っていた。

 

「えっと……。」

 

戸惑う天晴。

 

「悪い悪い。オレの名は台場 海旗(だいば かいき)。よろしくな。」

 

そう言うと、海旗は片目を瞑ってサムズアップ。

 

「台場……。つかぬことを聞きますが、豊原さんとか、郡山さんとかご存知ですか?」

「えっ!?豊原……郡山。……ああ。魔菜と鈴音の事か。」

(やっぱり。)

 

心の内で得心がいく。

 

「もしかして、魔菜が言ってたカードバトラーってお前か?」

「はじめまして。時川 天晴です。」

 

天晴は丁寧にお辞儀する。海旗は納得いった表情で腕を組む。

 

「は~。成る程、お前がか。いや、魔菜の野郎が「新しく始めた子がとっても丁寧な人なんですよ。オダイバーと違って。」とかのたまいやがったからよ。どんな奴か気になってたんだよ。」

「あ……はは……は。」

 

天晴の脳裏にその光景がありありと浮かぶ。

 

「ところでだ……。」

 

海旗は真剣な表情になる。そして次の瞬間、海旗が目の前から消えた。

 

「頼む!オレにそのカードを譲ってくれ!!勿論、只でとは言わない。」

 

下から海旗の声がする。体を屈め、床に額をつけている。それは間違いなく土下座だった。その異様な状況に周囲の人々が何事かと目を向ける。

 

「え……えっと。」

(めちゃくちゃ目立ってる。)

 

天晴の顔を冷や汗が伝う。

 

「い、いいですよ。」

「本当か!!」

 

海旗が嬉しそうに顔を上げると近くに置いてあったバッグからバインダーを広げる。

 

「お前、どんなカードが欲しい?トレードだ。」

「えっと、僕のは赤デッキなので赤のカードですかね。」

「了解。赤な。……ここから赤のカードだ。好きな奴選んでくれ。」

 

慣れた手つきでバインダーを捲り、天晴に見せる。目を通すとそこには様々な種類のカードが収められていた。

そして、1枚のカードに目を奪われる。その名は……

 

「醒龍皇リバーサルドラゴン。」

「そのカードにするか?」

「はい!」

「そんじゃ、トレード成立だな。」

 

天晴は醒海皇ヴァルシャルクを、海旗は醒龍皇リバーサルドラゴンをそれぞれ交換。

 

「よし、これでデッキの完成だ!」

 

海旗はヴァルシャルクをそのままデッキに組み込む。

 

(取り敢えず、後でもう一度組み直そう。)

 

天晴はリバーサルドラゴンをケースにしまう。

 

「なぁ、時川。これから時間ある?あるならオレとバトろうぜ。」

 

海旗がデッキを突き出す。

 

「いいですよ。」

「そうこなくっちゃ。」

 

2人はRBSに移動。テーブルに着く。

 

「「ゲートオープン、解放!!」」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】5

 

「オレのターン。異海人シャークマンを召喚。」

 

青のシンボルが砕け、人型のサメ、異海人シャークマンが現れる。

 

「シャークマンの召喚時効果。手札にある青のネクサスをノーコストで配置出来る。」

「!」

 

シャークマンが青のオーラを纏いながら吠える。すると海旗の後方より巨大な門が迫り上がる。

 

「大海門を配置。そうしたときシャークマンの効果でネクサスにボイドからコア1個を置く。そのコアをシャークマンに追加してレベル2にアップ。これでターンエンド。」

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】5

【リザーブ】4+S1

【手札】5

 

「放浪の創界神 ロロを配置。デッキから3枚をトラッシュへ。」

 

デッキが捲られ、時空龍クロノ・ドラゴン、道化竜トリックスタードラゴン、新しき世界がトラッシュに落ちる。

 

「神託で3コアを置く。そして、ゴッドシーカー ロロドラを召喚。神託でコア追加。召喚時効果で3枚オープン。」

 

再びデッキからカードが捲られる。オープンされたのは、赤の世界、ペネレイトフレイム、道化竜ポルドラ&カスタードラ。

 

「赤の世界を手札に加え、残りを破棄。さらに、」

 

天晴は手札からカードを1枚抜き取る。

 

「バーストセット。アタックステップ。」

「大海門の効果。青以外のスピリットがアタックするとき、リザーブのコアをトラッシュに置かなければアタック出来ない。」

 

大海門から青の波動がロロドラを襲う。ロロドラはその力に怯み動けない。

 

「……ターンエンドです。」

 

結局、何も出来ぬまま、天晴のターンが終わる。

 

 

 

 

 

「そこでワタシは言ったんですよ。キテラがフィールドに来てら~、って。」

「ふーん。」

 

店内に2人組が入ってくる。鈴音と魔菜だ。

 

「もう少し興味持ちましょうよ~!」

「あまりにも寒すぎて反応したくなかった。」

「酷い!!」

 

頬を膨らませ抗議する魔菜を無視し、鈴音はモニターを見る。

 

「あれって、トッキーとオダイバーじゃないですか。いつの間に知り合ったんです?」

「さぁ。まだ序盤……か。」

「さてさてどちらが勝ちますかね~。」

 

 

 

 

 

そんな会話をよそにターンは進む。

「オレのターン。」

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】5

【リザーブ】3+S1

【手札】4

【フィールド】

異海人シャークマン(2)、大海門(0)

 

「角仮面の巨人ドゥーガルドを召喚。召喚時効果で3枚ドローし2枚破棄。」

 

海旗は3枚引き、暫し悩んだ後に2枚をトラッシュに置く。

 

「召喚時効果発揮によりバースト発動!」

「マジか!?」

「クリメイションフレイム。BP15000以外のスピリット、ドゥーガルドを破壊します。」

 

バーストがオープンされ、そこから出現した炎がドゥーガルドを焼き尽くす。

 

「さて、どうするか。」

 

リザーブにはまだコアが2個残っている。

 

「……異海人シャークマンをレベル1にダウン。そして、異海人シャークマンをもう1体召喚。召喚時効果でこのネクサスを配置させてもらうぜ。」

 

海旗は好戦的な表情で1枚のカードを掲げる。

 

「巨人達の海原、異形達の闘技場。転醒ネクサス、青の世界を配置。」

 

水しぶきが上がる。そこから現れたのは大海門よりも巨大な闘技場。

 

「ボイドからコアを青の世界に置く。そして青の世界の配置時効果。相手の創界神ネクサスのコアを全てボイドに置く。」

 

青の世界から放たれた濁流がロロを直撃。その一撃を受け、ロロは力無く膝を着く。

 

「そんな。」

「青の世界のコアを片方のシャークマンに移動させ、レベルアップ。さらに、バーストセット。」

 

シャークマンに力が宿る。そして、2体は共鳴する様に嘶く。

 

「アタックステップ。レベル2のシャークマンでアタック。」

 

シャークマンがフィールドに潜る。背ビレのみを露出させ、天晴へと一直線。その動きは水の中を泳いでいる様。

 

「ライフで受ける。」

 

天晴の宣言を聞き、シャークマンは眼前に飛び出す。手のヒレで切り裂き、ライフを削る。

 

「ぐっ!」

【ライフ】5→4

 

「相手のライフが減ったので条件達成。大海門、裏返れ!」

「!?」

 

シャークマンのコアが大海門に置かれ、レベルダウン。

 

「海門機兵オーシャンゲート・ゴレムに転醒。カウント1増やす。」

 

大海門は大きく揺れ動き変形、その姿を人型へ変える。

 

「転醒時効果でコスト合計6まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。ロロドラを破壊。」

 

オーシャンゲート・ゴレムがロロドラを鷲掴みにする。

 

「ロロドラ!」

 

天晴の叫びも空しくオーシャンゲート・ゴレムに握り潰されロロドラは破壊される。

 

「オレはこれでターンエンドだ。」

 

海旗はライフを砕き、スピリットを破壊し、ロロのコアもゼロ。圧倒的優位な状況にご機嫌でターンを終える。

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】4

【リザーブ】6+S1

【手札】4

【フィールド】放浪の創界神ロロ(0)

 

「リザドエッジを召喚。」

 

リザドエッジがフィールドに出現。

 

「こっちも行きます。」

「灼熱の大地、龍巣食う活火山。赤の世界を配置。神託でコア1個をロロに置く。」

 

龍を模した火山が出現。

 

「配置時効果。シャークマンを1体破壊。」

 

赤の世界から放たれた炎がシャークマンを焼き払う。

 

「マジック、ブライトフォースドロー。デッキから4枚になるまでドローする。手札はゼロ。よって最大ドロー。」

「手札補充か。」

「そして、道化竜トリックスタードラゴンを召喚。神託発揮。」

 

天晴はフィールドを見る。

(リザーブにコアが無い。……なら!)

 

「リザドエッジ1体のコアをリザーブへ移動。よって、消滅。」

「そう来るか!」

「ありがとう、リザドエッジ。」

 

リザドエッジはその声に応える様に頷き、フィールドから消える。

 

「アタックステップ。トリックスタードラゴンにトラッシュからコアを3個置きレベル3へ。そのまま、アタック。」

 

トリックスタードラゴンがフィールドを翔る。

 

「トリックスタードラゴンのアタックにより条件達成。」

「紅蓮の炎より転醒。飛翔せよ!赤き神竜皇。」

 

赤の世界が裏返り、フィールドに赤き神龍皇が舞い降りる。

 

「転醒時効果によって、オーシャンゲート・ゴレムを破壊。」

 

赤き神龍皇のブレスがオーシャンゲート・ゴレムを焼き尽くす。

 

「そして、トリックスタードラゴンのアタック時効果。トラッシュのクロノ・ドラゴンを手札に加え、回復。」

「相手が手札を増やしたとき、バースト発動!」

 

バーストが開かれる。

 

「トラッシュの大海門を再び配置し、リザドエッジ、赤き神龍皇を疲労。」

「えっ!?」

 

フィールドに大海門が再び出現。さらに、青の波動がトリックスタードラゴン、赤き神龍皇を包み込む。

 

「この効果発動後、フォッシルゴレムは召喚される。レベル2。」

 

フィールドにフォッシルゴレムが足を踏み入れる。

 

「くっ!……でも、トリックスタードラゴンのアタックは継続してます。」

「フォッシルゴレムでブロック。BP10000。」

 

トリックスタードラゴンが黄色の弾を発射。しかし、フォッシルゴレムはびくともせず、トリックスタードラゴンの首を掴む。そのまま、地上に叩きつけられ、トリックスタードラゴンは破壊される。

 

「ターン……エンド。」

 

悔しそうに、天晴は顔を歪ませる。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】5

【リザーブ】2+S1

【手札】2

【カウント】1

【フィールド】異海人シャークマン(2)、フォッシルゴレム(2)、大海門(0)、青の世界(0)

 

「マジック、ブルーフィールド。デッキから2枚ドローし、1枚破棄。さらに、タイプ:フィールド発揮。お互いの創界神ネクサスのシンボルを0にする。」

「それじゃあ、ロロのシンボルは軽減に使えない!?」

「そう言う事だ。そして、このままアタックステップ。シャークマンでアタック。」

 

シャークマンが再びフィールドに潜り、迫る。

 

「ライフで受ける。」

【ライフ】4→3

 

「相手によってライフが減ったので、ペネレイトフレイムをノーコストで発動。フォッシルゴレムを破壊。」

「ならこっちも再び転醒。オーシャンゲート・ゴレム。効果でリザドエッジ、赤き神龍皇を破壊。」

 

オーシャンゲート・ゴレムの鉄槌がフィールドに亀裂を生む。そこから隆起した地面がリザドエッジ、赤き神龍皇を襲う。

 

「根幻回帰。赤き神龍皇は裏返して配置します。配置時効果でシャークマンを破壊。」

 

赤き神龍皇はシンボルに戻り、火山の中に帰っていく。そして、火山から吹き出た炎がシャークマンを破壊する。

 

「ターンエンドだ。」

 

 

 

 

「これは厳しいですね。」

 

魔菜が顔をしかめる。

天晴のフィールドには放浪の創界神ロロと赤の世界の2枚だが、ブルーフィールドの効果で軽減に使えるのは赤の世界のみといった状況だ。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】時川 天晴

【ライフ】3

【リザーブ】8+S1

【手札】4

【カウント】1

【フィールド】

放浪の創界神ロロ(2)、赤の世界(0)

 

「まずは、バーストセット。次に時砂の龍子サンドラグラスをレベル2で召喚。神託でコアを増やす。そして、召喚時効果でオーシャンゲート・ゴレムを破壊。」

「この瞬間、青の世界の効果発揮。オーシャンゲート・ゴレムを疲労させる事で相手の召喚時効果を無効にする。」

「そんな!!……でもまだ終わってない。赤の世界にコアを1個置いて、ロロの神技発動。コア3個をボイドに送って、赤の世界を転醒させる。」

 

フィールドに再び赤き神龍皇が舞い戻る。

 

「カウント追加。転醒時効果でオーシャンゲート・ゴレムを今度こそ破壊します。」

 

青の世界の効果を発揮させるには回復状態のスピリットが必要になる。

しかし、海旗のフィールドには疲労状態のオーシャンゲート・ゴレムしかいない為、青の世界の効果は発揮出来ない。

 

「これでそっちのフィールドはがら空き。ここで決める!!赤き神龍皇でアタック。」

「ライフで受ける。ぐっ!!」

【ライフ】5→3

 

赤き神龍皇のブレスが海旗に直撃。

 

「だが、オレのライフが減った事で転醒。お待ちかねの時間だ。」

「まさか!!」

「大海原より浮上。深淵なる混沌よ現れろ。転醒!!青き異神。」

 

闘技場に渦が巻く。それは徐々に上昇し、竜巻へ。竜巻が晴れ、現れたのはまさしく異形、青き異神。

 

「転醒時効果でサンドラグラスを破壊。」

 

青き異神は蛇の様な龍の様な顔がついた足を伸ばす。それに絡め取られ、啄まれ、サンドラグラスはみるみるうちに食い尽くされ、破壊。

 

「うっわ……エグ!」

「絵面が酷い。」

 

その光景を見て、魔菜と鈴音は何とも言えない表情になる。

 

「サンドラグラスの破壊でバースト発動。BP12000以外、青き異神を破壊。」

 

何処からともかく現れた炎が青き異神を包み、爆散。

 

「根幻回帰。青き異神は青の世界となって再び配置。」

 

青き異神はシンボルに戻り、闘技場の中に帰る。

 

「道化竜フール・ジョーカードラゴンを召喚。」

(駄目だ。このターンじゃ決められない。)

「ターンエンド。」

 

釜を携えた竜、フール・ジョーカードラゴンが次に備え構えを取るのだった。

 

 

 

 

 

【ターンプレイヤー】台場 海旗

【ライフ】3

【リザーブ】9+S1

【手札】2

【カウント】3

【フィールド】青の世界(0)

「ふぅ。凌ぎきった。」

 

海旗は文字通り胸を撫で下ろす。

 

「なぁ、天晴。ひとつ言っておくぞ。」

「へっ!?」

「今のオレの手札にはこの状況を打開するカードは無い。つまり、勝つか負けるかはこのドローに懸かってるって訳だ。」

「!!」

「だからオレは引くぜ。この状況を打開出来る切り札を!……ドロー!!」

 

海旗は勢い良くカードを引く。そして、内容を見て、笑みを浮かべる。

 

「フフッ。ハハハハハハ。よっしゃー!!」

(一体何を引いたんだ。)

「行くぜ!!」

 

海旗はドローしたそのカードをフィールドに出す。

 

「神秘の海より目覚めよ。神殺しの剛腕。醒海皇ヴァルシャルク、召喚。」

 

水の柱が上がる。そこを掻き分け、姿を現すは銛を携えし巨人、醒海皇ヴァルシャルク。

 

「ヴァルシャルクの効果。カウント1につき、レベルを1つ上のものとして扱う。」

「なっ!?」

「オレのカウントは3。つまり、ヴァルシャルクのレベルは前人未到のレベル4。」

「レベル4!!」

 

その強大なレベルに天晴は驚く。

それを余所に銛を振り回し、ヴァルシャルクは戦闘態勢に入る。

 

「アタックステップ。ヴァルシャルクでアタック!」

 

ヴァルシャルクが駆け出す。

 

(落ち着け。焦るな。まだフール・ジョーカードラゴンがいる。それに手札には白晶防壁もある。)

「アタック時効果。お互い手札/手元の青以外のカードは使えない。」

「そんな!!」

「さらに、レベル4のアタック時効果。相手のライフをリザーブに送る。」

 

ヴァルシャルクが銛を投擲。一直線に天晴に突き刺さる。

 

「ぐっ!!」

【ライフ】3→2

 

「相手のライフが減ったので青の世界が再び転醒する。来い!青き異神。カウント追加。」

 

フィールドに青き異神が出現。息をつく暇もなく足を伸ばす。

 

「転醒時効果でフール・ジョーカードラゴンを破壊。」

 

青き異神に食い千切られ、フール・ジョーカードラゴンはフィールドから消える。

 

「これでブロッカーはいない。メインアタック。」

「ライフで受けます。ぐっ!」

【ライフ】2→1

 

「ヴァルシャルクの効果は終わらない。バトル終了時、カウント4以上で尚且つ相手スピリットがいるなら回復する。」

 

ヴァルシャルクが起き上がる。

 

「これで終わりだ。ヴァルシャルクでアタック!!」

「ライフで……受けます。うわぁぁぁ!!」

【ライフ】1→0

 

「バトルは豪快、気分は爽快。おっしゃー!!」

 

海旗のガッツポーズに合わせ、ヴァルシャルクは銛を地面に突き刺し、青き異神は仰々しく両手を広げ、勝利の咆哮を轟かせるのだった。

 

 

 

 

 

「うっしゃー!勝った、勝った。」

 

喜び足りてないのか海旗は未だガッツポーズを取っている。

 

「うう、負けた……。」

 

一方の天晴はデッキを手に項垂れている。

 

「気にすんなよ。オレが勝てたのは、お前に交換してもらったヴァルシャルクのおかげだ。つまり、これはオレとお前の勝利って事だぜ。」

 

海旗は天晴の肩に手を回す。

 

「それは……どうなんでしょう?」

「まぁ、細かい事はいいんだよ。またやろうぜ、天晴。」

「……はい!」

「おやおや。随分と仲が良いですね~。」

「げっ!その声は。」

 

海旗が横を向く。視線の先には予想通り、魔菜がいた。傍らには鈴音の姿もある。

 

「郡山さんに豊原さん。」

 

天晴もそれに気付き、声をかける。

 

「げっ、て何です?げっ、て。失礼過ぎません?」

「日頃の行いだろ。胸に手を当てて考えてみろ。」

「ん~、覚えがありませんね~。」

「おまえなぁ……。」

 

調子の良い魔菜の態度に海旗は思わず呆れ顔になる。

 

「郡山さんも来てたんですね。」

「うん。時川達のバトルの序盤に。」

「そうだったんですか。」

「惜しかったね。」

「そんな。まだまだですよ、僕なんて。」

「……そっか。」

 

苦笑いする天晴に鈴音は何も言えず、無難な応答になる。

 

「随分賑やかになったな。」

 

そこに見慣れた人物がやって来る。龍斗だ。手には何やら紙らしきものを持っている。

 

「古賀さん。」

「よっ。」

 

龍斗が片手をあげる。

 

「なんですか、それ?」

「ん、これか?見ればわかるぜ。お前らにも関係あるし。ほら。」

 

龍斗が持っているものを1枚渡す。それはポスターだった。天晴達は揃って覗き込む。

 

「ショップ大会ですか?」

「そっ、来週やるんだ。良かったら参加してくれ。」

「お~、良いじゃん。勿論、優勝はオレが貰うぜ。」

「ないない。優勝はワタシが貰いますから。」

「ヘッ!じゃあ、お前には出来るのかよ?」

「出来るに決まってるじゃないですか。ワタシですよ。」

「ふ、2人共落ち着いて。」

 

海旗と魔菜は互いに火花を散らして睨み合う。

その様子に天晴は慌てて間に入る。

 

「無理だよ。」

 

天晴達が声の方を振り返る。そこには、珍しく挑発的な表情をした鈴音がいた。

 

「優勝は私が貰うから。」

 

その言葉に魔菜と海旗は暫し呆然とするもすぐにいつもの調子に戻る。

 

「へぇ~。リンリン、何時になくやる気じゃないですか。」

「まぁ、どうせなら2連覇したいし。後、リンリンはやめろ。」

「うっし。オレ、カード見てくる。」

 

そう言うと、海旗は移動。あっという間にいなくなる。

 

「ワタシも今回はガチで行きますよ。大会で会いましょう。」

 

魔菜も続く様に去る。

 

「それじゃ、私も行くね。」

 

鈴音もカウンターへ向かって移動する。

 

「んで、天晴はどうするんだ?」

 

龍斗が天晴に聞く。

 

「僕は……。」

 

脳裏に今までの戦いが甦る。特に初勝利の瞬間が。

 

(また、勝ちたい。)

 

天晴の心は決まる。

 

「出ます。自分がどこまで出来るか試してみたいです。」

「そうか。俺も楽しみにしてるぜ。」

「はい。」

 

天晴は店を出る。目指すは自宅。新しいデッキを作るべく帰路につくのだった。




コラボカードを出すか出さないかめっちゃ悩んでいる今日この頃。

次回、ショップ大会編開始。

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