幼馴染に泣きつかれました   作:とくとくとくおくとくとくおくおくおくお

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第2話

 ログインすると、俺はヨーロッパの街のような場所に送られた。

 人がたくさんいて、かなり賑わっている。

 そんな中をゲーム初心者の俺は何をすればいいのか分からずにいると、幼馴染が遅れてやって来た。

 

「待たせたな」

「遅いぞ……えーと、ここでリアルの名前は言わない方がいいんだよな?」

「当たり前だ。ゲームで個人情報を曝け出す馬鹿がどこにいる。私のここでの名前はミィだ」

「なんだその喋り方」

 

 思っていたよりも幼馴染のキャラが痛かった件について。

 

「なんだ文句でもあるのか?」

「別にないけど」

 

 ちょっと痛いなと思っただけです、はい。

 まあ、今更直せないだろうし受け入れるか。

 

「ちなみに、俺はアイスだ」

「なぜアイスなんだ?」

「今日の朝飯アイス食ったから。別にいいだろ? すごく変な名前でもないし」

「……はぁ、相変わらず興味のないことは適当なやつだ」

 

 呆れられてしまったようだ。

 言っておくが、俺の方がお前に呆れてるからな。何だよキャラ作りすぎて自滅って。

 

 ーーなぁ、あれって……

  ーー炎帝ノ国のミィだよな? 何で第一階層に……

 

 何やら周りがざわざわしていると思っていたら、注目されているのは俺たちのようだ。

 というか、ミィか。

 

「お前すごい見られてるけど、何かやらかしたのか?」

「違う。ここは第一階層と言って、初心者プレイヤーが集まる場所だ。そんな場所に私のようなプレイヤーがいれば目立つださ」

 

 裏返せば、ミィは初心者にすら名が通っている実力者ということか。

 単純にすごいな。まあ、たしかにこいつこのゲームめちゃくちゃやり込んでるもんな。おかしな話でもないか。

 

「ふーん。まあ、それはいいとして。これじゃあ、ゆっくり話すことも出来ないし場所移すか?」

「そうだな。カフェでいいな?」

「いいよ」

 

 そうして俺たちはカフェに移動した。

 

 

 

 

 カフェに入った。

 そこで俺はこの世界の説明を一通り受けることになった。

 ただ、正直覚えることが多すぎてよく分からない。とりあえず理解できたのは、とある条件をクリアするとスキルとやらが習得できること。モンスターを倒して、レベルが上がるとステータスポイントが貰えることだ。

 

 

「要するに強くなるにはモンスターを倒せばいいってことか?」

「そういう事だ。あとはイベントで上位に入ればレアなアイテムを入手することもできる。そして、私たちは現在第3回イベントに向けて、対策を練っているところだ」

 

 イベントとは運営が主催する大会のようなものだ。

 前に上位に入ったという自慢話を何度も聞かされた。それが悲劇の始まりだったわけだが。

 

「ふーん。それで、俺はどうすればいいんだ? お前のギルドに入るにしても、まったくの雑魚じゃ話にならないんだろ?」

「その通りだ。私のギルドでは入隊するのにレベル制限を設けてる。私の知り合いだからと言って、入隊させるわけにはいかない」

「だろうな。守るところを守らにゃ、組織とは言えないからな」

 

 ミィのギルドが巨大と聞いた時からそこは予想していた。

 そのため、俺は少なくともギルドの役に立つ程度のレベルまで強くなる必要がある。

 

「ああ。だが、安心しろ。お前がそのレベルに達するまで私も協力する」

「マジで? いいのか、今更レベル1のレベル上げに付き合うなんて、上級プレイヤーのお前には退屈だろ?」

「元々私が頼んだ事だ。そのくらい当然だ」

「ふーん。じゃあお願いするか。さくっと強くなっちまおうぜ」

「ああ」

 

 ミィは頷くと懐から地図を出してきた。

 

「これがここの地図か?」

「そうだ。この辺りなら森にいる虫系のモンスターが狙い目だな。それに虫なら私の属性的にもサポートしやすい」

「たしかミィは炎属性使いなんだよな。俺は何使いになろうかなぁ。アイスって名前だし、氷使いでいっか」

「また安直な……。それにしてもアイスは魔法使いになるのか? 男は剣士や盾を選ぶ人間の方が多いのだが」

「前線に出るのはそれなりの技術が必要だろ? でも、魔法使いなら指示に従って魔法撃っておけばいいからな。それに後衛にいた方が、ミィの側にいれるだろ?」

「な、なななな! いきなり何を!?」

 

 なぜか怒鳴ってくるミィに、俺は首を傾げて。

 

「お前が1人だとメンタルキツイからって、俺を呼んだんだろ? なら、お前の近くにいなきゃ意味ないじゃないか」

「たしかにそうだけど……」

「いや、口調、口調。しっかりキャラ守れ」

「はっ。……そうだな。お前の言う通りだ」

 

 こいつ大丈夫か。ポンコツが滲み出ている幼馴染を俺は心配した。

 ミィはコホンと小さく咳をして。

 

「とりあえず氷魔法を使いたいなら、氷属性のモンスターを倒せばスキルを入手できる。雪山に向かうぞ」

「了解」

 

 

 □

 

 

 雪山に着いた。雪国のような光景に普通ならテンションが上がりそうなものだが、俺は少々気を落としていた。

 そんな俺を心配するようにミィが見てくる。

 

「どうしたアイス? 元気がないぞ」

「落ち込みたくもなるだろ。ここまで、お前の背中におんぶされて来たんだぞ」

 

 女におんぶされて来るなんて、男のプライドがズタズタだ。

 

「仕方ないだろ。アイスの速度に合わせてたら時間がかかってしまうんだから。しかし、あそこまで遅いとは思わなかったぞ。お前、AGIにまったくポイントふっていないだろ」

「AGI?」

「アジリティー、要は速さだ。こんなことも知らないのか?」

「経験者の感覚で言うな。普通の人間はAGIとか言われても理解できん」

 

 そう言うと、ミィは訝しんだ表情で。

 

「……お前ステータスはどうふったんだ?」

「心配するな。必要ないものにはふってない」

「本当か?」

「本当だ。ずっとお前のゲームの話しを聞かされてたからな。必要なものくらい何となく理解できるさ」

「そ、そうか」

 

 だから、ちゃんと全部MPにふった。

 ミィは納得したのか、それ以上は追求してこなかった。

 しばらく雪山を歩いていると、道の先から音が聞こえて来た。見ると白い熊の大群が現れた。

 

「スノーベアーだ! アイス、やるぞ!」

「いや、あれ2人で大丈夫か? めちゃくちゃ多いんだが!?」

 

 少なくとも10匹以上はいる。

 こちらは俺が足手纏いだがら、実質ミィ1人だ。勝てる気がしない。

 しかし、ミィは臆する様子もなくつっこむ。

 

「問題ない。いけ、炎帝!」

 

 ミィは手から巨大な炎の弾を出して、熊に投げつけた。

 炎の弾はドーム状に広がって熊たちを横たわらせた。

 

「アイス! 早くスノーベアーたちにとどめをさせ!」 

「あ、ああ、分かった!」

 

 促されるまま、倒れている熊たちに近づいて杖でとどめを刺していく。

 合計13匹すべてにとどめを刺すと、レベルは一気に12まで上昇していた。

 

「けっこう早く上がるもんだな」

「当たり前だ。スノーベアーは基本的にレベル20以上のプレイヤーが対象、レベル1が倒せば経験値も一気に溜まるさ」

「そのレベル20以上のモンスターをギリギリ死なない程度に調整できるお前は何者だよ」

 

 強すぎるだろ。なんだその遠回しの力自慢。思ってたより実力に開きがあって、俺はビックリだよ。

 驚いていると、俺の目の前にスキルゲットの文字が出てきた。

 

「お、なんかスキルゲットしたぞ」

「どんなスキルだ?」

「ちょっと待てって。えーと、氷結弾、氷の壁、絶対零度だってさ」

「待て。絶対零度? なんだそのスキルは? 聞いたことないぞ」

「だから焦らせるなって。今詳細を見てるから……なになに、相手の体力を0にするだってさ」

「はあ!? ちょっと見せろ!」

 

 俺がスキルの効果を伝えると、ミィは狼狽した様子で俺のスキルの説明欄を見てきた。

 何をそんなに驚いているんだ? 絶対零度ってそんなに珍しいスキルなのか?

 

「ほ、本当だ。相手の体力を0にする」

「だろ?」

「どうしてこんな反則レベルのスキルが? 入手条件はMP2000以上で氷属性のモンスターを10体倒す……MP2000以上!? どういうことだアイス!」

「どういうことだって、単純に初期のポイントMPに全部ふったんだけど? だってミィも言ってただろ。MPが切れかけて危なかったって」

「そういう意味かああああ!?」

 

 ミィは頭を抱えてうずくまってしまった。

 とりあえず、ミィの反応を見る限り俺の解釈は間違っていたらしい。これは悪いことをした。

 ミィは立ち上がると俺の肩を持ち、真っ直ぐな瞳で俺の目を見て。

 

「いいかアイス。この絶対零度のスキルは正直強すぎる」

「……え? これ強いのか?」

「当たり前だ! ステータス関係なく相手の体力を0にするんだぞ! やろうと思えば、私ですら一撃だ!」

「ほーん」

 

 今一ピンとこない。何となく強いのは理解できたが、それでもミィの方が強くないか? だって、あの大量の熊を一撃だぞ。

 

「その表情を見る限り、まだ理解できていないようだな」

「まあ、そうだな」

「分かった。一回私の背中に乗れ」

「え、嫌だああああ!?」

 

 拒否しようとしたら、無理やり背負われた。

 

「フレアアクセル!」

 

 ミィは足にエンジンがついたような速度で、雪山を駆け登る。

 そして数分後、山の頂上で俺は下ろされた。

 そこには円柱の光が空に刺さっていた。

 

「これは何だ?」

「これはボス戦への入り口だ。この結界に乗れば、ボスの下に飛ばされる」

「で、なぜ俺をここに?」

「お前には今からボスに挑んでもらうからだ」

「なめんな!」

 

 こちとら『NWO』初めて1時間も経ってねぇんだぞ。まともな戦闘もしたことないのに、いきなりボス戦とか勝てるわけないだろ。

 無茶振りにも程がある。俺は断固拒否するつもりだったが。

 

「ともかく行け!」

「ちょ、ま!?」

 

 蹴り飛ばされて、俺はそのまま結界の上に乗せられた。

 

 

 □

 

 

グオオオオオオオオ!

 

 耳を塞ぎたくなるような轟音が俺の耳をつんざく。

 ボスの名前はキング・スノーベアー。キングコングのように巨大な身体に、爪はビルなど紙のように切り裂けそうなほど鋭く、目は紅く輝いている。

 明らかに初戦闘の相手には相応しくない雰囲気だ。

 というか、強くなっても一人で勝てる気がしない。

 所詮はゲームなので恐怖などは感じないが、絶望感はある。

 

「……はあ、仕方ない。ミィを信じるか」

 

 何の根拠もなく、ミィが俺に無茶振りをするはずがない。つまるところ俺が入手した絶対零度は、こいつを倒すことも可能ということだ。

 俺は走ってくる巨大熊に、杖をかざして。

 

「絶対零度!」

 

 そう唱えると、杖から何方向にも分かれるように氷が噴き出し、その氷は熊を取り囲むように集合していき、最後には熊を氷漬けにした。

 そして目の前に出てくるclearのパネル。

 俺は目の前で起きた現象にまだ整理が追いついていかない。そして、ようやく言葉が溢れた。

 

「ハハッ、こりゃ反則だわ」

 

 

 

 

「だから、あんなシステム入れんなって言ったんだ!」

「仕方ねぇだろ! 俺だって、本当にあのスキルを入手する奴が出てくると思わなかったんだから!」

「まあ、たしかにMPを2000以上まで上げるプレイヤーなんて普通いないからなぁ……」

「俺らの常識は捨てろ。メイプルで何度も学習しただろう」

「「「「たしかに!」」」」

 

 バラバラだった心が一つになった。

 

「それにしても、あのスキルはヤバすぎるだろ。下手したらゲームバランスが崩壊しかねねぇぞ」

「しかし、まだ被害も出てない内から調整するわけにもいくまい」

「じゃあ、次のイベントの結果次第で決めよう! あれはMP消費も激しいから、案外実戦では使いにくいかもしれないしな!」

「はっはっはっ、そうだな!」

 

(((嫌な予感がするなぁ……)))

 

 

 

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