幼馴染に泣きつかれました   作:とくとくとくおくとくとくおくおくおくお

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第3話

 俺が『NWO』を初めて数日が経った。

 装備も揃い、レベルもだいぶ上がった。すでにミィがいなくても第一階層のボスを倒すこともできる。そろそろミィのギルドに入ることもできるだろう。

 そう考えた俺は、さっそく炎帝ノ国の本拠地に赴いた。

 どこか映画に出てくる西洋の城のような建物。巨大な木の扉には門番らしきプレイヤーが2人立っていた。

 俺が扉に近づくと、門番はいかつい目を光らせて。

 

「ここは炎帝ノ国ギルドだ! 部外者は立ち入り禁止だ!」

「一応今のところ部外者なのかな? あんたらのリーダーのミィに会いに来たんだけど、今中にいるよな?」

「答えん! 貴様のような不審な男にミィ様を近づけるわけにはいかん! ほら、帰った帰った!」

「えぇ……」

 

 しっしっと追い払うように拒否されてしまった。

 これってゲームですよね? 別に俺がプレイヤーキラーでも、暗殺したりできないよね?

 この男の人の何がそんな警戒心を生んでいるのか、全く理解できない。

 俺は仕方なく、ミィにメッセージを送ることにした。

 

アイス『なんか部外者は立ち入り禁止だって言われて、ギルドに入れないんだが?』

ミィ『すぐに行く』

 

 すぐに返信が来た。すると、巨大なドアがギギギと開いた。

 中から、赤い鎧を来たミィが出てくると、門番の男たちは驚きながら敬礼して大きな声で挨拶をする。

 ミィは男たちに俺のことを話しているようだ。

 

「あいつは私の知り合いだ。通せ」

「は、はっ! 申し訳ございません!」

 

 だから、何で敬語やねん。ここゲームちゃうん? 

 炎帝ノ国のノリにドン引きしていると、ミィから。

 

「来い、アイス」

「へいへい。今行きますよっと」

「貴様! ミィ様に何という口の聞き方を!」

「私は気にしていない。好きにさせておけ」

 

 ミィにそう言われ、門番の男は渋々引き下がった。めちゃくちゃ睨まれてるけど。

 何でゲームの中まで頭下げるん? あなた根っからの社畜なの? このノリを強制させられるんなら、俺このギルド向いてないと思うんだけど。

 中途半端な時期に転校してきた転校生の心境で、ミィの後ろをついて行く。

 赤絨毯の廊下を抜けて、奥の大部屋に入った。

 校長室のような内装を見ると、ここはミィの部屋のようだ。

 高そうな椅子に腰掛けたミィに俺は呆れたように。

 

「なぁ、ここってゲームの世界なんだよな?」

「うん」

「何で、門番がいるんだ?」

「……一応、マップ探索やモンスター討伐、ギルドの仕事のこなした数に応じて、ギルドから素材やお金が払われる仕組みなんだ。だから、門番も仕事の1つだ」

「じゃあ、敬礼して様づけする意味は?」

「ないよぉ……うぅ、様づけしてなんて誰も言ってないよぉ。別に門番だって、あんな威圧的にやる必要ないんだよぉ。でも、私のために頑張ってくれてるのに怒るのも可愛そうなんだもん」

 

 机に頭を伏せながら嗚咽するように言う。部下が見たら百年の忠誠心もなくなるような光景に俺はドン引きしてしまう。

 これはミィが疲れるのも分かってしまう。この状況で平気でいられるのは、根っからの俺様人間ぐらいだ。

 

「……ゲームの中とはいえ、あのノリを求められるのは辛いぞ。というわけで、今回はご縁がなかったということで」

「逃げないで! お願いだから、このギルドに入って! もう、1人じゃ無理なのぉ!」

「俺だって無理だよ! お前に様づけとか、絶対嫌だ!」

「みんな様づけしてるわけじゃないから! 普通にミィって呼んでる人もいるから! お願いいいい!」

 

 泣きながら縋り付いてくる姿は炎帝ノ国のリーダーミィではなく、俺の幼馴染の彼女のままだった。

 その表情に俺は弱い。保護欲をそそられて折れてしまう。

 俺はため息をついて。

 

「分かったよ。だが、言っておくが俺が入るとこのギルドの秩序を乱すぞ。俺はお前のこと様づけしないし、ギルドの仕事も基本する気ないからな」

「うん。そこは大丈夫。ちゃんと考えてあるから」

 

 ポンコツモードのミィの大丈夫ほど信じられないものはない。

 そしてその心配は的中することになる。

 

 

 □

 

 

 ミィに連れられて中庭のようなところに来ると、10人の兵士たちが剣を持って準備していた。

 

「なあにこれ」

 

 意味の分からない光景に俺はつい言葉が漏れてしまう。

 するとミィは得意顔になり。

 

「今からお前の入隊試験を行う。私もお前を勧誘した以上お前のスタンスを尊重したいが、何もなしに特別扱いは他の団員が納得しない」

「はあ」

「そこで、今から10人とVSをやってもらう。それに勝利することができたら、お前の特別扱いを許可する」

 

 要するに特別扱いする理由が欲しいから、あいつらぶっ倒してねということだ。

 たしかに、ギルドの規律を乱してまで欲しい人材といえば、突出した実力者であるとすれば手っ取り早い。ポンコツにしてはマシな策を持ってきたものだ。

 しかし、前提に問題がある。俺が勝てるかどうかだ。

 相手だって、ここまで『NWO』で実力を磨いていた猛者達だ。一筋縄ではいかないだろう。

 ちらりとミィを見てみると、心配した様子はなかった。

 呑気というか、何というか。まあ、信じてくれているのだろう。ならば、その信頼には応えなくてはならない。

 

「いいだろう。その条件で構わん」

 

 少し不遜な喋り方にしてみると、兵士の何人かは舐められていると捉えたのか、顔をしかめた。

 俺は杖を構える。

 兵士たちも各々剣を構える。

 

「それでは、始め!」

 

 ミィの合図と共に、兵士は一斉に動き出し、俺を取り囲むように円を作った。

 かなり訓練されているようだ。この辺りは素直にすごいと思う。

 関心していると、俺の正面の兵士が。

 

「ふん、負ける恐怖で動けもしないか!」

 

 聞き覚えのある声だと思ったら、門番の男だった。なんだこの人も参加していたのか、全く気がつかなかった。

 しかし、恐怖って。これゲームよ? 別に斬られても死にやしないんだから。

 

「一斉にかかれ!」

「「「「おおおおおお!」」」」

 

 門番の男の合図で兵士たちは一斉に剣を向けてくる。

 

「氷の壁」

 

 しかし、その剣は全て地面から生えてきた氷の板に阻まれた。男たちは壁を破壊しようと何度も叩くがヒビも入らず、逆に男たちの剣が壊れる始末である。

 

「なぜだ!? なぜ壊れない!」

「スキル氷ノ重(威)の効果だ。氷属性の魔法の威力を最大10倍にする。だから、その氷の壁は鉄より硬いぜ」

「なんだと!?」

 

 男の驚愕する声が響いた。

 このスキルは俺の持っている装備『氷帝の王冠』に付与されているスキルだ。前にミィにやらされたボス戦はユニークなんちゃらをゲットできるものだったらしく、その報酬で入手した。

 同じく杖とローブもその時に入手したものだ。どうやら、これは初回ボス戦攻略者にのみ支給されるもので、ゲーム内に同じものはないらしい。

 こちらも攻めよう。俺は杖を天に掲げて。

 

「氷結弾10✖️10=100」

 

 唱えると俺の上に無数の魔法陣が現れ、そこから氷の弾が放たれた。合計100個の氷の弾が男たちを襲う。

 

「な、なんだこれワガッッッッッ!?」

「ひぃ、アァアァ!?」

 

 フィールドが男たちの断殺魔で埋め尽くされる。逃げようとしても逃げ場がない。

 気がつけば、男たちはみんな消えていた。そして俺の目にwinnerの文字が浮かぶ。

 緊張が解けた俺はふうと一息ついた。

 すると、そこにミィが歩いてきていた。

 

「さすがだな、アイス」

「もっと苦戦すると思ってたが、思ったより楽に勝てたよ。やっぱり強いなユニークなんちゃら」

「ユニークシリーズだ」

「そうそうそれそれ」

 

 適当に相槌を打つとミィは呆れた表情になる。

 

「まったく、無事入隊が決まったんだから、もう少し喜んだらどうだ?」

「ん? おお、やったー」

「棒読みじゃないか……まあいい。これからよろしくな、アイス」

「はいよ。お前の聞き相手くらいにはなるよ」

 

 こうして日本一やる気のない『NWO』プレイヤーである俺は、炎帝ノ国に入隊した。

 

 

 

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