幼馴染に泣きつかれました 作:とくとくとくおくとくとくおくおくおくお
炎帝ノ国に入隊した俺は、ミィの指示で幹部的な人達(明確な階級ではないが実力者3人)に挨拶しに行くことになった。
しかし、現在3人とも外に出ているらしい。ミィは後でもいいと言ってくれたが、俺は散歩がてら行ってくると退けた。
そんなわけで俺は1人目のラッパー? くんを探している。なんでも彼はラッパーを極めるために、よく街に材料を買いに行くらしい。
ラッパーなのに材料とか意味わからん。足より、頭働かせろよ。
もしかしたら買い物をするとラップのインスピレーションがわくのかもしれない。一概には言えないか、反省反省。
一人でテヘペロしつつ、先程塵にした門番の男にラッパーくんの行くお店を訪ねた。教えてくれないと思っていたが、案外あっさり教えてくれた。しかも地図に印まで書いてくれた。
なんだ、門番さんいい人やん。ごめん、最初虎の威を借る狐とか思って。単純に身内以外には厳しいだけなんだね。
そんな感じで俺はルンルンで地図に記された場所に歩いて行った。
□
地図に記された場所に到着したのだが……。そこには店はなく、明らかにギルドだと見える建物が堂々鎮座していた。
いや、もしかしたらギルドが商売しているのかもしれない。仲間を疑っちゃ駄目だよ。
俺は入り口で談笑している男と女の人に、聞いてみるが。
「え? お店? うちは商売はやってないけど?」
女の人にあっさり否定された。ジーザス。騙しやがったな門番ッッゥ!
仲間に裏切られたショックにささくれくらいの痛みを感じ頭を抱えていると、女の人は笑いながら。
「どうやらいっぱい食わされたみたいだね。その探してるお店に行きたいの?」
「いや〜、正確にはお店にいるらしい人を探してまして」
「誰?」
「ラッパーくんっすね」
「ラ、ラッパー? そんな奴いたか?」
男の人は困惑した様子で言ってくる。
あれ、ラッパーじゃなかったけ? 名前覚えにくいんだよなぁ、マルフォイじゃなく、マリクでもなく……。
「ああ、マルクスだ!」
「マルクスだと!?」
「へぇ」
なんかマルクスの名前出した途端空気が変わった件について。
何、ラッパーくん、この辺りじゃ札付きの悪なの? 実はラッパーじゃなくて、不良だったの?
意味深な笑みを浮かべる女の人が俺に。
「どうしてマルクスを探してるの?」
「いや、俺今日炎帝ノ国入ったんすけど、リーダーから主要メンバーには挨拶しておけと言われたんで、散歩がてら探してるんすよ」
「……なんか自由な奴だな。炎帝ノ国って、もっとガッチガチなイメージがあったんだが」
「間違ってないっすよ。ただ、俺はミィに無理矢理入れって言われたんで、ちょっと融通が効くってだけで」
「てことは、君はミィにスカウトされたっこと?」
「まあ、そんなところっすかね」
曖昧に答えておいた。
さすがにメンタル限界だから助けてと泣きつかれましたって、他人には言えないよな。
「そうなんだ。……あ、自己紹介が遅れたね。私はフレデリカ」
「俺はアイスです。よろしくでーす」
「俺はドラグだ」
なんだか掴みどころがなさそうなお姉さんのフレデリカさんと、ムキムキ兄貴のドラグさんか。よし、覚えた(たぶん)。
「ねえ、見たところアイスくんも魔法使いなんでしょ? 私も魔法使いなんだけど、ちょっと手合わせしない?」
「はぁ!? おい、フレデリカ!?」
「いいからいいから」
ドラグさんが何かしら意見があったようだが、フレデリカさんは笑顔で諫めた。
力関係はフレデリカさんの方が上なのか。
「手合わせ? バトるってことっすか?」
「そうそう。ほら、炎帝ノ国って超強いギルドだし、そんな強いところに所属している人と対戦すればいい経験になるじゃない?」
「ふーん。別にいいっすけど。でも、俺まだ初めて一週間も経ってないんで、あんま強くないっすよ」
「大丈夫、大丈夫。手合わせって、プレイヤー同士のコミュニケーションみたいなものだから」
そんなものか。野蛮に聞こえるが、ゲームだしな。そんなこともあり得るのかもしれない。
所詮は遊びだし、気楽にやろう。
俺はフレデリカさんの対戦申請を受諾した。画面にfightというテロップが流れた。
どうやら、バトルが始まったようだ。
「それじゃあ、行くよ! 多重連弾!」
杖の先に魔法陣が描かれると、その中から3つほどのエネルギー体が発射された。
「氷の壁」
目の前に現れた氷の壁にエネルギー体はすべて受け切られた。
ぴしりという音が聞こえる。どうやら、壁にヒビが入っているようだ。一応硬度は5倍ぐらいにしてたのだが。胸を貸して欲しいみたいなニュアンスだったけどフレデリカさん普通に強いんじゃ。
フレデリカさんは、走って距離を詰めてきて。
「多重連弾!」
「いや、2回目は持たんわ。氷柱!」
壁が壊される前に、氷の柱を足場にして上に逃げることで直撃を逃れた。
「そこ、多重連弾!」
「ちょ、ま!?」
しかし、フレデリカさんは俺よりも速いようで、俺が着地したところに多重連弾を叩き込まれた。2発は転がってかわしたのだが、1発は食らってしまった。
HPが一気に半分以上持っていかれた。
MP以外カスステータスだからな、仕方ない。ここは回復しておこう。
氷結弾を1つだして、それを口に入れた。
「え? なにそれ!?」
フレデリカさんはギョッとしているが、これは立派なスキルだ。氷食いと言って、氷属性の魔法を食べるとHPが回復するのだ。
おかげで、体力は全回復した。
それにしても、俺もまだまだ弱いなぁ。ここまで完全に受け身だ。
門番さんたちを軽く倒せたから、ちょっと調子に乗っていた。反省反省。
だから、0.1割くらい本気を出そう。
「氷結弾100✖️10=1000」
杖の先から無数の魔法陣を上空に描くと、辺りを埋め尽くすような氷の弾がフレデリカさんを囲い込む。
「ななな、なにこの量!? 普通じゃありえないんだけど!?」
「じゃあ、行きまーす。さーん、にー、い……」
「待って待って降参! 降参するから、やめて!?」
フレデリカさんは涙目になって降参を懇願してきた。
そうして、俺は魔法使い対決に勝利した。
□
あの後、ラッパーくんがいる本当の店の場所を教えてもらった。
いやぁ、フレデリカさんいい人だったなぁ。ドラグさんも顔に似合わずいい人だったし。
フレンド登録もしてもらったから、今度時間があったらパーティに誘おうか。
俺はルンルンのまま、地図の場所まで歩いて行った。
□
そんな能天気馬鹿をよさに、フレデリカとドラグは険しい顔をしていた。
「それで、実際どうだったんだ? あのアイスってやつ。本当にうちの偵察に来たんじゃねえのか?」
「さすがにあんな分かりやすい子に偵察任せないでしょ。たぶん、本当に騙されてここに来たんだと思うよ。ライバルギルドに正面から行くなんて、報告されたらリーダーに怒られるだろうし」
ドラグも半分偵察の線を捨ててたのか、フレデリカの言葉に特に反論はしなかった。
「それよりも……」
フレデリカは眉をさらにひそめる。
むしろ、偵察うんぬんはどうでもいい。それよりも重要なのはアイスの実力だ。
「あの魔法の規模。ギルド戦になったら、すごい脅威だよね」
「ああ、1000個の氷結弾なんて見たことねえぞ。しかも、あいつの言葉を信じるなら、初めて1週間なんだろ? やってられねえよ」
「本当だよね。メイプルちゃんといい、どうしてこうポンポンヤバい子がでてくるかなぁ……」
「嘆いてもしょうがねえ。さっそくギルドに戻って、ペインとドレットに相談しようぜ」
「そうだね」
彼らはギルド『集う聖剣』。
炎帝ノ国を超える、現在『NWO』No. 1ギルドである。しかし、そんなこと当のアイスは知る由もない。