美人が多すぎて俺の俺が俺なんだけど   作:

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可愛いくせに怖すぎて俺の俺が俺なんだけど

 

 長閑な町にイーブイとピカチュウの鳴き声が軽やかに響き渡る。楽しめているようだ。町の外れ、木のベンチに俺と少女は座っている。

 目の前には森が広がっている。

 

 

「……ひっ、こすのか」

「……うん」

「……どこまで?」

「……ハナダシティ」

 

 どこだよ!!! 等当然言える訳が無い。

 神妙そうな表情を作ったまま、「そっか……」と返す。演劇サークルの経験がこんなに活きるとは、死んで分かる事もあるものだ。

 

 

「……遠いの?」

「……とおいよ。すぐに会えるきょりじゃなくなっちゃう」

「そっか……」

 

 寂しそうな少女の声に、罪悪感が胸の中に生まれる。

 相当仲が良かったのだろう。シン少年と少女の間の思い出も何も俺は知らないが、知らないなりに察する事が出来るものもある。

 

 

「……会いに行くよ」

「え……?」

「俺が、会いに行く。直ぐには無理かもしれないけど行くよ……その、ハナダ? シティに」

「きてくれるの?」

「おう。だからさ、そんな顔すんなよ」

 

 前世の『盛田 真一』ならこんなクサい事口が裂けても言えなかっただろうし、言う相手も──金銭を払わないと仮定するなら──いなかった訳だが、このシン少年には存在する。シン少年がこの少女にどんな感情を持ち合わせていたか俺には分からないが、泣きそうな少女を慰めるくらいの事はきっとしただろうし、今の俺はするべきだろう。

 

「やくそく……してくれる?」

「おう、指切りゲンマンでもするか?」

「ゆびき……なに?」

「なななななななんでもないっ!」

 

 

 ボロが出る速さならきっと誰にも負けないだろう。前世では「即打ち早漏狙い撃ちの真一」という異名を──自分の中で──持っていたが、今世ではこんな形で現れるらしい。つーかこっちには指切りゲンマンねーのか。

 

「……ね、もいっこやくそくしてほしいの」

「どうした?」

 

 

 少女が俺を見上げる。少女の方が俺よりも身長が高いが、ベンチに座っている俺の前に移動して座り込んだから見上げる形になった。上目遣いの為にそんな移動したのか? テクニシャン過ぎないかキミ? 攻めて攻めて攻めるタイプか? 攻撃力たっかいなこの年齢にしては。年齢知らねえけど。

 

 

「ブルーとあんまり仲良くし過ぎないで?」

 

 

 やけに達者な口調になって言った。

 ……え? どういう事? 空気重くね? 目、笑ってなくね? こんなラブ・ストーリー前世で読んだ事ねーけど俺。つーかポケモンってラブ・ストーリーだったの? モンスターが出てきてどうこう、の話じゃねえの? 女の子がモンスターです、みたいなそんなしょうもない話なの?

 

 

「ぶ、ぶるーと……?」

 

 ブルー、が誰を指しているのか分からないが、十中八九女の子だろうし、そしてこの少女の事では無いだろう。シン少年の周囲にはこの少女と、ブルーと呼ばれる少女が居る、という訳か。んで、この少女はシン少年の事が気になっていて、引っ越す上で2人の事が気にかかっている、と。シン少年、こういうのをなあなあにするとろくな事が起きないぜ、誤解が起きないように四苦八苦しながらでも説明する事をオススメするよ。ってアドバイスしたかったなぁ……、対応するの前世では素人童貞の俺なんだよなぁ……。

 

 

「そう。ブルーは絶対に毎日シンに会いに来ると思うけど、あんまり対応しちゃダメだよ。出来るならずっと会わないで欲しいけど、まぁそれが無理なのは分かるからそこまでは言わない。けどそんなに一緒にいないで欲しいな。ブルー無い胸当ててくるとこあるでしょ? シンそういうのちょっと引っかかっちゃいそうだしさ。ほら、ブルーって油断したら直ぐ腕とか組んでくる節あるし、スクール始まったら他の地区から来た女の子とかもシンの周りに居るわけでしょう? そうなったらもうブルーってすっごい彼女面してくると思うの。ちゃんと否定しなきゃダメよ? 俺はブルーの彼氏じゃないって。言える? ほら、リピートアフタミー「俺はブルーのかれ──」

「待った、待った待った。おーい、戻ってこい!」

「──あ、ごめん。ちょっと……うっかり」

 

 

 「うっかり」じゃねー文章量だったろ今!! おまえさっきまでと語彙力違い過ぎない!? つーか急にハッキリ喋りすぎだわ! さっきまでのたどたどしい話し方何!? 普段どんだけ溜め込んでんだこの子! つーかライバル意識すごっ! つーかシン少年モテ過ぎだろ!!!! 勘弁しろよ俺前世では恋愛ゲームですら失敗してんだぞ!! 最終的に金にモノ言わせてたおっさんだぞ!! どんだけハードモードな恋愛だよこれ!! 攻略本とかありませんかね!! 

 

 

「カスミー? いつまでお散歩してるのー?」

 

 

 固まった俺と俺の膝あたりをジイと見つめている少女。町の方から声が聞こえてきて、その声に少女が反応した。俺はその一語を聞き漏らさない。この少女は「カスミ」か……?

 

 

「まま! うん、いまいくー!」

「あ……じゃあね」

「うん……またあしたね?」

「いつ引っ越すんだ?」

「わかんないけど……さいきん、おへやのおかたづけしてる」

 

 またたどたどしい話し方に戻った。いやおせーよもう騙されねえわ。

 

「そっか……また、こんど」

「うん! バイバイ、シン!」

「おう」

 

 

 

 イーブイとピカチュウが遊び疲れたのか、俺の方に寄ってくる。ナイスタイミング、俺もちょっと疲れたよ……。

 ……にしても、なかなか大変だな、5歳児ってのも。まぁ5歳児ってのも推定に過ぎないから本当はシン少年が3歳とか言われても仕方ない訳だけど、流石に3歳児を一人で散歩には行かせないか。

 

 母親が持たせてくれた水筒から水を出して飲む。喉が渇いていた。

 コップ型の水筒だから、イーブイとピカチュウの元にも置く。彼らもペロペロと舐め始めた。性別知らねーけど。

 

 

 どうするべきかなぁ。まぁ、明確な答えは出さなくて良いだろ。所詮ガキの恋愛だし、引っ越してちょっと経ったらシン少年の事なんて忘れてるだろうし。

 まぁ引っ越す時にはお見送りくらいは流石に行こう。帰ったら母親にカスミちゃんとの関係性を探るのも良いかもしれない。つーか俺母親の名前分からないけど「ママ」でいつまで逃げ続けられっかな。今度カスミに聞けねえかな。

 

 溜息を一つ吐き、立ち上がる。イーブイとピカチュウが見上げてくるから、今日はもう帰ろう?と聞くと、分かっているのか分かっていないのか、元気に鳴き返してくる。

 昼もカレーだろうか。

 人間関係も、そもそもこの世界についても。割と前途多難な第二の人生に、妙なやる気を感じる俺であった。

 

 

 

 




 アンケート機能を活用したかっただけなんですけど、皆様御回答ありがとうございます。しょうもない小ボケをすみません。
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