美人が多すぎて俺の俺が俺なんだけど   作:

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幼なじみが鬼畜すぎて俺の俺が俺なんだけど

 

「シンー! 起きてー!」

「うあっ……、や、起きてる、起きてるから」

「起きないなら添い寝しちゃうぞー」

「ちょっ、揺らすな。おまえ耳無くなっちゃったのか? あるよなぁ、ほらここに」

「あっ……。ちょっ、えっち……」

「はぁあああ!?」

 

 

 朝から俺の部屋に勝手に入ってきたのは幼なじみのブルーで、思えばこの少女とも1()0()()の付き合いになる。俺達は16歳になっていた。

 今日はトレーナーズスクールの卒業式である。

 

 

「いや、それにしても早くないか? まだ5時だぞ」

「ふふ、卒業式の日だからってやらないつもり?」

「あぁ……やりたいのね、良いよ」

 

 ちょっと心が汚れている人なら勘違いしかねない掛け合いであるが、この場合の「やる」「やらない」はポケモンバトルの事だ。俺とブルーはマサラを離れてここトキワに来てから、ポケモンを使って行動をする事が増えた。バトルを始めたのは入学して早々の事で、授業で習った途端にブルーがやりたいと騒ぎ出したのが発端である。

 

 

「ふぅ……。やるか」

「寝癖くらいとりなさいよ。あっ、私にとって欲しいの?」

「ちげーよ。待たせるのも悪いかと思って」

「旦那の寝癖くらい直してあげるわよ」

「じゃあその対象は俺じゃないな」

「素直じゃないなぁ」

「ブルーこそ真実をねじ曲げるのやめような、俺らもう大人の年齢なんだから」

 

 

 寝巻きから深い緑色のパーカーに着替える。トキワらしい色だとブルーが去年の誕生日にプレゼントしてくれたモノだ。専らバトルの時に着る事が多い。

 

 

「今日は何賭ける? 最後だしグレード高めにしようぜ」

 

 

 俺達はバトルの勝敗にプレゼント(罰ゲーム)を贈る。大抵はジュースやら家事の手伝いやらであり、そしてポケモンバトルの才能はブルーの方がある為、通算で言えば俺の方が負け越していると思う。最近は俄然俺も実力を伸ばせているはずだが──

 

 

「……私が勝ったら、私のお願い一つ聞いて」

 

 

 おちゃらけてばかりのブルーが真剣な表情で言った。ブルーはたまにこの目をする。その瞬間が苦手だった。ブルーがどこか遠い場所に行ってしまうのではないかと錯覚するからだ。

 

 

「……良いけど、無理なヤツはつっぱねるからな」

「うん」

「おーけー。じゃあルールはいつも通り、サシの道具不可、持ち物アリで良いな?」

「うん! 今日だけは負けないよー」

「ヤバイもん買わされそうだから俺も負けたくないけどな」

 

 

 何度かカスミもこの勝負に参加した事がある。カスミは引っ越して早々にトレーナーズスクールに入学し、飛び級で卒業しハナダジムのトレーナーになった本物の天才少女だ。俺はなす術もなく負けてしまったが、ブルーとの一戦は思い出すと今でも興奮する程熱い試合だった。シン少年への強い愛──決して俺に向けたそれでは無く──が成せるバトルだった。

 

 

「頼んだぞ、ブイブイ」

「お願い! ピーちゃん!」

 

 俺が放ったボールからブイブイ──エーフィが華麗に登場すると、殆どタイミングを同じとしてブルーのボールからピーちゃん──ピッピが登場する。ピーちゃんで来んのかよ、なら()()()を出すべきだったか?

 俺とブルーは散々バトルをしてきた為、互いの手の内など知り尽くしている。もうジャンケンみたいなもんだ。今回はあいこだろう。個体同士での明確な弱点云々は無い。そうなるとモノを言うのがトレーナーのスキルである。つまり俺の不利だ。

 今更選出を悔いてもしょうがない。ブルーが真剣じみた感じを出すから俺は相棒を出したのだし、勝つ糸口を探すだけだ。

 

 

「ピーちゃん! うそなき!」

 

 舌打ちをしたくなる。ピーちゃんことブルーの育てたピッピだが、持ち主に似ており非常にあざといのである。あからさまなうそなきを繰り広げるピッピにブイブイと俺は思わずドン引きだ。持ち主のメンタルにまで作用させる極悪技になってしまっている。

 

 

「気にすんなブイブイ、ひかりのかべを張ろう」

 

 俺の指示を受けたエーフィが額から念の防御壁を展開する。ブイブイを出すと後ろから見る尻尾とお尻が可愛すぎて戦闘に集中出来なくなる時がある。敵を倒す前に主人を悩殺する優秀な相棒である。

 

 

「サイコキネシスだ」

 

 身軽さで言ったらウチのエーフィに軍配が上がる。初手うそなきとかいうチンパン劇場を開催したピッピに、念波が襲いかかる。

 

「ピーちゃんちいさくなって!」

 

 

 咄嗟のブルーの指示にピッピは反応し、念波はピッピの僅か上を通り過ぎていく。

 

 

「積ませるなよ、スピードスターで全体を覆ってみよう」

「っ! ピーちゃんアンコール!」

 

 煽られたエーフィが再びサイコキネシスを放ってしまう。キャラパワーで言えばエーフィの方が優れているのだが、流石にブルーのピッピ、搦め手が非常に上手い。アンコールの時にあんな馬鹿にしてくるピッピなどカントー広しと言えどピーちゃんだけだろうな。俺もブイブイも毎回ちゃんとムカつくもん。

 サイコキネシスは再び逸れる。ちいさくなったピッピに攻撃を当てるのは中々至難の業だろう。しかし煽られて少なからずイラついているブイブイはサイコキネシスを連射する。数撃っても当たらないのがブルーのピーちゃんである、忌々し過ぎる。どんな身体能力してんだ、どんな育て方してんだ! 持ち主(おや)の顔が見てみてえよ。目の前にあるしこの10年間ずっと見続けてきたけどな。

 

「ピーちゃんめいそう。ゆっくりと、慌てなくて良いわよ。ブイブイはもうピーちゃんに攻撃を当てられない」

 

 ピッピのみならず持ち主まで煽ってくる。シンプルに腹が立つ。

 

 

「落ち着こうブイブイ。あくびをした後にめいそう」

「……まだ、まだよピーちゃん。まだ積める」

 

 これだからピーちゃんは嫌なんだ。なんであいつ座禅組んでんだよ。どこで学んだんだそれを。

 そこらの修行僧よりもよっぽどストイックにめいそうを続けるピッピ。よっぽど集中しているらしい、エーフィのあくびが通るもお構い無しだ。という事はカゴの実でも持たせているのだろうな。

 

 

「こっちこそ大丈夫だぞブイブイ。ひかりのかべの庇護下にいる限り大丈夫だ。落ち着いて積もう」

「おーけーピーちゃん……カゴの実を食べて眠気を醒まして……アンコール。煽り終わったらかわらわり」

 

 

 互いに積み合いをしていた数秒間、先に動いたのはブルーとピッピだった。驚くべきコンボを決めてきた。悠長に構え過ぎていたのもあるが、つーかそんな事より──

 

 

「うっそだろ! おまっ、はぁ!? いつ!?」

「……ナイショ。ピーちゃんマジカルシャイン。……もう一度」

 

 この6年間、ブルーのピッピがかわらわりを使った事は一度も無かった。だからこそ俺はこの対面になった場合、安定してひかりのかべを展開していた。めいそうの途中にアンコールをされたエーフィはそのままめいそうを続けてしまい、御世辞にも素早いとは言えないピーちゃんのマジカルシャインを被弾し続け、やがて倒れてしまった。

 

 

「…………やられた。いつの間に覚えさせてたのかよ」

「ふふっ、良い女は手の内は見せないのよ」

「あー……クソ、スッキリしない終わり方だな」

「ふふふ、負けは負け。おっほほほほほ、お願いを聞いてもらいましょうか?」

「まぁ、聞ける範囲でな」

 

 

 エーフィに慌てて駆け寄り、ボールに入れる。なるべく早くジョーイさんとこに連れて行きたい。歩き始めた俺とブルー。ブルーは俺の左腕に自身の右腕を絡みつかせながら、そのお願いを耳元でソッと囁いた。

 その行為自体、前世の俺(素人童貞)からしたらかなり心臓に悪いモノであるが、彼女が口にしたお願いはより俺を驚かせたのである。

 

 

 

 

「……私と一緒に旅に出て?」

 

 

 

 




 お気に入りが200を越えました。すっごい嬉しいですありがとうございます。
 システムがよく分かっていないんですが、評価の所はどういう基準で赤色になるんでしょうか? 「なんとなく(赤の方が)良さそう」くらいの認識でいます。

 以前も宣言した通り作者はポケモンにわかだしバトル描写も苦手です。今回の描写もどこかでガバイトな部分があったと思います。その場合はやさしーく教えていただけると嬉しいです。でもある程度はご都合主義で終わらせる気でいます(大声)。
 カスミとブルーが近い歳感覚の設定だったり、16になって地方を周り始めたり、技をバンバン使ってたり、違和感を覚える方もいらっしゃると思いますが、何卒やさしーく教えていただけると嬉しいです。
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