恋姫†OROCHI 外史降臨 作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨
ちょいちょい書き進めて行ったけど、こんなにかかってほんとうにすいません。
500の亡者を率いる出っ腹の妖魔は苛立たしげに足元の桶を蹴り上げた。
バラバラと砕けた木くずを頭から浴びる亡者達は、事の終わりをじっと待っている。
「斥候は何してるんだ!? 村に何人居るかもわからねぇ無能どもなのか?!」
喚き散らされる怒声。
それだけが無人の楼桑村に響き渡る。
◆
劉備達義勇軍+黒母衣衆が取った方針は、撤退だった。
妖魔軍の数の差は歴然。劉備を信じて力を貸してくれてる民兵と、織田軍を打ち破った妖魔兵との錬度の差も話にならない。武器もあちらが上なのは確実だ。だから彼女らは撤退しか手は残されていなかった。
撤退=村を捨てるということで村人に反対されると思いきや、意外と反論は少なかった。
村人のほとんどは劉備を頼る他、生きる道はなかったのと、劉備を信頼していたためである。
村を捨てるのに反対する者や運び出せない私財に執着する者達は佐々成政から
◆
無人の楼桑村で妖魔、以津真天が地団駄を踏むのは理由がある。
以津真天は先の織田との戦で、何も知らされずに囮として扱われた過去がある。結果、それが勝因の一つになったのだが、それを周囲が使い捨てと茶化し以津真天はずっと根に持っているのである。
妖魔の軍師に命じられた織田の残党の殲滅で気が晴れると考えていたが、成政の奮闘でいつまでも終わらない追撃に腹立たしさを覚え、今に至る。
そんな怒髪天の妖魔に長身一つ目の妖魔が音も無く近づいた。
「どうした!? 対して使えねぇ隠密技能をひけらかす暇があったらさっさと奴らを探してこい!」
「……そのことでご報告が」
一つ目の妖魔は胸の内から湧き出るものを押し殺して返答する。
「河川に村人と思わしき集団を発見。その周囲に護衛部隊が幾つか配置されている模様」
「けっ! さっさと見つけてろってんだノロマが! オラッ、追うぞ野郎どもっ! 遅れるんじゃねぇぞ!」
「(……ちっ)」
急な進軍に足並みが揃わずのろのろと動き出した。
敵は少数。そう焦らずとも簡単に捻り潰せる相手に肩ひじ張らなくてもいい。少なくとも以津真天麾下の亡者達はそう考えていた。
楼桑村から妖魔軍が出切った時、
「……あれは」
ふと聞こえる馬の駆け足。前方に配置された亡者はその方へ目を向ける。
案の定、妖魔軍から数里(中国単位。一里500m)離れた所に居た。
後ろに結った赤い髪が尾を引き、白い着物がはためかせるあの少女は。
黒の騎馬団を率いてこちらに迫るあの武将は。
「くっ、ふくははははははははははァ! わざわざ出向いてくるなんてなぁ! 者ども、矢を構えろッ!」
紛うことなく、あれは自分たちの獲物。
ようやく出会えた。これを始末すればこの息苦しい任務は終わりだ。そういった思考が沸々と妖魔軍に伝播していくが、
「……―――ええいっ、何故近づいてこないのだ……!」
成政ら黒母衣衆は妖魔達に近づいて来てはいる。だがその進路がジグザグだったり、時にバラけたりするため中々射程圏内に入ってこない。
じりじりと火に炙られるような焦燥感が襲う。
そして、成政が乗る騎馬が射位に入った時、
「いっ―――!?」
その騎馬は速度を落とし、その場でUターンして範囲内から離脱した。
以津真天が命令を下そうとした瞬間に起きた出来事は、大きな影響をもたらす。
以津真天と同じく緊張と焦燥に苛まれていた亡者達は何処からか発せられた声に反応し、その中の一人がひゅッと矢を放ってしまったのだ。
あ、と誰かが呻いた。
刹那、一斉に矢が放たれる。
やめろと叫ぶ声は時遅く。放たれた矢はかすりもせずに地面に突き刺さった。
こうして妖魔軍は無駄に矢を消費した。
―――といってもすぐに標的を捕捉して、矢を番えなおせば問題ない話だ。歴戦の
問題は、敵騎の姿が無いことだ。
「逃げたか……! ちょこまかと鬱陶しい奴らだ!」
追いかけろ! と号令を飛ばし再び進撃する。
彼らの苛立ちは正常な判断を鈍らせたのか。
パパパンッ! と乾いた音が妖魔の鼓膜を震わせた。
と、同時に、視界を遮るように盛り上がった丘を登り切った先兵がバタバタと倒れていく。
「待ち伏せか。側方から回り込め!」
そうして回り込む兵は素っ頓狂な叫びをあげて以津真殿の視界から消えていく。丘の横には落とし穴や虎バサミのような罠が張られていたらしい。
「いい加減にしろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! ナメやがって、ナメやがってぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
愚策に愚策を重ねる以津真天。
敵はほんの十数騎なのにどんどん兵が減っていく。
「あの無能……!」
妖魔軍の中央で隊を纏めていた一つ目の妖魔、
「誰だアレに指揮を任せた奴……」
襟立衣のぼそぼそ声に頷いて賛同するものが多数居た。
爪楊枝でチクチクと刺されるような作戦に軍隊の士気は下がりっぱなし。比例するように以津真天に向けられる殺意がグッと増した。本人は頭に血が上ってそんなことに気づいてないが。
まだ自分が纏めている部隊に被害は無いが、たった十数の敵すら手玉に取られる指揮官に任せていたら確実に被害が及ぶ。
「これより別行動を取る。我に続け」
◆
村のある方角から何かが破裂するような音が聞こえ、行軍の大半が足を止める。
劉備もその一人だ。
「はぁ~。今のが鉄砲の音? 本当に大丈夫かな……」
村から距離が離れていてもここまで音が響いてくることに驚くが、あんな鉄の筒が本当に武器なのか劉備達には半信半疑だった。
と、熟考にふけ止まっていたのに気付いた劉備は慌てて進軍再開の命を下した。
やがて劉備義勇軍はまた足を止めた。
理由は目の前に広がる大河にある。この大河は楼桑村と撤退先の劉徳然が居る村を挟むように大量の水を流している。
劉備と北郷が考案した策の要はこの大河。この大河が妖魔軍の足を一時的に停めてくれるだろう。
なら劉備義勇軍は?
「劉備さん!」
はぁ~、と豪々と岩をも流す流水に心を奪わてた劉備に声がかけられた。
劉備とさほど変わらない少女のものだ。
その声の主は劉備の斜め前―――つまり川上から船に乗ってやってきた。
「小六ちゃん!」
「お待たせしました! 何事も無く何よりです」
蜂を模した髪飾りでサイドテールを作り、ぴっちりとしたインナーウェアを着込んで白い羽織を重ねた少女が船を岸に着けて劉備の下へ駆けてくる。
この蜂髪飾りの少女、蜂須賀正勝は元々劉備の義勇軍に属していた一部隊の隊長だった。ほとんどの部隊が離隊したのだが、どうゆう偶然か、蜂須賀正勝率いる川並衆は未だに劉備の下から離れてなかった。さらに軍議を行っていた天幕に突然訪ねてきて、たまたま正勝の名を聞いた北郷が土下座をせんばかりに村人の護衛を頼み込んで今に至る。
抜擢された正勝は始めのうちは大混乱に陥っていたが、次第に落ち着きを取り戻し、
『色々とお世話になりましたし……わかりました。私たちに出来ることなら』
と不安げながらも承諾してくれた。
ふと正勝が北郷と劉備との出会いに想起して、
(何で了承したのかな私?)
北郷からこの話を持ち掛けられた時、一緒に居た川並衆からも反対された。正直言って正勝も妖魔五〇〇騎を相手にするのは怖くってすぐに逃げたかった。
特に思い入れも無い楼桑村の問題。
「この人達が蜂須賀ちゃんの部隊? ふわ~すっごく強そうだね!」
ペタペタと正勝と共に来た屈強な男の盛り上がった筋肉を興味津々で触っている。触られている男もまんざらでない様子だ。
「……劉備さん」
「あっ、ごめんごめん! じゃあよろしくね」
劉備が正勝に頼んだことは単純。
人を対岸まで運んでほしいと言った。
川並衆は水運を得意とする集団だ。この荒れる大河で人を運ぶことは彼らにとって容易なのだ。
(……あれ?)
不安定な船に村人を乗せている最中、ふと何かが足りないような気がした。
「蜂須賀様! 全員乗り終えましたぜ!」
「あ、はい! 貴方たちは後続が来るまでここで待機してください! 私は対岸まで送ったらまた引き返します!」
男たちの威勢の良い声が耳朶を打ち、正勝は内心ほっとして船に乗り込んだ。
たくましい男たちに押された船が水流に揉まれ、不安定に揺れる。
が、そこは水運を司る川並衆。船頭と漕ぎ手が櫂を操れば、たちどころに揺れが治まった。たったそれだけの動作だが、普段船を使わない楼桑村の人間は川並衆の手際の良さに感嘆の声を上げる。
船に乗るのは初めてなのか、きょろきょろと不安げに見回す男の子。そういえば、荷運びしていた時に肝試しと称して正勝の尻を触ってきた事があった。その時は周りに居た屈強な川並衆がおどかして泣かせていたっけ。
別の船に乗る妙齢の女性は義勇軍の物資を提供している人で、(補給交渉的な意味で)
その中に、いつか出会ったあの女の子の姿が無いことに気づいた。
この中に居ないとすると、もしかしたら―――。
(そういうことなのかな、私が手伝う理由)
自分はもっと俗的で理知的な人間だと思っていたが、そうではなかったらしい。何となくまだ自分は青いと戒めたり、人間味があることにホッとしたり。
「そういえば……川並衆の名前を知ってても、ただの野武士に過ぎない私の名前とか水運に通じてる事まで知ってるなんて……北郷さまって本当に何者なんでしょう?」
「決まってるよ」
独り言が劉備の耳に届いていたらしく、にこやかに、
「ご主人様は天の御遣いなんだから」
と、胸を張って言い切った。
◆
さて、その天の御遣いさまはというと。
「おい兄ちゃんもっと強く引けやこらぁ!」
「すいません!」
使えねぇなぁ、という視線を向けられながらロープを力強く引っ張る北郷。手のひらがロープで圧迫される痛みに耐え、不器用ながらロープを木の幹に括り付けた。そんな様子を楼桑村の人達は遠巻きに見るだけだ。
北郷一刀は劉備らのはるか後方。成政の少し前方。そんな所にある雑木林に居た。
いくら劉備達に土地勘があっても何もせずに逃げても追いつかれる可能性が高い。追いつかれたら戦闘能力のない村人がどうなるか想像が容易い。だからこそ予防線として楼桑村と劉徳然の村の間に生い茂るこの雑木林に足止め程度の罠を張ることにした
「……つーか、何で俺ここに居るんだ……?」
晴れて義勇軍の旗印になった一刀だが、得体のしれない人間を劉備の近くに置いておくのは嫌だ、なんかひょろっちいし
北郷自身信用されてない事についてしょうがないと割り切っている。が、こうも露骨に突き放されるのは応える。
不意に。
北郷の耳に大成を叫ぶ声が飛び込んでくる。
皆が作業の手を止めて頭を上げる。そして皆同じような表情を浮かべる。
悲壮にくれた顔ではなく、達成した表情へと。
「よし着いたー! って一刀、何でここに居んだ?」
「まぁ色々と……。とにかくお疲れ様。これで第一段階クリアだな」
くりあ? と成政が首をかしげる。
林の唯一罠が張ってない出口から成政を始め、続々と黒母衣衆が顔を出した。
5、10、15……。少人数ながらやはりそこは幾多の戦を潜り抜けてきた者達、一人も欠けることなく全員汗と泥に塗れながら帰ってきていた。
「とにかく! 早くとルー……道を閉じて合流しよう。桃香達も待ってるだろうからな!」
朝早くから足止めを行ない、さらに走って合流となるとかなり疲れるだろうが、今はとにかく時間が惜しい。このテンションを下げないよう、一刀が一人大声を張り上げた。
呼応して黒母衣衆が。続いて工作を行なった村人達が声を張り上げる。
「よし、撤収するぞ! 劉備ちゃんに心配かけさせんな!」
『応!』
全員が生きて帰るため。
―――
「ギゃっ」
短く小さい、それでも皆の思考を止めるのに充分な悲鳴。
「どうし、い゛!?」
「ぐぅ!」
所々から聞こえる悲鳴は、時間が経つにつれて数を増やす。
北郷はただ矢に刺された村人が地に伏せるのを見つめることしかできず、楼桑村の皆も同じ。
「敵襲ぅ――――――――――――!!」
いち早く動き出したのは成政だった。
成政の号令を合図に、黒母衣衆が村人を囲むように陣形を組み刀や槍、弓矢と鉄砲を構える。敵が我に返ったのを見計らったようで矢は放たれてこなかった。
馬に乗った成政が矢が放たれたであろう林の方へ一歩前に進み出る。
沈黙。
辺りに流れる音は緊張の息遣いと風でこすれる葉の音だけ。
そして。
「上だ! 木から跳んできた!」
成政が反射的に見上げると、青白く輝く眼を持つ巨大な影が手刀を構え降り立つ姿が―――
基本敵将の性格等は想像。なるべく元になった人物を参考にしたいです
因みに以津真天は超短期、襟立衣は上から目線な性格です。