疲弊
第二鎮守府に終結している大和達。
今後の方針を定める会議では維持か撤収かで意見が割れた。
活発な意見交換が行われたものの、なかなか結論が出ない。
大和と加賀が意見を違えた事も、事態を複雑にこじらせていた。
「維持すべきだと思います。既にこの鎮守府は後任の人事が定まり、後は引き渡すだけ。此処まで話が進んでしまっている以上、やっぱり守れませんでしたでは通らないわ」
「これだけの損害が出ているのです。最早この海域確保に拘るよりも一旦撤収すべきではありませんか?」
「今回の損害は、壊滅的被害と言って良いでしょう。ですが、それでも当面の敵勢を排除した。今なら第三艦隊を駐留させれば保てるわ」
「後任の提督がいらっしゃるまで、どれだけ掛かるかわかりません。第三艦隊の戦力は回復していますが、補給はどうします? 第二艦隊は雪風が居らず、島風さんも帰港していますし……此処は撤収して戦線を縮小すべきと考えます」
「第一艦隊から足柄さんに一時的に第二艦隊に出向していただけば、補給部隊の自衛力も保てるのではないかしら?」
「重巡洋艦二隻で補給艦隊を運用するのは、それ自体にかかる資材が重過ぎるでしょう。この鎮守府に備蓄してある分だって、私と今の加賀さんが入渠すれば消し飛びますし……」
「……私の燃費が此処まで悪化していたのは確かに予想外だったわ。だけど現実問題として、この期に及んで此処を放棄したら、うちの鎮守府はとても微妙な立場に立たされる事になるわ」
「確かに……」
大和が思い出すのは、提督たる彼女との会話。
そもそも少数精鋭部隊だった自分達には複数の拠点防衛任務は不向きだった。
それを押し通されたのは、究極的には此処に大和が居たからである。
加賀としても完全に自由が利くなら全艦隊をまとめて引き払ってしまいたい。
しかし此処で完了寸前の任務を失敗させれば、司令官の立場が弱くなる。
それは彼女が大本営の無茶振りに対して抵抗力を削がれると言う事なのだ。
その結果は将来、此処で無理して鎮守府を維持する以上の負担を強制される可能性があった。
「一旦休憩しましょうか……それぞれ、もう少し考えをまとめて話し合いましょう」
「そうですね……」
結局一度の会議では結論が出せず、解散した艦娘達。
二度目の会議はその日の午後に予定されていたのだが、これは実施されなかった。
第二鎮守府近海に深海棲艦の接近が認められ、出撃可能の艦艇が対応に追われてしまったのだ。
発足間もないとは言えハイペースで連戦を重ね、ついには戦艦棲姫や珍種の航空戦艦とも戦っている大和達。
既に並みの深海棲艦部隊など相手にならず、鎧袖一触で蹴散らした。
被弾した艦艇無しという完全勝利。
しかし帰港したメンバーは苦い顔をしている。
「不味いわね大和ちゃん。これ、敵が戻ってき始めてるわ」
足柄の報告に顔を見合わせる大和と加賀。
此処までは雪風が出先の敵を足止めしてくれていた。
しかし雪風としても直接戦っているわけではない。
他人の資材と戦力を通して戦術で影響を与えている現状は、手袋越しに精密作業をするようなものである。
まして大和達は知らなかったが、現在雪風は鎮守府を離れていた。
連合鎮守府の目的は、その海域での深海棲艦の排除。
極論すればそれが撃破であろうと撤収であろうと、居なくなってくれればいいのである。
その成果も目に見える段階に達し、それなりの戦果も稼いだ現地の艦娘達はリスクを犯してまで敵を殲滅する事が少なくなった。
まだそれ程多くは無いものの、確実に敵部隊は引き返しつつある。
「撤収するにしろ、さっさと動かないと缶詰になるわよこれ」
「……」
大和は瞳を閉じ、現在自分たちが置かれた状況を確認していく。
「……損傷艦艇は加賀さん、赤城さん、私……誰が入渠しても長時間は動けない。備蓄も尽きる……」
大和には自覚がある。
五十鈴を失った事が尾を引き、判断がどうしても守備寄りになっていた。
雪風ならどうするだろう。
大和の目から見て、戦術判断で一度も失敗したことがない様に見える雪風ならば……
「……撤収しましょう、加賀さん」
「……解ったわ」
「ただし、加賀さんの仰るとおり此処を失う事も出来ません。第三艦隊に駐留していただき、維持します」
「消費資材は、どうするの?」
「私と加賀さんの入渠を見送り、更に此処から居なくなれば第三艦隊で備蓄を全て消費出来ます。第三艦隊だけならば、次の補給体勢を整えるまでこの備蓄で行動出来るでしょう」
「思い切ったわね……」
「雪風は此処から自鎮守府までの海域を単艦で突破しています。死に体とは言え、私と加賀さんに出来ぬ道理はありません」
「やけになっているわけでは、無い?」
「撤収する艦艇は第一艦隊から私と足柄さん。第二艦隊から羽黒さんと夕立さん。そして加賀さんです。羽黒さんはこの海域に精通していらっしゃいますし、足柄さんと夕立さんも戦闘可能。戻れます」
「赤城さんは、残すのね?」
「はい。この海域の主力は空母。第三艦隊だけでは頭上が苦しいです。赤城さんに入渠していただいて、その戦力が回復し次第行動に入りましょう」
雪風ならこの鎮守府は手放さないだろう。
後任が決まっているならば、後は引き渡してしまえば自分達は一拠点の状態に戻れる。
しかし此処で鎮守府を失陥すればこちらで再奪取する必要に迫られる。
そして手間取れば手間取るほど司令官たる彼女の立場が悪くなるのだ。
結局の所、それは自分達の首を絞める。
維持することを前提に考えるなら、次の条件も見えてくる。
残留部隊と帰還部隊。
残りの資材と、其処から継戦可能な期間。
今の大和を雪風に置き換えれば、きっと雪風もこうすると思う。
だが、その先に自信が持てない。
足柄、羽黒、夕立が護衛に就くとはいえ、本当に帰り着けるだろうか。
「雪風ってこういう判断をした後、何時も飄々としてそのまま成功しちゃうんですよね……自信……なのかなぁ」
「私達が外から見るほど、当人に自信はなさそうよ。ただ、好機が一つ、望みが一縷でもあれば最初の一回でそれを引き当てるものは持っていそうね」
「……羨ましいわ」
「成功する判断が出来るのは取捨選択の強さよ。当人の戦力はあくまで駆逐艦という事もあるし、あの子は前線にいるより後ろから私達を使う方が本当は向いているわ」
「やっぱりそうですよね。でも雪風、嫌がるだろうなぁ」
「あれで結構喧嘩っ早いしね」
第一艦隊旗艦と秘書艦は顔を見合わせて苦笑する。
そして僚艦達に定まった方針を伝えるべく、放送で集合をかけつつ会議室へ向かうのだった。
§
「五十鈴さんが……?」
「おぅ……」
雪風は比叡、金剛を伴い自分の鎮守府にたどり着いた。
入港申請から待たされはしたものの、工廠に繋がる港から入る。
上陸した雪風は其処で島風に迎えられた。
そして告げられた五十鈴の戦没。
「……五十鈴さんがねぇ……あの人って、沈むんですね」
「っおい!」
その発言を薄情と捉えた島風は相棒の胸元を掴みあげる。
しかし締め上げる前に、島風の手首をそっと押さえたものがある。
「何よ比叡。これはうちの問題でしょ?」
「……泣いている子を更に責めるものじゃないですよ」
「泣いて?」
「あぁ……なんとなく、榛名と喧嘩して泣かせた時と感じが似ていて」
其処で島風はやっと雪風の異変に気がついた。
胸座を掴まれ、その前後で自分の話をされているのに反応が無い。
当然泣いてもいなかったが、正面の島風を含めて何も目に入っていないようだった。
「雪風?」
「…………島風、こっち怪我人もいるんです。入渠施設とバケツ使いたいんですが、しれぇは何処でお休みです?」
「いや、司令室にいるわよ」
「え? しれぇは、五十鈴さんの事ご存知ないんですか?」
「私一昨日戻ったのよ。勿論報告してるって」
「一昨日って…………島風、しれぇ何しています?」
「いや、普通に仕事してるけど――」
「馬鹿! 休ませなさいっ」
雪風は島風の手を振り払い、肩がぶつかったのも無視して駆け出した。
まともな精神状態でいない筈だ。
今まで彼女は雪風の日誌には必ず最優先で返信してきた。
どんな時間に送っても直ぐに返事が来るのは、通常業務の手すら止めて書いていた筈だ。
それが来ない時点でおかしいとは思ったが、あの時は夜だったという事もある。
その後も返信が無かったので届いていないと思っていた雪風だった。
しかしもし、届いていたとすれば……
「しれぇ! 雪風、ただいま戻りましたっ」
「――お帰りなさい、雪風」
司令室に飛び込んだ雪風。
迎えてくれたのは見慣れぬ美女の姿だった。
着ているものや雰囲気から、彼女であることは直ぐに分かる。
しかし普段全くしていない薄化粧が印象を変えていた。
「……お綺麗ですしれぇ。似合いませんけど」
「二言目にはそれですか? 酷い子ね」
「あー……うー……」
一目見て無理しているのは雪風にも分かった。
青白い顔色を、目の下の隈を、血の気の無い唇を健常に戻そうとしている化粧が、何よりも雄弁に訴えている。
ただ、それを隠そうとしているだけでもマシだったろう。
取り返しのつかない程壊れた人間は、衛生面や見た目を完全に気にしなくなるものだ。
雪風がかつての戦いで救い上げた命の中には、肉体的な損傷以外でも戻って来れなかった者はいた。
見たところ、彼女はまだ其処まで破綻していない。
しかし何処から切り込めば良いものか。
雪風としては此処まで彼女を放って置いた島風には言いたい事があったが、先程の様子から感じるに、島風自身も精神的な再建が出来ていない。
結果誰とも話せずに自分の中で感情を溜め込んだ司令官は、崩れ落ちるより立ち続けることを選んでしまった。
その心は誰かが一押しすれば崩れるような、砂上の楼閣であるにしても。
悩んだ雪風は無意識に肩掛けポシェットから提督帽を取り出し、両手で抱きしめていた。
「……しれぇー、五十鈴さんが、お亡くなりになってしまいましたよぅ」
「はい。五十鈴さんには、気の毒なことをしてしまいました」
「それで……どうして五十鈴さんが沈むとしれぇが不眠不休してるんです? 艦娘が沈むと司令官って残業しないといけないんですか?」
「そんな事はありませんが……眠れないのですよ。どうせなら仕事でもしている方が気が楽なので」
「今しれぇがする事ってそんな事じゃないですよ! 寝てくださいっ。急な事じゃなければ島風に、今なら雪風に任せて休んでください」
「まだ日も高いうちから、貴女は私に怠けろというんですか?」
「……言い換えましょうか? 今のしれぇは危なっかしいから引っ込んでいてください、そう言っているんです。入港申請入れてから反応が来るまで凄い遅かったですよね? 雪風の日誌にお返事も書けないくらいなんでしょう!? まいってる島風に何か声を掛けてやることが、今のしれぇに出来ますか? ご自身が壊れちゃってるって、分かっていらっしゃらない事は無いんでしょう!?」
「……もう少し声を落としてください。頭、痛いので」
デスクの上で両手を組み、額を乗せる彼女。
沈思の姿勢に入った彼女はそのまましばらく動けなかった。
しかし雪風が感じる意思は、明確な拒絶だった。
「しれぇー……じゃあ、じゃあもう無理に休めとか言いませんから……泣いてきてくださいよぅ」
「……泣く?」
「はい。少しお手を止めて、自室に戻って五十鈴さんの為に泣いてあげてください」
「……」
「きっと、しれぇに必要な事です。雪風は昔、たくさんの仲間と死に別れました。それは、だんだん誰を失っても泣かなくなりましたけど……っていうか、昔の雪風は艦ですけれど……でもやっぱり、最初はいっぱい泣いていたんだと思うんですよ」
「……」
「しれぇにとって五十鈴さんは、それには値しませんか? 雪風は、しれぇの部下で、道具だって別に良いですけど……やっぱり、自分が沈んだ時に泣いてくれる方の為に戦いたいです。どうか雪風に、しれぇはそうしてくれる人だって見せて……信じさせていただけませんか?」
「……ずるいわ、貴女……その言い方」
少しだけ視線を上げ、下から雪風をねめつける彼女。
しかしその眼光は鈍い。
色濃い疲労と、何よりも緩みかけた涙腺が彼女の心を示していた。
「……雪風は薄情です。加賀さん拾ってパニック起こしたときは泣いたくせに、五十鈴さんが沈んだって聞いても涙が出てきませんでした」
「雪風、それは……」
「はい。泣くだけが哀悼の表現ではないと思います。ですが……やっぱり誰かが、泣いてくれないと寂しいじゃないですかぁ」
そう言った雪風は深い息をついて視線を床に落とす。
元々小柄な雪風が、殊更小さく見えた彼女である。
例え涙を流すことは無くても、五十鈴の訃報は雪風の内面から見えざる何かを削り取った。
そんな雪風に後事を任せ、自分一人休むことに罪悪感を覚える。
しかし雪風の言うとおり、最早自分が通常業務すら支障を出すほど参っているのも確かであった。
「大丈夫ですよぅ。仕事大好き人間のしれぇが、二徹してお仕事してたんじゃないですか……雪風はこれを被って、其処に座っていればいいんですよね?」
「…………」
彼女は深い息を吐くと立ち上がり、雪風が被った帽子ごとその頭をくしゃくしゃに撫で回す。
目深になった帽子を直して視線を上げると、司令官と目が合った。
「では……二時間だけ、甘えさせてください」
「もっとゆっくりしていて良いのです!」
「大丈夫です、雪風……ありがとう」
「……しれぇー。ご褒美にきゅー……ってお願いします」
「この子は……」
幼子が抱っこを求めるように両手を伸ばす雪風。
苦笑した彼女だが嫌がりはせず、その背に腕を回す。
互いの鼓動すら感じられる距離。
きっかり十を数えた雪風は自分から離れた。
「ありがとうございました!」
「満足しましたか?」
「はい、堪能しました」
雪風の満面の笑みに見送られ、彼女は自室に向かうために退出する。
その背が見えなくなったとき、雪風の顔から表情が抜けた。
「……十秒で十七回……一分で百二回。ずっと座っていた人間の脈じゃないですねぇ」
抱擁の時に彼女の脈と身体に篭った熱を測った雪風は深々と息を吐く。
おそらく二時間も自室に居ればそのまま彼女は落ちるだろう。
しかし万が一という事がある。
雪風は間違いなく居ると確信し、扉に向かって呼びかけた。
「……其処の三隻、入ってください」
「いや、熱いねー」
「雪風はテートクにLove! ですネー」
「す、すいません……お姉さまがどうしてもと……」
「まぁ……根っこは雪風を心配してくれたんだと思いますから、出歯亀については言いませんが……」
雪風は彼女が座っていた椅子に腰掛ける。
そして一つ咳払いした雪風が調子に乗って宣言した
「さて、それでは……雪風、ついに一鎮守府を預かる提督カッコカリになりました!」
「ヒューヒュー」
「ぱ~んぱかぱーん!」
「お姉さま、それは愛宕……」
片手で額を押さえ、疲れたように息を吐く比叡。
実際それなりの長旅に加えて戦艦棲姫との遭遇戦を行い、更に大破した金剛を伴う航海は簡単なものではなかった。
雪風も同様だったが、比叡達に比べればまだ自分の家に帰ってきた余裕がある。
「金剛さん、今のうちに入渠なさって来てください。工廠の妖精さんに言って、身体の負担が許すならバケツもお願いします。ただ、後で使った資材を書類にしてくださいね」
「Thanks 雪風。後でうちの鎮守府から補填して貰いマース」
「お願いします。比叡さんは居住区に一室用意いたしますので、金剛さんの治療が済むまでご滞在ください」
「ご好意感謝します」
「それで申し訳ないのですが……入渠が終わりましたら金剛さんと比叡さんは、しれぇが連合鎮守府分に取り分けてくれた資材を運んでください。雪風は……此処から動けなくなりました」
「OK. 任せるネ」
「私も異存ありません。元々その心算でしたしね」
「ありがとうございます」
雪風と金剛は頷きあい、此処に今後の方針が定まった。
内線で呼んだ妖精さんに案内され、客人が退出する。
司令室に残ったのは雪風と島風のみ。
二隻だけになったとたん、島風はどこか決まり悪げに雪風に謝った。
「あーうぅ……ごめん。提督の事、気が回らなかった」
「……人それぞれ、役割があります。五十鈴さんの件がそれだけ島風にきつかったって事なら、雪風は責められません」
「……私、五十鈴の足引っ張った」
「うん?」
「……あいつ、皆に逃げろって……でもさぁ、そう言った本人だけ逃げ遅れるなんておかしいじゃん! 五十鈴は絶対、一人だったら避けれたんだ……」
奥歯をかみ締め、俯いた島風。
その姿に相棒の後悔と苦悩を垣間見た雪風だった。
「……どんな戦いだったか、島風が見てきたものを教えてください。ですが、今は島風にお願いしたいことがあるのです」
「ん……なに?」
「……食堂でお白湯をいただいて、しれぇに差し入れてください」
「おぃ、この期に及んでまたガキのお使い?」
「重要な任務ですっ。そのお白湯を持って医務室に寄って、導眠剤一個ぶち込んでおくのです」
「……は?」
「しれぇ体調崩してます。たぶんこのまま落ちると思うんですが、本当に二時間で出てこられたら本格的に拗らせるかもしれません。此処は確実に休んで貰います」
「あんた……」
「お願いします島風っ。しれぇから代理を仰せつかった雪風が、直ぐに業務以外で会いに行くのは不自然なんです。かといって泣いてとお願いした以上、時間を置けばお部屋に行きづらくなるでしょうし……」
「……まぁ、確かに休ませたほうが良いか」
「しれぇが寝付いたら、そのまま着いててあげてくださいね」
「分かった。あ、そうだ……あんた、アイス奢ってあげる」
「おぉ、食堂の食券ではないですか!」
「後で一緒に行こ。其処で話すわ……私達が戦った、凄い戦艦の事」
雪風は頷き、両者は軽く拳を合わせて解散した。
一人になった雪風は椅子に浅く腰掛け、背もたれに首を預ける。
そして目元に提督帽を乗せて隠すと、誰にとも無く呟いた。
「ねぇ、五十鈴さーん……貴女と一緒に、貴女の下で、華の二水戦を再建したかったですよぅ。いつか神通さんがいらっしゃった時、吃驚するくらい凄い精鋭部隊です。五十鈴さんと矢矧さんと、うちの駆逐艦なら夢じゃなかった筈ですよ? いや、もう夢になっちゃいましたけど……」
それは第二鎮守府を引き渡し、第三艦隊を維持する必要が無くなった先で雪風が考えていた事だった。
二度の連合を経験した雪風は、この鎮守府に所属する艦娘が相対的にかなり強いことを知っている。
自分達なら、多くの鎮守府が羨む最強の水雷戦隊を作ることが出来たかもしれない。
「旗艦は五十鈴さんと矢矧さんが交代で、雪風と島風、夕立と時雨が小隊を組んで中核作って……後は霞とか初霜とか……浜風や磯風も良いかもしれません。あ、でも陽炎型は駄目かな? 一人だけ、おめおめ生き残っちゃいましたからねぇ……雪風は嫌われていますよね。まして磯風沈めたのは誰だって話ですよ……あぁ、いやだやだ。此処では皆、雪風に良くしてくれるから、勘違いしそうになっちゃいますよぅ……」
とつとつと、幻になった未来を口に乗せる雪風。
それは島風が用事を済ませて戻ってくるまで、途切れることなく続いていた。
§
北の泊地に辿りついた少女は、其処に駐留して傷を癒していた。
今だ万全ではないものの、尻尾の艤装部分に撃ちこまれた大型魚雷の残骸は抽出する事に成功する。
しかし艦娘サイドの艤装故に完全な再現は出来なかった。
「見タトコ三連装デ、四機ダッタロ……ンデ、十二本中命中ガ三本……全部艤装ニ刺サッテルノハ偶然ジャネェヨナァ」
追尾する能力が魚雷にあったとして、艤装部分に攻撃が集中したのは熱か音でも捉えたか。
艦娘と自分達の艤装は規格も音も全く違うので、それを拾って追尾するのは不可能では無いかもしれない。
正確に確かめるとしたら、もう一度アレに身を晒して回収するか……
「……ン?」
其処でふと思いつく。
命中が三本ということは、九本は外れて今も海上に漂っているのではないか?
それを回収出来れば、この新兵器の解明も一気に進む。
しかし其処まで考えて、別の思考が訴えてくる。
自分はこの魚雷の性能を自分のものにしたいのであり、敵に使われたときの対策を講じたいわけではない。
この謎魚雷は射程距離と火力こそ凄まじいが、速度は決して速くなかった。
どれ程の追尾が出来るのかは不明だが、自分が全速で振り切りながら避ければ外せるという気もするのである。
他の仲間は知らないが、正直な所どうでもいい。
「コレト同ジノ作ッテモ、駄目ナンダヨナァ……」
少女は加賀がこの魚雷を放ってから、自分との砲撃戦で精彩を欠いた様子を思い出す。
主砲を対空牽制に用いていた時は、正確にこっちの艦載機を脅かす位置に撃ち込むことが出来ているのだ。
おそらくこの魚雷の制御に自分自身のリソースを持っていかれていたのだろう。
「アレハ空母ダカラソレデモ良イガ……戦艦ノ僕ガ砲撃オナザリニナッタラ笑エネェシ……」
実際自分も、こちらの資材と技術で誘導魚雷を考えてみたことはあったのだ。
しかし追尾させるためのセンサー等を乗せた場合の速度低下や、炸薬搭載量の低下などの問題から実用的なバランスが取れなかった。
敵はどうやらその点を改良してきたらしい。
腕の良い妖精がいる鎮守府は強い。
強敵の出現をはっきり悟った少女は深い息を吐く。
「面倒クセェノ」
そう、少女は戦うことを面倒だと認識している。
しかしこうして艤装を弄り、更なる高性能に作りこんでいく事は好きなのだ。
そして性能を試す為には戦う必要がある。
だが、面倒くさい。
その辺り、明確に矛盾したものを内包している少女だった。
「……」
少女は艤装の尻尾部分。
その先端にある口のような部分に搭載されている主砲を見やる。
16inch三連装砲。
戦艦棲姫と同じ、大口径の主砲である。
その射程は30000㍍以上。
コレさえあれば、魚雷で20000㍍も狙えなくて良いのではないか。
そもそも自分の姫だって、そんな事は出来なかった筈である。
「……イヤ、スル必要ガナカッタノカ?」
かの姫は30000㍍の長距離を自力で狙えたから、魚雷の遠当て等する必要がなかった。
その気になれば工作艦の真似事をし、弾を遠くに飛ばしたいからと空間まで捻じ曲げる化け物だった戦艦棲姫。
彼女はその必要があれば、なんだって実現させた筈だ。
勿論全うな方法ではなく、誰も思いつかないような理不尽な力技で。
結局自分が脳筋なのかとへこむ姫の様子が、少女にはありありと思い浮かぶ。
「クフフッ」
思い出し笑いというには、何処か遠くを見つめる少女だった。
一つ息を吐き、気持ちを切り替える。
「結局、僕ガ砲戦デ狙エルノガ100はろん有ルカ無イカ……アァ、ソウ考エルト、僕ハコノ主砲ノ性能使イ切レテモイナイノカ……」
戦艦棲姫と同じ艤装を撫でながら思考を纏める少女。
自分に姫と同じ事は出来ない。
それは彼女の生前から分かっていた。
だからこそ、様々な艤装を組み合わせて自分なりにやってきたのだ。
「組ミ合ワセ……組ミ合ワセ……フム?」
確かに、魚雷を20000㍍の標的に当てることは難しい。
しかし砲撃ならば、自分は20000㍍で当てられない事はない。
この二つを組み合わせるとは出来ないものか。
「例エバ……砲弾ニ魚雷仕込ンデ、着弾点デ分解シテ其処カラ扇形ニ広ガレバ……」
砲弾が物凄く重くなるので、射程距離は落ちるだろう。
砲身に掛かる負担も重くなる。
しかし着弾時の衝撃で誘爆しない様に工夫出来れば、この発想は使えるのではなかろうか……
「御精ガデマスナ、オ若イノ」
「オゥ、珍シイナ青目」
少女に声を掛けたのは、同じく此処に停泊している正規空母。
この海域の所属ではなく、流れ者ということらしい。
実はこの泊地の近海までたどり着いた少女を最初に発見し、救助してくれたのは彼女である。
帽子の目玉の発光色は金色であり、艦娘達には脅威とされているflagship級の空母。
しかし少女が見たところ、この空母はどうにも底が知れない。
帽子の発光色よりも遥かに目立つ本体左目の青い輝きが、彼女を唯のflagshipと括るのを躊躇させる。
「成果ハ、アガリソウカネ?」
「ウン。方向ハ決マリソウダヨ」
「善哉、善哉」
のほほんと少女をほめる青目の空母。
少女は頭を撫でる手を鬱陶しそうに振り払う。
「鬱陶シイカラ、触ンジャネーヨ」
「連レナイノウ……命ノ恩人ダトイウニ最近ノ若者ハ……」
「悪イケドナ、僕ハ自力デ此処マデ来レタカラ。アンマリシツコイト食ウゾコラ」
「性的ナ意味デ?」
「色ボケテンナババ……ァ、青目ッ」
「フム、マァ聞キ流シテクレヨウカネ」
言い掛けた瞬間、背筋に寒いものを感じた少女。
戦って負けるとは思わないが、どうも雰囲気が苦手であった。
しかし何処か、憎めない。
何処か、少女にとって重要な部分でこの青目とは重なるものがある。
そんな予感があったのだ。
「……オマエ、ドウシテ僕ニ構ウノサ。ウザガッテルッテ分カルダロ?」
「分カッテイル。ワシハヌシノ慈悲デ見逃サレテイルノモナ」
「……」
「何、ソウ惜シイ身デモナシ、ヌシニ食ワレタラソレマデジャテ」
「達観シスギダロ。益々ウゼェ」
「ファッファッファ」
青目はワザとらしい笑いを上げると、少女は半眼で無視を決め込む。
そうしてしばらく艤装の修復と多弾頭魚雷弾の構想を練っていると、空母が帰らない事に気がついた。
「……ソウイエバ、オマエ何シニ来タンダヨ?」
「オオ、ヤット聞イテクレオッタカ」
「ウザッ! 勝手ニ喋ッテサッサト帰レヨ」
「連レナイノウ……余所者同士、仲良ウシテオクレ」
「老イ先短イ年寄リニ足ヲ止メテル暇ハ無インダヨ」
「善哉、若者ハソノクライ前向キデナイトイカンナ」
青目の空母は少女の見据える先にある、一人の姫を知っている。
今はもういない、戦艦棲姫の遠い背を追う小さな戦艦。
そうやって追いかけているうちに、いずれこの少女自身の背を追うものが現れるだろう。
自分が持ってきた話はそんな少女にとって禍か福か、俄かに判断が着きかねた。
「何ダヨ?」
「……ヌシニ取ッテ、吉報ニナルカハ分カランガ、次ノ巡リガ訪レル」
「……」
「恐ラク次ノ満月、我ラノ姫ガ、オ戻リニナル」
「…………フーン、ソウカイ」
知識としては少女も知っている。
姫や鬼は特別な存在。
戦艦棲姫も強い妄執からその存在が固定されている。
其処から浮き上がってきた姫を海上で沈めても、暫くすれば戻るのだ。
少女は空を見上げると、昼の空には白い三日月が浮かんでいる。
「……青目サァ」
「フム」
「オ前、沈ンダアイツノ事知ッテルヨナ?」
「無論」
「……アンナ変ワッタ姫ガ出テクル可能性ッテ、ドレダケアッタンダロウナァ」
「……奇跡ハ、二度モ起コラヌヨ。惜シイ姫ヲ亡クシタワ」
その発言を聞いたとき、少女は自分の心に得心がいった。
青目の空母も自分と同じものが好きだった。
自分達はあの姫でなければ駄目だったのだ。
「オ前サ、アイツノ事デ僕ガ憎ケリャ、一度ダケハ無条件デ相手ニナルヨ?」
「馬鹿ヲヌカセ。ヌシノ様ナ小娘一人ニ、アヤツノ死ガ背負エルモノカ」
青目は少女と同じ空を見上げる。
人類から深海棲艦と呼ばれる身には昼の陽光は眩しかった。
「アヤツノ戦イハ、アヤツノ物ダ。勝利ノ栄誉モ敗北ノ痛ミモ……結果トシテノ死デアッテモ。ソレハ皆、アヤツ一人ノモノダロウヨ」
「ジャア何デ、一々僕ニ構ウノサ?」
「其処ハホレ、何時マデモめそめそシテイル様ナラ、ケツヲ引ッ叩イテヤルノガ年寄リノ役目トイウモノヨ」
「必要ネェナ」
「ツマランノゥ」
「……ヤッパリ、ウゼェヨコイツ」
少女は深い息を吐くと、青目は愉快そうに笑っている。
何時の間にかこの空母に慣れてしまっている自分に、少女はまだ気づいていなかった。
§
雪風が帰港してから一週間。
彼女は未だに提督帽を被って代理をしていた。
本来司令室の椅子に座るべき彼女は、本格的に風邪を拗らせて寝込んだのだ。
島風が白湯を持って行った時、既に卓上に突っ伏して昏倒していた司令官。
慌てて医務室に担ぎ込まれ、二週間の絶対安静を強いられている。
最も、既に私室のベッド上にて出来る執務に手をつけていた。
今も雪風が持ち込んだ幾つかの報告書に目を通し、今後の予定を相談していく。
「連合鎮守府で解散式が終わったそうですね。あっちの提督からお礼状が届いています」
「金剛さん達は。間に合いませんでしたかねぇ……」
「最終出撃直後の到着だったようです。資材はあちらで、金剛さん以外の皆さんで戦果に応じて配分されたそうです」
「ごめんなさいしれぇ。貴重な資材を……唯のサプライズボーナスにしてしまいました」
「致し方ありませんよ……出撃前に持ち込めれば全力出撃を補強できたでしょうが」
彼女は提督同士の公式文章でのやり取りの他に、現地司令官からの個人的なお礼の手紙も貰っている。
それは彼女というよりも半ばは雪風に送られたものであり、業務日誌から想像していた内容よりもあちらでの関係強化に成功していると感じられた。
「あっちで喧嘩沙汰を起こしたり怒られたりしたと聞いて心配していましたが、随分あちらの提督さんに気に入られた様ですねぇ」
「喧嘩沙汰を起こしたから態度が軟化したんですよ。お仕事だけ完璧にやってるうちは、むしろ弱点を晒すまいってガチガチに構えてましたもん」
「あー……」
「あっちの立場を考えると、分からなくもないんですけどね。良い子過ぎたり、欲がなさ過ぎたり、裏がなさ過ぎると逆に警戒されるみたいです」
「こっちの事情や裏だって、たくさんあったんですけどね」
「だからこそ、雪風達はそれ以外の部分で完璧を目指してしまったじゃないですか。それがむしろ、人付き合いの中では不自然に感じられてしまったんですね」
ベッドの上に上体を起こし、サイドテーブルの上の書類を速読していく彼女。
必要な書き込みはその場で行い、後は雪風が決済の判を押すだけで事態が動くようにしていく。
雪風からすれば手品にも見える速度で仕分けられていく事案と報告書。
やはりこの分野で彼女は恐ろしく優秀だった。
「……ん? このサイレンは入港申請ですね」
「誰ですかねぇ」
司令官と雪風が首を傾げていると、サイドテーブルの上の内線が鳴った。
通信相手は島風であり、入港希望者の報告だった。
『提督、大和達が帰ってきたわ! 戻ったのは大和、加賀、羽黒、夕立、足柄よ。 第三艦隊と赤城は、あっちに残ってるって』
『なるほど……何時もの港から上陸してもらってください』
『おぅ』
『それからすいません、私が今こんなですから……司令室にお通しするなら、雪風に代理で対応していただきます』
「……しれぇ……ちょっと」
『あ、少しお待ちを』
雪風に袖を引かれた彼女は、通話を一旦保留にする。
「これからしれぇとお話したい事があったのですが、出来れば大和さんと加賀さんも一緒が良いと思うのです。お二方だけ、取り急ぎ此処に来ていただけませんか?」
「此処って私の私室……」
「お願いしますっ。本当に、内々だけでお話したい事があるんです……」
「はぁ……分かりましたよ」
彼女は雪風の懇願を受け、島風にそう指示をだす。
島風は大和と加賀が大破している事を告げ、あまり良い顔をしなかった。
それを受けた彼女は雪風ともう一度相談する。
結果司令官から内線を受け取り、更に大和の端末に転送してもらう。
雪風は一度退出し、誰もいない廊下で大和と話した。
『大和さん、雪風です。お元気ですか?』
『雪風ぇ……ぼろぼろですよぅ……』
『加賀さんもだと伺いましたが、もちますか?』
『戦闘行為さえなければ、お互い沈むことは無さそうです』
『そうですか……大和さん、大事なお話があるのです。これからの事……しれぇと加賀さんと、大和さんに聞いて欲しい事。少し雪風に付き合っていただけませんか?』
『私に、貴女の誘いを断る甲斐性があるとでも?』
『……ありがとうございます。内緒話です。そのまましれぇの私室に来てください』
『私室?』
『しれぇも体調が悪くて絶対安静なんです。見た目だけはお元気そうですが……正直入渠されてしまうと、ドックまでご足労かけるのも辛そうでして』
『っ、わかりました』
連絡を終えて内線を切る。
雪風が再び入室すると、彼女は小さく咳き込んでいた。
慌てた駆け寄り、その背をさする。
「こふっ……全く……此処まで病弱でしたっけねぇ」
「心労って結構馬鹿に出来ませんよ? 元気な人だって本当にころっと逝っちゃったりするんですから……」
「……今の体調で何を言っても強がりにしかなりませんね。来れそうです?」
「はい。それでは、雪風は椅子とお茶の用意をしてきますね」
「あぁ……場所、わかります?」
「勿論です」
既にプライベートも何もあったものではないが、不思議と違和感を感じない彼女。
視界の中で忙しく動き回る駆逐艦を眺めているうちに、それなりの時間が経過していたらしい。
大和と加賀が訪ねて来た時、彼女は自分の集中力の低下に気がついた。
「戦艦大和、及び戦闘空母加賀、参りました」
「入ってください」
「はい」
「失礼します」
彼女の声に促され、大和と加賀が入室してくる。
大和と加賀はベッド上の提督に敬礼する。
そして雪風とも敬礼を交換し、一通りの挨拶が済むと勧められた椅子に座った。
「さて、今日集まって貰ったのは……まぁ、私というよりも雪風の希望なのですが」
「はい、お疲れ様でした。大和さん、加賀さん。入渠に先立ってお呼び立てしてしまい、申し訳ありません」
「それ程大切な事なのでしょう? むしろ入渠していて聞かせて貰えない方が悲しいです」
「全くね。それで、うちの軍師殿はどんなご用件かしら」
「雪風は軍師ではありません。今はしれぇの代わりを務める、提督カッコカリなのです!」
そんな会話をしながら、雪風は全員に番茶と梅干を用意する。
蜂蜜漬けのような甘みの無い、純粋な塩漬けの梅は見ただけで唾液の分泌が促進される。
最も、そんな生理反応を示すのは人間たる彼女だけだが。
「さて……それでは、皆さんこれをご覧ください」
雪風はポシェットの中から黒の塊を取り出し、司令官のサイドテーブルに置いた。
魅入られそうなほど美しい漆黒。
大きさの割りに、非常に重い物体。
不思議そうにモノを見つめる大和達だが、直ぐにその正体に行き着いた。
「雪風っ!? これ、戦艦棲姫の……」
「そういえば、撃沈したと言っていましたね……報告者が貴女でなければ、俄かには信じられませんでした」
「……驚いたわね」
艦娘であればその物体から感じる気配によって、それが一度戦った相手に連なるものだと判断できる。
また艦娘程ではなくとも、一鎮守府に適性を持って司令官として赴任するようなものも同様の感覚を持っている。
雪風は全員が正体に行き着いた事を確認し、深い息をついた。
「その通りです。これは此処に戻る途中、遭遇した彼女を沈めた時にいただきました」
戦艦棲姫本人から討伐者に託された、完全な形の角。
艦娘も鎮守府も、武勲の証として之ほどまでに巨大なものは無いだろう。
しかし雪風の表情は明るくない。
普段快活な陽炎型八番艦は、不安げな表情を湛えて俯いてさえいたのである。
「コレはまぁ、良いとして……今回大和さんと加賀さんに確認したい事があるんです」
「なんです?」
「……皆さんが戦った戦艦の姫は、悪の権化でした?」
「あ、悪の権化?」
「冷酷非情で悪逆で、破壊と殺戮を生業とするような、海の害獣だったか……ということですね」
雪風の問いに顔を見合わせる大和と加賀。
程度の差こそあるものの、両者は互いの顔に同じ疑問を見出した。
「あの姫は敵ではあったけれど、悪では無いわ。私が知る限り卑怯や卑劣といった行為は認められません」
「……大和さんは?」
「加賀さんの意見に賛成します。戦艦棲姫は、私達の敵で、五十鈴さんの仇ですが……人格に悪意は感じませんでした」
「……やっぱりそうですか……雪風も、そう思いました。あいつ動けない金剛さんの傍を自分から離れて巻き込まないようにしてましたし、こんなものを渡すくらいだから茶目っ気はあるし美人だし……おっぱいは加賀さんと赤城さんに一日の長がありましたが、しれぇくらいは有りそうでしたしねぇ」
「胸は関係無いでしょう?」
「胸は母性の象徴とまで言われる重要な要素です。そのキャラクターを語る上で、外すことは出来ません」
「雪風……私、貴女が頭良いのか可哀想な子なのか、稀に本当に分からなくなるの」
司令官はこの駆逐艦が、胸に対して妙な執着がある事は知っていた。
その守備範囲はあまりに手広いので様々な不安を感じるが。
「つまり、雪風は何が言いたいのです?」
「いや……近未来に深海棲艦の大侵攻が始まる可能性を思いつきまして」
「はぁ!?」
それまでの発言の落差から、大和と加賀は再び顔を見合わせる。
会話の主体であった彼女も、お茶をむせ込んで雪風に介抱されていた。
加賀は司令官の背をさする雪風に、当たり前のように質問した。
「何処からそんな突拍子も無い話が出てきたの?」
「突拍子はありますよ? 戦艦棲姫って海域全体の深海棲艦に命令を通せるほどの影響力がありましたよね」
「そうね」
「で、性格は加賀さんも、大和さんも、雪風も悪い奴じゃなかったって認める程、ある意味では穏やかだったわけですよ」
「そうね……むしろ残虐行為に関しては誰よりも潔癖だったかもしれないわ」
「つまり幹部級、しかも艦娘を目の敵にして沈める様な戦闘狂じゃなかったと言う事ですよね」
「ええ」
「……そんな穏健派が沈んだんです。そいつに頭を抑えられてた連中は、この後何をしますかね?」
それは容易ならざる問題提起だった。
加賀はあの姫が、捨て艦を虐殺する味方に激怒した様を知っている。
砲撃によって威嚇され、おとなしく引っ込んだ深海棲艦達の姿も。
その光景こそ、雪風が持ち出した疑問の答えである。
あの時、味方の非道を止めた姫はもういない。
「……不味いわ、有りうる」
「でしょう?」
「ええ……」
「抜けた戦艦棲姫の位置に誰が来るのか、もしくは空きっぱなしになるのかは分かりませんが……あんな深海棲艦が多数派のはずがありません。今までの反動もあるでしょう。しれぇ……この先も結構大変かもしれませんよ」
「全く……一難去ってまた一難ですか」
「あれ……そうなると、戦艦棲姫を沈めた雪風……というかこの鎮守府、結構不味くなりません?」
「あ、大和さん良い所に目をつけましたね!」
「え……そ、そうですか?」
「……物っっっっ凄い嫌なんですが、大正解です。深海棲艦の大部分がどんな価値観を持っているか分かりませんが、前任者を倒したものを倒して自分の力を衆目に認めさせる……こういう事ってありそうな気がします」
部屋の四人はそれぞれに顔を見合わせ、現状の認識を新たにする。
最も、これは可能性の話である。
あくまで雪風の描く最悪の予想の一つ。
起こった所で不思議は無いというだけだ。
しかし気のせいだと笑い飛ばすか、無駄になることを覚悟して備えるかを選ぶとすれば、この場の全員は後者を選ぶ。
「備えるとすれば……まず資材の備蓄は絶対条件ね」
「其処は、まぁ雪風達と……」
「私の仕事になるでしょうね」
司令官と雪風は頷きあった。
とにかく資材が続かなければ何も出来ない。
「戦闘部隊の第一艦隊ですが……五十鈴さんの穴を早急に埋める必要がありますねぇ」
「第二鎮守府に司令官が着任すれば、第三艦隊を無理に維持する必要はありません。矢矧さんか時雨さんを……いえ、もうそのまま合併してしまっても良いような気がしてきましたね……」
「戦艦二隻、航空母艦一隻、重巡洋艦一隻、軽巡洋艦一隻、駆逐艦一隻……配分は悪くないわね」
「戦時はその編成を基本にしましょう。資材集めの段階では足柄さんと山城さんを入れ替えて消費を抑えつつ速力を確保し、第二・第三艦隊で荒稼ぎしたい所ですね!」
「後、問題は加賀さんの立ち位置ですよ。ベネット部長が入渠に必要な資材を計算した時、魂吐き出していましたし……」
「え? 加賀さん何かあったんですか?」
「……あの改造、私自身を含めてですが、誰一人燃費を考えなかったじゃない? 今回の戦闘で私が一回動くときに必要な資材が始めてはっきりしたのだけれど……総合的には大和さんより大食らいになりそうです」
「なん……だと……?」
考えもしていなかった出費に、司令官の時が停止する。
彼女も雪風も、既に島風から戦艦棲姫達との苛烈な戦闘の詳細は聞いている。
加賀の活躍は目覚しく、大改装の成果は十分に発揮されていた。
しかし強化の代償は消費資材に、しっかりと跳ね返っていたのである。
その可能性に全く思い至らなかった司令官と雪風だった。
「確かに……本当に強化しか考えていませんでしたが……」
「……これは迂闊に動かせませんねぇ」
後方組み二人はそれぞれの表情で頭を抱える。
当事者の加賀は決まり悪げに息を吐き、一人無関係の大和は真面目に先を考えていた。
「それは……今は置きましょう。戦力を充実させるなら、増員を掛けましょうか?」
「増員……増員……あー…………したいですが……この現状で簡単には出来ませんよ。いや、増員は出来るんですけど訓練が間に合いません」
「ですが、大侵攻が来る事を前提にするとしても、時期までは不透明ですよね?」
「その通りです……でも大侵攻がある事を前提にした対策を考えるなら、こっちの事情で備える時期は一点に絞られてくるんです」
「それは……?」
「大本営の次の決算より早いか、それとも遅いかです。早かった場合は増員の訓練が間に合いませんし、遅かったとしても訓練なんてやっていたら戦果稼ぎで躓きます。その上、結局大侵攻来なかったら、ノルマ達成できなかった時の言い訳が効きませんから……」
「今期なら、戦艦棲姫撃沈で見逃して貰えるような……」
「かもしれませんが、前例があまりないですから当てが外れると怖いです。それにそんな事知られたら、まーた便利に使い倒されるのが目に見えていますよぅ……上には遭遇戦で撃退したって言っておくのが無難だと思います」
「あぁ、そうか……」
「……加えて。今回の戦闘と連合鎮守府に吐き出した資材を集めなおす必要があります。次の決算まで三ヶ月で、一月前にはまたあ号作戦の打診が来るでしょう。正直前半を姫対策に費やしたせいで、前回並みに余裕が無い運営になりそうですよっ。雪風達は先ず一ヶ月、敵が来ない事を祈ってひたすら内政です。この一月さえ乗り切れば、身動きが取れるようになるでしょう」
そうなれば、雪風達はあ号作戦など待たずとも戦果稼ぎに入れる。
新兵を抱え込まなければ実戦経験もつめるだろう。
雪風の発言に、それぞれの表情で頷く三人。
「纏めましょう。あくまで可能性ですが、深海棲艦の大攻勢が掛かる危険がある。この時雪風達が直接狙われるか、近いところから無差別に襲うか、その辺りは分かりませんが……」
「無差別ということならば、私達も自衛すれば良いだけね」
「はい。そしてうちが狙われた場合ですが、自力だけで防衛は無理です。最初から連合を当てにさせていただきましょう。幸い知り合いも増えてきましたし、第二鎮守府に来る提督だってこっちに借りはあるんですから」
「うぐっ……出来れば其処は頼りたくないような……」
「ん……しれぇ、第二鎮守府に来る提督さんをご存知なんです?」
「えぇ、まぁ……個人的に。あ、勿論頼りたく無いのも個人的な事情です。それで貴女達の判断を縛るような材料にはしないでください」
「はぁ……それでは気を取り直して……この時やはり問題になるのは連合を組む場合です。雪風が見た所……連合鎮守府って盟主の持ってる艦娘が強くないと纏まりません。面従腹背される様なことは、よっぽど下手を打たなければ大丈夫でしょうが……多くの鎮守府、そして艦娘を作戦に従わせる為には、ある程度の強さは求められます。これはまぁ、参加する以上誰だってそう思いますよね。主戦場になる海域の鎮守府が弱ければ、物凄い不安ですし」
「致し方ない所ですね。私達の場合は、どうなるでしょう?」
「……先程申し上げたように、短期的な増員が難しい現状、雪風達が目指すものは少数精鋭部隊です。大和さんと加賀さん、そして赤城さんを軸に今居るメンバーでの個人的な錬度と艦隊運用の習熟を上げていく必要を感じます」
「あの……」
小さく挙手し、雪風の言葉を遮る大和。
自分で集めた視線に内心でビクつきながらも、何とか意見を主張した。
「……もう一つ大切なのは、大本営の無理な横槍を回避することだと思うんです」
「その通りですね」
「そうなると、加賀さんの改装を報告する時期も慎重に測る必要がありますよね……唯でさえうちは、戦艦大和と一航戦! 見たいな風評被害がありますし……」
「あー……本当に、それ地味に効いてくるんですよねぇ。仰るとおり、此処で更に加賀さんの改装が成功したとか知られたら面倒かもしれませんが……」
「あっちも基本は細く長く使いたいと考えるものです。今期は一回特別任務が来たのですから、次の決算まで同じ鎮守府にもう一度無理を吹っかけはしないと思うのですが……」
「なんにしろ、馬鹿正直に話す必要はないわ。時期が来るまで隠蔽しましょう」
加賀本人の意見により、改装は秘匿される事となる。
実際に加賀は以前の鎮守府でも連合などに参加した事は無い。
この鎮守府に所属し、戦ったのも一度だけ。
今のスペックを知っているのは身内しか居ないため、嗅ぎ付けられる危険も少ない。
そもそも鎮守府内での艦娘の改装自体は良くあることで、逐一報告を上げるものでもないのだ。
今回はおおよそ前例の無い改装の成功例となったため、何時までも隠しているとそれはそれで突っ込まれることになるだろうが。
結局燃費が悪化している件もあり、当面は心的外傷から回復していない予備役の艦娘として扱われる事となった。
その研修と復帰訓練と称して秘書艦の仕事を回されるのは、確定している未来である。
「お帰りなさい私の秘書艦っ」
「今後とも、よろしく」
優秀な補佐を確保した彼女は、喜色満面で加賀の両手を握る。
頭を下げた加賀は、ほんのかすかに微笑んだ。
一方で、雪風は瞳を輝かせて大和を絶賛している。
「大和さん、頑張ってくださいね!」
「ほぇ……何をです?」
「まーたすっとぼけてぇ。加賀さんを切り札に温存すると言う事は、一航戦のネームバリューを半減させると言う事でしょう? 赤城さん一人だって知名度はありますけど……この場合、うちの見せ札として看板になるのは大和さんじゃないですかー」
「あ……」
「いやぁ、雪風も加賀さんの事はナイショにしたいなって思っていたんですよ! だけどそうなると大和さんが大変かなぁって思って、つい手加減して二枚看板にしようとしていました。自分から仰ってくれるなんて……すいません、雪風は大和さんを甘く見ていたようですね」
「ぁ……そ、そうですよ雪風っ…………この大和、見事客寄せのパンダになってやろうではありませんかこんちくしょうめ」
「流石大和さん! いよっ! 世界一っ」
「えぇ、やりますよ! ですが雪風、貴女も何時までも他人事だって思わないことですっ」
「はぁ? 何を仰っているのやら。雪風は唯の駆逐艦。大和さんは世界最大の大和型戦艦のネームシップ。どっちが目を引くかなんて分かりきったことではありませんか」
「確かに、私が人目を惹くでしょうねぇ。そうして皆さんの注目を集めて宣言してあげますよ。この子が私の良人ですって」
「はぁ!?」
「攻めるわね、大和さん」
「加賀さん。ケッコンカッコカリの時はぜひ仲人をお願いします」
「任せて頂戴」
「待って! 待ってください大和さ……待てって言ってるんですよこの色ボケが――」
「雪風、一応病人の私も居るのですからあまり騒がないでください?」
「あ……しれぇごめんなさい……って大和さん本当にそれだけは、平に、平にご容赦を……」
大和の瞳に洒落ではすまない光を見取った雪風は、床に平伏して慈悲を請うた。
恐らく初めて雪風を本気でやりこめた大和は、心の中を達成感で満たしつつも何処か寂しい気がしていた。
やはり自分はこの駆逐艦を転がすよりも、転がされている方が好きらしい。
「まぁ、冗談ですよ雪風。ちゃんと最後の一線はそっちから越えていただく心算ですからね」
「なんと言いますかね……もう少しゆっくりした時間の中で気持ちを見つめなおしたいんですが、息つく暇が無いんですよぅ」
「御免なさい……私が、不甲斐ないばかりに……」
「しれぇのせいではありませんよ? むしろしれぇが上にいてくれるから乗り切れている部分はいっぱいあるんです」
「それにしても……増員が難しいのは致し方ないけれど、提督の補佐はいま少し充実させるべきね」
「いざという時、加賀さんを急に動かす事は十分に考えられますしね……大本営から派遣される初期艦の方とか、補佐に向いていましたっけ?」
「さ、流石に今更初期艦を寄越せというのは時期を逸しているので……」
「ですが提督、大淀さんや明石さんすら居ないって鎮守府として終わっていませんか?」
「そう考えますと……終わってる以前に始まってすら居ないんですよね、うちの鎮守府って」
床から立ち上がった雪風は、ついてもいない埃を払う。
そして一つ空咳で会話を切ると、元の路線に修正を始める。
「まぁ、いずれにしても部長お手製にすべきです。出向組みを信用しないわけでは有りませんが、良かれと思って内部事情を報告されたら面倒です」
「そう考えると、間宮さんを招くのも黒ですかね?」
「間宮さん?」
「第二鎮守府を引き渡して皆さんが戻ったら、慰安依頼を申請して回して貰おうと思っていたのです」
「とっても嬉しかったのですが、此処は控えたほうが良いかもしれませんね……」
「あ、材料さえそろえて頂ければ同じものを作れると思いますよ? お料理で負ける心算はありません」
「……あ! そういえば雪風、まだ大和さんのお手製すうぃーつなるものを食しておりませんでしたっ」
「では、原材料だけ揃えて置きます。お願いできますか大和さん?」
「はい提督。お任せください。あ、それと仕込みに掛かる時間がありますから、前日から少し抜けさせてくださいね」
心底嬉しそうに引き受ける大和。
雪風は何処と無く遠い目で若い戦艦を見つめていた。
あ号作戦完了祝いの席でも、大和は嬉々として腕を振るったものである。
その出来栄えは保存食と固形燃料でありあわせたものとは信じられないほどの完成度を誇っていた。
そんな大和だが、自分一人の時は補給物資以外に手をつけないし、作らない。
自分が摂取する事よりも、誰かに食べさせる事が好きなのだろう。
「しれぇー。そういえばとっても大事な事なんですが……第二鎮守府の後詰めって、本当に何時来るんですか?」
「一度こちらに挨拶と引渡し書類を取りに来る事になっています。それが明後日の予定で、あちらまで急がなければ四日かそこら掛かるとして……来週中には着任まで完了すると思われます」
「来週ですか。ん……じゃあ、時雨達も戻れますね。間に合うかな」
「雪風、何かあるんですか?」
「あるというか……大演習したいんですよ。皆で、大和さん率いる第一艦隊をふるぼっこにするんです」
「ちょっ……なんですかそのイジメはっ」
「……それが、五十鈴さんが参加できる最後の演習になるでしょう? まだ、記録上はいらっしゃるんですから」
「あ……」
「だから、第一艦隊の増員は無しですよ? お相手するのはそれ以外の艦が自由参加。ですが、第二艦隊の連中は絶対乗ってくるでしょうねぇ」
「私も混ぜて貰おうかしら」
「いぇーい。よろしくです、加賀さん」
「あ、う……うぅーっ、やってやろうではありませんか! 返り討ちにしてあげますよっ」
「楽しみですね。そうね、どうせなら盛大に、お別れ会をしましょうか」
今後の方向を纏めた雪風達は、此処で一旦解散となった。
大和と加賀は雪風に付き添われて入渠施設へ。
司令官は話し合いで疲労した身体を休めるためにベッドへ横になる。
とにかく、鎮守府全体として休息が必要な時期にあった。
「本当に、慌しいわ。五十鈴さん……貴女はいなくなってしまったけれど、時間は止まってくれないの。きっとこの先、私はたくさんの艦娘と出会い、そして別れて行くのでしょうね。いつか、貴女の顔も思い出せなくなる日が来るかもしれない。だけど私が初めて沈めた艦娘が、長良型軽巡洋艦二番艦、五十鈴さんであった事は絶対に忘れません。もし、それすら忘れるようなら……」
自分は多くの艦娘を巻き込んで不幸にする疫病神に成り果てる。
司令官。
指示を出すもの。
死ね、殺せと命令するもの。
そして艦娘達が帰る鎮守府を守るもの。
その重責を改めてかみ締めながら、五十鈴に捧げる最後の涙を流した。
§
――雪風の業務日誌
人は思い込む生き物です。
そして人と近い精神を持った艦娘も、その呪縛からは逃れられません。
私達は真実に対していかに盲目である事か……
そんな現実を突きつけられる瞬間が、生涯に一度は訪れます。
私が見ていた世界とは単なる思い込みに過ぎない、自分にとって都合のいい世界に過ぎなかったなんて……
その認識がもたらす苦しみの責任を、裏切られたと称して貴女に転嫁してしまう事の、なんと愚かしいことでしょう。
分かっていてもそうすることを止められない、私の弱さをお許しください。
地味系だと思っていた貴女が、薄化粧を纏うだけで全く違う生き物になれるなんて、私は知りませんでした。
そして胸!
『熱い抱擁の中で私を包み込んだあの胸の柔らかさは、まさかの美巨乳でありました(筆圧が不自然に強くなっている部分)』
野暮ったいと思っていた貴女の女の部分を目の当たりにした時、私の中で何かが壊れた音を聞きました。
布団の中で、泣きました。
さようなら、お仲間だと思っていた私の司令官。
そしてこんにちわ『巨乳の美人さん(筆圧が物凄い強くなっている部分)』
ケッコンカッコカリを前提に私とお付き合いして――(日誌は此処で途切れている)
文章代筆・大和
――提督評価
貴女が何を言っているのか分からないのは、きっと私の体調不良で読解力が逝っちゃっているからだと思い込むことにします。
ですが、貴女も正気ではありませんよね?。
ねぇ雪風……貴女、疲れているのよ。
§
――極秘資料
No8.軽巡洋艦五十鈴
第一艦隊の対潜要員として着任した軽巡洋艦。
戦艦棲姫との海戦で戦没。
・指揮統率(水)
機能1.部隊を指揮するセンスです。
機能2.軽巡洋艦以下の水雷戦隊の旗艦時に発動します。
機能3.自分を含めた水雷戦隊全員の回避、命中に上方修正が掛かります。
機能4.上昇値は揮下の艦艇から得られる信頼によって増減します。
・直感
機能1.知らないはずの事を知ってしまうことがあります。
機能2.判定に成功すると敵の攻撃寸前にそれを察知します。
機能3.成功すると回避値が上方修正され、固有スキルの場合は初見属性を打ち消します。
後書き
こんにちわ、りふぃです。
戦後処理回をお届けしますw
集めた資材で全力で戦って……艦娘、深海棲艦両者共にボロボロになりました。
そして提督も、やっぱり疲れきっていました。
しかしいもT、このままだと孔明みたいな最後を若くして迎えそうな気がしてきましたねぇ……
さて、此処でご連絡を一つ。
二月に提督職につきまして、その直後から執筆を始めたこの業務日誌。
正直こんなに長く続くとは思っていなかったのですが、そろそろ〆を意識したいと思っています。
個人的な事で申し訳ないのですが、連載抱えながら艦これ通常海域と季節イベントは流石にきつくなってまいりましてorz
決まった締め切りとかないのは判っていても、なんか落ち着かないんですよね……
夏イベでは本当に限界感じていたんです。
リアルでは新職場の一年生だし。
攻略も5-3で止まってますし、なんというか……腰をすえて艦これに向き合えなくなってきてるんですよね。
そもそも艦これプレイ中の妄想妖精さんのささやきを元ねたに書いていたわけですので、本編がプレイ出来ないとネタは生まれないわけで……
ちょっと充電期間が必要な時期に来ているのかなと。
それと、私はこのSSをTRPGのシナリオを作る要領で書いている部分があります。
そして次のネタというか、深海棲艦大侵攻は長期キャンペーンシナリオで……
SS内の時間が1~2年くらい動く話になると思われます。
…………セッションでもSSでもそんな時間管理できないからorz
戦艦棲姫編に踏み出す前も、縮小するかこのまま行くか只管なやんだ経緯がありますからね……
コレに踏み出したら確実にエタると思われます。
一旦〆るとしたらこのタイミングしかないのかなぁと……丁度20話を限として考えています。
まぁ、20話くらいさっくり書いてる作家さんとかいっぱいいるんですけどね!
書いていて思うのは、やっぱり広げた風呂敷を上手にたたむのは難しいという事ですねー><
話のネタを蒔いて、立派に育てて、収穫する。
自分の納得する領域でコレをするのは、本当に難しいと感じました。
この辺が書き手の腕ですけどねw
無いんです自分orz
それでは、次のお話でお会いできる時まで……ノシ