駆逐艦雪風の業務日誌   作:りふぃ

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    |Д`) イベントデダレモイナイ・・ナゲルナラ イマノウチ
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つばさをおうもの

鎮守府の廊下を二隻の艦娘が歩いてゆく。

一隻は小柄な駆逐艦。

もう一隻は背の高い大戦艦。

長身の戦艦は如何にも怒っていますとばかりの表情でそっぽ向いている。

一方で隣の駆逐艦は、肩を竦めて苦笑していた。

 

「大和さーん、まだ怒っていらっしゃるんですかー?」

「……」

「もう。めそめそしたり怒ったり、本当に思春期の子って面倒ですねぇ」

「誰のせいだとお思いですっ」

「いや、ほんの冗談じゃないですかー」

 

一昨日の話し合いの後、入渠した大和達に付き添った雪風。

其処までは一緒だった加賀は気を利かせ、さっさと別れて個室に入ってしまう。

雪風も大和の入渠を見届けたら業務に戻る心算だったのだが、此処で一つ問題が発生した。

長期間雪風分を切らせていた大和は、此処へ来てついに禁断症状を発症。

退出しようとする雪風の服の裾を握って離さなくなった。

元来雪風はこの様な行為を鬱陶しいと感じる性質だが、この時ばかりは流された。

長身の大和がぺたんと床に座り込み、瞳いっぱいの涙を湛え、上目遣いで懇願してくる時の破壊力は雪風をもってしても容易に抗えるものではない。

この時雪風には、大和が捨てられた大型犬に見えた。

しかも主人に忠実で、雨の中で待てと命じられたまま素直に待ち続けるような、そんな大型犬である。

鎮守府に居つく野良犬を飼いならす程度には犬好きの雪風は、この攻撃に敗退した。

別行動中の互いの近況等は腰を据えて話し合いたい所でもあり、雪風は此処に仕事道具を持ち込んで作業を進めることにする。

身の回りの話をしつつ、辞書を片手に始末書の作成に悪戦苦闘する雪風。

真面目な大和はそんな雪風に、仕事を手伝う旨を申し出た。

 

『何か、お手伝い出来る事ってありませんか? 此処からは、動けませんが……』

『あ、じゃあ業務日誌の代筆お願いして良いですか? 雪風はこれから徹夜で始末書をあげないといけないのです……』

 

こうして、意中の相手が別の女に送る恋文の代筆などやらされた大和。

入渠中の身でなければ壁ドンして問い詰めたいところだった。

 

「あれの何処が冗談だというのですっ。序盤こそ反省しているのかと思いましたが、ケッ……ケッコン前提にお付き合いとか……」

「だからぁ、冗談ですって」

「一応業務日誌でしょう!? なんで冗談とか書いているのです雪風は」

「えー……だって雪風が出してる日誌って何時もあんな感じですよ? 今回は大和さんの素晴らしい乙女フィルターで恋文になりましたけどぉ……」

「ん……まさか雪風……あの日誌のような恋文をそのまま提督に提出なさったんじゃ……?」

「勿論ですよぅ。あーんな笑えるネタ、此処で使わずして何時使うのです?」

「にっ……にゃぁああああああああああぁ!」

 

猫のような悲鳴を上げ、赤面して座り込んだ大和。

穴があったら入りたかった。

 

「ほら大和さん、立ってください」

「うぐっ……あの、先程いつもあの様な日誌を書いていると仰っていましたが……」

「そうですが?」

「何でそれが通っちゃうのですっ。あれって日誌じゃなくて仲良し交換日記ですよねぇ!? しかも六歳くらいの子が書けそうな奴!」

「つ、つまり……雪風の日誌は小並であると仰りたい!?」

「だってそうじゃないですかっ」

「むぅうー……し、仕方ないではないですかっ。艦娘になった時の知識に読みも書きも無かったんですもん」

「……ねぇ雪風、艦娘は学習できるのですよ? 頑張ってお勉強しないといけません」

 

何処が大和のツボに入ったらしく、雪風に始まったお説教。

確かに今のままでは通常業務にも差しさわりが出かねない。

それが分かっている上に、大和の話は正論なだけに反論できない雪風だった。

 

「だって……面倒なんですよぅ。雪風は水雷屋なんですから海の上で仕事が出来れば……ダメ?」

「少しでも提督のご負担を軽くしてあげたいとは思いませんか?」

「んぐ……思います」

「まぁ……本音は婚姻届の名前くらい書けるようになって貰わないと、大和が困るからですが」

「大和さん……いや、強かになられましたねぇ」

「うふふ、それはもう」

 

艶然と微笑む大和に、内心で危機感を覚えた雪風である。

小動物の本能が、肉食獣が危険域まで侵入してきた事を教えてくれる。

しかしこうして言葉を交わしていると、大和の中にも少しずつ余裕が出来、遠くも見えるようになってきている事も感じられた。

 

「婚姻届かぁ……」

「どうなさいました?」

「ん……大和さんは、この先ずっと海で戦って生きたい……そういう望みってありますか?」

「ずっと……ずっとですか」

「はい。ほら、私達は元軍艦ですし……大和さんとか、元々望みのままに戦うとか出来なかった方ですし、そういう希望とかないのかなぁって」

「永遠に続く戦いなんて地獄と一緒ではありませんか……大和は今、世界最強の戦艦になる事は決めていますが、その先には好いた方の隣であれば何処へでもお供したいですね」

「成る程、大和さんの描く未来は、コレと決めた相手の隣……素敵ですね」

「貴女ですけどね? ではお尋ねいたしますが……私の言葉を聞いて、その上で雪風が思い描く未来ってどんな感じになるのでしょう?」

「……」

 

大和の質問は雪風の顔から表情を消した。

その反応は大和の想像から大きく外れるモノではない。

雪風は大和の気持ちを知った上で保留している。

今直ぐこの質問に答えろというのは、酷かもしれないと大和も思う。

しかし当の雪風は全く違うところで悩み、迷っていることがある。

雪風は隣の大和の顔を見上げ、やや躊躇った末に言葉にのせた。

 

「……五十鈴さんが沈んだって聞いた後から、ずっと考えていたんです。あの人何のために沈んだんだろうって」

「な、何のためにって……」

「戦うからには、どうしたって犠牲はでます。それを無くす事は出来ませんし、だからこそ無駄にして良いものではありません。そう考え時、五十鈴さんを失ったあの戦い……直接の戦闘だけでなく、その前後で第二鎮守府近海で起こった戦艦棲姫との戦いって、何の意味があったんでしょうか……大和さん、どう思います?」

「む……」

「雪風達が戦う短期的な目的は、先ず奴らからの自衛だと思います。その先にあるのは、海域奪回からのシーレーンの回復ですよね」

「はい」

「ですが……其処で終わりじゃありません。奪回した海域は確保しなければなりませんし、回復したシーレーンだって守り続けなければなりません」

「……」

「雪風達の戦いって取られたものを取り返すだけじゃ駄目だったんです。どうしても犠牲が避けられないのなら、雪風達は最終目標を認識し、味方の被害も敵の撃破もその為の手段に出来なければ、無駄な血を流すだけになってしまうでしょう?」

「……私達に足らなかったのは、その認識だと仰いますか?」

「はい。耳障りですか?」

「いいえ。続けてください」

「結論から言ってしまえば……雪風達は戦いを終わらせるために戦っているはずなんです」

「はい」

「ですが大本営の無茶な要求で、人数の少ない雪風達は戦力を割いて戦わされてしまいました。第二鎮守府なんて元々確保しようとしなければ、あの海域での戦闘なんて起きなかったじゃないですか。あそこって別に海路の要って訳じゃないし、雪風達の都合で拡大した戦線に合わせてついでに確保したってだけですよ……そんな所を無理してまで、守れって言われたわけですよ」

「そうですが……その時は此処まで攻め込まれていたかもしれませんよ?」

「その可能性もありますね。でも来なかったかもしれません。どちらにしても『もしも』である以上結論なんてでないんですが……兎も角雪風が感じる事としては、最も遠くを見ているはずの大本営が、海域確保までしか見ていないのではないか……あいつら本当にこの戦争を終わらせるって言いますか、この海を平和にするって目的を持って戦いを進めているのかなって疑問を感じたのですよ」

「む……なるほど……」

 

雪風はこの世界の軍の在り様を把握しきっていない。

彼女は大本営の下請けである鎮守府の、さらに下っ端の構成員に過ぎなかった。

しかし軍令をだしている筈の大本営が、真剣に戦っていないのではないかと感じる事は多々ある。

どんぶり勘定の戦果。

司令官の裁量に委ねられた自由な鎮守府運営。

そして各鎮守府同士でのつながりの薄さ。

これら全てが長期的な戦略の構築には不利な筈なのに放置されている。

 

「ガチガチに統制を掛けようとするには鎮守府の数が増えすぎ、守るべき海域が広すぎるのではありませんか?」

「それにしてもいい加減すぎるって思いません? なんというか……戦争ゲームでもやってるんじゃないかなって思うときがあるんですよね」

「ふむ……」

「雪風が考えたのは、この戦いが既に経済に食い込みすぎて止められなくなっているんじゃないか……とか思っているんですけどね」

「け、経済?」

「艦娘が使う四種資材とか、鎮守府に勤める人たちの食料や生活必需品……それらを用意するのだってお金が回る行為ですからね。今日戦争が終わりました、明日から鎮守府が全部なくなります……そうなったら生活できなくなる人間さんだっているんですよ?」

「それはそうですけど……現状海域の争奪は一進一退、流通はギリギリです。戦争に勝てるかどうかすら不透明な時に、勝った後の事を考えるのは先走りではありませんか?」

「……そうなんですけどね、それでも考えておかないと不味いことになるかもしれませんよ? まぁ……コレは人間というより艦娘の話なんですが」

「不味いこと?」

 

雪風はやや苦い顔で隣を歩く大和を見上げる。

少し喋りすぎたかとも思ったが、雪風としてもこの思考を一人で抱え込むのは荷が重い。

このような時、無条件で味方になってくれると分かっている大和。

その存在が如何に貴重で獲がたいものか、雪風はこの時実感した。

 

「……大和さんがお亡くなりになった後の事ですが、クロスロード作戦ってご存知です?」

「聞いた様な知識だけはあります。核実験ですよね」

「はい。長門さん達も連れて行かれて……あいつら長門さんに星条旗とか着けやがって……あぁ、思い出したら腹が立ってきた」

「雪風、雪風っ」

「……っ」

 

雪風は全身に怒気と憎悪が満ちるのを自覚し、溢れる前に呼気と共に吐き出した。

思うところは多々あるのだが、今の話には関係ない。

二回深呼吸した雪風は、何とか大和に笑みを返す事に成功した。

背筋に薄ら寒いその笑みは逆に大和の不安を煽ったが。

 

「すいません。大丈夫です」

「雪風……」

「話を戻しますと、その実験には接収艦だけでなく自国の余剰艦達も参加させられました。かつての戦争を戦い抜いた艦達に、人間が用意した末路がこれですよ」

「私達も、そうなると?」

「戦争が終われば、兵器はむしろ邪魔になります。まぁ、全くなければ困るでしょうが、戦争中と同水準があるのは異常なことでしょう? そして提督達の中にはかつての加賀さんのうちのように、艦娘を兵器としてのみ扱う所もあります。いいえ……艦娘自身の中にだって、自分を兵器だと主張するものはいるんです。戦後の艦娘がどのような扱いを受けるのか……大和さんの描く未来では、如何です?」

「私は……私には……」

 

それは大和の想像の外の話だった。

問いの答えを探すべく必死に思考を回す。

何時の間にか立ち止まっていた大和。

そんな大和に気づかず、自身の思考に没頭したまま歩き続ける雪風。

大和は一歩ずつ遠くなる雪風に声を掛けることが出来なかった。

雪風がいない戦場を必死に凌ぎ、僚艦を失いながらも任務を成功させた大和は多くの経験を一度に積んだ。

しかし再会した雪風はこの戦いそのものの行く末と、更に終戦後の未来までその視野に納めようとしていた。

少しは追いついたと思えば、また水をあけられる。

あの小さな背中に追いつき、隣を歩ける日は何時になることか。

奥歯をかみ締めて俯き掛ける大和に、雪風は肩越しに振り向いた。

 

「大和さーん、どうしました?」

「あ……いいえ、何でもありません」

 

慌てて追いつき、雪風の袖の裾を摘んだ大和。

それが精一杯頑張って妥協したものだと気づいた雪風は、自分から大和の手を握ってやる。

様々な感情が混ざり合った末、涙腺が緩みそうになった大和は必死に耐えた。

 

「雪風は、戦いが終わったらどうなさりたいですか?」

「個人的にはお世話になった皆さんにご挨拶して、それからだったら海没処分とかにしてくれても別に構わないんですが……大和さん手、痛いです」

「雪風は……大和を置いていってしまいますか? 大和は、雪風の生きる理由にはなれませんか?」

「……少し思うところがあるのです。雪風はもしかしたら、この戦いにおける戦犯になったかもしれません」

「はぁ?」

「雪風は、深海棲艦との戦いを終わらせる芽を摘んだ可能性があるんですよ……」

 

深海棲艦との戦いが無くなるとすれば、雪風には三つの状況が考えられる。

一つは艦娘と人類が全滅した場合。

二つ目は人類側が深海棲艦を絶滅させ、更に増殖の原因を突き止めて断ち切れた場合。

そしてもう一つは、双方の間に共生とはいかなくても、相互不干渉の取り決めがなせた場合。

雪風はこれまでどちらかの全滅しかありえないと思っていた。

艦娘として生まれたときから持っている知識には、はっきりと深海棲艦の危険性と理解を絶した残忍さが刷り込まれているのだから。

 

「ですが中には変わり者がいるようです。あの戦艦棲姫みたいな。もしかしたらあの姫は、この闘争を終わらせる架け橋になってくれたんじゃないか……雪風が沈めたのは艦娘、深海棲艦双方にとって奇跡みたいな存在だったのではないか……そんな気がしているのです」

「それこそ、それこそ結果論な上に都合のいい期待に過ぎないではありませんか……」

「その通りです。だからこれは根拠の無い、雪風の勘です。やっぱり薄情なんですよね、雪風は……あいつが五十鈴さんの仇だって分かったのに、討ち取った事を喜ぶより生かしておいて利用したかったとか言っているんですから」

「雪風……」

「だから……全部終わったらその時は、雪風自身にけじめを着けて楽になりたいなーって思うんですよ」

 

雪風は肩掛けポシェットから姫の角を取り出し、複雑な思いで見つめている。

視点のまるで違う雪風の思考に、胸が詰まる思いの大和だった。

納得がいかない、否定したいのにそれが出来ない。

歯がゆい思いを持て余す大和は、ふと先達の言葉を思い出した。

かつて自分の初陣の時、戦艦長門は言ったのだ。

この駆逐艦を離すなと。

 

「ねぇ雪風……」

「はい?」

「雪風が海に沈むなら、大和もお供しますから」

「なーんで大和さんまで沈まないといけないんですかー……」

「大和は雪風と共に在りたい……そう申し上げたではありませんか。雪風は、私を連れて水底に逝く覚悟はありますか?」

「ん……」

「雪風を失ったとき、誰がどれだけ悲しむのか大和には分かりませんが……それでも、先ず私が後を追う事は確定しているものと心得てくださいね。絶っっっっ対に一人でなんて逝かせません。例えそれが最終決戦前日で大和が決戦戦力に数えられていようとも、雪風への当て付けの為だけに、現世の都合を全て無視して後追い自沈して差し上げますから」

 

発言の内容と大和の性格のギャップに、思わず顔を覗き込む雪風。

大和は雪風が手元の角より自分を見た事実に満足した。

大和自身は無意識に浮かべた微笑を見た雪風は、狂気にも通じる程に透明で純粋な好意を感じ取った。

雪風がこの想いを抱えたまま沈んでしまえば、大和は本気で後を追うだろう。

口の中に溜まった唾液を飲む音がする。

そんな狂愛に焼かれる事が、一瞬でも心地よいと思ってしまった自分に内心で舌打をする。

 

「分かりました。雪風が危ないことをすると、大和さんが妙な気を起こすんだと言う事は肝に銘じておきます」

「是非、そうしてくださいね? 大丈夫。雪風ならそれくらいの縛りがあっても、きっと勝てますから」

「まーたそんな事言って雪風を甘やかす……調子に乗って雪風が失敗した時、大和さんが責任取って……いや、そうか……責任取って一緒に沈むって宣言されたんですよね……じゃあ一緒かぁ」

「その通り。病めるときも健やかなるときも、お傍においてくださいね」

 

大和に限らず、自分以外を死地に巻き込んでゆく覚悟は未だ雪風の中にない。

だからこそ大和がつけた首輪は雪風にとって有効だった。

この時、雪風も長門が大和に語った助言を思い出していた。

 

「長門さんのアレは、こういうことだったんですね……敵わないなぁ」

「素晴らしい先輩を持って、大和はとっても幸せですよ」

「何にせよ、長期的な展望を組むためには足元を支える事が重要です」

「千里の道も一歩から、ですね」

「はい。これから、先のことはまだ何も分かりませんが……とりあえず今度こそ、一緒に終戦の日を迎えましょうね」

「はい……素敵ですね」

 

雪風の言葉に万感の想いを篭めて頷く大和。

自分は戦争が終わる日を知らない。

雪風や長門がみた、あの夏の日を見ていない。

今度こそ暁の水平線に刻んだ勝利をもって、凱歌と共にその日を迎えなければならない。

大和が此処に生まれたのは、もう一度負けるためではないのだから。

 

「ねぇ、雪風……」

「はい?」

「今度こそ、勝ちましょうね」

「そうですねー。雪風なんて御国で負けて第二の故郷でも負けて、今度負けたら三回目ですよ? そろそろ勝利の美酒ってやつをお味見してみたいものですよぅ」

「あぁ……軍歴の桁が違う……」

 

頬を引きつらせる大和は、それでも雪風の手だけは離さずに着いて行く。

この小さな駆逐艦は未だ足を止める心算は無く、追いつきたいならより早く駆けるしかない。

悠長に構えてなどいられなかった。

大和は最近やっと気がついた事がある。

この駆逐艦を狙っているのは自分だけではない。

程度の差こそあれ第二艦隊のメンバーは危険だし、今回の件では司令官すら潜在的には敵なのではないかと思う。

試練の多い未来図に、大和は深い息を吐いた。

 

「ご一緒してもいいかしら?」

 

その声に振り向いた大和と雪風。

声の主は加賀だった。

髪をおろし、白の軍服に同色のタイトスカート。

戦闘空母として戦った時の衣装だが、艤装を全て取り払ったその姿は階級章が無いことを除いて人間の軍関係者にしか見えなかった。

 

「……凄い。艦娘っぽくないといいますか……錬度をまるで感じない」

「これが加賀さんだっていう予備知識があれば違和感凄まじいですけどね。知らずにしれっと偽名でも名乗られた日には雪風も素通りしそうですよぅ……」

 

同じ艦娘なら、また鎮守府の提督ならば、対峙した艦娘がどの程度の錬度を持つのかは大まかに把握できる。

今の加賀はその気配を完全に断ち切っており、人間と気配がほとんど変わらない。

それはむしろ建造直後の艦娘に近いものであり、自身の成長と共に消えていくはずの気配であった。

 

「私の改装を秘匿にするなら、錬度も見せないほうが良い。直接聞かれない限り加賀だと名乗る心算もないし、聞かれても精神疾患の予備役だと紹介されるのですからこちらの方が都合がいいわ」

「なるほど……その通りですね」

「もう少しこう……ベテラン一歩手前くらいの錬度を感じさせるとか出来ません? 気配遮断が完璧すぎて不気味なんですけど……」

「其処まで器用な事は出来ないわね……少なくとも、私には」

「そうですか……ですがそれ、便利そうですよねー。あとで雪風も練習しておきます」

「駆逐艦詐欺の次は錬度偽装ですか、この鬼畜艦は……」

「なんと! 雪風がいつ詐欺行為に手を染めたとおっしゃいますかっ」

「存在が駆逐艦の皮を被った何かよ? うちの鎮守府の駆逐艦は、皆ね」

「……加賀さんまでそんな事をおっしゃるー」

 

三隻は談笑しながら廊下を行く。

この日は第二鎮守府に着任する提督が来る予定になっている。

本来これは提督同士のやり取りになるので大和達が直接相手をする必要は無い。

しかし現在司令官は病の床についており、面談には誰かが付き添わなければならなかった。

こちらも加賀がいれば事足りたのだが、雪風も大和もお隣さんの顔を見て置きたいと考えたのだ。

 

「何にせよ、大っぴらに強いって知られてしまうよりは良いかもしれませんねぇ」

「えぇ。私に気づいて、その上でこの気配に違和感を持つような艦娘……そうね、雪風さん並の錬度をもった南雲機動部隊とかち合わない限り、先ずいないわ」

 

艦娘は基本人手不足であり、しかも空母や戦艦は絶対数が少ない。

超高錬度の正規空母などを所有している現役提督が動くとなれば必ず耳に入るものだし、そもそもからしてそんな提督は簡単に動かせない。

 

「……開業初年度で一航戦が揃ってしまうとか、提督って実は豪運持ちの方ではないでしょうか」

「私達より貴女一隻のほうが余程珍しい事を自覚なさい?」

「でもしれぇ、大和さん速攻で解体しようとしていましたけどねぇ」

「え……本当に……?」

「大和は開業直後に中抜きされて建造されておりまして……戦闘力皆無な上に維持費だけは馬鹿食いする役立たずとして作られてしまいまして……」

「あぁ……転がり込んできた幸運と情を割り切って決断するなら、申し訳ないけれど悪くないかもしれないわ……」

「あの頃の大和さんはすっごく可愛かったんですけどねぇ……」

「ちょっ!? 雪風、今は可愛くないと仰いますか」

「今は少し凛々しくなった部分が目に付いて、可愛いって感じからずれて来た気がします」

「あ、あぅ……」

「あら、可愛い」

「真っ赤ですねぇ」

 

年若い戦艦をからかう二隻。

何処かおもわゆい大和は、雪風に手を引かれたまま俯いていた。

 

 

§

 

 

翔鶴は前線に復帰する為、提督と共にある鎮守府に訪れていた。

其処はこれから自分達が赴任する鎮守府を預かっていた所であり、部署で言えば隣にあたる。

いまだ開業して間もないが、既に大和型戦艦に正規空母を二隻も揃える新進気鋭の鎮守府。

一年ほど最前線から遠ざかっていた翔鶴は、他人のうちとは言え鎮守府の雰囲気に身が締まる思いだった。

 

「翔鶴さん、緊張していらして?」

「はい……ですが私は、いつでも上がりっぱなしですから」

「久しぶりですものねぇ……此処に来るのも」

「はい」

 

もう七年になる付き合いの司令官と言葉を交わす。

本当ならば彼女は既に結婚し、幸せな家庭を築いていたはずだった。

しかし彼女はなまじ優秀な戦果を挙げた司令官であったために退役手続きに手間取り、やっと許可が下りた矢先に婚約者がまさかの失踪。

彼女と同じく一鎮守府……はっきり言えばこの鎮守府の前司令官だった男は、大本営への出向中に深海棲艦に急襲されたのだ。

その報を受けた時の彼女の様子を身近で知る翔鶴は、今でも司令官が無理をしているのを知っている。

 

「それにしても、まだ信じられませんわ……あの子、本当にこの僻地でしっかりと身を立てて頑張っていらっしゃるのね」

「流石、あの方の妹様です」

「そうですわね……わたくしも、何時までも後ろは向いていられませんわ」

 

彼女が軍部の復帰要請に応じたのは、義理の妹になるはずだった彼女の躍進に刺激された事が大きかった。

自分の司令官が精神的に立ち直ってくれたことは嬉しい翔鶴である。

彼女には恩があった。

翔鶴自身が戦って稼いだ戦果ではあるものの、彼女はそれで得る筈だった多くの年金や退職金の権利を全て放棄し、正規空母一隻を抱え込んでくれたのだ。

翔鶴は自分が今の司令官以外に使いこなせないことを知っていた。

彼女も自覚していたからこそ、翔鶴を他所に再配置させずに手元に残そうとしたのである。

それが認められたのは、悪名高い翔鶴の引き取り手が誰もいなかった為でもあったのだが。

 

「面談予定時間まであと少し……翔鶴さん、大人しくしていてくださいな? くれぐれも、くれぐれも悪い癖を出さないで。黙っていれば楚々たる美人なんですからね、貴女は」

「わ、分かっています……いえっ、美人とかそういうのじゃなくて! 自分が駄目な子なのはもう十分に……あの……」

「……あぁ、如何して貴女はこの性格でウォーモンガーなのかしらね」

「それは酷い誤解です。私は、平和が一番だと常々思っているのですから」

「今は……でしょう。戦場に立った時に全部忘れるような子の平時の発言なんて何処まで信じられまして? まさか其方にも自覚が無いわけではありませんよねぇ?」

「……しょぼん、です」

「本当に自重してくださいな。此処はわたくし達のお隣さんになるのです。司令官があの子である事を差し引いても、出来れば親密に付き合いたいのはお分かりでしょう?」

「はい……あ、ですが此処には赤城先輩と加賀先輩がいらっしゃるって……是非、ご挨拶したいって思いまして……」

「……お願いしますから、今日はお辞めになって。時間もそれ程無いことですし、あちらから出てこない場合はこちらから求める事はなさらないでくださいな」

「あ、あうぅ……」

「先ずはわたくし達のうちに就く事が先決でしょう? 其処は譲れませんわよ」

「……しょぼん、です」

 

がっかりと項垂れる翔鶴に、深い息を吐く司令官。

彼女は自分の秘書官が、現世で五指に入る航空母艦だと知っている。

しかし何事も完璧にとは行かないもので、翔鶴は一種の火種を抱えていたのだ。

普段から何処と無くおどおどしたこの鶴は、戦場に立った時に発狂する。

一度戦端が開かれれば敵を全滅させるまで止まれ無い。

被弾すれば痛がり、敵を撃破する事に喜びを見出すような性格でもないくせに戦うことを止められないのだ。

旗艦にすれば僚艦が全滅しても敵と戦い続け、一人で全て沈めてくる。

別の艦の随伴に据えれば、撤退命令も耳に入らず最後まで単艦でも戦ってしまう。

自身の大破、もしくは自分以外の僚艦が全滅する代わりに、敵部隊も必ず全滅させて来る翔鶴。

更に厄介なことに、翔鶴は軍役にある間は戦う事を自分自身に課していた。

 

「……」

 

精神鑑定と専門医の診察を繰り返し、分かった事は翔鶴の中に巣食う尋常ではない焦りであった。

他はどうだか知らないが、この翔鶴は世界最強の空母機動部隊……一航戦に凄まじい拘りがある。

初めて建造された時、ごく自然に自分の事を一航戦と名乗った翔鶴。

それは自分が最強であるとの自負から出た発言ではない。

赤城と加賀の亡き後、その名は自分達が襲名しなければならなかった。

それがどれだけ身の程をわきまえないものであるか。

それがどれだけ不遜なことであるか。

全て理解した上で、翔鶴は一航戦になった。

一航戦とは最強の代名詞なのだと固く信じる翔鶴にとって、自分達が後を継げなければ、その名と座は敵のものになってしまう。

この翔鶴にとり、前世で赤城と加賀を失った後の戦いとは自分が沈む瞬間まで、一航戦の名を死に物狂いで守り抜く事だったのだ。

そんな意識のまま艦娘になった翔鶴は物静かな性格と容姿を持ちながら、その内心で狂おしい焦燥感に煽られている。

翔鶴は強くならねばならなかった。

かつて憧れた先輩達と再会し、自分には過ぎた名を返すその日まで、一航戦翔鶴は負けるわけにはいかないのだから。

一種の強迫観念を抱えた翔鶴を、最初は司令官すら持て余した。

しかし何処の鎮守府でもそうだが、開業間もない頃の運営は決して楽なものではない。

正規空母一隻を遊ばせておく余裕は無く、戦況は病気の翔鶴すら使いこなすことを司令官に要求した。

僚艦を持たせる事すら危険な翔鶴は砲撃支援部隊で分けて運用するしかなく、しかも彼女が一隻でも沈まぬ戦場を見極めて投入しなければならない。

翔鶴は淡々と出撃し、毎回大破しながらも敵部隊を沈め続けた。

司令官にとって胃が痛くなる、それはチキンレース。

そして……このコンビは命がけの勝負に勝ち続けたのだ。

一隻で一個艦隊に匹敵する戦果を挙げる翔鶴を、ギリギリの線で決して沈ませる事無く運用し続けた彼女は若くして実績と地位を得た。

しかし弊害も発生した。

ほぼ最初期からコンビを組んで来た二人が二年と少し立った頃、翔鶴は悲願であった赤城との再会を果たす。

そして驚愕と共に絶望した。

再会した赤城は、栄えある南雲機動部隊の旗艦は、翔鶴よりも弱かったのだ。

決してその赤城が特別に劣っていたわけではない。

悪徳鎮守府もかくやと言うほどの運用を自らに課し、その反面で司令官からの手厚い理解とフォローの元で戦い続けることが出来た翔鶴。

ある意味で理想の実戦を繰り返して練り上げた力は、何時の間にか大多数の艦娘を追い越していたのである。

その後幾人かの一航戦と出会ったが、いずれも翔鶴には敵わなかった。

こうして一航戦の看板を何処にも置けなくなった翔鶴は、また一つ悪名と共に病気を増やすことになったのだ。

 

「お待たせいたしました」

 

その声と共に入室してきたのは、四人の女性だった。

一人は自分の司令官と同じ軍服を着た、この基地の提督。

そしてその後ろに並んでいるのは、二隻の艦娘と一人の人間。

翔鶴は白い軍服とタイトスカートの女性が艦娘の横に並んでいる事を不思議に思ったが、第一印象は間違いなく人と判断したのである。

しかし感性の何処かに引っかかるものを感じた翔鶴は、意識だけはその女性から離せなくなった。

 

「隣の鎮守府に引っ越して来た者ですわ。以後、お見知りおきを」

「……その気持ちの悪い話し方を聞くのも久しぶりですが、お元気そうで良かったですよ」

「今はどちらかと言えば、貴女の具合が悪そうですわねぇ……大丈夫でして? お義姉様が看病して差し上げましょうか?」

「お黙りなさい同い年。何がお義姉様ですか赤の他人……いいえ、この泥棒猫が」

「わたくしが猫なら、そちらは負け犬と言った所かしら? 遠吠えが耳に心地よいですわぁ」

 

婚約者の妹と兄の婚約者。

しかしそれ以前に幼馴染だった両者は決して仲が悪いわけでは無い。

兄が結婚を決めたとき、妹も分かってはいたのだ。

多分この幼馴染以外に兄に嫁の来手など居ないだろうと。

しかし無自覚にブラザーコンプレックスを患っていた妹は大いに荒れた。

まして間に入ってくれた男が居なくなった今、二人の会話が多少硬くなるのも致し方ない所であった。

両司令官が旧交を口喧嘩で戻していくのを生暖かく見守る艦娘達。

翔鶴は今一度、入室してきたメンバーを確認する。

長身の艦娘は、この鎮守府の名物である大和だろう。

感じる錬度はそれ程高い気がしない。

だが、生まれ持った大和型戦艦の艤装は多少の錬度差などものともせずに覆すだろう。

翔鶴としてはむしろその隣に並ぶ小さな駆逐艦が持つ雰囲気に感嘆せずには居られない。

現役の時も殆ど出会ったことは無い、自分との相対比較でどちらが上か分からない相手。

艦娘として生まれ持った知識が、この駆逐艦が雪風である事を教えてくれる。

今一人の人間は……

 

「ん……?」

 

翔鶴はこの時、やっと人間だと思っていたその女性に違和感を持った。

妙な既視感が胸を過ぎる。

自分はこの女性に会った事が在る。

記憶はそう告げてくるが、どれだけ思い出そうとしてもその容姿に該当するものが無い。

自分の思考に没頭した翔鶴は、気付かぬうちにその女性を凝視していた。

そして目が合うと同時に嘆息し、無視するように自分から視線をそらす彼女。

自分の事を歯牙にもかけない仕草。

少なくとも翔鶴にはそう見えた。

自分は彼女を思い出せないが、彼女は自分を知っているのだとすれば……

自分達、元五航戦にこの様な態度で接する存在には覚えがあった。

 

「ぐっ……こほっ」

「ちょっと……苦しいなら休んでいなさいな。引渡し書類一式は何処にありまして?」

「……すいません、着替えに手間取りましてまだ自室に……」

「では、取りに行くついでにお送りいたしますわ。其方の方もどなたか……」

「それでしたら、私が――」

「お待ちください」

 

自分の言葉を遮って一歩踏み出してきた後輩に、加賀は深い息を吐く。

自分に気付きそうな存在の中から完全に鶴姉妹を除外していた加賀である。

軽く見ていた心算は無いが、結果としてそうなってしまったらしい。

しかも加賀から見た時、この翔鶴から感じる錬度はなかなかに見るべきものがあった。

気付かれるかもしれないと思ったし、そんな翔鶴が自分を凝視している為に思わず目をそらしてしまった。

その行動は何らかの確信を相手に与えたらしい。

翔鶴の声に、嫌な予感と共に振り向いた司令官。

その瞳に純粋で熱っぽい好意を感じ取った彼女は、相棒の病気が出てしまった事を理解した。

 

「あの……もしかして、こちら艦娘さんでいらっしゃいましたの?」

「はい。加賀さんですが……今は専門家に精神の疾患を認められておりまして……予備役に編入させていただいているのですよ」

「よ、よりによって……翔鶴さん、ちょっと」

「……」

「ちょっと翔鶴さん! その方、予備役ですから悪い事は……」

 

司令官が何か言っているが、翔鶴は理解出来ていなかった。

何度経験しても、先輩達と再会する瞬間は心地よい。

只管に前を行く、遠い背中を追いかけていた頃の気持ちが甦って来る。

一度は失ってしまった先達への懐かしさと愛おしさが、翔鶴の声を潤ませた。

 

「加賀先輩、お久しぶりです」

「……良く、分かったわね」

「それは勿論……って言いたいところなんですが、最初は分かりませんでした。申し訳ありません……ですが、加賀先輩もお人が悪いです。明らかに、知らん振りしていらっしゃいましたよね……」

「別に、今更出会ってどうという事も無いでしょう?」

「あぁ、酷いです……私の、私達の事なんて見てもくださらない加賀先輩……だけど、それが許される強い人……」

 

夢見るように訥々と語る翔鶴。

加賀は諦めたように息を吐いて翔鶴と向き合った。

加賀の司令官は不思議そうに首を傾げ、翔鶴の司令官は暗澹とした表情でため息を吐いている。

 

「加賀先輩。一手、ご指南お願いします」

 

相手が一航戦と見れば嬉々として演習を持ちかけ、気が済むまで叩き潰す一航戦殺し。

それが翔鶴についた悪名であり、否定しようの無い素行であった。

本音の部分では潰したいのではなく潰されたいのだが、そんな事を知っているのは彼女の身内だけである。

艦娘としては長いが悪徳鎮守府に赴任して酷使されていた加賀や、着任から日が浅い今の加賀の司令官は翔鶴の悪名を知らなかった。

司令官が一度退役の手続きを行い、翔鶴もそれについていった為に噂が一度鎮火していた事でもある。

 

「……」

 

翔鶴程の錬度を持った艦娘が高ぶる戦意を向けた時、それを感じる事が出来るものには息苦しいまでの圧迫感がある。

大和は頬を引きつらせているし、雪風は面白そうに翔鶴を見つめていた。

加賀も当然威圧を感じているのだが、当の翔鶴は純粋な尊敬と敬愛を湛えている。

後輩の様子を不思議に思いながら、加賀の取った反応は常識的なものだった。

 

「……貴女、こっちに来てどれくらい?」

「もう、六年……七年目になります」

「そう。ならば今更、私から言うべきことも無いでしょう」

「そんな事はありません。私は、ずっと先輩の背中を追いかけている身ですから」

 

そう言って微笑む翔鶴に、加賀はその両手をとって握り締めた。

予想通り硬い感触。

弓を握り矢を番え、放ち続けた掌だった。

きょとんとしている後輩に、加賀は近しいものにしか分からぬほどの微かな笑みを浮かべる。

翔鶴がそれに気付いたかどうか、それは分からなかったが。

 

「貴女の錬度は十分に実戦で通用するでしょう。なら今日まで貴女を海で生かしてきた答えこそ、貴女にとって正解なのよ。未熟な新兵ならば、加賀として活を入れるでしょう。ですが貴女に、そんな必要は感じません」

 

あの一航戦の片翼、航空母艦加賀が自分を認めてくれている。

翔鶴は言葉につまり、胸の奥からついて出たものが涙となって一筋おちた。

歓喜の感情が全身に行き渡り、鳥肌となって震えていた。

欲しかった言葉を欲しかった人に貰えた翔鶴は更に溢れそうになる涙を堪える為に上を向いた。

 

「大丈夫?」

「……あ、はい。すいません、少し感動してしまって……」

 

暴走する歓喜を少しずつ押さえつけ、深呼吸した翔鶴。

そして真っ直ぐ加賀を見つめ返して宣言した。

 

「遅くなりましたが、自己紹介させてください……第一航空戦隊、翔鶴です」

「へぇ……一航戦……翔鶴ねぇ」

「お気に召しませんか?」

「いいえ。実感が無いだけよ。私や赤城さんが沈んだ後の事だから、どうしても伝聞と資料でしか触れる事が出来ないの」

「そう……かもしれませんね。それで……貴女は、一体誰なのですか?」

 

翔鶴の名乗りと質問の意図する所は、加賀にも分かる。

彼女が自分に求めている返答も、なんとなく分かった。

最早この後輩に偽りを持って接する事は出来ない。

一航戦翔鶴とは、自分が沈んだ後に彼女が背負った名前である。

目の前にいる艦娘は自分が知っている頃の未熟な五航戦ではない。

かつての戦いで戦没するその時まで、加賀達の敗北のツケを払い続けた歴戦の航空母艦。

受けて立つ事を、加賀は決めた。

 

「第一航空戦隊所属、航空母艦、加賀です」

「加賀先輩。貴女にとって、一航戦とはなんでしょうか?」

「……私にとって、一航戦とは……型によって繋がる事の出来なかった妹と、結んでくれた絆かしら」

「……」

「今度は貴女の番よ。貴女にとって一航戦とは?」

「最強の代名詞です」

「最強……か」

「はい。最強の機動部隊……それが、第一航空戦隊です」

 

深い息をつき、加賀は上を向いた。

真っ直ぐな尊敬を向けて瞳を輝かせている後輩の顔を見ていられなかった。

せめて彼女が艦娘として走り出す時、妹の瑞鶴が傍にいれば……

その手が、声が届くところに妹が居れば、翔鶴も今生の生き方を定めなおす事が出来たかもしれない。

 

「……姉の面倒くらい自分で見なさいあの馬鹿鶴。此処にきたら絶対弄り倒してあげるわ」

 

この場に居ない相手に文句を言っても仕方ない。

まして瑞鶴のせいではない事など加賀自身分かっているが、八つ当たりする気持ちは止められない。

加賀をしてそう思うほど、この翔鶴は純粋に狂っていた。

 

「先輩、何か?」

「……気にしないで。歳を取ると独り言が多くなるのよ」

 

一航戦の名に、本来所属識別以外の意味など無い。

もしも意味を持たせるとすれば、それは背負った各人が自分で定めるものである。

翔鶴は最強の称号として一航戦を語った。

そんな幻想を持たせたのは、間違いなく自分と赤城だろう。

最強を語り、それに見合う錬度に登り詰め、その上で今も自分に純粋な敬意を向けてくる翔鶴。

加賀はこの後輩が辿って来た道を容易に想像出来てしまう。

当人は自覚していないだろうが、それは辛い道のりだった筈だ。

翔鶴にそんな道を選ばせた責任の一旦は自分達にある。

加賀は翔鶴の司令官と視線を合わせ、深く頭を下げた。

この壊れかけた後輩を、ずっと見捨てずに居てくれた事を感謝したかった。

 

「提督……演習海域の使用許可をいただけますか?」

「それは構いませんが……」

「加賀さん……うちの子の我侭に、お付き合い頂く必要はありませんわ」

 

翔鶴の司令官は苦々しく告げてくる。

しかし加賀には確信めいたものが一つあった。

それを確認するために、聞いておきたい事がある。

 

「司令官殿……恐らくこの翔鶴は、今日のような事をずっと繰り返してきたのではありませんか?」

「……はい」

「その中で赤城と加賀のうち、翔鶴と手合わせを拒んだモノが、一隻でもありましたか?」

「……」

 

目を伏せてうつむいた彼女の様子が、雄弁に答えを語っていた。

そうだろうなと加賀は思う。

第一航空戦隊は赤城と加賀だけのものではない。

しかし少なくとも自分達なら、この翔鶴と出会って素通りはしない気がするのである。

今まで翔鶴が出会った赤城や加賀は、自分こそが翔鶴の背負った負債を返さんと後輩の前に立ちふさがったのだろう。

だが、誰も止める事は出来なかった。

其れほどまでに翔鶴は強くなっていたのである。

 

「翔鶴……貴女の望み通り、一戦交えましょう」

「ありがとうございます!」

「ただし、条件があるわ」

「頼んで挑むのは私です。何でも仰ってください」

「私が貴女と戦うのはこれが最初で最後……どのような結果になろうと再戦は受け付けませんし、私から望む事もないでしょう」

「……」

「いいかしら?」

「……わかりました。全力で参ります」

「よろしい。雪風さん、翔鶴を案内してあげてください」

「承知しました。こちらへどうぞ、翔鶴さん」

「ありがとうございます」

「大和さん、モニタールームを動かしていただけますか?」

「わかりました」

 

加賀の頼みを聞き入れた二隻は、それぞれ指示に従って動き出した。

 

「加賀さん……申し訳ありません。うちの翔鶴が大変失礼を……」

「いえ、これは司令官の問題というより、私達があの子に作った心の傷ですから。提督、私も準備がありますので、少し時間がかかります。先に事務手続きを済ませておいてください」

「わかりました。それで、勝算はあるのですか? 彼女、だいぶ強そうに見えましたが……」

「……きっと、見ていて心躍るような展開にはならないわ」

 

それだけ言うと加賀も一礼して退室する。

一時間後、加賀が演習に持ち込んだ艤装はV字の飛行甲板と艦載機のみという完全な空母スタイル。

衣装も以前の和装であり、戦闘空母の面影は見られなかった。

対する翔鶴も揮下の第六〇一航空隊を完全に揃えており、戦意の高揚は誰の目にも明らかだった。

 

『それでは、始めてください』

 

モニタールームを操作する大和の声で始まった、新旧一航戦の航空戦。

第一攻撃隊が発艦し、制空権を奪い合う。

空を制したのは翔鶴。

それぞれの元に届いた爆雷撃機の数は五対一で翔鶴有利。

被弾数は加賀が三つの所を翔鶴が一つ。

それで終わった。

演習開始から僅か二十分。

翔鶴はたった一機の爆戦による、たった一度の爆撃で大破判定を下された。

対する加賀の損傷は中破止まり。

最強たる本物の一航戦に一蹴される事を望み続けた翔鶴は、この日初めてその夢をかなえられた。

しかし後から思い出したとき、敗北の実感すら持てぬまま蹴散らされたこの演習は、翔鶴にも悔し涙を滲ませる事となったのだ。

 

 

§

 

 

漆黒の空に浮かぶ大きな月。

その輝きに星の光すら霞む夜空の下、二隻の深海棲艦が海を渡る。

 

「良イ月ダ……今宵生マレ出ヅル姫ハ、幸福ダノ」

「……ソンナモンカナ?」

「ウム」

 

二隻が北の泊地を出発して、既に三日。

特に寄る場所も無いまま夜通しの移動なのでかなりの距離を稼いでいる。

目的地は今夜、新たな姫が生まれる海。

しかし出発が唐突な思いつきだったため、既に姫は戻っているだろうとは青目の空母の予想である。

 

「ソレデモ、行クカネ?」

「行クサ。コノ目デハッキリ見テオカナイトネ……アイツハ、モウイナイッテ」

「フム……傷ガ膿マヌ様ニ敢エテ切リ開クカ。態々傷ヲ増ヤサンデモ良イト思ウガ」

「アァ、損得ヨリ感情優先スルノハ、馬鹿ダヨネ……」

「其処マデ分カッテ……止マレルモノデモ無イヨナァ」

「ウン。吹ッ切ルニハ、ヤッパリアイツト同ジ存在ヲ見ナイト自分ガ納得シソウニナイ」

 

同じ存在で違う戦艦棲姫を見た時、自分が冷静で居られるかは判らない。

しかし少女はどんな姫が生まれたとしても、自分にとっての姫は先代しかありえなかった。

傷つくのは間違いないが、彼女の残滓をこの世に期待してしまう心はどうしても少女に絡みつく。

痛い目を見なければ自分が懲りないと思い知った少女は、唯一人泊地を抜け出したのだ。

青目の空母は、その際勝手についてきた。

 

「クレグレモ、妙ナ気ハ起コサンデクレヨ? ワシトシテハ、ヌシガ姫ニ殴リ掛カリハセンカト不安ナンダガ……」

「其処マデ阿呆ジャナイゾ? 何デ僕ガ姫種ミタイナ化ケ者ト喧嘩シナケリャナラナイノサ……」

「若者ハ理ヨリモ好キ嫌イデ動クデナァ……」

「気持チノ整理ヲツケニ来タダケダヨ。一目見タラ帰ルッテ」

「ウム。触ラヌ姫ニ祟リ無シ」

 

青目の言葉に頷く少女。

実のところ少女にとって、鬼や姫が強い事は認めても殆どが勝てない相手と思った事はなかったりする。

むきになってそう主張した所で、青目は信じないだろうが。

やがて目的地が近づくと、二隻に耳に遠い爆音が届く。

聞き違いでなければ、アレは主砲の発砲音だ。

しかも少女が耳に慣れ親しんだ、大口径の主砲である。

 

「戦ッテルノカナ?」

「…………ドウカノ」

 

首を傾げる少女に、眉をひそめて返した空母。

戦っているのなら、二種類以上の音が響くはずだ。

再び響いた轟音は同じ音。

撃ち込んでいるのは片方な気がする。

音の方向を目印にしばし進むと、その正体が判明した。

 

「……何ダアレ?」

「……血祭リ……カノ」

 

少女の視線の先にあるのは、完全武装の戦艦棲姫。

その左右には装甲空母の鬼姫を侍らせている。

彼女らが酷薄な笑みの向こうに見据えるのは一隻の艦娘だった。

少女はその艦娘に見覚えがある。

かつて先代が鹵獲し、飼っていた駆逐艦。

漆黒の水兵服を改造した様なワンピース。

長い銀色の髪が、月下に煌き揺れている。

戦艦棲姫が主砲を放つ。

立て続けに撃ち出される16inch三連装砲。

艦娘の駆逐艦が綺麗に見切って回避する。

その後を追うように次々と上がる水柱。

 

『あんた一体何があった訳!?』

『別ニ何モ。起キタラ目ノ前ニ艦娘ガイタノ、誰ダッテ沈メルデショウ?』

『ソノ通リデスワ姫様』

『ソノ通リデスワ姫様』

『サラウンドして喋ってんじゃないわよ気持ち悪い! 後あんたらに聞いてないっ。こっちの話が終わるまで黙ってなさい』

『マァ酷イ、傷ツクワ……』

『姫様、ワタクシ達モ……』

『勿論、良イワヨ』

 

戦艦棲姫の言葉に満面の笑みで頷くリボン姉妹。

二隻の空母から解き放たれる、五十機程の艦攻爆機。

駆逐艦一隻を沈めるには過剰な戦力だが、なんと艦娘はこの攻撃を避けきった。

先程から戦艦棲姫の砲撃に対しても被弾を許してはおらず、相当の錬度が予想される。

最も、その艤装は最低限であり攻撃手段は皆無である。

 

「要スルニ、嬲リ殺シカ」

「ウム。ソウトシカ見エンノ」

「フーン……ン?」

 

少女は戦艦と空母の鬼姫達の血祭りの脇で、一塊になっている十隻程の駆逐艦が目に付いた。

全員が赤、若しくは黄金の波動を持っている。

駆逐艦達は姫の血祭りに参加するでもなく、唯見ていた。

その視線が標的ではなく、全て戦艦棲姫に注がれている事にやや違和感を覚えた少女。

しかし特に理由等思いつかぬまま、再び轟音に意識を割かれた。

 

「……」

 

空気を引き裂いて襲い掛かる砲弾。

そして降り注ぐ爆弾と差し込まれる魚雷。

艦娘はそれらを回避し続けるが、ついに真下から被雷した。

装甲の薄い駆逐艦はたった一本の魚雷で半壊している。

艦娘は未だ必死に訴えていた。

戦艦棲姫は艦娘の言葉の意味が分からないだろう。

しかし少女には分かってしまう。

あの艦娘は、戦艦棲姫が先代だと思って訴えているのだ。

少女の中に正体不明の、しかしはっきりと不快に感じるものが芽生える。

自覚してから数秒でその感情に耐え切れなくなった少女は、理性が止める間もなく副砲を放つ。

標的は艦娘ではない。

彼女が狙ったのは、深海棲艦の大戦艦。

戦艦棲姫その人である。

 

「ン!?」

 

後方の、しかも味方と思しき存在から撃ち込まれた砲撃が姫の電探に捕捉される。

訳がわからないままとっさに回避した戦艦棲姫。

砲撃を受けた方向に視線を向けると、副砲を向ける小さな戦艦の姿を捉えた。

 

『同族ガ……何ノ心算カシラ?』

『ソイツハ先代ガ鹵獲シタ先代ノ遺産ダロ? 誰ノ許可ガアッテ汚イ砲身向ケテンダ……アバズレガ』

 

駆逐艦のような体躯の小娘から放たれた暴言。

戦艦棲姫の胸中が不快に淀む。

以前の自分とこの少女がどのような関係だったかは知らないが、これほどの無礼を受けて笑っている程甘くはない。

 

『貴女ハ、身ノ程ヲ知リナサイ』

『……』

 

少女は自分でも驚くほど静かな気持ちで新たな姫を見つめていた。

少女の姫は敵であろうと弱者を嬲ったりしなかった。

感情は安定せず、些細な事で直ぐに半泣きになって、膨大な能力を無駄な事につぎ込んで、努力家のくせの方向性は盛大に間違っていた先代の姫。

彼女と同じ顔で、同じ声で実行される蛮行が少女の気持ちを残酷なまでに整理する。

最早目の前にいる姫を此処で沈めてしまう事になんの躊躇も感じない。

隣で青目が盛大にため息をついている。

 

「青目ハサッサト逃ゲトケヨ」

「ヌシハ如何スル心算カネ?」

「アノ姫……ナーンカ気ニ入ラナイカラ、沈メテヤルノサ」

「……ヌシハ先刻自分デ語ッタ言葉ヲ、モウ忘レタカ」

「ウン。僕ッテ阿呆ダッタミタイダネェ」

 

けたけたと笑いながら歩み出る少女。

悠々と反転した戦艦棲姫と真っ向からにらみ合う。

青目の空母は少女の傍から離れなかった。

 

「邪魔ダッテンダヨ」

「マァ、ソウ言ウナ。取リ巻キクライ捌イテ見セヨウ」

「取リ巻キッタッテナ……アイツラ一応、姫ト鬼ダヨ?」

「フム……マァ何トカスルサ」

 

艦娘を嬲っていた艦載機を収容した装甲空母の鬼と姫。

二隻は戦艦棲姫の左右につくと、その腰しな垂れるように取り付いた。

 

『アラ……水マフジャナイ。久シブリネ』

『貴女ノオ陰デ私達ノ姫ガ帰ッテ来タワ』

『アリガトウ』

『アリガトウ』

『……其処ノソレガ、オマエ達ノ姫ナノカ?』

『エエ、ソウヨ。私達ノオ姫様』

『偉大ナル、戦艦ノ姫タル方ヨ』

『……ソッカ』

 

少女が始めて戦艦棲姫と出会った時、既にその両翼には装甲空母が侍っていた。

きっと少女と出会う以前から、ずっとそうしていたのだろう。

しかし今にして思えば……先代は決して装甲空母達に心から懐いてはいなかった。

それは戦艦に拘る彼女の思想ゆえかと思ったが、もしかしたら違ったかもしれない。

少女の姫はきっと、こうなる事を知っていた。

代が変われば自然と次の姫に移ろっていく。

善悪の問題ではなく、そう在るべくして在るのだろう。

それならば、寧ろ少女には処刑されている艦娘の方がまだ真っ当な存在に見える。

あの駆逐艦の艦娘は、戦艦の姫では無く先代の姫を探しているのだから。

 

『駆逐艦一隻ジャ喰イ足リナイダロ? 僕トモ遊ンデヨ』

『私ニ砲ヲ向ケルナラ、誰デアッテモ沈メルワヨ』

『沈メル……オ前ガ? 僕ヲ? ……戦艦ノ醍醐味モ知ラ無イ阿婆擦レガ調子ニ乗ルナヨ』

 

少女は不敵に笑いながら悠々と距離をつめる。

その様子に戦艦棲姫は臨戦態勢を取り、装甲空母達も全艦載機を発艦する。

装甲空母の鬼姫は、この小さな少女が規格外の航空戦艦であることを知っていた。

しかし姫種でも鬼種でもない小さな戦艦を、内心で侮る気持ちも存在した。

自分達の空母としての性能が、たった一隻の航空戦艦に負けるはずが無い。

 

『主演ガ出張ッテオルノニ、脇役ガシャシャッテ来ルデナイ』

 

それは青目の空母の言葉。。

装甲空母の発艦を見届けた青目は、自身も搭載している艦載機を飛ばしてゆく。

その手際は必ずしも機敏とは言えず、一隻また一隻と確認するように送り出す。

 

『ヒトォーツ、フタァーツ、ミィーッツ……』

『アラアラ……日ガ昇ッテシマウワヨ?』

『ノンビリ屋サン? ノンビリ屋サン!』

『ニジューハチ、ニジューク…………サンジュキュウ、ヨンジュウ……』

 

もたもたと発艦していく青目の空母。

その様子を生暖かく見守っていたのは姫や鬼に共通する、自身の強さを根拠とした絶対の自信ゆえだった。

青目は態々敵の発艦を待つ阿呆共に失笑する。

しかしそれならばと茶目っ気を発揮した青目は、指差し確認と点呼を取りつつゆっくりゆっくり発艦していった。

徐々に青目の機体で埋まってゆく空。

そのカウントは六十になり、八十になる。

それが三桁になった時、装甲空母達の背筋に薄ら寒いものが過ぎった。 

 

『ヒャクジュウ。ヒャクジュウイーチ、ヒャクジュウニー……』

 

発艦が終わらない。

しかも青目が放つ艦載機は大型にして高性能の機体ばかり。

それを百隻以上積んだときの戦力は鬼や姫にも迫るだろう。

 

『ヒャクヨンジュウサン、ヒャクヨンジュウシ……ホレ、ソッチハモウ打チ止メカ?』

 

からかう様に笑む青目。

その様を肩越しに振り向いた少女が苦笑してみている。

これなら自分の艦載機を使わず、一隻の戦艦として戦艦棲姫と対峙出来る。

少女としては青目を庇いながら戦う必要が無くなるだけで大分楽になった。

 

『デハ、待タセタノ……行クゾ』

 

打ち止めでなくとも、敵を待つ心算などさらさら無い青目の空母。

一方的に宣言すると、全艦載機が行動を開始する。

舌打しつつ迎撃戦を展開する装甲空母達。

青目の空母一隻と、装甲空母鬼と姫二隻の航空制圧力はほぼ互角。

空の戦いが拮抗する中、海ではついに戦艦棲姫と少女が20000メートルの距離で向き合った……

 

 

―――――to be continued

 

 

 

――極秘資料

 

No9.戦艦大和

 

現提督の就任初日、初の大型建造でツモった奇跡の象徴。

第一艦隊の旗艦を勤めるが、秘書艦の仕事は加賀がこなしている。

 

 

・居住性

 

機能1.艦娘が言うと意味深です。

機能2.大和が関わる空間の衣、食、住環境が向上します。

機能3.所属する鎮守府内でのコンディション値の回復幅と回復速度が微増します。

機能4.補給艦に迫る様々な料理を作成でき、艦娘達の士気を高揚させます。

 

 

・空間把握

 

機能1.認識できる範囲の物体の距離や速度を正確に把握する事が出来ます。

機能2.砲撃時、弾丸の飛距離を殆どそのまま命中射程にしてしまえます。

機能3.砲撃時、命中に+5の補正が掛かります

機能4.電探や水上機との併用で更に精度が上がります

 

 

・才能

 

機能1.艤装のみならず、本体の性能も規格外です。

機能2.認識した戦闘スキルを把握し、大まかに自分のものにします。

機能3.コピーしたスキルを使う場合は行使判定で達成値に-2の補正を受けます。

機能4.スキルをコピーする為には成功判定が存在します。

機能5.成功判定は伝聞で-6、海戦の別戦場で-3、直接戦闘の相手から-1の補正を受け、それが砲撃関連のスキルの場合は+2の補正が掛かります。

 

 

・?????

 

機能1.数値で表す深度です。

機能2.昼戦の火力キャップが開放されます。

機能3.侵攻深度によって砲戦火力が増減します。

機能4.侵攻深度によって装甲、耐久の値が増減します。

機能5.侵攻深度によって戦闘行為に悪影響を及ぼす精神状態を抑制できます。

機能6.この数値は深海棲艦の撃破と味方艦艇の撃沈、または該当する感情によって累積します。

機能7.この数値は該当する感情によって軽減します。

機能8.この数値を一定以上累積すると第二段階に移行します。

 

 

 

 




あとがき

かつて艦これを始めたばかりの頃……私は赤賀を愛していました。
やがて瑞加賀の尊さに目覚めてその美しさに祈りを捧げました。
そして翔賀の可能性に気付いたとき、私は目が覚めました。
あぁ、私って片方が加賀さんなら何でもいいんだなと。




どもリふぃです。
業務日誌二十話、此処にお届けいたします。
いや……誰でしょうね二十話で〆るよとかぶっこいてたの。
見通し甘いですよね。
焼き土下座でもしてお詫び申し上げろっていうかどの面下げて投稿してんだって感じ?
……支部が300000字とかになってたから油断してましたすいません;;
ハメさんが一話40000字なんですよね。
このペースだと足らなくなるので一旦此処で切らせて頂きたいと思います。
先代戦艦棲姫が沈んだ時、海は平和になったと(この作品ではもう海戦書かなくていい的な意味で)思っていました。
甘かったですねorz
いま少し、雪風の業務日誌にお付き合いください。
それでは、次のお話でお会いしましょう。
寒くなってまいりましたが、皆様お風邪など召されませぬようお気をつけくださいませー。







追記
秋イベは初日に1、2海域。
二日目に3海域。
三日目にEO終わりました。
E-3攻略中に朝雲も出たので、まーったりしております。
やっぱり夏が異常だったんですね。
冬はどうかな・・・・流石にもう無いのかな?



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