ベタな話   作:豆肉

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オリジナル作品です。試行錯誤でやっていきます。


第1話

空から女の子が降ってくる。

使い古された展開だ。こういう展開の場合主人公は落ちてきた女の子を受け止めるなりその娘の下敷きになったりする。だが実際そんなことになったらどうなるだろう。

こういう展開の場合落ちてくる女の子の年齢は大体10代後半が多い。どう考えても40キロは超える。

もしそんなもの下敷きになったらただじゃ済まない。

実際俺は入院している。

2週間前のことだ。ゲームを買った帰り道に「どいてー!」という女の声が上から聞こえたと思った時にはもう遅かった。背中に衝撃が走りそのまま意識を失った。若干猫背だったのが幸いした。もしあの衝撃が頭に来てたと思うと冷や汗が止まらない。

入院している理由は内臓破裂と足首の骨折。むしろこれだけで済んだのは幸運だ。今なら神様だって信じてもいい。

それにしても俺をクッション代わりにした女、どうやら救急車をよんですぐに消えてしまったらしく現場には倒れた俺しかいなかったらしい。

見つけ出して叱ってやろうかと思ったけど手がかりが何もないため諦めた。

それだけでも気が沈むってのに、医者から言い渡された全治2か月。高校に入って3日目だというのにこのありさまとか泣けてくる。

勉強は自分で何とかするとしても友達作りとかどうするんだよ……

俺はそんなに社交的な方じゃないんだぞ。この部屋も個人部屋だからよかったが、もし集団部屋だったら周りの人と仲良くやれる気がしない。

 

「まーた難しい顔して、禿るよ?」

 

声をした方を見るといつの間にかナースさんがいた。これが俺の入院生活での救いその1。ナースで従姉の笹本由香里さん。

由香里さんはこの病院の院長の一人娘で自身もこの病院で働いている。それで融通が利くのか俺が入院したとき俺の担当になってくれた。ありがたいことだ。

 

「そんなに私を見つめて……婚姻届と印鑑はここに有るからちゃんと書いておいてね」

 

近くの棚に婚姻届の紙とペン、そして印鑑が置かれる。

時々このようなドギツイ冗談を言ってくるが基本的にいい人だ。

 

「いっとくけど書きませんよ?だいたい俺はまだ15です」

「あと3年かぁ……待てるな」

 

キメ顔で恐ろしいことを呟く由香里さん。俺なんか待ってないでいい人捜してください。

ゴォン! ドアからものすごい音が聞こえた。由香里さんが顔がすごい怖い顔でドアの方を睨みつける。しばらくするとドスのきいた恐ろしい声が聞こえてきた。

 

「開けろよ。なぁ、いるんだろう年増。オイ、開けろよ」

 

この声の正体、ドアの向かい側にいるのは我が愛しの妹。梅田マキだ。

我が妹はいわゆるブラコン、お兄ちゃん大好きっこなのだ。お兄ちゃんが他の女といるのが許せないぐらいに。基本的に可愛いやつなのだがいい加減兄離れしてほしいものだ。

 

「大丈夫よ。ここの扉は特別性、ロケットランチャーだって防げるわ」

 

由香里さんはニコリと笑いとんでもない情報を教えてくれた。なんでそんな仕様にしてるか不思議だ。要人でも入院させる気なのだろうか。

バリィンッ! 窓の方からガラスが割れる音とともに妹が飛び込んできた。何をしてるんだよ。その割ったガラス代は我が家の生活費から削られるんだぞ。

 

「チィッ!」

 

由香里さんが舌打ちをしどこからともなくメスを一本取り出しマキに投げつける。マキはそれを躱し由香里さんとの距離を一気に縮める。マキは柔術をベースとした我流武術の使い手で接近戦ではそこいらの不良じゃ相手にならないレベルの強さを誇る。

あっという間に由香里さんの懐に入り込み鳩尾に向けて拳を突き出す。だが、その拳は往なされ逆に腕を取られ関節を極められてしまう。見事なアームロックだ。

 

「まだまだねぇマッキー」

 

マキを捕らえ余裕の笑みを浮かべる由香里さん。マッキーというのは由香里さんがつけたマキのあだ名だ。だがマキはこのあだ名を嫌っている。何処かの油性ペンと同じ名前だからだそうだ。ちなみに由香里さんはどこかの古流武術の使い手で、元は護身術のつもりで始めたらしいが今では同じ道場の弟子の中でも上位の実力らしい。なんでおれの周りの女はこうも武術に長けているのだろう。

 

「こんの年増タヌキがぁ……」

 

マキが由香里さんを罵る。ここは兄として注意しなければ。

 

「マキ、由香里さんにそんなこと言ったらだめだぞ。」

 

注意をするとマキがしょぼくれた顔でこちらを見てきた。

 

「この年増またお兄ちゃんに結婚を迫ってたんでしょ!?許せないよ!」

 

半泣きになりながらマキがうったえる。由香里さんは昔から俺に結婚を迫るような冗談をよく言う。そのせいでマキは由香里さんが本気で俺に結婚を申し込んでると思ってしまっている。少し思い込みが激しい娘なのだ。

とりあえず関節を極められてるマキが可愛そうなので放してもらおう。

 

「由香里さん、とりあえずマキを話してもらえませんかね?」

「オケー」

 

由香里さんは俺の頼みを快く受け入れてくれ、マキを放す。これで俺が知ってるうちではマキの258戦中258敗だ。

 

「マキ、いつも言ってるがケンカは止めろ」

「うぅ……でもぉだってこの年増がぁ……」

 

ユキの年増発言に由香里さんが反応する。

 

「年増ってひどいなぁ。私は24よ?」

「はぁ?えっ本気で自分は若いとか思っちゃってるくちですか?えっ?ないわ……ないわー」

 

由香里さんの額に青筋が走る。顔の方も本気だ。

 

「ケンカを売る相手を考えなさい。死ぬわよ」

「早めに死ぬのはあなたの方ですけどね。寿命はあと何年ですか?」

 

ゴキッ 由香里さんの手から鈍い音がした。あれは由香里さんが怒ったときにやる癖だ。

 

「表に出なさい」

「こっちのセリフだし」

 

そう言って二人はどこかへ外へ出て行ってしまった。二人の心配はしない。258戦中100戦くらいは今回と同じような感じだったからだ。それより由香里さんは仕事とか大丈夫なのだろうか。俺のところへ来たということは何かしらの用があったからだろうし……まぁ動けない俺が気にしてもしょうがないか。

割れた窓から空を見上げる。とりあえずナースコールをしてこの窓をどうにかしてもらおう。風が入ってきて寒い。

 




ちょこちょこと更新していきます。
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