氷柱は冷酷だそうです   作:太一

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遊郭・出発

      

       

舞目線

 

あれから、炎柱様と鬼は死闘を繰り広げた

 

鬼は身体に傷を負ってもすぐに再生する

 

もしかして・・・!

 

目を凝らしてよく見て見ると瞳に“上弦の参”

 

青年くらいの背丈なのに上弦だなんて信じられない

 

鬼と何かを話している

師範を左手で引きずりながら、近づいていく

 

近づくごとに、炎柱様の右目が潰れていてもう戦っていい状況じゃ無いのがしみじみと分かってしまう

自然に目から涙が溢れてくる

 

加勢しなくてはいけない

だけど、私が居ても足を引っ張るだけだ

一体どうすれば・・・

 

「師範!!動いて!!炎柱様でも無理なら私でも無理なの!!私は弱いの!師範、動いて・・・!動け!!」

 

これでも動いてくれない

仮面の下で一体、師範はどんな表情をしているのかわからないけど、こればかりは・・・!

 

日輪刀を持ち、微力ながらも力添えをしようと走り出す

 

「俺は俺の責務を全うする!!ここにいる者はだれも死なせない!」

 

もう動かないで、それ以上、動いたら

 

「素晴らしい闘気だ・・・それ程の傷を負いながらそれ程の気迫、精神力・・・!やはりお前は鬼になれ杏寿郎!!」

 

攻撃の構えをした上弦の参

 

その時、私の横を黒い影が通り過ぎた

 

「俺と永遠に戦い続けよう!!術式展開・破壊殺・滅式!」

「炎の呼吸・奥義・玖の型・煉獄!!」

 

技と技が衝突し砂煙が舞い上がる

目が釘付けになって、視線を離す事が出来ない

 

砂煙が晴れた瞬間、上弦の参の腕は無く、炎柱様は固まって居る

 

舞目線終了

 


 

「師範!!動いて!!炎柱様でも無理なら私でも無理なの!!私は弱いの!師範、動いて・・・!動け!!」

 

動け

 

その言葉が酷く頭にこびりついた

走って何処かへと向かう少女

何故かついて行かなくてはならない

 

頭の中では警鐘を鳴らしているのに、心では動きたくないの一心

 

ただ、考える前に体は動いていた

 

体は考える前に答えを得ていて

 

“砂の呼吸・弐の型・砂嵐”

 

体を捻って上の方から巻き下げるように動く技

 

見方が広範囲の攻撃を相手に送り込む時に、自身が邪魔にならないように動く技でもあり、炎の呼吸との相性が良い

 

「炎柱・・・邪魔」

 

“ふぅぅぅぅ”

 

血管、骨、内蔵・・・

 

今ならこの全ての形を理解できている

 

頭が澄み切ったような爽快感に襲われた

 

先ほどまでの状況が嘘のようだ

この状況がとても好ましい

 

体温の急上昇を認知しながらも、体温が上がって行く感覚を気に入りつつあった

 

心臓の辺りに熱い血が集まっているのか、血が巡って行くのがよくわかる

 

「邪魔じゃないですよ!!師範が動かなかったんでしょうが!!」

 

外野が何やらうるさいが動くべきだ

 

「お前・・・名前はなんだ?」

 

「氷柱・時雨 無銘」

 

「お前が柱とは・・・鬼殺隊も世も末だな。術式展開・脚式・冠先割」

 

一瞬

 

ほんの一瞬だが、体が透けて脳と心臓だけが見え、何もかもが透き通ったように見える

 

相手が次にどの動きをするのかが、手に取るようにわかった

 

だが、それを信用しても良いのか

 

目の前にいたはずの相手が見えなくなった

 

後ろを振り向くと、下から上へと蹴り上げようとしている上弦の参

 

急いで避けるも、仮面に擦り仮面が完全に割れた

 

額の皮が剥け、血が出る

 

「氷の呼吸・肆の型・氷塵」

 

今度はこちらが、上弦の参の後ろに回り込み、一瞬にして七連の斬撃を放つ

 

それを想定していないとでも言うように、首に刃が掠る瞬間に刃を折りに来たので後ろに下がる

 

「お前は一体なんだ・・・?」

 

「人間」

 

「お前には、闘気が全く無い・・・!赤子ですら微弱な闘気があるのにだ!だが、お前は闘気が無くとも強い!何故だ・・・!」

 

「知らないし、知りたくもない。そういえば、もう少ししたら太陽が昇るぞ。そこら辺の弱い者のように尻尾を巻いて逃げろ」

 

ビキビキっと音がつきそうな程の勢いで青筋を浮かべた鬼

 

逃げて行くのを見届けて俺は、寝た

 


 

数日後の氷柱邸

 

「師範、お部屋に入れてくれませんか?その、凄く、生臭いので」

 

無限列車での戦いの時

俺は間違いなく上弦の参の腕を切った

その前に、先に鳩尾に深い傷がありそれが煉獄の死因

 

俺がもう少し早く動いていれば・・・

 

いや、俺が煉獄の間合いに入っていた可能性の方が高い

恐ろしく邪魔でしかないじゃないか

 

後悔しても仕切れない

 

懺悔にでも成ればと、自分で自分の体への拷問を繰り返した

だからなのか、血生臭いに匂いが部屋の外まで漂っているようだ

 

「師範、ご飯食べて下さいね」「要らない」

 

今、食べても吐くだけだから

 

「初めて師範の顔を見たんですけど、意外とカッコいいんですね」

 

顔になんの意味があるんだよ

 

「そうそう、師範。家の前に恋文が157通ありましたけど、読みますか?あと縁談が12件申し込まれていますけど・・・」

 

数えてるのかよ

というか、この状況でそれを言うか

 

「読まないから燃やせ。後、返事は書くな」

 

誰一人として相手にしたことの無い、恋文や縁談の話

何故か、舞と一緒に住んでるのに誰一人としてそこを気にしないのが凄いところだ

 

「久しぶりに師範が作ったご飯が食べたいです」

 

「・・・・」

 

自分で作れよ

 

「あと、手合わせもしたいですね」

 

「・・・・」

 

炭治郎とかとやれよ

俺じゃなきゃいけない理由なんて無いだろ

 

「折角、将来を約束されたような顔をしてるんですからもう顔を隠さなくても良いと思いますよ」

 

「・・・・下がれ、舞。お前と話したくは無い」

 

顔を褒められるのは好きじゃない

なんでなのかは、わからないんだけど・・・

 

「えっ、ちょっ、音柱様!?」

 

舞の慌てたような声が聞こえる

音柱ってまた面倒くさい奴が来たな

 

「お前の継子借りてくぞ」

 

「・・・・了承した」

 

「お前、上弦と戦って五体満足だったんだ。少しは派手に喜びやがれ」

 

その言葉を言って消えて行く、宇髄の背中を襖を開けて見ていた

 


 

何年か前までは宇髄みたいな大人になりたいと思った

 

誰よりも他の人の事を考えていて、自分の命を大切だと思える人間

 

俺はその2つのどちらにも当てはまらない

 

だけど、嫁が3人居ると聞いて憧れの男は、思っていた理想の男とは違うんだなと痛感したのを覚えている

 

それを本人に話したら

 

「そんなの当たり前だろうが、阿保が。地味にお前は間違ってるぞ」

 

「音柱は憧れの人が居ないのか?」

 

「居るぞ。それは派手な神、つまりは俺だ!」

 

この人は何を言ってるのだろうか

耳がおかしくなって幻聴が聞こえているのかもしれない

 

「憧れや理想ってのは、それその物になる為の物だ。まぁ、憧れや理想その物になれるかは、派手にお前次第だ」

 

 

今、理想の人は?

そう聞かれたら、俺は俺と答えられるだろうか

 

何一つとして良い事が無い

あまりにも平均的で平凡な男なのだ

悲鳴嶋のように背は高くないし、宇髄のように頭で譜面を考える事はできない

 

「・・・もし、仲間が目の前で死んだらどう思う?」

 

ふと、頭によぎった事

鬼殺隊に居るなら、きっとみんな考える事だろう

 

「派手に縁起の悪い事を聞くんじゃねぇよ」

 

「で、答えは?」

 

「そうだなぁ・・・俺は俺の生きてた事を喜ぶ」

 

拍子抜けした

もう少し違う事を言うと思っていたが・・・

 

「理由は?」

 

「悲しんだって、嘆いたってそいつらは帰ってこない。だったら、今を生きてる事を喜ぶしかねぇだろ」

 

そう言ってどこかに行く宇髄の背中を眺めた

大きく、力強いという印象を受ける背中

 

俺の憧れの男はやはり、宇髄だろう

 

そんな思い出に慕る

 

よし、俺も遊郭に行くか

 

 

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