マグマに囲まれた小さな島。
ここは魔界の中央部分にある火山島じゃ。この火山島はファイアードレイクという炎龍の一族が占めている。わしはその一族の1人『ドーラ』じゃ。齢は350を超えているが一族の中ではまだ若い方だ。普段ドレイク達は、争いや喧嘩もなくゆっくり寝ていたり好きに飛んでいたりしている。そんな中、わしは自分らの世界より外の世界について知りたくなった。事の発端は、昔読んでもらった本に書いてあった言葉じゃった。その内容は「古くから魔界の外には他なる地が存在する。そこには『人間』という生物と動物という生物が共存していると言われている『人間界』が存在する。」といったものだ。わしはそのことに対してとても興味が湧いた。ある日、ふとフラフラ飛んでいたら小さな洞窟を見つけた。この間までは無かったと思い、降りて中に入ってみると埃まみれの箱があった。わしは興味本位でその箱を開けてみると、中には魔界のものではない薄い黒い板と2つの左右対象の線でつながった装飾品のような物などが入っていた。我がドレイク一族の長である『チョウ』に聞いてみると、それらは人間界の産物であると言っていた。それがわしの行動を決意するための着火剤となり、ついに人間界行くことを決めた。
ド「チョウ、話がある!」
わしは再びチョウのところへ行き、大声で叫んだ。
ド「スゥーーーーーーーーー…わしは!人間界へ行く‼︎‼︎」
周りにいたドレイク達もみんなわしを見た。周りは少しざわついたがチョウが姿を現した途端、静かになった。
チョウは静かにわしを見つめ、話し始めた。
チ「ドーラよ、お前が決めたことなら否定しない。だが、それ相応の覚悟はあるんだろうな?人間界はお前が思っているほど優しい世界ではない。お前の他にも私にそう言ってここを出て行った者もいる。だが誰もが後に届けた手紙で『帰りたい』『戻りたい』などと言っている。それでも行くのか?」
チョウの眼はまっすぐわしの目を見ていた。瞬きもせず、じっと。わしはチョウの質問に対し、返答は決まっていた。
ド「今までの奴らと一緒の結末にはならんし、しない。わしは人間界で生きていく。そう決めている。それがいかに大変で辛かろうがわしが望んだことだから耐えれるのじゃ。」
胸を張ってチョウに伝えた。チョウは目をつぶって黙り込み、しばらくしてからわしに言った。
チ「それがお前の生きる道か…わたしに言ったこと、忘れずに生きろ。人間界に行く準備が出来次第、私のところへ来い。人間界への行き方を教えてやる。」
そういうとチョウは静かに自分の櫓の戻った。すると周りからは歓声が上がった。
「やるなぁドーラ!」
「人間界に行くのか⁉︎」
「チョウ相手によく言ったモンだ!」
あちこちから祝福される。よほど人間界に行く事が珍しく、驚く事なのだろう。わしはその歓声に包まれながら自分の住処に戻り、出発の準備をした。まずやることは、人間界に行ってからどうするかだ。知り合いや友がいる訳でもない。住む場所も金も食べ物も尽きたら終わる。第一の難所じゃな。ふと、あの小さな洞窟に何かがある気がして戻ってみた。前と同じように箱を開け、なにか使えるものがないか探してみるとボロボロになったオレンジ色のお守りのようなものが出てきた。この際お守りでも良いからこの難所を打開する決め手になれば良いと思い、わしはそれを持っていくことにした。
____________________________________________
数日後、友と知り合いに別れを告げわしはチョウの元へ向かった。
ド「チョウ、準備が整った。」
そういうと櫓の上からチョウが飛び降りてきた。驚いた。いつもゆっくり行動しているチョウがこんなに動けることに。わしのまえに降りたチョウはわしをみるなり、こう言った。
チ「…皆に別れを告げ、決意を決めたか。よろしい、ついてこい。」
そう言ってローブの下から老いた羽を広げ飛び立った。わしは集まったみんなに手を振って、チョウについていった。気づけば辺りは明かりが一つもない真っ暗な岩山にいた。
チ「ここだ。この岩の裏にある。」
チョウはなんの変哲もない岩の前に降り立った。その岩は周りの岩と同じくらいの大きさで、身の丈より少しばかり大きいくらいだった。
ド「この先に人間界が…。」
改めてこれからを考えると、少し怖いものもある。だが、それ以上に興味と期待がある。
チョウはわしの前に立って最後の言葉を言う。
チ「ドーラよ。若きにお前と同じことを望み、大いに失敗したわしの代わりにも、お前のその望みを決して変えたり、忘れたりするな。これだけは忘れるんじゃないぞ。ドレイク一族の誇りにかけて、お前を送り出そう。これを持っていけ。」
チョウはわしに真っ赤な溶岩石で作った首飾りをくれた。
チ「それは戦士の飾り。我らの先祖の魂がこもっている。いかなる時もお前を守ってくれるだろう。」
わしはその首飾りを付けた。
ド「フフッ、わしにこういった物は似合わぬはずなのに、良いじゃないか…感謝するぞ、チョウ。お主とその他の者の思いも共に行ってくる。」
チョウにそう言うと、チョウは笑顔になりわしの前から退けた。わしは目の前に現れた岩をどかし、人間界へ向かった…。
____________________________________________
真っ白な空間に入ったと思った瞬間、急に目の前が真っ暗になった。うっすら光が見える。その光を追うように歩き出そうとした。そんな奇妙な感じに見舞われた後、気づけば高い建造物に囲まれた場所にいた。運良く周りには人間は居なかった。とりあえず周辺を飛んで状況を確認したいが、人間にドレイクの姿を見せるのはいけないので怪しまれないように周囲を確認した。しばらく散策した結果、ここは『日本』と呼ばれる人間界の国の一つである事と、日本の中の中心である『東京』というところである事が分かった。周りにある建造物はビルと呼ばれる経済産業にて必要不可欠な建物らしい。通りで多い訳だ。近くにあった書庫のような本が沢山あるところで、日本について色々調べた。四季と呼ばれる気候が変わる時が存在すること。人間界の国の中でとても小さい国であること。そして人間界共通で、『ドラゴンや魔界の存在がほぼ否定されていること』などを知った。わしの知らない事ばかりであった。土地はきれいに整備されており、マグマはおろか岩一つもない。緑が多く、海と言われる大きな水溜りがあって、とても綺麗な場所であった。こんなことをしているうちに太陽が沈み、夜になっていた。わしは夜ならバレないだろうと思い、海沿いの広場から空に向かって飛んでみた。周りのビルより高く飛び、上空から地上を見てみた。圧巻された。小さな光が点々としており、とても美しかった。わしは気持ちが良くなり、当てもなく自分が思う方向へしばらく飛んでいた。ふとわしは周りが暗い中、ひとつだけポツンと明かりがついている建物に降りてみた。
ド「ここは周りと比べて、光が強いな。何か強調しているような…。」
ここならこの光に誘われた人間が来るかもしれん。少し怖いが話しかけてみようかの。魔界に比べ人間界は寒い。さっき調べた四季の中で今は『冬』と呼ばれる気候らしい。四季の中で最も寒い時期なんだとか…そんな事を考えていると下から何かが動く音がした。どうやら中にいた人間が出てきたらしい。チャンスだと思い上から見ていると、人間は丸い筒のような物を飲んでいる。じっと見ていると人間が1人でボソッと言葉を放った。
?「……はぁ、染みるわ。やっぱし寒い日のコーヒーは最高だな!」
とても嬉しそうな顔をしている。ますますその筒が気になってきた。その思いが止まらず、わしは不意に言葉を発してしまった。
ド「それはそんなに良いものなのか、人間?」
しまった。わしも驚いたし、下の人間もわしを見つけ驚いている。じゃがこうなってはどうしようも無い。話を続けてみるしか!しかし何故だろう、人間がずっとわしを見つめている。
ド「どうした、何かおかしいか?見た目は人間と同じだろう。」
人間は理解が遅いのかずっと目を大きく開け、瞬きをしている。さてどう出るか人間。
?「あ、あの、なんでコンビニの屋根の上にいるんですか?」
思っていたのとは違う返事が返ってきた。確かに人間は下にいる。上には行かないのか。怪しまれている気がするから降りよう。
ド「よっと、人間は屋根の上には乗らないのか。」
これでやっと話ができるのか。この人間は…男か。身長がドレイク的には小さいが、人間的には大きい方なのか?何よりわしとほぼ変わらんというのがなぁ…まぁ良いか。そんな事より今は住処が必要だ。
ド「なぁ人間。お前さんにここを案内してもらいたいのじゃが、どうだ。わしもここにきたばかりで行くところもなければ、住む場所も友人もいないのじゃ。そこで近くにあったこの明るいところにおったのじゃ。」
状況を把握できたのか、その人間は冷静さを取り戻してきた。
?「とりあえず、名前を聞きたい。私は社築だ。」
人間は『社築(やしろきずく)』と名乗った。思っていたより礼儀はしっかりしていた。これにはわしも不意を突かれた。
ド「そうじゃな、申し遅れた。わしの名前はドーラじゃ。」
これから話すにおいて重要な情報だからはっきり言った。この挨拶により会話はおのずと始まった。
社「ドーラ…日本人じゃない、のか。もしかして外国人とかかな?」
ド「外国といえば外国なのじゃが…まぁそれでも良いか。」
やはりわしを人間と捉えているらしい。細かい事を話しても理解されないだろうと思い、その事について話すのをやめた。さて、もう一度本題について…
社「そ、そうなんですね…!あっちょっともうこんな時間なので私帰りますね!時間も遅いので気をつけてください!それでは…‼︎」
ド「うん?あ、ちょっと待て!にんげ…社築‼︎」
しまったやられた。隙を見せた途端に逃げられてしまった。あっという間に暗い道の奥へ行ってしまった。
ド「どうしたものか…。そうだ奴の匂いを追えば良いのか!」
わしらドレイクの五感は人間の100倍鋭く、自分で調節もできる優れた能力だ。さっきの少しの会話で覚えた社の匂いから、空へ上がり周囲の家から社の家を探してみた。
ド「クンクン…見つけたぞ、あそこじゃ‼︎」
わしはすぐさまその家に向かった。
ド「さてと、(ガチャッ)ん?開かぬぞ。壊れているのか?」
何度もガチャガチャしたが一向に開かない。以前調べた時はここをガチャガチャしていたのだが。開かない扉に苦戦していると、中から鍵を開けた音がした。
?「パパ〜鍵無くしちゃったの?あれっ、どなたさんですか?」
小さい女子が出てきた。社では無い。もしかして家を間違えたか?いや、そんなことは無いはず…、とりあえず確認してみるか。
ド「社築という者を知っているか?」
さて、どうなるか。
?「知ってるよ!だってパパだもん。」
なんと、娘であったか。やはりここが社築の家で間違いなさそうだ。
ド「社築はまだ帰っておらぬか。分かった、また出直そう。」
今夜はこの寒い中、どこかで寝るとするか。そう思っていた。
?「パパのお友達?パパならもうすぐ帰ってくるからお家の中で待ってて!」
去ろうとしたわしの手を掴み、半無理やりに家の中に入れられた。
ド「よ、良いのか?勝手に上がってしまって…。」
流石にわしもさっき会って少し話しただけの者の家に上がって待つ、というのはどうなのかと思った。
?「いいのいいの!パパは優しいからね!それにお友達ならだいじょ〜ぶ!!」
とても元気のある娘だ。何より笑顔が明るくて癒される。
?「そうだ!おねぇさんの名前は?あっ、ひまは『ひまわり』って言うんだ!」
おねぇさん、か。悪くないな…。
ド「わしの名はドーラじゃ。少しの間世話になるぞ、ひまわり殿。」
名の通り、向日葵のように明るい娘だ。そうこうしているうちに誰かがドアを開ける音がした。
ひ「パパだよドーラさん!」
ガチャ…
ド「1番重要なことをわすれておったわ!社築‼︎」
社築は固まっておった。まさか家にいるとは思っていなかったようだ。そりゃそうか…
社「えぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎‼︎い、いやなんで家の中にいるんですか⁉︎まさか泥棒だったりして…。」
ド「待て、違う!お前さんの娘に入れてもらったのじゃ‼︎」
早速泥棒扱いとは。あぁ、でもそうなるよな…。
ひ「あ!パパお帰りなさ〜い!!!」
ドタドタと後ろからひまわりが来た。
ひ「このドーラっていう人がパパのお友達って言ってたからお家で待たせてたの!」
ひまわりが言ってくれるのなら信じるじゃろう…。
社「…ひまわり、よく聞きなさい。今回は何も害はないけど、もしこれが泥棒とか悪い人だったらどうする?今度からはちゃんと…」
…まぁ、そうなるじゃろうな。ていうか、ひまわり殿が今にでも泣きそうな顔をしているのじゃが⁉︎
ひ「うぅ、パパぁ〜ごめんなさい〜…。」
社「よ、よしひまわり!分かればいいんだ。次から気をつけてな…!」
あ、子供に甘いタイプの親だ。わしは一瞬で分かった。
ひ「うん、ごめんなさい。パパ。」
そういやまた本題を忘れとったわ。
ド「ところで、わしのことまた忘れてたじゃろ?」
社「スゥーーー、いやそんなことないですよ?ちゃんと気付いてました。」
目が泳いでおる。此奴、やはり忘れておった。
社「あぁそういえば…では本題を…スゥ」
バタン…
ド「社築⁉︎」
ひ「パパ⁉︎」
目の前でいきなり倒れた。何事かと近くと…
スゥー、スゥー、スゥー
ド「此奴、寝ておる…。」
ひ「…え?」
よほど疲れているのか揺すっても起きなかった。しょうがないのでひまわりに聞いて、社の部屋まで運んだ。
ド「まったく、いつになったらわしの話を聞いてくれるのか…。この際疲れを一切取っ払ってやろう。」
ひまわりがいない事を確認して、自分の尾を出す。そこからウロコを1枚剥がす。痛くなどないが、違和感はある。このウロコを粉砕し、適量ふりかければ体を癒す効力が発揮される。
ド「ふぅ、これで少しは楽になるじゃろう。これから多分世話になるじゃろうからな。」
リビングに戻るとひまわり殿がわしの寝床を準備していてくれた。ひまわり殿には、社築に大事な話があるから今日は泊まらせてくれ、と言いておいたのじゃ。
ひ「う〜ん、ちょっと狭いけどここがドーラさんの寝るところね!」
洞窟が寝床だったわしからすると全然広い。羽と尾を出す余裕もある。
ド「いや十分じゃ。人様の家に勝手に上がり贅沢など言えんよ。それとわしからしたらこのくらいが丁度良いのじゃ。」
ひ「そうなの?なら良かった!ひま、もう眠いから寝るね。おやすみなさい!」
ド「あぁ、おやすみ。」
わしも寝るとするか。今日はいろいろあったな…。
____________________________________________
なんと、目覚めがとっても良い。下が岩肌じゃないため、寝心地がとても良かった。これが人間の『ふとん』なのか⁉︎何やらリビングから声が聞こえる。みんな起きてきたのか。とりあえず、この感動を伝えに行こう!!
ガララッ!
ド「人間の『ふとん』というのはこんなにも寝心地がよいのか‼︎」
社とひまわり。そして昨日見なかった者が1人、リビングにいた。
ド「ん、なんじゃ。みんな集まって?」
もしかして、空気を読めていなかったかもしれん。何か、今それどころじゃないという空気がひしひしと伝わってきた。今日も色々ありそうじゃの…。